この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
歩行を補助する杖は使用する目的にあわせて役割や特徴など様々な種類があります。 正しい選び方、使い方を知り、それぞれにあった杖の選び方を知りましょう。 また、使用する際の注意点についても理解しておきましょう。
2023年6月23日
杖は足腰の衰えや麻痺などによって歩行が不安定な方をサポートしてくれます。具体的なメリットや役割についてご説明します。
杖は体を支え、歩行の安定をサポートする役割があります。
加齢によって筋力の衰え、バランス機能の低下が原因で歩行が不安定になることが多くあります。足腰に痛みや麻痺がある場合は足を引きずるようにして歩くことがあるためバランスが取りにくくなります。杖をつくことによって体を支える面積が広くなり、身体のふらつきを抑えることができるのでリズムよく歩けるようになります。
杖を使用することで足腰への負担を軽減することができます。杖に体重をかけることで荷重が分散されるので、ひざや腰、股関節への負担が減り患部の痛みを和らげる効果もあります。
杖を使用することで歩行が安定し、安心して外出できるようになり、人の助けを借りずに自分の足で歩けるという自信につながるため、外出する意欲も高まります。歩行する時にふらつきやすい場合でも、杖で体を支えることができるので転倒リスクが減るという安心感にもつながります。
【形状】T字杖はシャフト(棒)にT字型のグリップが付いている最もスタンダードな形の杖です。色やデザインの種類が豊富で、持ち運びに便利な折りたたみ式や伸縮式のものもあります。
【特徴】比較的軽量で形状もシンプルなため慣れていない人でも気軽に扱うことができます。T字杖は、杖がなくても自力で歩くことができる人をサポートするものであり、自立歩行ができない人、手に痛みがある人には不向きです。
【形状】ロフストランドクラッチ(前腕固定型つえ)は、上部に前腕を通すカフ(輪っか)が付いています。カフの下には手で握る用のグリップが付いています。カフの形状は U字型のオープンカフとO字(C字)型のクローズカフの2種類に分けられます。
【特徴】グリップを握る手と前腕の2点で体を支え、体重を分散させることができるためT字杖より体重をかけやすく歩行の安定性を高めます。麻痺や手の痛みがあり、グリップを握る力が弱い人でも使いやすいのが特徴です。
U字型は前腕にはめやすいですが、安定性に欠けます。O字型は前腕をしっかり固定できますが転倒したときなどに外れにくいというデメリットがあります。U字型とO字型のどちらが本人の身体状況に適しているかを考えて選ぶようにしましょう。
【形状】松葉杖は、脇に挟む脇あてとグリップがついており重い体重をしっかり支えることができる安定性の高い杖で、骨折したときに使う杖のイメージがあるかもしれません。素材はアルミ製や木製、伸縮性のあるものなど様々な種類があります。
【特徴】通常は2本1組で使用します。両腕で体を支え、下半身にかかる負担を軽減します。松葉杖は骨折や捻挫など脚のケガだけでなく、下半身の麻痺や股関節症の方などにも適しています。松葉杖を使うときはある程度の幅が必要となるので、狭い廊下やスペースのない場所での使用は不向きです。
【形状】多脚杖は、地面と接する杖の先端が3~4本に分かれている杖で多点杖とも呼ばれています。
【特徴】1点だけで体を支えるT字杖と比べると、多脚杖は3~4点の複数点で体を支えることから体重をかけても倒れにくく、安定性が高いのが特徴です。T字杖よりも安定性を求める方や筋力が低下している方、立つ姿勢が悪い方の歩行訓練や関節リウマチの方などに適した杖です。多脚杖は地面に接する面積が広いため、段差のない平らな場所での使用に適しています。屋外や段差の多い場所で使うと転倒の恐れがあるため、使用する場所には十分配慮しましょう。
【形状】折りたたみ杖は、コンパクトに折りたためるタイプの杖です。
【特徴】杖の内部がすべてゴムでつながっている構造の場合、ゴムの伸縮性で1本の杖に戻る仕組みになっており、素早く簡単に組み立てができるのでばらばらになることがなく安心です。長さ調節が可能な折りたたみ杖もあり、手持ちのバッグや、旅行用のスーツケースに入れることもできるため場所を取らないことから携帯性に優れています。外出や散歩、旅行の途中で疲れや痛みを感じたときに、すぐに取り出して使用できるので大変便利です。
【形状】伸縮杖は、上下に分かれた杖をスライドさせて、身体に合わせて長さの調節を行える杖です。
【特徴】段階的に杖の長さを自由に伸縮できるなど簡単な構造で使いやすいので初心者向けの杖と言えるでしょう。伸縮方法は、アンロックグリップとラチェット式の2種類があり、片手が不自由な場合でもワンタッチ操作できるアンロックグリップ式は、杖を押し下げてロックを外し、長さの調節をするのが特徴です。ラチェット式は、2cm〜2.5cm刻みで長さを調整することができ、調節ボタンを穴に引っかけることで杖を固定する構造になっています。
【形状】2本杖は、2本の杖を両手で持って、転倒予防を目的とした杖です。
【特徴】重心が安定するだけでなく、歩行時の負荷が2本の杖に分散するので、左右のバランスが取れ、歩行が可能になります。つまずく、足元がふらつくといった歩行が不安定な場合や、手術後や怪我をした際のリハビリテーションに適した杖で、転倒の予防にもなり、足腰や膝の痛みを軽減する効果もあります。2本杖は両手両足の4点で左右両側から身体を支えるため、筋力やバランス能力の衰えに悩む人も自然と背筋が伸びて正しい歩行姿勢をとることができます。
軽さと丈夫さに優れた杖を選びましょう。重量のある杖は手や腕に負担がかかります。ガタつく、たわむなどの杖ではしっかりと体を支えることができず危険です。実際に持ったり、杖をついたりしてみて無理なく使えるかどうかしっかり確認しましょう。
握りやすいグリップの杖を選びましょう。杖の種類によってグリップの素材や形状、サイズなどが異なります。手の大きさや握力、握りやすさなどを考慮し、実際に試してみてしっかりと手にフィットするものを選びましょう。
グリップは、機能や素材の違いによって次のような種類があります。
●木製グリップ:木の温かい風合いがあるグリップ。使用木材は多種あり、木目の違いもあります。
●アクリルグリップ:大理石調のグリップで透明感や深みのある品格があり、色彩が美しく上品な仕上がりです。
●ソフトグリップ:ソフトな発泡ゴム製のグリップで握っても痛くありません。
●やわらGELグリップ:ゲル状のソフト樹脂を使用したグリップのため手への負担が少なくなります。
●カーボングリップ:軽量カーボン製のグリップで、滑りにくくなっています。
●ベルベットグリップ:ベルベット加工されたグリップは温かみのある手触りとなっています。
●抗ウイルスグリップ:抗ウイルス/抗菌素材が配合されており、滑りにくくなっています。
●登山用ステッキ風のグリップ:登山杖風のデザインで、アクティブな印象になるのが特徴です。
杖が身長に合った長さでないと歩行が不安定になり大変危険です。身体にフィットした使いやすい長さの杖を選びましょう。
杖の長さを算出する目安として「身長÷2+2〜3cm」という計算式を用いる方法があります。身長160cmなら、計算式に当てはめると160÷2+2〜3cmで、杖の長さの目安は82〜83cmとなります。
杖の長さの合わせ方の一例として、T字杖の場合は、グリップの高さが大腿骨大転子(太ももの付け根の骨の出っ張り)の位置にあうように、垂直に杖を立てて調節するという方法があります。グリップを握るとちょうど肘が少し曲がる程度にすると力が入れやすくなり理想的です。身体に合わない長さの杖を使用すると、手首の痛みや肩こりを発症することもあるため、くれぐれも注意しましょう。また、腕をまっすぐ下ろした状態でグリップが手首の位置(手首の骨の突起部)にくるのが適切な長さとも言われています。
杖の合わせ方は他にも、肘を曲げた時に30°の角度になる位置が杖の長さの基準とすることもあります。ただし、腰の曲がっている人の場合は、杖の長さを身長に合わせて選ぶといいでしょう。もしくは無理しない程度で軽く背を伸ばしてから腕を下げて肘を曲げた時に、疲れず使いやすい位置が最適な杖の長さと考えられます。もし腰の位置や手首の高さを基に杖を合わせると、結果的に長過ぎてしまいますので要注意です。
あくまでこれらの選び方は目安ですので、杖を選ぶときは実際に手に取ってみて長さを確かめることが大切です。
握る力が弱い人にはロフストランドクラッチ、姿勢が悪い人には多脚杖を選ぶなど使う人の身体の状況にあわせて杖の種類を選びましょう。利用するシーンを考えておくことも重要です。例えば、多脚杖は安定性が高いですが段差のある場所や屋外には適さず、無理に使用すると転倒のリスクが高まり危険です。杖を安全に使用するために、自力でどれだけ歩けるか、握力はどれくらいあるか、利用する場所はどんな所かなどを考慮して本人の負担軽減につながる使いやすい杖を選びましょう。身体のレベルには個人差があるため、福祉用具専門相談員やリハビリの専門家などに相談して適切な杖を選びましょう。
・麻痺などがある足とは反対側の手で杖を持ち、人差し指と中指でシャフトを挟むようにしてグリップを握ります。
・足先と足の外側から15cm程度離れたところに杖をつき、肘を軽く曲げた状態になる高さに調整します。
・杖をつくときは3点歩行※で歩くのが最も安全と言われています。
※3点歩行
下記の流れを繰り返して前へ進みます。
1. 杖を前に出します。
2. 杖と反対側の足を出します。
3. もう一方の足を出します。
・T字杖と同じく、麻痺や痛みなどがない足側で杖を持つのが基本です。
・足先と足の外側から15cm程度離れたところに杖先を置き、肘を軽く曲げた状態で前腕をカフ(輪っか)に通します。カフ(輪っか)は肘関節の下にくるように、グリップはしっかりと握れる位置に調整しましょう。
・歩くときは、T字杖と同じく3点歩行をすると安全です。
・脇で杖を挟み、足先と足の外側から15cmほど離れたところに杖先を置きます。脇と脇当ての間は指2~3本分の隙間を空け、肘を軽く曲げた状態でグリップをしっかりと握れる高さに調節します。
・通常2本1組で使用しますが、身体状況などにより片側に1本だけ持つこともあります。その場合は、麻痺や痛みがある足とは反対側の手に持ちましょう。
・脇に体重をかけてしまうと神経を圧迫してしまうため、必ずグリップ部分に体重をかけましょう。
・松葉杖を使用するときも3点歩行をするのが一般的ですが、場合によっては2点歩行※や交互歩行※をすることがあります。
※2点歩行
下記の動作を繰り返します。
1. 右手の杖と左足を同時に前に出します。
2. 左手の杖と右足を同時に前に出します。
※交互歩行
下記の動作を繰り返します。
1. 右手の杖を前に出します。
2. 左足を出します。
3. 左手の杖を前に出します。
4. 右足を出します。
・T字杖と同じように杖先を置き、肘を軽く曲げた状態でグリップをしっかり握れる高さに調整します。
・多脚杖は、杖先の全ての脚が地面に接地していなければ不安定になるため、必ず床が平らな場所で使用しましょう。
・上から体重をかけるようなイメージで杖をつき、3点歩行しながらゆっくりと前へ進みます。
杖は、介護保険を利用してレンタルできる福祉用具のひとつです。要支援1以上と認定されると、介護保険により費用の1割(所得に応じて2~3割)を自己負担するだけでレンタルできます。ただし、T字杖は介護保険適用対象外のため注意しましょう。杖のレンタルや購入を検討している場合は、まずケアマネジャーに相談しましょう。
―介護用品・福祉用具のレンタルについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「フランスベッド 介護用品・福祉用具のレンタル」
―ケアマネジャーについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?選び方と付き合い方について」
杖は、高齢者をはじめとして歩行に不安がある方の身体を支えてくれる大切な道具ですが、使い方を誤ると危険なこともあるので、注意点を守って安全に使用しましょう。
長期間使用している間に、杖先端のゴム部品(石突き)が自然と摩耗してすり減ってしまうことがあります。そのまま放置しておくと杖先が滑りやすくなり歩行の際に転倒する危険性がありますので、定期的に確認して交換するようにしてください。ゴム部品は介護用品・福祉用具の専門店でも販売されています。
松葉杖を使用する際は全体重を脇で支えないようにしましょう。人間の脇の下にはたくさんの神経がありますので絶対に圧迫してはいけません。松葉杖は体重すべてを脇で支える道具ではございませんので目安として、脇から指2~3本分程度のスペースができるように松葉杖の長さを調節し脇で挟んで使用してください。
杖をついて歩く場合に体重がかかると、杖を持っている手が痛くなることがあります。握る部分(グリップ)の材質によって感じる痛みが変わりますのでクッション性の高い材質の物を選んだり、市販のグリップカバーを付けたりするなど少しでも痛みのない楽な方法を試してみてください。
テーブルなどに立てかけようとしても、すぐに倒れてしまうような杖もあります。倒れて床に落ちた杖を拾おうとするときにバランスを崩し転倒する恐れがあるため十分に気をつけるようにしてください。対策としては杖を引っかけておくクリップタイプの商品などを利用するのがよいでしょう。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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