認知症で徘徊が始まった
原因と対処法について解説
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徘徊は、本人にとっては事故やけがなど様々な危険が伴い、介護する方にも大きな負担となります。徘徊の症状や原因、対処法を知ることで、本人も介護者も不安や負担が軽減されるようにしましょう。
2022年9月30日
徘徊はなぜ起こる?徘徊が起こる原因を正しく理解しよう!
徘徊は認知症の症状のひとつ
徘徊は一般的に、目的もなくうろうろと歩き回るという意味ですが、これから説明する徘徊は認知症の行動・心理症状(BPSD)の1つであり、一般的な徘徊とは違います。周りから見ると意味なく徘徊しているように見えるかもしれませんが、本人にとっては原因や理由があって歩き回っています。
認知症の症状認知症には、脳の働きが低下することによって直接起こる「認知機能障害(中核症状)」、と中核症状を基盤にして、身体的、環境的、心理的要因などの影響により起こる「行動・心理症状(BPSD)」があります。認知機能障害には記憶障害、見当識障害、理解・判断力障害、実行機能障害などの例を挙げられる一方で、不安、うつ状態、徘徊、幻覚・妄想などは行動・心理症状(BPSD)の典型的な症状です。また、行動・心理症状は必ず出る症状ではなく、その要因を取除くとおさまることもあり、苦痛なく生活を送れるようになる場合もあります。
―認知症について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
徘徊が起こってしまう原因は?
徘徊は認知症の行動・心理症状(BPSD)の1つです。徘徊の根本的な原因は本人の認知機能の低下、特に短期記憶の障害です。黙って家を出ていった後に、本人の記憶障害及び見当識障害によって、自分のいる場所や時間の感覚があいまいになり、道に迷い、途方もなく歩き続けてしまうことを徘徊といいます。しかし、認知機能障害だけでは徘徊につながりません。環境的要因、身体的要因及び心理的要因も徘徊に関係しています。徘徊という症状が出る場合、その人なりの理由や背景があって、外に出ていくのです。例えば、落し物を捜しに、気晴らしに、夕飯を作りに、会社に出勤しに、もしくは誰かに会いに、外に出かけて行くのかもしれません。
身体的要因から起こる徘徊
徘徊する理由を探ってみると、実は「おなかの調子が悪くてトイレに行きたい」や、「何かを食べたい、飲みたい」などの理由が見えてくる場合があります。しかし、短期記憶障害によって本人はその理由や目的の場所自体がわからなくなってしまうので、身体的違和感を抱えたまま、徘徊に至ってしまいます。その場合は、少し飲食をすると気持ちが落ち着くことがあります。また、便秘や下痢、頻尿などの排泄状態を確認し、必要に応じて主治医と相談の上、服薬を見直すことで徘徊が落ち着く場合もあります。
環境的要因から起こる徘徊
今自分のいる場所に見覚えがない、もしくは居心地が悪い、落ち着かないなどの環境的要因から徘徊が起こることもあります。認知症の方にとって、環境が変わることは混乱を招きやすいため、本人の居心地の良い空間作りが必要です。介護が必要な状態になったとしても、あまり大きく環境を変えないということも大切です。
心理的要因から起こる徘徊
心理的なストレスも徘徊に繋がる理由の一つです。認知症の方が夕方になるとそわそわと落ち着かなくなり、やたら外に出かけようとすることがよくあります。元々は認知障害によって、本人の見当がつかなくなったことが原因ですが、そこに不安・焦燥などの心理要因が加わると、徘徊が起こってしまいます。例えば、夕飯の支度、子供のお迎えなど「何かしなくてはならない」という元々の生活環境での習慣を実行しなければ、という衝動に駆られ、落ち着かなくなり、外に出かけてしまいます。この場合、本人を否定したり、責めたりしても、認知症の方に通じません。普段から本人の様子をよく観察し、どうしてその行動に至ったのかという理由を聞き出し、できるだけ本人が安心できるような言葉を使い、ストレスを軽減させることで徘徊の症状が改善できる可能性があります。
特殊なタイプの認知症で特にみられやすい徘徊
前頭側頭型認知症では、脳全体が委縮していくアルツハイマー型認知症などの認知症と少し異なり、人格や社会性を司る「前頭葉」と、主に言語、記憶、聴覚を司る「側頭葉」に萎縮が見られていきます。この場合には、人目を気にしなくなったり、感情的で抑制が利かなくなる、同じことを何度も繰り返す常同行動が見られるようになり、そのような症状が徘徊につながる原因となることもあります。
認知症で徘徊がはじまったときの接し方、対処法
人の見守りによる対処法
ポイント1.否定しない、話を聞いてみる
1つめに徘徊している本人の行動や言動を否定しないことが大切です。本人にも徘徊をする理由がありますが、それを理解することは難しいことです。しかし、それを否定されたり、怒られたりすると、負の感情だけが残ることになり、介護者への不信感につながります。そして徘徊がエスカレートすることもあります。まずは、なぜ歩いているか理由を尋ねるなど、本人に寄り添ってみましょう。話を聞くだけで安心して徘徊をやめることもありますし、傾聴していることで、本人が納得する場合もあります。
ポイント2.他のことに気をそらせる
2つめは、他のことに気をそらせることです。例えば「早く家に帰らないと」と家を出て行こうとする方に対して、「じゃあ、お迎えを頼んだのでお茶でも飲んで待ちましょうか。」とお茶に誘ったり、「外は寒いので、上着を着ましょう。」などと別の行為につなげます。こうして他のことに気をそらせることで徘徊しようとしていた理由を忘れて、落ち着くこともあります。
ポイント3.仕事や役割などの作業を与える
3つめは仕事や作業など役割をあたえることです。何もやることがなく、ボーっとしていると、認知症ではなくても何かしたくなり、動き出したくなることがありますよね。認知症の方は現状が理解できずに焦燥感にかられることになります。そうならないように何か簡単な作業を与えると、自己肯定感も満たされ、落ち着いていられることも多いです。
ポイント4.適度な運動で生活リズムを整える
4つめは適度な運動で生活のリズムを整えることです。介護で負担となるのが、夜間の徘徊です。これを防ぐためには、日中に散歩など適度な運動をすることで満足感を得させることにより、夜間の睡眠を確保することが大事です。認知症では昼夜逆転が生じやすくなってきますが、生活リズムを整えることが徘徊の予防につながります。時には、徘徊を止めずに一緒に外を歩くのもよいでしょう。
ポイント5.デイサービスなどの介護サービスを利用する
5つめはデイサービスなどの介護サービスを利用することです。日中の活動量を確保することができますし、認知症を理解している専門スタッフが適切なケアをしてくれます。介護サービスを利用することで介護者の負担が軽減できます。介護者の休息も大切です。上手に利用して、無理のない介護をしていきましょう。
介護・福祉用品を活用する対処法
人の見守りによる対処は限界があります。いざというときに備えて福祉用具で対処しておくことも大事です。
1.移動する動線の転倒リスクを軽減させる
身体的にも介護が必要な状態の方が認知症により徘徊してしまう場合、いちばん考える必要があるのが転倒リスクです。認知症の方は、自分が安全に歩けないのを忘れて歩こうとします。ですから徘徊してしまう場合に、その移動する動線につまずく危険のあるものを置かないこと、手すりの設置や目のつきやすいところに杖を置いておくなどの対処で工夫をして転倒リスクを軽減しましょう。
2.徘徊したことにいちはやく気付く
徘徊してしまうことで、ひとりで外へ出て事故にあったり、戻って来られなくなるなどの危険があります。靴などにGPS端末を入れたり持たせたり、ドアセンサー・離床センサーによって、いち早く行動の開始に気づけるようにする対処法もあります。ほかにも離床や徘徊を知らせる福祉用具がたくさんあります。気づけるように対処することで介護者の心理的不安の軽減につながります。
3.服や持ち物に名札をつける
徘徊で帰り道がわからなくなった場合、本人は自分の名前や住所を言えないことが多くあります。服や持ち物に名前と連絡先を書いたり、QRコードを読み込むことで発見者が家族にメールで連絡できる見守りシールなどで発見・対応をスムーズにできます。
4.地域と連携していく
認知症の方を介護していくには、地域の方と連携を図ることがとても重要です。認知症は恥ずかしいことではありません。家族だけで抱えるのではなく、地域のみんなが理解することで、徘徊していても、自然と話を聞いてくれる人、家まで送ってくれる人が出てきて、本人も家族も安心して生活することができます。
徘徊で悩む方のための介護・福祉用品
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