妄想とは、認知症の症状のひとつで、事実でないことを本当に起きたことのように信じ込んでしまいます。
なぜ妄想を引き起こすのか?その背景には認知症の症状に対する苦しみや不安、 焦り、寂しさなどがあると考えられています。家族に世話になっていることに感謝をしながらも負い目を感じる、自尊心を傷つけられる、悲しさを引きずるなどのいろいろな感情が複雑に絡まり合って現れる症状です。
アルツハイマー型認知症の場合は被害妄想がよく見られます。被害妄想は家族など周囲の人の言動がきっかけで引き起こされるといわれています。例えば、食事の席で自分の知らない内容で会話が盛り上がっていると、話についていけないことに対して強い孤独を感じて、もう誰も自分を相手にしてくれないという妄想に発展することがあります。家族やヘルパーなど身近な人を妄想の中で加害者にしてしまうことが多く、本人に悪意はなく無意識に親しい間柄の人に疑いをかけてしまいます。自分が感じる行き場のない感情を周囲に訴えたいという思いから、被害妄想を引き起こしてしまいます。加害者にされたり疑われる家族にとっては辛いことですが、本人には自分の気持ちや感情を必死に訴えたいという思いがあることを理解してあげましょう。
レビー小体型認知症の場合は幻視や見間違いといった症状が多く見られます。脳の後ろ側(後頭葉)の血流が悪くなることで引き起こされるといわれ、実際には存在しないものがリアルに見えることもあれば、ハンガーにかかっている衣服を人や動物に見間違えるなど見え方や見えるものは人によって様々です。
幻視は、物忘れの症状が軽い人によく見られ、時間が経っても見えたものをしっかりと覚えているケースが多いです。日常生活において誰でも見間違いはありますが、レビー小体型認知症の人は見間違いの頻度が多く、目に入ったものを全く違うものとして認識したり、物体がゆがんだり曲がったりして見えることがあります。