この記事の監修者
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上田悠理
医師(形成外科医・在宅訪問診療医)
ヘルステックプロモーター
認知症の初期症状と原因、発見のポイント、進行を遅らせるための方法
について解説します。
2022年9月30日
認知症とは、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態のことをいいます。一度発症すると、元の状態に戻すことは難しい場合が多く、できるだけ進行を緩やかにし、日常生活を苦痛なく送れるようにすることを目標として治療が行われます。 認知症の原因は、脳の病気や障害など様々ですが中でも一番多いのが、アルツハイマー型認知症です。原因はまだ解明されておらず、世界中の研究者がその原因解明に向けて研究を行っています。現時点では脳に特殊なたんぱく質がたまり、それによって神経細胞が傷つけられているという仮説が有力です。その次に多いのは、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって発症する脳血管性認知症です。脳の損傷した部分によって症状の出方は異なります。その他にも、幻視やパーキンソン症状などが現れるレビー小体型認知症や、50歳代くらいの比較的若い方が発症しやすい前頭側頭型認知症など、認知症と一言でいってもいくつかの種類があり、現れる症状にもそれぞれの特徴があります。
―認知症について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「認知症とは?症状と原因・種類について、介護ポイントを解説」
認知症は自覚しにくいこともあり、早期発見には周囲の気付きが大切になります。初期症状は様々ですが、「もの忘れ」がきっかけで認知症と気付くことが多いと言われています。初期の段階から判断能力の低下が見られ、精神的混乱などの症状があらわれることもあります。
次のような症状※が見られる場合は、認知症の可能性があるかもしれません。
(※症状はあくまでも参考であり、医学的診断基準ではありません)
【認知症によく見られる症状】
・同じことを何度も聞いたり話したりする
・置き忘れや片付けたことを忘れ、常に探し物をしている
・ついさっき電話で話した相手の名前がわからない
・「財布を盗まれた」など、人を疑うことがある
・料理、計算、運転などのミスが目立つ
・テレビを見ても内容が理解できない
・ 約束をすっぽかすことがある
・今日が何月何日かわからない
・近所でも迷子になることがある
・ささいなことで怒りっぽくなった
・趣味や日課に興味を示さなくなった
・やる気がなく、だらしなくなった
記憶障害
少し前に質問したこと自体を忘れ、何度も同じことを聞くなど短期的に起こったことを忘れてしまいます。
実行機能障害
料理の手順がわからなくなって失敗する、今まで使っていた家電をどのように使うのか手順がわからなくなるなど、計画を立てて順序よく行動することが難しくなります。
時間の見当識障害
朝・昼・夜の区別がつかなくなる、季節がわからなくなるなど日付や時間がわからなくなります。
理解力・判断力の低下
言われたことをすぐに理解して判断することが難しい、信号を渡るタイミングがわからないなど理解力・判断力が低下します。
無気力・無関心(アパシー)
身の回りのこと、好きだった趣味への関心が薄れ、身支度をする気力さえもなくなるなど、無気力・無関心になります。
物盗られ妄想
自分で片付けたものや失くしたものを「盗まれた」と言い出すなど被害妄想的になります。家族を疑うこともあれば、ホームヘルパーなどを疑うこともあります。
認知症の中でも最も多いとされるのが、アルツハイマー型認知症。症状は、時間をかけて徐々に進行するといわれていますが、経過は人により様々です。初期・中期・末期の3段階に分けて症状を解説します。
【初期(軽度)の症状】
若い頃の思い出などの「長期記憶」は鮮明に覚えているにも関わらず、数秒〜数分前の「短期記憶」が難しくなり、ほんの少し前に起きた出来事もすぐに忘れてしまいます。
●もの忘れ
・何度も同じ話を繰り返す
・置き忘れ、片付けたことを忘れるなど常に探し物をしている
・ついさっき話した人の名前を忘れる
●実行機能障害
・料理の手順がわからなくなり味付けが変わる
・同じものばかり買ってきてしまう
●時間の見当識障害
・今日が何月何日なのかわからない
・朝と勘違いして真夜中に出かけようとする
・真夏に冬物の衣服を選ぶ
●無気力・無関心(アパシー)
・疲れやすく、やる気がない
・好きだった趣味に興味を示さなくなる
・入浴、洗顔、着替えなどをする気力がない
●物盗られ妄想
・「財布を盗まれた」などと言い出す
【中期(中度)の症状】
初期よりも記憶障害が進行して記憶が保てず、自立した生活を送ることが難しくなってきます。食事した直後に「食事はまだか」などと言い出すのも中期の特徴です。数十年単位で時間を間違うこともあり、昔のことを今のことのように話したりします。
●場所の見当識障害
・自分のいる場所がどこなのかわからなくなってしまう
・家の近所でも迷子になってしまう
・自宅のトイレの場所がわからなくなる
・自宅にいるのに「家に帰ります」などと言い出す
●失認・失行・失語
・見えているものや聞こえている音が何なのか認識できなくなる
・日常的に行なっている動作ができなくなる
・言われたことを理解できない、理解してもすぐに言葉が出ない
・時計の文字盤が読めない
・はさみなど日常的に使用していた道具の使い方がわからなくなる
【末期(重度)の症状】
記憶障害がさらに進行し、性格にも大きな変化が見られる場合があります。歩行障害や運動障害によって寝たきりの状態になることもあるため、より手厚い介護が必要になる時期でもあります。
●末期の症状
・家族であっても誰なのか認識できない
・コミュニケーションがとれない
・表情が乏しい
薬物療法
【認知機能改善薬(抗認知症薬)】
認知機能改善薬は、記憶障害や見当識障害など、脳細胞が破壊されて起きる直接的な症状・中核症状の進行をゆるやかにすることを目的とした薬です。
認知機能改善薬には4種類あり、その中で「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」と「NMDA受容体拮坑薬」の2グループに分類されます。
●アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
[効果]:アルツハイマー型認知症によるアセチルコリンの分解を抑え脳内のアセチルコリンの濃度を上げる作用があり、記憶障害など中核症状の進行を抑えます。
[注意]:副作用として、下痢や吐き気、食欲不振といった症状があらわれることがあります。精神的な副作用として暴言・暴力や妄想などが引き起こされる場合があります。
●NMDA受容体拮坑薬
[効果]:アルツハイマー型認知症による、神経細胞や記憶に関わる障害神経伝達物質(グルタミン酸)の過剰な働きによる神経細胞障害を抑える作用により、中核症状の進行を遅らせます。また興奮、暴言・暴力を抑える作用もあります。
[注意]:副作用として、めまいや眠気、頭痛、便秘などがあらわれる場合があります。
【行動・心理症状を軽くするための薬】
認知症で障害された神経細胞による症状である中核症状によって引き起こされる症状である、「行動・心理症状(BPSD)」を抑えるために、向精神薬や漢方薬が処方されることがあります。
●向精神薬(抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬)
[効果]:気分が落ち込みやる気が出ない、暴言や暴力など異常な興奮、不眠の症状の緩和。
[注意]:薬の作用は個人差があり、便秘や傾眠、不穏などの強い副作用があらわれる場合があります。
●漢方薬
[効果]:不安や妄想、異常な興奮、イライラした気持ちを抑える。抑肝散(よくかんさん)と呼ばれる漢方薬は、興奮状態を抑えて気持ちを穏やかにする作用があります。
[注意]:向精神薬よりも緩やかに作用し、副作用がおきにくい。
非薬物療法
●回想法
過去を振り返り、脳に刺激を与える方法。
若い頃の写真などをみて昔の記憶を思い出してもらいながら話を聞きます。 当時の思い出を誰かに伝えることで脳が活性化され、自信を取り戻したり、気持ちが落ち着くこともあります。
●作業療法
家事や手芸、園芸など日常の動作を通して認知症の進行を予防します。
簡単な家事やガーデニング、編み物、塗り絵など本人が楽しみながら行えるものに取り組み、手先を使う活動を行うことで脳が活性化され、よいリハビリになります。
●音楽療法
音楽を聴く、歌を歌うなどで脳を刺激します。本人が好きだった曲や思い出の曲を流し音楽を楽しむことで気持ちの安定など心理的効果も期待できます。
●適度な運動
ストレッチやラジオ体操など、適度な運動を行うことが大切です。日中に体をしっかり動かし、夜ぐっすり眠れるような生活リズムに整えることで夜間の徘徊防止にもつながります。
●脳トレ
頭を使うことで脳を刺激し、認知機能の低下を予防します。ゲームやパズル、計算ドリル、囲碁や将棋、麻雀などで脳のトレーニングを行いましょう。
認知症は家事でリハビリが可能
掃除や洗濯、料理などの家事は、筋力や指先の細かな動きを必要とするため、認知症のリハビリとして効果的とされています。家族と家事を分担すること、作業をやり遂げることによって達成感を得ることができ、本人の自信にもつながります。 リハビリとして家事をお願いする場合は、以下の3つのポイントに気を付けましょう。
【ポイント1】作業内容をわかりやすく伝える
作業をお願いするときは、工程をひとつずつわかりやすく伝えましょう。例えば、野菜を切る作業をお願いするときは、この包丁でにんじんを切ってくださいのようにシンプルな言葉で伝えましょう。一度にたくさんのことをお願いすると、混乱のもとになるため注意しましょう。
【ポイント2】上手にできていることを伝える
うまくできましたね、などと伝えて本人に自信を持ってもらいましょう。戸惑っている様子が見られたら、次はこのにんじんを切りましょうかなどと声をかけ、さりげなく手伝いましょう。本人に合ったちょうどよい難易度の作業をお願いすることが大切です。
【ポイント3】感謝の言葉をきちんと伝える
作業を終えたら、感謝の気持ちを言葉にして伝えましょう。周りに感謝されると、自分も誰かの役に立てる、必要とされていると感じることができ、またやってみようという意欲にもつながります。
家族や友人が認知症によって別人のようになったと感じた時、ショックを受けるかもしれませんが、認知症を患う本人も大きな不安を感じています。認知症のことをよく理解し、本人に合った治療を続けていくことが大切です。
【薬物療法の場合】
薬物療法を続ける場合は、薬の副作用による体調異常の有無をしっかり観察しましょう。傾眠などによる転倒リスクが上がるため、歩行時には注意が必要です。
少しでも気になることがあればメモを残し、医師と相談しましょう。複数の医療機関を利用の場合は、お薬手帳を活用して、薬の飲みあわせなどの情報をしっかり管理しましょう。
【非薬物療法の場合】
非薬物療法を行う場合は、本人が楽しんで取り組めるものを選びましょう。認知症が進行するとできなくなることが徐々に増えていきます。本人ができることや無理なくできそうなことをおすすめし、自尊心を傷つけないよう配慮しましょう。
【正しい接し方】
何度も同じことを聞かれるなど困った言動によって、つい強く言い返してしまうことがあるかもしれませんが怒ったり、否定するのは禁物です。話していることが間違った内容であっても「そうでしたね」と否定せずに受け入れてあげましょう。
認知症の介護は精神的負担が大きく、ストレスを感じることも多いと思います。頑張りすぎず、医師やケアマネジャーなど第三者に相談したり、介護保険サービスを活用するなど介護者に負担がかかりすぎないように気を付けましょう。
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