歩行補助杖の種類と選び方

歩行を補助する杖は使用する目的にあわせて役割や特徴など様々な種類があります。正しい選び方、使い方を知り、それぞれにあった杖の選び方を知りましょう。

2020年10月28日

杖の目的と役割について

杖は足腰の衰えや麻痺などによって歩行が不安定な方をサポートしてくれます。具体的なメリットや役割についてご説明します。

1.歩行の安定をサポートする

杖は体を支え、歩行の安定をサポートする役割があります。
加齢によって筋力の衰え、バランス機能の低下が原因で歩行が不安定になることが多くあります。足腰に痛みや麻痺がある場合は足を引きずるようにして歩くことからバランスが取りにくくなります。杖をつくことによって体を支える面積が広くなり、身体のふらつきを抑えることができるのでリズムよく歩けるようになります。

2.足腰の負担を軽減する

杖を使用することで足腰への負担を軽減することができます。杖に体重をかけることで荷重が分散されるので、ひざや腰、股関節への負担が減り患部の痛みを和らげる効果もあります。

3.安心感を得られる

杖の使用によって歩行が安定することで、安心して出歩けるようになります。杖の使用によって、人の助けを借りずに自分の足で歩けるという自信につながり、外出する意欲も高まります。歩行する時にふらつきやすい場合でも、杖で体を支えることができるので転倒リスクが減るという安心感にもつながります。

杖の種類と特徴について

T字杖

【形状】T字杖は1本杖とも呼ばれ、シャフト(棒)にT字型のグリップが付いている最もスタンダードな形の杖です。色やデザインの種類が豊富で、持ち運びに便利な折りたたみ式や伸縮式のものもあります。
【特徴】比較的軽量で形状もシンプルなため慣れていない人でも気軽に扱うことができます。T字杖は、杖がなくても自力で歩くことができる人をサポートするものであり、自立歩行ができない人、手に痛みがある人や握力が弱い人には不向きです。

ロフストランド杖

【形状】ロフストランド杖(ロフストランドクラッチ)は、上部に前腕を通すカフ(輪っか)が付いています。カフの下には手で握る用のグリップが付いています。カフの形状は U字型とO字型の2種類に分けられます。
【特徴】グリップを握る手と前腕の2点で体を支えるため体重を分散させることができるためT字杖より体重をかけやすく歩行の安定性を高めます。麻痺や手の痛みがあるなどによってグリップを握る力が弱い人でも使いやすいのが特徴です。
U字型は前腕ははめやすいですが、安定性に欠けます。O字型は前腕をしっかり固定できますが転倒したときなどに外れにくいというデメリットがあります。U字型とO字型のどちらが本人の身体状況に適しているかを考えて選ぶようにしましょう。

松葉杖

【形状】松葉杖は、脇に挟む脇あてとグリップがついていて重い体重をしっかり支えることができる安定性の高い杖です。骨折したときに使う杖のイメージがあるかもしれません。素材はアルミ製や木製、伸縮性のあるものなど様々な種類があります。
【特徴】通常は2本1組で使用します。両腕で体を支え、下半身にかかる負担を軽減します。松葉杖は骨折や捻挫など脚のケガだけでなく、下半身の麻痺や股関節症の方などにも適しています。松葉杖を使うときはある程度の幅が必要となるので、狭い廊下やスペースのない場所での使用は不向きです。

多脚杖

【形状】多脚杖は、地面と接する杖の先端が3〜4本に分かれている杖で多点杖とも呼ばれています。
【特徴】1点だけで体を支えるT字杖と比べると、多脚杖は3〜4点の複数点で体を支えることから体重をかけても倒れにくく、安定性が高いのが特徴です。T字杖では不安定な方や筋力が低下している方、立つ姿勢が悪い方、背骨が曲がっている方などに適した杖です。多脚杖は地面に接する面積が広いため、段差のない平らな場所での使用に適しています。屋外や段差の多い場所で使うと転倒の恐れがあるため、使用する場所には十分配慮しましょう。

杖の正しい選び方

■選ぶポイント1:軽さと丈夫さ

軽さと丈夫さに優れた杖を選びましょう。重量のある杖は手や腕に負担がかかります。ガタつく、たわむなどの杖ではしっかりと体を支えることができず危険です。実際に持ったり、杖をついたりなど試してみて無理なく使えるかどうかしっかり確認しましょう。

■選ぶポイント2:グリップの握りやすさ

握りやすいグリップの杖を選びましょう。杖の種類によってグリップの素材や形状、サイズなどが異なります。手の大きさや握力、握りやすさなどを考慮し、実際に試してみてしっかりと手にフィットするものを選びましょう。

■選ぶポイント3:身長に合った長さ

杖が身長に合った長さでないと歩行が不安定になり大変危険です。身体にフィットした使いやすい長さの杖を選びましょう。T字杖の場合、目安ですが、腕を下ろした状態でグリップが手首の位置にくるのが適切な長さと言われています。理想的な杖の長さを算出する目安として「身長÷2+3cm」という計算式を用いる方法もありますが、選ぶときは実際に手に取ってみることが大切です。

■選ぶポイント4:身体のレベルや利用シーンに合わせる

握る力が弱い人にはロフストランド杖、姿勢が悪い人には多脚杖を選ぶなど使う人の身体の状況にあわせて杖の種類を選びましょう。利用するシーンを考えておくことも重要です。例えば、多脚杖は安定性が高いですが段差のある場所や屋外には適さず、無理に使用すると転倒のリスクが高まり危険です。杖を安全に使用するために、自力でどれだけ歩けるか、握力はどれくらいあるか、利用する場所などを考慮して本人の負担軽減につながる使いやすい杖を選びましょう。身体のレベルには個人差があるため、福祉用具専門相談員やリハビリの専門家などに相談して適切な杖を選びましょう。

杖の正しい使い方

●T字杖の使い方

・麻痺などがある足とは反対側の手で杖を持ち、人差し指と中指でシャフトを挟むようにしてグリップを握ります。
・足先と足の外側から15cm程度離れたところに杖をつき、肘を軽く曲げた状態になる高さに調整します。
・杖をつくときは3点歩行※で歩くのが最も安全と言われています。
※3点歩行
下記の流れを繰り返して前へ進みます。
1. 杖を前に出します。
2. 杖と反対側の足を出します。
3. もう一方の足を出します。

●ロフストランド杖の使い方

・T字杖と同じく、麻痺や痛みなどがない足側で杖を持つのが基本です。
・足先と足の外側から15cm程度離れたところに杖先を置き、肘を軽く曲げた状態で前腕をカフ(輪っか)に通します。カフ(輪っか)は肘関節の下にくるように、グリップはしっかりと握れる位置に調整しましょう。
・歩くときは、T字杖と同じく3点歩行をすると安全です。

●松葉杖の使い方

・脇で杖を挟み、足先と足の外側から15cmほど離れたところに杖先を置きます。脇と脇当ての間は指2〜3本分の隙間を空け、肘を軽く曲げた状態でグリップをしっかりと握れる高さに調節します。
・通常2本1組で使用しますが、身体状況などにより片側に1本だけ持つこともあります。その場合は、麻痺や痛みがある足とは反対側の手に持ちましょう。
・脇に体重をかけてしまうと神経を圧迫してしまうため、必ずグリップ部分に体重をかけましょう。
・松葉杖を使用するときも3点歩行をするのが一般的ですが、場合によっては2点歩行※や交互歩行※をすることがあります。

※2点歩行
下記の動作を繰り返します。
1. 右手の杖と左足を同時に前に出します。
2. 左手の杖と右足を同時に前に出します。

※交互歩行
下記の動作を繰り返します。
1. 右手の杖を前に出します。
2. 左足を出します。
3. 左手の杖を前に出します。
4. 右足を出します。

●多脚杖の使い方

・T字杖と同じように杖先を置き、肘を軽く曲げた状態でグリップをしっかり握れる高さに調整します。
・多脚杖は、杖先の全ての脚が地面に接地していなければ不安定になるため、必ず床が平らな場所で使用しましょう。
・上から体重をかけるようなイメージで杖をつき、3点歩行しながらゆっくりと前へ進みます。


杖は、介護保険を利用してレンタルできる福祉用具のひとつです。要支援1以上と認定されると、介護保険により費用の1割(所得に応じて2〜3割)を自己負担するだけでレンタルできます。ただし、T字杖は介護保険適用対象外のため注意しましょう。杖のレンタルや購入を検討している場合は、まずケアマネジャーに相談しましょう。

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