認知症の妄想・幻視・見間違いとは?
対応方法を徹底解説!

妄想、幻視、見間違いなど認知症の症状の種類や背景について、またその対応方法や付き合い方について解説します。

2020年9月15日

認知症の「妄想・幻視・見間違い」の
症状の背景は?

妄想とは、認知症の症状のひとつで、事実でないことを本当に起きたことのように信じ込んでしまいます。
なぜ妄想を引き起こすのか?その背景には認知症の症状に対する苦しみや不安、 焦り、寂しさなどがあると考えられています。家族に世話になっていることに感謝をしながらも負い目を感じる、自尊心を傷つけられる、悲しさを引きずるなどのいろいろな感情が複雑に絡まり合って現れる症状です。

アルツハイマー型認知症の場合は被害妄想がよく見られます。被害妄想は家族など周囲の人の言動がきっかけで引き起こされるといわれています。例えば、食事の席で自分の知らない内容で会話が盛り上がっていると、話についていけないことに対して強い孤独を感じて、もう誰も自分を相手にしてくれないという妄想に発展することがあります。家族やヘルパーなど身近な人を妄想の中で加害者にしてしまうことが多く、本人に悪意はなく無意識に親しい間柄の人に疑いをかけてしまいます。自分が感じる行き場のない感情を周囲に訴えたいという思いから、被害妄想を引き起こしてしまいます。加害者にされたり疑われる家族にとっては辛いことですが、本人には自分の気持ちや感情を必死に訴えたいという思いがあることを理解してあげましょう。

レビー小体型認知症の場合は幻視や見間違いといった症状が多く見られます。脳の後ろ側(後頭葉)の血流が悪くなることで引き起こされるといわれ、実際には存在しないものがリアルに見えることもあれば、ハンガーにかかっている衣服を人や動物に見間違えるなど見え方や見えるものは人によって様々です。
幻視は、物忘れの症状が軽い人によく見られ、時間が経っても見えたものをしっかりと覚えているケースが多いです。日常生活において誰でも見間違いはありますが、レビー小体型認知症の人は見間違いの頻度が多く、目に入ったものを全く違うものとして認識したり、物体がゆがんだり曲がったりして見えることがあります。

認知症の「妄想」の種類

物盗られ妄想

認知症による被害妄想で最も多いとされているのが物盗られ妄想です。しまい忘れや置き忘れの金品などを盗まれたと信じ込み、財布を盗まれた、高価なネックレスを盗まれたと身近な人を疑い周囲に訴えます。直接介護に関わる家族やヘルパーが泥棒扱いされるケースが多く、普段から良い関係を築いている間柄でも加害者の対象になることがあります。こうした症状は、認知症による記憶障害を認めたくないという気持ちが原因で引き起こされると考えられています。財布を置き忘れたなどの記憶障害を認めることで周囲に役に立たない人と思われることを避けるために、盗まれたと考えるようになりその考えが物盗られ妄想へと変わっていきます。

見捨てられ妄想

見捨てられ妄想は、世話をしてくれる家族に迷惑をかけていると負い目を感じ、自分は家族にとって邪魔な存在だという思い込みから見捨てられたという妄想に発展していきます。認知症の症状が進行し、自分ひとりでできないことが増えると、ますます負い目を感じるようになります。
例えば自分以外の家族だけで出かけたときに、自分は家族に必要とされていないと思い込み深い孤独を感じるようになります。
見捨てられ妄想によって家族を信用できなくなると、部屋にひきこもりがちになり、体を動かしたり、コミュニケーションをとる機会が減少して認知症がさらに進行してしまう恐れがあります。
見捨てられ妄想がみられる場合は、本人が無理なくできることや得意なことをお願いして自分も役に立つ存在だと感じてもらえるようにしましょう。

幻覚・見間違い

幻覚には、幻視、幻聴、幻臭、体感幻覚などがあります。
三大認知症のひとつであるレビー小体型認知症の人に多く見られるのがこの中の幻視です。例えば、暗い場所を指差してあそこに誰かがいるなど、実際にはないものが実在するものとして見えるようになります 。いるはずのない虫や小動物、人などが見えるのが一般的で、動きを伴うことが多いとされています。見えるものは人によってそれぞれ異なり、人物の顔を特定できることもあれば、顔がはっきり見えないこともあります。症状が現れると、突然怯えたり興奮したりすることがあります。症状が進行すると暴力や暴言、夜中に大声を出す、物を破壊するなどの行動が見られることもあります。
その場にいない人の声がはっきり聞こえる幻聴、虫が背中を動き回っているように感じる体感幻覚が現れる場合もあります。

見間違い(錯視)も、レビー小体型認知症の人によく見られる症状です。壁紙の模様が人の顔に見えたり、小さなゴミが虫に見えたり、頻繁に見間違いをします。物体がゆがんで見えたり、傾いて見えたりする変形視も症状として現れます。

こうした症状は室内環境が影響していることが多くあります。幻視や見間違いは暗い場所で起こりやすいので、部屋の明るさを統一してできる限り影をなくすとよいでしょう。他にも衣服を壁にかけないようにする、模様の多いタオルや壁紙をシンプルなものに変えるなど、室内の環境を整えて幻視や見間違いを減らす工夫をすることが大切です。

嫉妬妄想

嫉妬妄想は配偶者が浮気をしていると誤解して信じ込む妄想です。例えば、ヘルパーに介護について相談している様子を見て、ヘルパーと浮気をしているなどと思い込んだりします。見捨てられ妄想と同じく自分は必要とされていないと思い込み、不安や孤独を感じることが原因と考えられます。日頃からコミュニケーションをしっかり取り、大切な存在であることをきちんと伝えるようにしてあげましょう。

対人関係にまつわる妄想

対人関係にまつわる妄想では、家族やヘルパーに暴言を吐かれた、暴力を振るわれたなどの被害妄想をすることがあります。悪口を言われた、のけ者にされたと思い込むこともあれば知らない男が家に入ってきたなど妄想の現れ方は様々です。実際に起きた出来事ではないものの、詳細を聞くと状況などが生々しいことが多いといわれています。認知症の症状であることを知らない第三者が訴えを聞けば、介護している家族が虐待していると疑われかねません。警察沙汰になることもあるため、虐待のような被害妄想をしはじめたときは、すぐにケアマネジャーなどに相談しましょう。

認知症の「妄想」への対応方法と付き合い方

否定しない

事実ではない訴えでも否定せず、本人の訴えに真摯に向き合いましょう。
妄想の中で盗みや浮気などの加害者にされる家族はとても辛く、否定したくなると思います。しかし、本人にとっては妄想の出来事が事実と信じ込んでいるため、周りが否定することで混乱してしまします。また、否定されたことに対してさらなる怒りや悲しみが生まれ、妄想がひどくなることもあります。この人に訴えても伝わらないと感じて様々な人に訴えだすこともありますで、否定せずにじっくり話を聞いてあげるようにしましょう。

共感する

非現実的な内容であったとしても共感しながら話を聞き、受け入れてあげましょう。そうですね、それは大変ですねなどと本人の気持ちに寄り添いながら話を聞いてあげることで、私の気持ちをわかってくれるという信頼や安心につながります。また、本人の話を聞いているうちに妄想の背景にある感情や本音が見えたり、今後の介護につながるヒントを見つけたりすることもあります。本人の訴えに隠されたメッセージに気づくためにも、共感しながらしっかりと話に耳を傾けるようにしましょう。

1人で抱え込まない

介護を1人で抱え込まず、誰かに相談するようにしましょう。
認知症の症状であるとわかっていても、暴言を吐かれたり、疑いの目で見られると介護者にとって大きなストレスになります。こうした精神的な負担から介護する側が介護うつを引き起こすなど体調を崩してしまうケースがあります。周りに知られると恥ずかしいと思って1人で抱え込んだりせず、悩みは家族や親戚、友人などに相談しましょう。医師やケアマネジャーなど医療や介護の専門家に相談すれば、新しい発見やアドバイスがあるかもしれません。
また、同じ悩みを抱える人たちの家族会や勉強会が開催されていたり、最近ではインターネットを利用して同じ境遇の人たちと交流できる掲示板やコミュニティサイトなどもあります。参加者と話をしたり交流するだけで気持ちが落ち着くこともありますので利用されるのもよいでしょう。

距離をとる

あまりにも妄想がひどく、介護する側に極度の負担がかかっている場合は、少し距離をとるのもひとつの対応方法です。
介護を別の人に代わってもらう、介護施設やショートステイの利用、病院への入院を検討するなどして、物理的にも精神的にも適度な距離をとりましょう。ケアマネジャーや医師などと相談し、本人と介護する家族にとって適切な方法を考えてみてください。