この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
認知症について、物忘れとの違い、認知症の原因と症状・種類。そして介護する際のポイントなどをご紹介します。
2024年11月8日
認知症は病名ではなく、脳の病気や老化など様々な原因によって脳の神経細胞の働きが悪くなってしまうことで認知機能が低下し生活に支障をきたしている状態のことです。
認知症は65歳以上の高齢者に多く、高齢化が進んでいる日本では家族や身近な人が発症されている方も多くいらっしゃるでしょうし、これから身近な方が発症される可能性も十分にあります。それくらい認知症という言葉は広く知られてきましたが、中にはまだ老化による「物忘れ」が認知症であると誤認している方もいます。
物忘れには、老化によるものと認知症によるものがあり、症状が少し異なります。物忘れがある人がすべて認知症というわけではありません。では、老化による物忘れと認知症による物忘れにはどのような違いがあるのでしょうか?
老化による物忘れの特徴
「忘れている」という自覚があるのが特徴。
体験したことの一部を忘れても、体験したこと自体は覚えています。
例えば、夕食を取ったことは覚えていても何を食べたか忘れる、財布をどこにしまったか忘れるなどは、誰にでも起こる老化による物忘れだと考えられます。
認知症による物忘れの特徴
「忘れている」という自覚がなく、体験したこと自体も忘れていることが特徴。
例えば、食事をしたのにそのことを覚えていない、財布をしまったことを忘れて盗まれたと言う、何度も同じものばかり買ってくるなどの症状があります。認知症の症状が進行すると、年齢や住んでいる場所が思い出せないといった判断力や理解力が低下して日常生活にも支障をきたします。
―認知症の種類・症状について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「認知症の症状一覧 種類や進行段階、速度、早期発見のコツを解説」
2025年には65歳以上の5人に一人が認知症を発症するという予測もあります。認知症について、種類と具体的な症状や特徴についてみていきましょう。
■原因
アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も多いとされています。アルツハイマー型認知症の原因は、脳にアミロイドβという特殊なたんぱく質がたまることで神経細胞が死んでしまい、脳の一部が萎縮して見当識障害や判断力の低下を引き起こすことです。特に脳の中でも記憶を司る海馬を中心に萎縮がはじまり、脳全体に広がっていきます。
■症状
初期症状として記憶障害が見られます。新しい出来事が記憶できず、体験自体をすぐに忘れてしまうのが特徴です。症状が進行すると見当識障害や実行機能障害といった症状も現れます。
■主な症状
・記憶障害
食事の直後に「食事はまだか」と言いだす
自分でどこかにしまったものを「誰かに盗まれた」と言い出す など
・見当識障害
家族など親しい人の顔を見ても誰なのか認識できない
季節がわからず、適した衣服を選べない
自宅にいるのに「家に帰る」と言い出す など
・実行機能障害
今まで使っていた家電の操作がわからなくなって使えない
料理の手順がわからなくなり、焦がしたり味付けが変わったりする
箸やスプーンの使い方がわからなくなって使えない など
―アルツハイマー型認知症について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「アルツハイマー型認知症とは?症状・原因・治療方法を解説」
■原因
レビー小体型認知症の原因は定かではありませんが、「レビー小体」と呼ばれるたんぱく質のかたまりが脳に蓄積されていくことで引き起こされる認知症と言われています。
■症状
幻視やレム睡眠行動障害、パーキンソン病のような症状が見られます。記憶障害なども現れますが、アルツハイマー型と比べると症状は軽いといわれています。
■主な症状
・幻視
実際には存在しないものがリアルに見える
・レム睡眠行動障害
睡眠中に奇声をあげる、暴れる
・パーキンソン症状
手の震え、無表情、筋肉のこわばり、小刻み歩行など
・自律神経症状
立ちくらみ、便秘、失禁、多汗、だるさ、動悸など
・認知機能の変動
記憶力や理解力など調子の良い時、悪い時の差が目立つ
・抑うつ
気分が沈みがちで意欲が低い
■原因
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって起こる認知症で、脳にダメージを受けた部分と健全な部分の機能が混在することによって、できることとできないことの差が大きく「まだら認知症」とも呼ばれます。
■症状
ダメージを受けた脳の部分によって異なりますが、アルツハイマー型と同様に記憶障害や見当識障害が見られます。その他に身体の麻痺や言語障害、嚥下障害などの症状が現れます。突然症状が現れたり、落ち着いた状態から急に悪化したりと症状に変動があるのも血管性認知症の特徴です。
■主な症状
・認知機能の低下(中核症状)
記憶障害、見当識障害、実行機能障害、失語、失行、失認など
・感情失禁
感情のコントロールがうまくできず、悲しくなくても泣いたり、急に怒りだしたりする
・意欲、自発性の低下
気分が沈んでいる、無気力、投げやりな態度をとる
・その他
手足の麻痺、嚥下障害、知覚障害、歩行障害など
■原因
前頭側頭型認知症は、神経変性(特定の神経細胞に異常が起きる病気)による認知症で前頭葉や側頭葉などの神経細胞が減少し、脳の萎縮がみられます。原因としてはTDP‐43やFUSと呼ばれるたんぱく質が蓄積されることが挙げられますが、なぜこのような変化が起きてしまうのかについては、まだ分かっていません。
■症状
感情の抑制がきかなくなり、人格や行動に問題が生じることが特徴です。
■主な症状
●行動異常
・性格が変わってしまったように万引きや盗み食い信号無視など反社会的な行動が増える
・毎日決まったコースを散歩するなど、同じ時間に同じ行為を毎日行う
・過食・濃い味付けや甘いものを好む
・共感や感情移入ができなくなる
●記憶障害
・言葉の意味を記憶することができなくなる
●言語障害
・物の名前が言えなくなる、複数の物品から指示されたものを指すことができなくなる
●その他
・筋力低下する、運動ニューロン疾患を示すことがある
・認知機能障害、運動障害など
アルツハイマー型認知症は認知症の中で最も大きな割合を占めており、厚生労働省の調査によると全体の67.6%となっています。そのため、認知症=アルツハイマー型認知症をイメージする方が多いかもしれません。
血管性認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで多く認知症全体の19.5%の割合を占めています。特に脳梗塞など脳がダメージを受けることで、血管性認知症を発症しやすくなるといわれています。
レビー小体型認知症は、認知症全体のうち4.3%の割合を占め、男性の発症率が女性よりも約2倍高くなるといわれています。認知症と結びつけるまでに時間を要するケースもあるため発見が遅れてしまう場合もあります。
前頭側頭型認知症は、40~60代に発症することが多いとされ、認知症全体の1%程度と割合はそれほど高ないですが認知症の中でも難病として指定されています。対応の難しい症状でもあることから、介護の負担が大きくなる場合もあります。
認知症になると、治療による改善や予防はできないと思われているかもしれません。様々な種類や症状がある認知症の中でも、次のような認知症は適切な治療を受けることで改善、予防することができる場合があります。
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血、高血圧や生活習慣病が原因で、脳の神経細胞がダメージを受けることで発症する認知症です。初期段階のうちに、血流の流れを良くする薬物を投与するなどの治療や高血圧、糖尿病を予防するための薬物療法を行い、進行を遅らせられる場合があります。生活習慣病を放置すると、脳梗塞を引き起こす恐れもあるため、薬物療法だけでなく、喫煙や食事、過度の飲酒など生活習慣を整えることは、血管性認知症の予防にもなります。
正常圧水頭症は、脳を保護する脳脊髄液が過剰にたまることで起こります。正常圧水頭症には特発性、二次性、家族性の3つのタイプがありますが、最も多いのが特発性正常圧水頭症で65歳以上の認知症と診断された患者のうち5~10%がこれにあたると考えられています。症状は、ガニ股やスリ足などの歩行障害が多く、集中力の欠如など認知障害や排尿障害もみられます。正常圧水頭症は多くの場合、手術によって改善され、完治することもできると言われていますが、時期を逃すと改善が見込めなくなる場合もあるので早期受診するようにしましょう。
慢性硬膜下血種は、主に頭部外傷から数週間~数か月くらい経ち、硬膜下に血液がたまることで起きる疾患です。転んで頭を強打することもあれば、たんこぶ程度で血種ができることもありますが、正確な原因はわかっておりません。50歳以上の中高年の約10%に硬膜の変性がみられ、男性に多いとされていますが、女性や子どもでも起こります。血種が小さいときは無症状ですが、大きくなると脳を圧迫し、眠りがちになる、ぼんやりとして活気がなくなるといった症状がみられます。頭部CTやMRI検査で診断を行い、多くの場合は手術で回復することができますが、高齢で手術が行えない場合には薬物治療をする場合もあります。
甲状腺機能低下症は、何らかの異常が起きて甲状腺ホルモンが少なくなることで起きる疾患で、甲状腺自体に原因がある「原発性甲状腺機能低下症」と、甲状腺ではなく下垂体や視床下部の機能低下が原因である「中枢性甲状腺機能低下症」があり、むくみ、疲労感、便秘、月経異常などの症状がみられます。甲状腺機能の低下は女性に多く、健康な人の4~20%にみられると言われています。治療には、甲状腺ホルモンの合成T4製剤などを服用し、投薬を維持していくことで徐々にホルモンの低下が改善されていきます。
様々な種類がある認知症について症状や原因、治療方法を紹介しました。
最も多いとされるアルツハイマー型認知症の他にも、認知症の種類はさまざまで、種類によって症状の現れ方や治療方法もそれぞれ異なりますので、認知症について正しく理解することが大切です。症状や原因などを理解しておき、万が一認知症が疑われる場合にはすぐに医療機関で検査するようにしてください。認知症を引き起こす原因ともいわれている生活習慣病を見直すなど、日頃から予防を心掛けることも重要です。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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