この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
物忘れと認知症の違いや見分け方、軽度認知障害(MCI)の特徴、予防・対処法について解説します。
2025年8月1日
加齢による物忘れは、認知症による物忘れと違って忘れたという自覚があります。記憶の3ステップ「覚える→キープする→思い出す」の“思い出す力”が衰えることで物忘れを引き起こします。認知症の場合と異なり、体験したことの一部を忘れても体験そのものは覚えているため、忘れたことに関するヒントがあれば思い出すことができます。年齢とともに脳の機能は低下するため、どんな方でもうっかり忘れるなどの物忘れは自然な老化現象だと考えられます。
認知症による物忘れの大きな特徴は、物忘れの自覚がないことです。体験したこと全部を忘れてしまい、自分が忘れているということもわからなくなります。記憶は「覚える→キープする→思い出す」の3ステップからなっていますが、認知症の場合は“覚える力”が衰えるため体験したことを忘れてしまいます。体験したこと自体を忘れているので、体験したことを思い出すヒントを与えたとしても思い出すことはできません。認知症が進行すると自分の年齢や住んでいる場所がわからなくなるなど日常生活にも支障をきたします。
―認知症にについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「認知症の4つの種類とは?特徴や症状、割合を一覧で解説」
認知症による物忘れと、加齢による物忘れは症状が異なります。以下が、それぞれによく見られる症状です。
●知っている芸能人の名前が思い出せない
●食事の献立を思い出せない
●約束をうっかり忘れ、後で気付く
●物をどこにしまったか忘れて探す
●買おうと思っていたものをうっかり買い忘れる
認知症による物忘れの症状にあてはまる場合でもそれが認知症によるものかどうかはわかりません。気になる症状がある場合は、病院で検査を受け医師の判断を仰ぎましょう。
●何度も同じ話を繰り返す
●食事をしたことを覚えていない
●約束したことを覚えていない
●物をしまったことを忘れて盗まれたと言う
●買い物へ行ったことを忘れて同じものばかり買ってくる
物忘れの症状は、程度や種類に個人差が見られるのが一般的で老化や認知症が原因でない場合もありますので、注意が必要です。物忘れが初期症状として現れる病気には次のようなものがあります。初期症状から早期発見できるようチェックしておいてください。
・軽度認知障害
認知症の前段階状態です。主に物忘れの症状が出ますが、日常生活では全く問題ありません。比較的軽めの物忘れで、自覚できる程度です。早期発見さえすれば、認知症への移行スピードを遅くできるうえ、予防も可能です。 ・脳疾患
脳疾患の場合、脳の働きに障害が発生します。単なる物忘れとして放置すると病状が悪化する恐れがあります。できるだけ早めに病院で診察を受けましょう。
| 脳腫瘍 | 神経系に関わる位置に腫瘍ができた場合に物忘れが発症 |
| くも膜下出血 | 前兆および術後に物忘れが発症しやすい |
| 水頭症 | 交通性水頭症の場合は物忘れの症状が出やすい |
・高次脳機能障害
病気やケガが原因で脳の知的機能に障害を負った状態。記憶障害、注意障害や失語が典型的な症状。そのうち8割において脳卒中が原因と言われています。新規のことが記憶できない、物の場所がわからないなどの物忘れ症状が見られます。
・自律神経失調症
疲労や精神的ストレス、更年期障害の症例として挙げられます。自律神経のバランスが崩れて、情緒不安定や頭痛、肩こり、めまい、物忘れなど、さまざまな症状が現れます。
・うつ病
気分障害の一種で、身体的/精神的ストレスにより脳がうまく機能しなくなった状態のこと。うつ病では、新しいことを覚える記憶力が低下しやすくなります。そのため、見聞きしたことが頭に入ってこなくなり忘れてしまいがちになります。認知症との大きな違いは気分の落ち込みが強い点です。
物忘れを加速させる原因として考えられるのが生活習慣です。高血圧や糖尿病などの生活習慣病にかかっていると物忘れが悪化するリスクが高いと言われています。加齢は止めることはできませんが、生活習慣の改善は誰にでもできます。物忘れの加速を防ぐために生活習慣を見直しましょう。 まずは以下のできることからやってみませんか。
ウォーキングなどの適度な運動をすることは生活習慣病の発症リスクを低くするだけではなく、血流がよくなり脳の活性化にもつながります。歩きながら計算するなど同時に2つのことを行うと、より脳が活性化され認知症予防につながると言われています。
健康的な食生活を心掛けましょう。偏った食生活は生活習慣病になりやすいとされています。糖質、塩分を控えめにしてたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを補う栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。物忘れ予防に効果的とされている栄養素を含む食事をご紹介します。
・青魚
さば、いわし、さんまなどの青魚にはEPAやDHAが多く含まれています。EPAは血液をサラサラに、DHAは脳の働きをよくするといわれています。
・緑黄色野菜、果物、ナッツ類
ビタミンを多く含み、抗酸化作用などから脳の老化を阻止するといれています。
・緑茶、赤ワイン
緑茶やワインに含まれるカテキンやポリフェノールは、脳の神経を保護するといわれています。
読書や音楽、写真、旅行など、好きな趣味を楽しみましょう。ガーデニングや手芸、将棋など、考えたり手や指を使っつたりする趣味は脳の多くの機能を使うため認知機能の低下を防ぎます。楽しんで取り組める趣味を始めてみましょう。
人と会話するとき、脳はたくさんの機能を使い働きが活発になります。家族や友人などと話すことで、楽しさや生きがいを感じ、脳にも好影響を与えストレスの解消にもつながります。地域のコミュニティへの参加、興味のあるイベントへの参加など、日頃から人との関わりを持つことが大切です。家族が遠方に住んでいる場合は、定期的に電話などで日常的なコミュニケーションをとりましょう。
しっかりと質の良い睡眠をとることで、認知機能の低下を防ぎましょう。睡眠不足だと感じている場合は、寝る時間を1時間早めてみましょう。なかなか寝付けない場合は寝る前の過ごし方と起きてからの行動を見直してみましょう。
<睡眠の質を高めるポイント>
・就寝の1〜2時間前に入浴する
就寝の1〜2時間前に入浴し、お風呂で上がった深部体温を下げてから布団に入ると眠りやすくなります。
・眠りやすい環境を整える
就寝前は、リビングや寝室の照明を優しい光にしましょう。蛍光灯やテレビ、スマートフォンなどのまぶしい光は脳を刺激するため眠りにくくなります。照明を少し暗めにし、好きな音楽を聴くなどしてリラックスできる環境を整えましょう。
・朝起きて太陽の光を浴びる
太陽の光を浴びることによって分泌されるセロトニンが夜に眠くなるために必要なメラトニンを作る材料となります。日中に太陽光をしっかり浴び、夜に自然と眠くなるサイクルを作りましょう。外出が難しい場合は、日当たりのよい窓際で過ごすのもよいでしょう。
認知症の場合は、症状として物忘れが発生すると考えておきましょう。対応する家族や介護者は決して感情的になったりせずに、冷静に理解することが求められます。
認知症になった本人にとってもそれは全く経験していないことなのです。認知症の症状によって日常生活に支障が出ているとしたら本人も戸惑いや不安感を抱いているでしょう。くれぐれも叱る、非難するなどしないようにしましよう。何度も同じ質問をされ、食事を取った後にまた催促されるなどしてうんざりすることもあるでしょう。しかし本人にとっては、あくまでも経験していないこととして当たり前のことのように振る舞っているに過ぎません。相手が全く違う世界観を持っているぐらいの発想を持ち、絶対に感情的にならずに接するようにしましょう。頭から否定するような対応は避けて、上手くかわす、意図的に別の興味へ相手の気をそらすなどができれば、大変効果的です。
物忘れをするようになったときに最も心配なのは、火にまつわる物忘れです。タバコの吸いかけを忘れてしまう、料理中に火をつけたまま忘れるなどすれば火災につながる危険性もあります。火の元については、介護者や周囲の人達がしっかり注意するようにしてください。大事にいたらないように物忘れを補う工夫が必要です。対策としては、目で見てわかるルールを活用するのが有効です。具体例として、次のような方法がありますので、ぜひ参考にしてみましょう。
・何度も口に出してみる/書いてみる
・大事なことはメモをとる
・見えるところにメモを貼っておく
・わかりやすいチェックシートを使ってみる
・お薬カレンダーを利用する
・食事カードを作っておき、食事後に裏返すようにする など
軽度認知障害(MCI)は、物忘れが主な症状で、認知症の前段階と言われています。ここでは、MCIの状態や推定される該当者数などの概要に加え、認知症への進行を防ぐための予防・回復に向けた取り組みについて紹介します。
軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は認知症には該当しませんが、健常な状態と認知症の間の状態で、加齢による物忘れよりも明らかな認知機能の低下がみられます。日常生活に大きな支障はないものの、放置することで認知症に進行するリスクがあるため早期の発見と適切な対処を行う姿勢が求められます。
現在、65歳以上のうち認知症の予備軍ともいえるMCIと推定される方が現在約400万人(内閣府の「令和6年版高齢社会白書※1」)にも及んでいます。そしてMCIの方の中で年間およそ10〜15%が認知症に進行する傾向にあります(厚生労働省の「MCIハンドブック※2」)。生活習慣の見直しを図ることによって正常な状態に回復する例も少なからずあると紹介されていますので認知症に進行してしまう前に注意することが必要と言えるでしょう。
―参考―
▶ ※1内閣府「令和6年版高齢社会白書」
MCIの予防・回復に向けた取り組みとしては、早期からの予防と発症後も生活の質を保つための回復支援が欠かせません。厚生労働省老健局が公表した「認知症施策の総合的な推進について※」によると、認知症は誰もが関わる可能性がある国民的課題とされ、本人の意思を尊重しながら地域全体で自分らしく暮らせる社会を目指す取り組みが求められます。
国としては「共生」と「予防」を主軸に、下記の5つの柱を展開しています。
①普及啓発・本人発信支援
②予防
③医療・ケア・介護サービス
④生活環境づくりと社会参加活動の推進
⑤薬剤治験などの研究開発・産業促進
「通いの場」の整備や支援体制の構築、認知症カフェ、サポーター育成などが実際に進められています。
認知症は、早期発見が大切です。認知症の原因やタイプによっては進行を遅らせたり、適切なケアによって改善したりすることもできます。
認知症の方は忘れているという自覚がないので周囲の人が初期症状に気づいてあげられるよう普段から様子をみてあげましょう。
認知症の症状が進行するまでは、初期の認知症と老化による物忘れの区別が難しいことがありますので、心配な場合は早めに病院で検査をしましょう。受診の際は、家族や周囲の人が付き添い医師に普段の症状を伝えると診断の参考になります。どのような症状が気になるか、いつ頃症状が現れたかなど、あらかじめノートやメモに書き留めて整理しておくことをおすすめします。
以下の症状がいくつか見られる場合は認知症の可能性があるためかかりつけの医師または専門医に相談しましょう。
・同じことを何度も聞いたり話したりする
・置き忘れや片付けたことを忘れ、常に探し物をしている
・ついさっき電話で話した相手の名前がわからない
・財布を盗まれたなどと人を疑うことがある
・料理、計算、運転などのミスが目立つ
・テレビを見ても内容が理解できない
・ 約束をすっぽかす
・今日が何月何日かわからない
・近所でも迷子になることがある
・ささいなことで怒りっぽくなった
・趣味や日課に興味を示さなくなった
・やる気がなく、だらしなくなった
※上記の症状はあくまでも参考であり、医学的診断基準ではありません。
―認知症の症状について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「認知症の初期症状とは?早期発見のポイントと進行を遅らせる方法を解説」
認知症がどうか確かめる方法としては、Web上の認知症セルフチェックサイトなどで簡易的に確認する方法があります。ただし、あくまでセルフチェックですので症状が気にかかるのであれば早めに医療機関を受診しましょう。診断は、問診や身体検査、画像検査や神経心理学的検査などを通じて行われ、神経内科や脳外科、精神科や認知症専門外来などで対応しています。本人が受診を拒否していても、家族が「物忘れ外来」に相談することも可能です。
お住いの地区の地域包括支援センターや自治体の窓口でも認知症に関する相談を受け付けています。専門外来や医療機関の案内を受けられることもありますので相談してみましょう。
認知症の始まりのサインはあるのでしょうか?加齢による物忘れとは異なる初期のサインとしては次のようなものがあります。出来事そのものを忘れる(例:夕食を食べたこと自体を忘れる)
●理解力・判断力の低下(例:会話についていけない、買い物での計算ミス)
●集中力・注意力の低下(例:読書やテレビへの関心が薄れる)
●趣味嗜好・性格の変化(例:趣味をやめる、急に怒りっぽくなる)
これらの変化は、本人が自覚しにくい可能性もあるでしょう。周囲の家族がいち早く気づくことが、認知症の早期発見・対応につながります。
記憶力は20代にピークを迎え、その後加齢に伴い衰退していくといわれています。還暦を迎える頃にはさらに判断力や適応力も衰えていくため、徐々に物忘れが増えていきます。ただ加齢に伴う物忘れは、老化現象なので、特別な治療は必要ありません。
しかし、体験そのものを忘れる、理解力、判断力が低下するといった認知症の初期サインといわれる症状が現れると医療的な対応が必要になる可能性がありますので注意が必要です。
認知症の前段階と言われる「軽度認知障害(MCI)」に気づくことができれば、生活習慣の見直しによって改善を期待できることもありますので早期発見が重要になります。
近年では「物忘れ外来」や地域の支援窓口なども整備され、家族が気軽に相談しやすい体制も整ってきていますので、気になる症状や心配事がある場合は早めに相談するのが良いでしょう
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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