たん吸引の方法は
(1)口腔内から吸引する方法
(2)鼻腔内から吸引する方法
(3)気管カニューレ内部から吸引する方法
の3つがあります。いずれの場合も共通する基本の手順があります。
【たん吸引の基本手順1】 手指を清潔にする
石鹸で手指をきれいに洗います。指の間や手の甲、爪も忘れずに洗い、手を清潔な状態にしましょう。
【たん吸引の基本手順2】 意思確認をして体位を整える
吸引される本人の意思を確認して、たん吸引を行う環境・体位を整えます。仰向けに寝た状態になり、少し顎を上げるとチューブが入りやすくなります。このとき、口の周囲、口腔内、鼻腔内を観察し、出血や腫れ、乾燥などがないかチェックしてください。
【たん吸引の基本手順3】吸引カテーテルを吸引器本体のチューブにつなぐ
吸引カテーテルを取り出し、吸引器本体のチューブにつなげます。カテーテルを取り出すときに、先端が周りの机や壁などにぶつかり不潔にならないよう注意してください。吸引器本体のチューブに接続するときは、しっかりと奥まで挿入し外れないようにしてください。
【たん吸引の基本手順4】吸引器の電源を入れる
吸引器の電源を入れます。コップに入れた水を吸引できるかどうか確認しましょう。水を吸うことで、カテーテル内に水が通って滑りがよくなります。薬液につけて保管していたカテーテルを使用する場合は、水を吸うことで内部を洗い流してください。
【たん吸引の基本手順5】 吸引圧を合わせる
手順4の水をよくきり、アルコール綿でカテーテルの根元から先端までを消毒、吸引圧を合わせます。吸引圧については、医師または看護師に必ず確認してください。
【たん吸引の基本手順6】カテーテルを挿入する
カテーテルの先端から約10cmあたりを持ち挿入します。持ち手は親指、人差し指、中指の3本を使って、ペンを握るように持ちましょう。もう一方の手の親指でカテーテルの根元を押し曲げるようにして、吸引圧がかかっていない状態でゆっくりと挿入します。挿入前には必ず、吸引しますよと声をかけてください。
【たん吸引の基本手順7】 たんを吸引する
カテーテルの根元を押さえていた親指を放し、左右にゆっくり回転させながらたんを吸引します。たんの吸引は、約10〜15秒以内を目安に行いましょう。吸引した たんの色や量、粘さをチェックしてください。
【たん吸引の基本手順8】カテーテルをゆっくり引き抜く
カテーテルをゆっくり動かしながら引き抜いていきます。このとき、呼吸が苦しくないかどうか、爪や唇の色に異常がないかをチェックしてください。
【たん吸引の基本手順9】カテーテルを洗浄して外す
カテーテルの外側についた たんをアルコール綿で拭き取ります。その後、コップに入れた水を吸い、カテーテル内側を洗い流します。カテーテルにたんが残っていないことを確認したら吸引器の電源を切り、吸引器本体のチューブからカテーテルを外してください。
●カテーテルの保管について
カテーテルは、複数回使用することが可能です。
以下のいずれかの方法で保管しましょう。
・保管方法1:乾燥して保管する方法
空のコップに入れておくなど、乾燥した状態で保管します。
・保管方法2:薬液に浸して保管する方法(薬液浸漬法)
浸漬用消毒液の入った保存容器にカテーテル全体を浸して保管します。
気管カニューレ内吸引用の吸引カテーテルは、1回の使用が推奨されています。しかし、経済的な理由などで毎回使い捨てするのは難しいケースもあります。再使用する場合は、カテーテルを口腔鼻腔内吸引用と気管カニューレ用に分け、それぞれを消毒液入りの容器に保管、約24時間繰り返し使うことがあります。たんや唾液などが付着すると、細菌が繁殖してしまうこともありますので、汚れが落ちないときや、くすんできたときには、新しいものに交換してください。