この記事の監修者
-
フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
認知症について、もの忘れとの違い、認知症の原因と症状・種類。そして介護する際のポイントなどをご紹介します。
2023年11月13日
もの忘れには、老化によるものと認知症によるものがあり、症状が少し異なります。もの忘れがある人がすべて認知症というわけではありません。では、老化によるもの忘れと認知症によるもの忘れにはどのような違いがあるのでしょうか?
老化によるもの忘れの特徴
「忘れている」という自覚があるのが特徴。
体験したことの一部を忘れても、体験したこと自体は覚えています。
例えば、夕食を取ったことは覚えていても何を食べたか忘れる、財布をどこにしまったか忘れるなどは、誰にでも起こる老化によるもの忘れだと考えられます。
認知症によるもの忘れの特徴
「忘れている」という自覚がなく、体験したこと自体も忘れていることが特徴。
例えば、食事をしたのにそのことを覚えていない、財布をしまったことを忘れて盗まれたと言う、何度も同じものばかり買ってくるなどの症状があります。認知症の症状が進行すると、年齢や住んでいる場所が思い出せないといった判断力や理解力が低下して日常生活にも支障をきたします。
「認知症」は病名ではなく、脳の神経細胞の働きが低下することで認知機能が低下し、社会生活に支障をきたしている状態のことです。症状は、大きく分けて「中核症状」と「周辺症状(行動・心理症状 BPSD)」の2種類に分けられます。
1.中核症状とは
脳の神経細胞が破壊され、脳の働きが低下して発生する直接的な症状のことで認知症の方なら誰にでも現れます。
●主な症状
・記憶障害
直近の出来事や昔のことなど物事を記憶できなくなる
・見当識障害
今日の日付や自分のいる場所など自分が置かれている状況が把握できなくなる
・判断力・理解力の低下
物事の理解に時間がかかり、適切に判断することができなくなる
・実行機能障害
計画を立てる、順序よく行動することができなくなる
・失行
ボタンをとめる、服を着るなど以前できていたことができなくなる
・失認
親しい人が誰かわからなくなる、日常で使っていた道具の使い道がわからなくなるなど
・失語
うまく言葉にできなくなる、ものの名前がわからなくなる、読み書きができなくなるなど
2.周辺症状(行動・心理症状 BPSD)とは
周辺症状(行動・心理症状 BPSD)は、中核症状を基盤にして身体的、環境的、心理的な要因が加わることによって起こる二次症状。
現れ方には個人差があり、必ずでる症状ではなく要因を取り除けばおさまることもあります。
●主な症状
・不安、抑うつ・妄想・幻覚・徘徊・不潔行為・暴言、暴力・介護拒否など
2025年には65歳以上の5人に一人が認知症を発症するという予測もあります。認知症について、種類と具体的な症状や特徴についてみていきましょう。
■原因
アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も多いとされており、厚生労働省の調査によると認知症全体の中での割合は67.6%と半数を超えています。そのため、認知症=アルツハイマー型認知症をイメージする方も多いでしょう。アルツハイマー型認知症の原因は、脳にアミロイドβという特殊なたんぱく質がたまることで神経細胞が死んでしまい、脳の一部が萎縮して見当識障害や判断力の低下を引き起こすことです。特に脳の中でも記憶を司る海馬を中心に萎縮がはじまり、脳全体に広がっていきます。
■症状
初期症状として記憶障害が見られます。新しい出来事が記憶できず、体験自体をすぐに忘れてしまうのが特徴です。症状が進行すると見当識障害や実行機能障害といった症状も現れます。
●主な症状
・記憶障害
食事の直後に「食事はまだか」と言いだす
自分でどこかにしまったものを「誰かに盗まれた」と言い出す など
・見当識障害
家族など親しい人の顔を見ても誰なのか認識できない
季節がわからず、適した衣服を選べない
自宅にいるのに「家に帰る」と言い出す など
・実行機能障害
今まで使っていた家電の操作がわからなくなって使えない
料理の手順がわからなくなり、焦がしたり味付けが変わったりする
箸やスプーンの使い方がわからなくなって使えない など
■原因
レビー小体型認知症は、厚生労働省の調査によると認知症全体のうち4.3%の割合を占めており、女性よりも男性の発症率が2倍ほど高くなると言われています。原因は不明ですが、「レビー小体」と呼ばれるたんぱく質のかたまりが脳に蓄積されていくことで引き起こされる認知症です。
■症状
幻視やレム睡眠行動障害、パーキンソン病のような症状が見られます。記憶障害なども現れますが、アルツハイマー型と比べると症状は軽いといわれています。
■主な症状
・幻視
実際には存在しないものがリアルに見える
・レム睡眠行動障害
睡眠中に奇声をあげる、暴れる
・パーキンソン症状
手の震え、無表情、筋肉のこわばり、小刻み歩行など
・自律神経症状
立ちくらみ、便秘、失禁、多汗、だるさ、動悸など
・認知機能の変動
記憶力や理解力など調子の良い時、悪い時の差が目立つ
・抑うつ
気分が沈みがちで意欲が低い
■原因
血管性認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで割合が多いとされ、認知症全体の19.5%の割合を占めています。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって起こる認知症で、脳にダメージを受けた部分と健全な部分の機能が混在することによって、できることとできないことの差が大きく「まだら認知症」とも呼ばれます。
■症状
ダメージを受けた脳の部分によって異なりますが、アルツハイマー型と同様に記憶障害や見当識障害が見られます。その他に身体の麻痺や言語障害、嚥下障害などの症状が現れます。突然症状が現れたり、落ち着いた状態から急に悪化したりと症状に変動があるのも血管性認知症の特徴です。
■主な症状
・認知機能の低下(中核症状)
記憶障害、見当識障害、実行機能障害、失語、失行、失認など
・感情失禁
感情のコントロールがうまくできず、悲しくなくても泣いたり、急に怒りだしたりする
・意欲、自発性の低下
気分が沈んでいる、無気力、投げやりな態度をとる
・その他
手足の麻痺、嚥下障害、知覚障害、歩行障害など
■原因
前頭側頭型認知症は、神経変性(特定の神経細胞に異常が起きる病気)による認知症で40~60代に発症することが多いとされており、認知症全体の1%程度と割合はそれほど高くありません。前頭葉や側頭葉などの神経細胞が減少し、脳の萎縮がみられます。原因としてはTDP‐43やFUSと呼ばれるたんぱく質が蓄積されることが挙げられますが、なぜこのような変化が起きてしまうのかについては、まだ分かっていません。
■症状
感情の抑制がきかなくなり、人格や行動に問題が生じることが特徴です。
■主な症状
●行動異常
・性格が変わってしまったように万引きや盗み食い信号無視など反社会的な行動が増える
・毎日決まったコースを散歩するなど、同じ時間に同じ行為を毎日行う
・過食・濃い味付けや甘いものを好む
・共感や感情移入ができなくなる
●記憶障害
・言葉の意味を記憶することができなくなる
●言語障害
・物の名前が言えなくなる、複数の物品から指示されたものを指すことができなくなる
●その他
・筋力低下する、運動ニューロン疾患を示すことがある
・認知機能障害、運動障害など
認知症になると、治療による改善や予防はできないと思われているかもしれません。様々な種類や症状がある認知症の中でも、次のような認知症は適切な治療を受けることで改善、予防することができる場合があります。
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血、高血圧や生活習慣病が原因で、脳の神経細胞がダメージを受けることで発症する認知症です。初期段階のうちに、血流の流れを良くする薬物を投与するなどの治療や高血圧、糖尿病を予防するための薬物療法を行い、進行を遅らせられる場合があります。生活習慣病を放置すると、脳梗塞を引き起こす恐れもあるため、薬物療法だけでなく、喫煙や食事、過度の飲酒など生活習慣を整えることは、血管性認知症の予防にもなります。
正常圧水頭症は、脳を保護する脳脊髄液が過剰にたまることで起こります。正常圧水頭症には特発性、二次性、家族性の3つのタイプがありますが、最も多いのが特発性正常圧水頭症で65歳以上の認知症と診断された患者のうち5~10%がこれにあたると考えられています。症状は、ガニ股やスリ足などの歩行障害が多く、集中力の欠如など認知障害や排尿障害もみられます。正常圧水頭症は多くの場合、手術によって改善され、完治することもできると言われていますが、時期を逃すと改善が見込めなくなる場合もあるので早期受診するようにしましょう。
慢性硬膜下血種は、主に頭部外傷から数週間~数か月くらい経ち、硬膜下に血液がたまることで起きる疾患です。転んで頭を強打することもあれば、たんこぶ程度で血種ができることもありますが、正確な原因はわかっておりません。50歳以上の中高年の約10%に硬膜の変性がみられ、男性に多いとされていますが、女性や子どもでも起こります。血種が小さいときは無症状ですが、大きくなると脳を圧迫し、眠りがちになる、ぼんやりとして活気がなくなるといった症状がみられます。頭部CTやMRI検査で診断を行い、多くの場合は手術で回復することができますが、高齢で手術が行えない場合には薬物治療をする場合もあります。
甲状腺機能低下症は、何らかの異常が起きて甲状腺ホルモンが少なくなることで起きる疾患で、甲状腺自体に原因がある「原発性甲状腺機能低下症」と、甲状腺ではなく下垂体や視床下部の機能低下が原因である「中枢性甲状腺機能低下症」があり、むくみ、疲労感、便秘、月経異常などの症状がみられます。甲状腺機能の低下は女性に多く、健康な人の4~20%にみられると言われています。治療には、甲状腺ホルモンの合成T4製剤などを服用し、投薬を維持していくことで徐々にホルモンの低下が改善されていきます。
認知症の原因となる病気は様々ですが、大半を占めるのがアルツハイマー型認知症と血管性認知症です 。高血圧や糖尿病などの生活習慣病が認知症のリスクを高めると考えられるため、生活習慣の改善が認知症の予防につながるとされています。
1.健康的な食生活
栄養バランスのとれた健康的な食事を心掛けましょう。栄養の偏った食事は生活習慣病になりやすいとされています。糖質、塩分を控えめにし、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを補うバランスのよい食事をとりましょう。
2.適度な運動
体を動かすことは生活習慣病の発症リスクを低くするだけではなく、脳の刺激にもなります。ラジオ体操や散歩、ストレッチなど無理のない範囲で行える運動を心がけましょう。歩きながらしりとり、足踏みしながら手拍子など、同時に2つのことを行うことで脳が活性化され、認知症予防につながるといわれています。
3.知的な刺激
ガーデニングやパズル、読書、ゲーム、手工芸などの知的活動は脳に刺激を与えます。物事を考えたり、手指を使ったりすることで脳の多くの機能を使うため、認知症予防対策として有効です。本人が興味の持てることであれば何でもよいので、楽しんで取り組める知的活動を行いましょう。
4.社会的な交流
趣味の集まりやイベントに参加するなど、社会的な交流を持つことも大切です。人とコミュニケーションをとることで脳が刺激されます。身支度の時間を考える、行き方を決めるなど物事を考える機会が増えることで脳の活性化が期待できます。
5.充分な睡眠
脳の機能を維持するには、睡眠も大切です。睡眠時間を充分に確保するだけではなく、質の良い睡眠がとれるように心がけましょう。
認知症の方の介護に不安や戸惑いを感じ、接し方に悩む介護者の方も多いと思います。家族や周囲の人ができることは、まずは認知症のことをきちんと理解することが大切です。認知症になった本人も不安やストレスを感じています。気持ちに寄り添い、優しくサポートするよう心がけましょう。
【認知症の介護で気を付けること】
・本人のペースに合わせる
言われたことを理解するのに時間がかかり、すぐに反応して動くことが難しいため、何をするにも時間がかかります。 そのため、次から次へ話しかけると混乱を招きやすく、急かされると責められているように感じて不快な気持ちになります。決して急かさず、ゆっくり話すことを意識して本人のペースに合わせましょう。
・責めたり、叱ったりしない
言動に対して、責めたり、叱ったり、否定しないことが大切です。叱られた理由を覚えていなくても、そのときに感じた不安や不快な気持ちは残ります。つい言葉がきつくなることもあるかもしれませんが、問題行動は認知症が原因なので責めたり、叱ったりしてもなくなりません。自尊心を傷つけないように安全面に問題のない行動である限りは否定せずに受け入れるようにしましょう。
・気持ちに寄り添うコミュニケーション
会話をするときは目線を合わせ、相づちを打つ、うなずくなどしながら本人の話にしっかりと耳を傾けましょう。 優しく触れるなどのスキンシップを取ることで安心感を与えることができるため、話すときはゆっくりとした口調で、わかりやすくジェスチャーをつけるのもよいでしょう。何か間違ったことを話していても「そうでしたね」などと話を合わせて受け入れましょう。
・かけがえのない存在と感じてもらう
無理なくできる仕事をお願いして「自分も役に立つ存在である」と感じてもらいましょう。認知症になると、今までできていたことができなくなってショックを受けたり、自分が自分でないような感覚になり不安を覚えたりすることもあります。何かをお願いしたあとはしっかり褒めて感謝の気持ちを伝え、前向きな気持ちになってもらいましょう。
様々な種類がある認知症について症状や原因、治療方法を紹介しました。
最も多いとされるアルツハイマー型認知症の他にも、認知症の種類はさまざまで、種類によって症状の現れ方や治療方法もそれぞれ異なりますので、認知症について正しく理解することが大切です。症状や原因などを理解しておき、万が一認知症が疑われる場合にはすぐに医療機関で検査するようにしてください。認知症を引き起こす原因ともいわれている生活習慣病を見直すなど、日頃から予防を心掛けることも重要です。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
商品やサービスに関するご質問、
ご相談にお答えしています。
商品やサービスに関するご質問、
ご相談にお答えしています。
まずはお気軽に資料請求を。
無料カタログをご送付致します。
今回発送いたしますカタログは、一部商品の仕様や価格など異なる場合がございます。ご了承ください。