認知症の介護ストレスや介護うつを悪化させないためには?

認知症の介護はストレスがたまります。ストレスによる介護うつなどにならないために認知症の人への対応の仕方、ストレスや介護疲れを溜めない方法を紹介します。

2020年9月1日

認知症って何?
どんな症状?

認知症とは実は病名ではなく、脳の機能が低下することで引き起こされる特有の症状のことを言います。以前は痴呆症と呼ばれていましたが、痴呆という言葉に愚かという意味があったため認知症と呼ばれるようになりました。

認知症と聞くと、もの忘れのイメージが強いかもしれません。しかし認知症によるもの忘れと加齢によるもの忘れでは症状が異なります。夕食の献立を思い出せない、芸能人の名前が思い出せないといった部分的なもの忘れは加齢によるものです。認知症によるもの忘れは、夕食を食べたこと自体を忘れる、少し前に電話したこと自体を忘れるなど、体験そのものを忘れてしまうのが特徴です。同じ話を何度も繰り返してしまうのは、自分が話したこと自体を覚えていないからなのです。
認知症は、記憶障害だけではなく判断力や理解力の低下などの症状が見られ、日常生活にも支障をきたします。症状は大きく分けて「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2種類に分けられます。

【中核症状】
脳の神経細胞が破壊されることで現れる直接的な症状。認知症を患っていれば、どんな人でも見られる症状です。

・記憶障害(直近の出来事や昔のことを忘れる)
・見当識障害(日付や自分のいる場所がわからなくなる)
・判断力の障害(ものごとの良し悪しが判断できなくなる)
・実行機能障害(計画を立てて順序よく行動できなくなる)
・失行(服を着るなど以前できていたことができなくなる)
・失認(日常で使っている道具なのに何かわからなくなる、親しい人が誰かわからなくなる等)
・失語(うまく言葉にできなくなる、読み書きができなくなる等)  など

【行動・心理症状(BPSD)】
行動・心理症状(BPSD)は、周辺症状とも呼ばれ中核症状に精神的な要因などが加わって現れる症状。本人の性格や環境、心理状態などによって引き起こされるため、症状の現れ方には個人差があります。

・不安、抑うつ
・妄想
・幻覚
・徘徊
・不潔行為
・暴言、暴力
・介護拒否  など

認知症の人への
対応のポイント

認知症の症状が進行すると、今までできていたことができなくなったり、理解できないような行動や言動が見られるようになります。介護する家族はこうした状況に、どのように接したらよいのかと戸惑うこともあるかもしれません。認知症の介護で大切なことは、認知症をきちんと理解して本人の気持ちに寄り添うことです。そこで、認知症の人への対応のポイントをご紹介します。

【認知症の人への対応のポイント】

●ペースを合わせてゆっくり話す

ゆっくり丁寧に話すことを意識しましょう。決して急かさず、本人のペースに合わせることが大切です。
認知症の症状により、言われたことをすぐに理解することや、とっさに反応してスムーズに動くことが難しくなります。何をするにも時間がかかってしまうため、急かしたくなることもありますが、本人は責められているように感じて不快な気持ちになるので気をつけましょう。


●否定しないようにする

本人の言動に対して責める、叱るなど否定しないようにしましょう。
話している内容が間違っていても「そうでしたね」などと否定せずに受け入れてあげましょう。
否定された理由は覚えていなくても、そのときに感じた不安や不快な気持ちは残り、自尊心を傷つけてしまうこともあります。問題行動は認知症によるものですから責めたり叱ってもなくなるわけではありません。安全面に問題があるとき以外は否定せずに受け入れることが大切です。


●本人の考えを理解する

認知症の症状によって、被害妄想や理解しがたい行動をとる場合があります。周囲の人に理解できなくても、本人には何か理由があるはずです。どうしてそのような行動や考えに至ったのか原因を探り、本人の気持ちを理解してあげることが大切です。

認知症によって新しい記憶は抜け落ちるものの、昔の記憶は鮮明に残っているケースが多く、現在の自分と数十年前の自分が重なってしまうことがあります。例えば息子を学校まで迎えに行くと言って出かけようとするなど、過去の体験に基づいた言動が見られます。そうした言動には孫の姿を見て昔の記憶と重なって起こるなど、何かしら要因があります。言動のきっかけとなった要因を探り、本人の考えを理解して受け止めてあげましょう。現実を伝えても本人は混乱するだけなので「今日は創立記念日でお休みなので、お迎えはいりませんよ」などと話を合わせてあげましょう。

認知症の介護の心理状態

認知症の介護をする家族は、本人から目が離せずなかなか気が休まりません。介護は先が見えないことから、将来に対して不安を感じることも多いと思います。認知症の症状によっては暴言を吐かれたり、介護を拒否されることもあり、家族には大きなストレス、介護疲れとなります。

認知症介護をする家族の心理状態は、 一般的に4つの心理ステップをたどるといわれています。以下を参考に自分が今どのステージにいるのかを考えてみましょう。

【4つの心理ステップ】

●とまどい・否定

認知症によっていつもと様子が異なり、とまどいを覚える段階です。医師に認知症と診断されても冷静に受け止めることができません。事実を信じたくないという気持ちにより、症状があってもすぐ治るから大丈夫などと症状自体を否定しようとする場合もあります。

●混乱・拒絶・怒り

認知症の症状が進行することで言動にも大きく変化が現れ、どう対応すればいいのか混乱してしまいます。理解できない行動にイライラしたり、怒りを覚えたりすることもあります。なぜ私だけこんな思いをしないといけないのと絶望したり、私が一人で頑張れば、迷惑をかけずに済むと一人で介護を抱え込み、周囲の助けすら拒絶してしまうケースもあります。

●割り切り・諦め

認知症であることを割り切って考えることができるステージ。認知症による症状だから、注意したって改善されないし諦めようなど、予防も治療もできない認知症に対して諦めを感じながらも、認知症とうまく付き合っていくにはどうすべきかを考えはじめる時期でもあります。

●受容

認知症そのものを受け入れることができるステージ。認知症であること、認知症の介護をしている自分を受容できるようになります。ここまでくるとどんな言動でも許せるようになり、心穏やかに接することができます。

「介護うつ」ってなに?
未然に防ぐには?

「介護うつ」とは?症状やなりやすい人の特徴を解説!

介護をする家族は肉体的にも精神的にも負担が大きく、責任感や使命感によるプレッシャーもあり、ストレスを溜め込みやすくなります。こうした介護疲れによるストレスの蓄積が介護うつを引き起こす原因になります。

【介護うつの主な症状】

□倦怠感(体が重く、だるさを感じる)
□疲労感(激しい運動をしたわけでもないのにすぐ疲れてしまう)
□不安(不安な気持ちになる)
□焦燥感(焦りがあって落ち着かない)
□食欲不振(何を食べても美味しくなく食欲がない)
□睡眠障害(うまく寝付けず十分に眠れない)
□憂鬱(気分が落ち込み消極的になる)
□無気力(何をするのも億劫で意欲がない)
□無関心(何に対しても興味を持てず何も楽しめない)

【介護うつになりやすいタイプ】

●責任感が強い
責任感が強く、自分が頑張らないといけないと強く考えるタイプ。人に頼ることが苦手で、疲れを感じたり体調が悪くなったりしても自力でやり遂げようとして自分を追い詰めてしまいます。
●真面目で几帳面
全てをきっちりこなそうと頑張ってしまいます。自分のことよりも介護を優先してしまう傾向にあり、ストレスを蓄積しやすいタイプです。
●完璧主義
とてもストイックで、中途半端やいい加減が許せないタイプ。こうであるべきだという理想を実現するために自分を追い詰めてしまいます。介護は自分ひとりのものではないため思い通りにならずイライラしてストレスを感じてしまいます。

「介護うつ」にならないためには?予防法はあるの?

介護うつにならないためには、介護疲れをできるだけ軽減することが大切です。介護うつの予防のために以下のことに注意しましょう。

●誰かに相談する

介護について困ったことや悩み事があれば、一人で抱え込まずに家族や親戚、友人などに相談しましょう。誰かに話を聞いてもらうだけでスッキリし、気持ちが軽くなります。ケアマネジャーやプロのカウンセラーなどの専門家に相談すれば、新しい発見やアドバイスがあるかもしれません。

●介護の最新情報を集める

書籍やインターネットなどを活用し、介護に関する知識と最新情報を集めましょう。地域の行政や福祉団体による無料の講習会などに参加してみるのもよいでしょう。
ケア方法や便利なサービスなど介護に関する正しい知識を身につけることで、ストレスや悩みの解消につながることもあります。

●介護サービスを活用する

介護サービスを上手く利用して、息抜きをしましょう。介護ストレスを減らすためには、自分のために使える時間をきちんと持つことが大切です。訪問介護やデイサービスなどの介護サービスは介護保険の適用対象です。ケアマネジャーに相談してケアプランを作成してもらいましょう。

認知症介護のストレスや
介護疲れを溜めない方法



認知症介護によるストレスや介護疲れの対処法として、4つのポイントをご紹介します。

●頑張りすぎない
私が一人で介護をしないといけないなどと必要以上に頑張ってしまうと、介護する側も体調を崩してしまいます。家族や親戚に相談して役割分担してもらうなど、周りの人に頼りましょう。

●弱音を吐く
介護をしていると辛いことや苦しいこともたくさんあるはずです。愚痴や弱音を吐くことはいけないことと考える人もいるかもしれませんが、自分の感情を整理するのに効果的とされていますから、強がらず、弱音を吐いてみましょう。

●比較しない
認知症の症状の現れ方は人それぞれです。症状や進行具合など他の人はどうなのだろうと気になると思いますが比べても仕方ありません。本人の気持ちを尊重し、その人らしく生きられる介護を目指しましょう。

●いつかおわると考える
目の前にある苦しみがいつまで続くのかと不安になることもあるでしょう。どのような症状もいつかおわりを迎えます。徘徊の症状があり目が離せなかった人も、歩くことが困難になれば症状はなくなります。いま辛い状況に置かれているかもしれませんが、いつかおわるものだと考えるようにしましょう。