この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
認知症の中でも最も多いアルツハイマー型認知症について具体的な症状や原因、早期発見のための検査方法など解説します。
2025年7月30日
アルツハイマー型認知症とは、65歳以上の方に最も多い認知症で全体の70%近くを占めているといわれています。
脳の神経細胞が徐々に減り、アミロイドβという特殊なたんぱく質が蓄積され、脳の一部が委縮することで症状が発症します。このアミロイドβが蓄積される原因について、明確なことは分かっていませんが、特に海馬と呼ばれる器官から委縮が始まることが多いと言われています。この海馬は、短期記憶から長期記憶へと情報を繋げる役割を担っているため、多くの人の初期症状として、物忘れなどがみられます。
アルツハイマー型認知症と物忘れの違いは、簡単に言うと加齢による物忘れは忘れたことを自覚していて、アルツハイマー型認知症の場合は忘れたことを自覚していないということです。
例えば、加齢による物忘れでは、お昼に何を食べたか思い出せなかったり、スマホをどこに置いたか忘れてしまったりします。しかし食事をしたことや、スマホを置いたこと自体は覚えており、自分がそのことについて忘れてしまった自覚がある状態です。そのため、物忘れが増えたと感じても日常生活に支障はなく、症状が進行することはありません。一方で、アルツハイマー型認知症は、体験したことを丸ごと忘れるという特徴があり、昼食を食べたことを忘れたという場合には、周囲がさっき食べたよと伝えても、本人は記憶がなくなった自覚がないため、今日はまだ何も食べていないと反発してしまうことがあります。
―認知症と物忘れについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「「認知症」と「物忘れ」の見分け方は?対処法も解説」
アルツハイマー型認知症も含め、認知症には前段階といわれるMCI(軽度認知障害)という時期があります。これは健常者と認知症の中間にあたるグレーゾーンの段階をいい、記憶力の低下以外に明らかな認知機能の障害がみられないことから、症状としてはそれほど重くない状態です。この時期に不安を感じる方も多くいますが、MCI全ての方が認知症に進行するとは限らないため、認知症の発症リスクを減らすための重要なポイントがこのMCIとなるのです。この時期の症状を放置してしまうと、認知症へと進行してしまう恐れがありますのでMCIになるべく早く医師の診断を受け、適切な治療や対策を取ることが大切です。
アルツハイマー型認知症は、発症後すぐに重症化するわけではなく、初期、中期、後期と段階があり、この段階ごとに症状の変化がみられます。患者と今後どのように接していくのが良いのか、また、計画的に介護を進めていくうえでのヒントを得るためにも、それぞれの時期に注視しながら、具体的な症状についてみていきましょう。
初期に最も多くみられる症状は、物忘れです。アルツハイマー型認知症の特徴として、新しい記憶を取り込むのに重要な役割を担っている海馬から委縮が始まるため、昔のことは覚えていても、新しい情報を記憶することが困難になっていきます。そのため、初期の段階では物忘れ程度に感じることが多いでしょう。
今日の日付や曜日が分からなくなってしまうという、時間に関する見当識障害、数十秒から数分間の短い期間のことを忘れてしまうため、何度も同じ話を繰り返す近時記憶障害、計画を立てて物事を進めることが困難になる実行機能障害といった、普段の生活の中でみられる中核症状が出現します。例えば、ご飯を炊きながらおかずを作るなど同時進行で料理ができなくなるといったことも増えます。
―アルツハイマーの初期症状について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「若年性アルツハイマー(若年性認知症)とは?原因や症状、なりやすい人の特徴を解説」
中期になると、今いる場所や目の前の人が誰か分からなくなるなどの症状がみられます。アルツハイマー型認知症の初期は、比較的直近の記憶からなくなっていきますが、中期になると中核症状はさらに進行していき、かつて自分が通っていた学校の名前が思い出せなくなる遠隔記憶障害や、お金の支払い方が分からなくなったり、1人で着替えができなくなったりする、物の名前が出てこないなどの失認・失行の症状が現れます。言語能力も低下してくるため、自分の感情を上手に伝えられなくなり、コミュニケーションに支障がでることもあるでしょう。また、中核症状の他にも抑うつや妄想・幻覚など本人の心理状態によって起こる周辺症状がみられることもあります。
アルツハイマー型認知症の後期になると、日常生活の全般においてサポートが必要になっていきます。中核症状の具体例としては、同居する家族が誰か分からなくなり、表情が乏しくなる、声をかけても反応しないことも多くなります。また、食べ物ではない物を食べたり、尿意や便意を訴えられなくなり、失禁が増えたりすることもあります。その他にも運動機能の障害が重度になると、座ることや歩くことも困難になってしまいますし、言葉を忘れてしまう失語の症状が強く現れる場合では、ほとんどコミュニケーションが取れなくなってしまうこともあります。後期になると、家族や介護者の負担が大きくなりますので家族だけで抱え込むことがないよう、状況に応じて施設や介護サービスの利用を検討するのが良いでしょう。
近年、新たな治療薬の開発や臨床試験が進められており、一部の薬は日本や米国で承認されたり、申請されたりしていますが、現段階では、アルツハイマー型認知症の明確な治療法は確立されていません。認知症に繋がる原因を知ることで、発症のリスクを軽減することや、進行具合を大幅に遅らせるなどの対処が可能になります。アルツハイマー型認知症を発症するまでには、生活習慣や加齢、基礎疾患など様々な原因が絡み合っていると考えられています。
運動不足や寝不足、喫煙経験などの生活習慣の乱れは、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めると言われています。過去に、喫煙は認知症の予防になるという説がありましたが、ニコチンの血管収縮作用により、血流の流れが悪くなり、脳に配給されるはずの酸素がなくなることで、動脈硬化などの危険因子を引き起こす要因になるため、現在ではアルツハイマー型認知症の発症リスクを高めるとされています。
加齢による脳機能の低下が原因で、アルツハイマー型認知症の発症者は多くなると言われています。実際に日本では、65歳以上の認知症患者は2020年時点で推計約600万人となっており、2025年には高齢者うちの5人に1人が認知症になると予測されています。ただし65歳未満で発症する人も一定数いるため、必ずしも加齢による老化現象が、すべての原因というわけではありません。
脂肪の摂取過多、ミネラルや抗酸化物質の不足などバランスの悪い食事もアルツハイマー型認知症の原因となっています。例えば、摂取カロリーが大幅に超えると肥満になり、塩分が高い食事は高血圧や動脈硬化、脳梗塞など認知症の危険因子となる病気へ繋がります。
そのため、減塩やコレステロール、抗酸化などを考慮しバランスの良い食事を摂ることが認知症予防にもなるのです。
高血圧や糖尿病などの基礎疾患がアルツハイマー型認知症の原因とも言われています。
アルツハイマー型認知症は、脳細胞や組織が少しずつ変性していき、その機能を失う変性疾患という病気に分類されますが、この変性疾患は、高血圧や糖尿病などの基礎疾患があることで、発症を促進するリスクがあるとされており、認知症と深い関係があります。高血圧や糖尿病に限らず何らかの基礎疾患があると、合併症を発症し病気が重症になることも考えられます。
日本や米国の65歳以上を対象とした研究で、読書や教育に関わる趣味などの知的活動時間が長い方が認知症の発症リスクが低いという報告があります。その理由は、知的活動や身体活動が、認知症の原因となるアミロイドβの蓄積を抑制するためであると考えられており、趣味などを通して生きがいを持つことは、認知症発症の予防にも繋がっていると言えるでしょう。
コミュニケーションの不足も認知症の原因と考えられます。例えば、会話をするときには、どのように返答しよう、何を話そうなど、脳を使いコミュニケーションを取っています。このようなコミュニケーションを取る機会が少ないと認知能力が低下しやすいという調査結果もあります。コミュニケーションの取り方によっては、人間関係によるストレスが増え、認知症発症の原因になることもありますので、心地良く、負担がかからないようなコミュニケーションの機会を増やすことを心掛けましょう。
アルツハイマー型認知症は、遺伝による発症は少ないとされています。
アルツハイマー型認知症の90%は遺伝と関係のない孤発性アルツハイマー型認知症で、遺伝と関係のある家族性アルツハイマー型認知症は1%程度ですので遺伝による発症はあまりないと言えます。ただし両親のどちらかが家族性アルツハイマー病である場合は、その子供は50%の確率でアルツハイマー型認知症になると考えられています。
アルツハイマー型認知症と診断される基準はいくつかありますが、代表的な認知症の診断基準には、世界保健機関(WHO)による国際疾病分類第10版(ICD‐10)、NIA‒AA(米国国立老化研究所/Alzheimer病協会ワークグループ)基準、米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)などがあります。
いずれも、アルツハイマー型認知症の診断で重要視されていることは、今までできていたことができなくなり、日常生活に支障をきたしているかどうかということです。各機関の診断基準がどのようなものなのか理解を深め、早期発見や対策ができるようにしましょう。
世界保健機関(WHO)による国際疾病分類第10版(ICD‐10)による認知症の定義は「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、概念、理解、計算、学習、言語、判断等多数の高次脳機能障害からなる症候群」とされており、診断基準は次のようになっています。
G1. 以下の各項目を示す証拠が存在する.
(1)記憶力の低下
新しい事象に関する著しい記憶力の減退、重症の例では過去に学習した情報の想起も障害され、記憶力の低下は客観的に確認されるべきである.
(2)認知能力の低下
判断と思考に関する能力の低下や情報処理全般の悪化であり、従来の遂行能力水準からの低下を確認する.
(1)と(2)により、日常生活動作や遂行能力に支障をきたす.
G2. 周囲に対する認識(すなわち、意識混濁がないこと)が、基準G1の症状をはっきりと証明するのに十分な期間、保たれていること.せん妄のエピソードが重なっている場合には認知症の診断は保留.
G3. 次の1項目以上を認める.
(1)情緒易変性
(2)易刺激性
(3)無感情
(4)社会的行動の粗雑化
G4. 基準G1の症状が明らかに6か月以上存在していて確定診断される.
2011年に米国国立老化研究所/Alzheimer病協会ワークグループNational Institute on Aging-Alzheimer`s Association workgroup(NIA-AA)により全ての認知症疾患に対する認知症の診断基準が次のように提唱されました。
1. 仕事や日常生活の障害
2. 以前の水準より遂行機能が低下
3. せん妄や精神疾患ではない
4. 病歴と検査による認知機能障害の存在
1) 患者あるいは情報提供者からの病歴
2) 精神機能評価あるいは精神心理検査
5. 以下の2領域以上の認知機能や行動の障害
a. 記銘記憶障害
b. 論理的思考、遂行機能、判断力の低下
c. 視空間認知障害
d. 言語機能障害
e. 人格、行動、態度の変化
2013年の米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)は次のような診断基準となっています。
A.1つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習および記憶、言語、知覚‐運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下に基づいている:
(1)本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、有意な認知機能の低下があったという概念、および
(2)標準化された神経心理学的検査によって、それがなければ他の定量化された臨床的評価によって記録された、実質的な認知行為の障害
B.毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(すなわち、最低限、請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段的日常生活動作に援助を必要とする).
C.その認知欠損は、せん妄の状況でのみ起こるものではない.
D.その認知欠損は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:うつ病、統合失調症).
―参考―
▶日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」
―認知症の早期発見について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「認知症の初期症状とは?早期発見のポイントと進行を遅らせる方法を解説」
アルツハイマー型認知症の検査には、記憶障害の程度を紙や各種道具、コンピューターを用いて簡単な質問に答える検査を行う「神経心理検査」、頭部CTやMRI、MIBG心筋シンチグラフィなどを行う「画像検査」、MCIスクリーニング検査などの「血液検査」があります。
検査を行う前にまずは医師による問診を行いますので、いつ頃から異変に気づいたか、具体的にはどのような症状があったか、今までにかかった病気や、服用している薬などをあらかじめ整理しておき、問診の際に医師に伝えられるようにしておきましょう。
神経心理学的調査は、知的機能・記憶・認知機能・実行機能などをそれぞれ組み合わせて実施します。簡単な質問に答えたり、計算などをしたりして、記憶障害や認知機能の程度を知ることができます。
(1)知的機能検査
・ミニメンタルステート検査(MMSE)
・長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)
認知症の検査として広く利用されており、知能を評価するための検査です。
(2)記憶検査
・三宅式記銘力検査
二つの対になった言葉を覚える検査で聴覚性言語の記憶を評価する検査です。
・ベントン視覚記銘力検査
図形を見て描く検査で、視覚性の注意・記憶・認知・構成能力を評価する検査です。
(3)前頭葉機能・遂行機能検査
・前頭葉機能調査(FAB)
前頭葉の機能について、簡便に測定できる検査です。
(4)人格検査
・うつ性自己評価尺度(SDS)
感情や心の状態を知る検査として使用されています。
―参考―
▶国立病院機構「神経心理学的検査とは?」
(1)脳血流SPECT(スペクト)検査
近年ではアルツハイマー型認知症の診断に、脳の画像検査が使用されていますが、代表的な検査として「脳血流SPECT(スペクト)検査」があります。
SPECT検査は、30分ほど寝ているだけで終わる検査です。放射線を出す薬を注射し、体の中から出る放射線を対外で受け止めて画像にする検査方法です。なお、放射線と聞くと不安になるかもしれませんが、量的に生体への影響は心配ありません。
(2)MRI検査
脳の局所的な委縮や、異状構造検出に優れた機械です。とくにアルツハイマー型認知症を発症すると、側頭葉の海馬の委縮が目立ちやすいといわれており、早期から委縮を確認できることもあります。また、小さな脳梗塞などの血管病変の描出に関してもMRIを用いられることがあります。
(3)MIBG心筋シンチグラフィ検査
MIBG心筋シンチグラフィ検査は、MIBGという物質を注射して心臓の交感神経の働きを画像で調べる検査です。レビー小体型認知症であれば、早期からこの検査で異常をきたすとされています。アルツハイマー型認知症や、他の認知症ではこの異常はみられないため、診断の決め手として用いられることがあります。
血液検査には、MCIスクリーニング検査という検査があります。MCIスクリーニング検査は、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβペプチドの排除に関わる血液中の特定のタンパク質を調べることで、アルツハイマー型認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)のリスクをはかることができ、MCIかどうかを約80%の精度で識別可能と言われています。
軽度認知障害は認知症ではなく日常生活にも支障はありませんが、そのままでいると約5年で50%以上が認知症になるともいわれています。しかし、軽度認知障害の段階で適切な治療や予防を行うことで、その後の認知症の発症を防ぐことや進行を遅らせることができる場合があります。12cc程度の採血で認知症のリスクを簡単に検査できるので気になる方は検査してみましょう。
アルツハイマー型認知症患者に使用されている治療方法には、薬物療法と非薬物療法の2種類があります。どちらもアルツハイマー型認知症を完治させるための治療法ではありませんが、早期発見で具体的な症状を知ることができれば、どの治療方法が最善なのか選択の幅が広がります。進行状況や医師にも相談しながら慎重に治療を進めていくことが大切です。
アルツハイマー型認知症の患者の多くは、アセチルコリンという神経伝達物資の減少により、元気や意欲、やる気がなくなることがあります。このアセチルコリンが減少しないように、アリセプトⓇ、レミニールⓇ、イクセロンⓇ(または、リバスタッチパッチⓇ)などの治療薬が使われます。その他の治療薬としては、NMDA受容体拮抗薬としてメマリーⓇという薬が使用されることもあります。NMDA受容体というのは、神経伝達物質の受け皿であるグルタミン酸のことでメマリーⓇはグルタミン酸の働きを抑え、神経伝達を整えたり保護したりする役割があるとされており、イライラした感情を抑え、気持ちを穏やかにしてくれます。
認知症の治療薬としては、2023年9月25日に新しい治療薬「レカネマブ(レケンビⓇ)」が厚生労働省に正式に承認され、今後のアルツハイマー型認知症の治療に期待が持たれています。
薬を使用しない療法としてはリハビリ療法があります。リハビリ療法は、自発性を引き出して脳の活性化を促すために行うもので、具体的には、ゲームやパズル、計算ドリルなどを使った認知リハビリテーションや、音楽や園芸を通して自信を取り戻してもらうような治療法があります。
また、昔の記憶を聞いたり話したりすることで、認知機能の向上が期待される回想法という非薬物療法もあります。その他にも、近年ではパーソン・センタード・ケアという、患者の行動や健康状態、性格やこれまでの生活など様々な面から理解を試みる治療法も取り入れられています。認知症患者を1人の人として尊重し、その人らしさを維持することで、認知症の症状が改善したという報告もあります。
アルツハイマー型認知症の人の寿命は他の認知症と比べると長い傾向にあると言われています。
日本国内外の複数の研究などに基づく情報から目安として、認知症全体の平均寿命が発症から約5〜12年に対して、アルツハイマー型認知症の平均寿命は発症から約8〜12年とされています。
ただ、寿命について発症する年齢やその人の健康状態、介護環境などかかわる要素によっても左右されます。死因についてはアルツハイマー型認知症が直接の理由ではなくそれに起因するものが死因となることが多くなります。
アルツハイマー型認知症の寿命に関わる要素は、「発症年齢」「性別」「病気の進行状況」の3つになります。もっとも寿命に影響があるといわれているのが「発症年齢」です。若年で発症した場合は進行が早く、寿命が短くなる傾向がみられ、高齢で発症した場合は進行が緩やかではあるものの、他の様々な合併症との兼ね合いで寿命が決まることが多い傾向があります。「性別」については、女性の方が生存期間は長くなる傾向にあるとされています。これは、一般的な平均寿命自体が女性の方が男性よりも長いこともありますが、病気の進行自体も女性の方が緩やかであることも一因と言われています。
「病気の進行状況」については、個人差が大きい部分になり、進行が早い場合は、身体機能の低下や合併症のリスクが高まり、進行が緩やかな場合は適切な介護や医療により長く生活を維持することが可能になるといえます。
アルツハイマー型認知症の死因は、認知症そのものではなく、認知機能の低下に起因する事故、病気の進行によって生じる合併症、身体機能の低下などが原因となることがほとんどです。
認知症が進行すると、嚥下機能が低下し食べ物や唾液が誤って気道に入る誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。これが慢性的に繰り返されることで、肺炎が重症化する可能性高まります。この誤嚥性肺炎はアルツハイマー型認知症の主な死因のひとつとなっています。
その他の主な死因として老衰もあげられますが、老衰は病気ではなく長期の食事量低下、筋力低下、床ずれなど慢性的な全身衰弱状態を背景に死亡に至るケースを指します。認知機能が低下すると、徐々に日常的な生活が困難になり、アルツハイマー型認知症の場合、この状態に陥るのが早く、気付いたときには深刻な段階にまで進行していることも多いといわれています。
身体機能の衰えを認識した時点で誤嚥性肺炎や寝たきりを防ぐケアができるよう心がけておくことが重要になります。
認知症末期の方のケアの方法はどのように行えばよいのでしょうか。
認知症が末期まで進行すると、日常生活のほぼすべてにおいて支援が必要となり、意思の疎通も難しくなり、ケアは非常に大変です。身体的な苦痛の軽減だけではなく、本人の心理的・社会的な側面にも配慮したケアが求められます。末期、終末期においてのケアの方法を紹介します。
認知症末期における緩和ケアは、延命や治癒を目指すのではなく「その人が最後まで人間らしく、穏やかに過ごせるように支える」姿勢が求められます。認知症は末期まで進行すると意思表示が困難になり、言葉を失って家族の顔さえわからなくなる可能性もあります。それでも、快・不快といった感情や、愛情に対する反応は残ることが多いため周囲の関わり方がとても重要です。
まず、言語による意思表示が難しいため、痛みや不快感を「表情」「うめき声」「動作」などから読み取る必要があります。サインを見逃さず、できるだけ心地よく過ごせるような環境を整えてあげるなどその人に寄り添ったケアを意識するようにしてあげましょう。スキンシップや音楽など、感覚を通じた関わりも安心感を与える手段として有効になります。もちろん基本的な身体ケアも重要ですが、ただの介護ではなく共に過ごす「人生の一部」ととらえて向き合う姿勢を忘れずケアしてあげてください。
終末期の緩和ケアは「本人の尊厳を守り、安らかな最期を迎えることを支える」姿勢が基本方針です。周囲は本人の意思や価値観を最大限に尊重してあげたうえでケアができるように、事前に話し合いをしておきましょう。緩和ケアの目的は、苦痛や不安を緩和してできる限り安楽な状態で最期を迎えることにあります。例えば、誤嚥性肺炎を繰り返すようになった場合、抗生物質の使用や点滴治療を継続するよりも呼吸の苦しさや咳などの症状を軽減する処置を優先する場合もあります。経口摂取が困難な状態でも、口腔ケアや保湿などで「食べる楽しみ」や「快適さ」を保つ工夫も必要です。治療を中止しても継続しても、辛い選択であることに変わりはありません。医療・介護スタッフは本人や家族に感情面も含めて寄り添う姿勢が求められるでしょう。
―参考―
▶厚生労働省「認知症施策関連ガイドライン(手引き等)、取組事例(認知症の人と家族の一体的支援事業)」
認知症の方の意思決定はどのように行われるのが良いのでしょうか。厚生労働省は、平成30年に「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂を行い、今まで以上に終末期の意思決定を身近なものにしました。例えば、認知症を患っていても、本人が自らの生活や治療方針について意思決定できるよう早い段階からアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を策定することが推奨されています。アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは、本人が正しい知識を理解して意思を表明できるうちに、終末期にどのような治療を望むのか、延命措置は必要か、どこで最期を迎えたいかなど本人の意思決定を前もって共有できる治療の計画書です。もし意思表明ができない状態まで進んでいた場合には、家族や友人などの情報を頼りに「本人ならどうするか」を検討し、最善の方針を導き出します。1人で決めるのではなく、医療・介護・福祉担当者も巻き込みケアチーム全員で考えることが重要です。認知症であっても最後まで「自分らしく生きる」選択ができるよう、周囲が率先して本人に意思決定をしてもらうようにしてください。
アルツハイマー型認知症になると、今まで分かっていたことや、できていたことが少しずつできなくなっていくため、人は不安になり、時には落ち込んだりイライラしたりすることもあるでしょう。アルツハイマー型認知症の発症後も、こうした状況を理解した上で適切にサポートしていくことが大切です。家族や周囲の方は次のようなサポート方法を参考にしてみてください。
家族がした話を一時的に理解できても記憶できないため、数分後に忘れてしまうことがあります。これを責めないように心がけましょう。例えば、食事をしたことを忘れてしまった場合には、さっき食べたでしょと否定するのではなく時計を見せながら、「今は14時ですね。お昼ご飯は12時に焼き魚を食べましたね。美味しかったですね。」というように具体的な内容を伝えるようにすると良いでしょう。
家事などを一部だけ手伝ってもらうことも良いでしょう。例えば、料理をすることで楽しいという達成感を味わってもらうのは脳にとって良いことですが、計画的に料理を進めることは難しいので、具材を切るだけ、お皿に盛るだけなど部分的に手伝ってもらうようにしましょう。ただし、火を使う場合は、自動消火機能のあるコンロやIH式のものを使ったり、室内に火災警報器を設置したりするなど、十分な安全対策も取りましょう。
一緒に散歩して外に出ると、景色も変わり気分もリフレッシュすることができ、身体を動かすので脳の血流を促す効果も期待されます。本人だけでなく家族や介護者にとっても刺激になるためおすすめです。ただし、認知症の症状の中には、意欲が低下して外出したがらないという場合もありますので、無理強いせずにこまめに話しかけるといいでしょう。
アルツハイマー型認知症が進むと味覚にも変化が現れます。一般的には味付けが濃くなることが多く、放っておくと、塩分の過剰摂取になるため注意が必要です。時々であればレトルト食品やスーパーのお惣菜、スナック菓子など普段とは違う味付けのものを取り入れて、食事を楽しむことも大切でしょう。
アルツハイマー型認知症には、視界が徐々に狭くなるという症状も現れます。例えば冷蔵庫の上段や、テーブルの端にある物が見えなくなることもありますので、できるだけ本人の目に入る位置に物を置いてあげましょう。趣味で使う物や、愛着のある物を側に置いておくことは、不安やイライラを和らげたり、日々の日課を思い出したりする助けにもなります。
介護が必要になる場合は、患者の負担を軽減したり、介護しやすいような環境を用意したりすることも大切です。その一つとして介護用品・福祉用具の購入やレンタルを検討してみるのも良いでしょう。フランスベッドでは、レンタル、購入、介護保険適用の有無など様々な介護用品・福祉用具を取り揃えていますので、介護用品についてお悩みの方はいつでもお気軽にご相談ください。
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アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、初期、中期、後期と段階ごとにその症状も異なります。物忘れなどの初期症状は、レビー小体型認知症の症状にもあり、その他にも突然、理解力や記憶力が低下するせん妄など、様々な病気とアルツハイマー型認知症を区別するのが難しいこともあります。WHOなどの機関が発表している診断基準や検査方法を用いて、記憶障害や認知機能の程度を知ることができれば、早期発見することも可能です。症状が進行し後期になると、自宅介護が必要になることもあるため、本人だけでなく介護者の負担もできるだけ軽減できるように、どちらも安心して暮らせるような環境作りをしていきましょう。
―認知症の症状や進行速度、早期発見について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「認知症の症状(中核症状・周辺症状)を一覧で紹介!4つの種類や特徴も解説」
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