この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
認知症の症状の一つである暴言や暴力が生じたとき、これがいつまで続くのかと不安に思う方も多いでしょう。この症状の原因について、具体例を挙げながら対応方法や改善策をご紹介していきます。
2024年6月11日
認知症の症状のひとつである暴言や暴力は、理由もなく現れるわけではなく、様々な要因が重なって起きてしまうと考えられています。
どんなときに暴言や暴力が現れるのか、その原因と理由を7つに分けてご紹介していきます。
不安を感じ混乱しているときに暴言や暴力が現れることがあります。
例えば、認知症により理解力が低下した状態で、出かけるときにどこに行くか行き先を忘れてしまったときなどに 自分の置かれている状況がつかめず不安に感じることによって混乱して暴言や暴力につながってしまう場合があります。
感情のコントロールが難しくなり、感情が爆発して暴言や暴力といった行動をとってしまうことがあります。これは、認知症によって前頭葉の神経細胞の働きが低下し、脳の感情を抑制する部分がうまく働かないことが原因で同時に理解力も衰えるので不安や苛立ちを感じやすくなり、感情を上手く表現できず暴言や暴力につながってしまうためです。また、興奮しているときに大きな声で注意されると恐怖心を感じてさらにパニックになってしまう恐れもあるので、暴力的な言動は、本人の性格や意思とは関係なく起こるものだと知っておきましょう。
周囲の感情に巻き込まれているときも暴言や暴力へつながる原因になることがあります。
認知症によって物事を論理的に理解することが難しくても、周りの人たちの感情を読み取ることはできるため、家族や身近な人の態度・表情などを見て、何かが起きていることは察知できますが、何に対するものか、どのような理由なのかまでを理解はできていません。そのため、例えば、家族が困惑した態度を示したり、恥ずかしがる表情を見せたりすると、その感情に巻き込まれて急に不安になり、結果として暴言や暴力につながることがあります。家族としては無意識にとった態度や表情ですが、そこから感情が伝わり、本人を巻き込む恐れがありますので十分に配慮してください。
周囲が本人のことを思って行う何気ない行動でも、それによって本人の自尊心が傷つけられた時には暴言や暴力が現れることがあります。例えば、ひとりで大丈夫ですか?と過度に心配されることが気に障り、自尊心を傷つけて暴力的な態度につながる場合などが挙げられます。他にも、本人を制止するために大きな声を出し、否定すると、嫌な気持ちが生じ、感情を暴言や暴力によって表現してしまう場合があります。
体調不良などで体の調子が悪いときも、暴言や暴力につながることがあります。
認知症になると、身体の調子がよくないことやどんな痛みを感じているかなどを自分で理解して、周囲に知らせることが困難になり、今の状況を周りに伝えられず、改善する方法も不明なままでは過剰なストレスを抱えることになります。また、原因がわからないので病院や薬を利用することもできずに、ストレスがどんどん蓄積していく苛立ちから、少しでも意に沿わないことを周囲が行うと、暴言や暴力につながってしまうことがあります。
服用している薬の影響で暴言や暴力が起きる可能性もあります。認知症の進行を抑える薬の副作用によって強く症状が出ることや、複数の薬の飲み合わせの悪さが原因で起こることもあります。薬に関して不安に思うことがあれば、自己判断せず必ず医師に相談しましょう。
認知症の種類によっても暴言や暴力が強く現れることがあります。
レビー小体型認知症は、幻視や妄想の症状が現れやすく、それらを取り払おうとして暴れたり興奮したりすることがあります。血管性認知症の場合は、感情失禁がはっきり現れる特徴があり、感情のコントロールができなくなるため、怒りや不安から苛立ちに発展すると暴言や暴力につながります。
前頭側頭型認知症の一種であるピック病は、感情表現や理性をコントロールする脳の神経細胞にピック球(タンパク質が変化した塊)が蓄積して前頭葉や側頭葉が萎縮することによって引き起こされます。そのため、穏やかな性格だった人でも急に怒りっぽくなる傾向があります。
―認知症の種類・症状について、もっと詳しくはこちらをご覧ください―
▶ 「認知症の妄想(作り話)とは?症状の特徴や原因、対応方法まで解説」
―参考―
▶ 「国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト」
暴言や暴力は認知症の症状であることを理解し、冷静に対応しましょう。
普段の様子を観察し、原因を探りましょう。
接し方や環境の変化などにより本人の気持ちが不安定になっていることが原因の場合や、便秘・寝不足でイライラしているなど体調不良が原因の場合、薬の副作用や飲み合わせの悪さが原因となっている場合などがあります。暴力的になるきっかけや要因がわかれば、改善策を考えることもできます。
―認知症の方との接し方について、もっと詳しくはこちらをご覧ください―
▶ 「認知症の方との良い接し方は?家族がなってしまった際の対応・介護のポイントを解説」
暴言や暴力に巻き込まれないようにするには、物理的に距離をとるのが効果的です。特に、暴言や暴力に対して強く言い返す、力で対抗するなどは厳禁です。身を守るために仕方ない場合もあるかもしれませんが、抑えつけたり責めたりしても状況は改善されず、さらに状況を悪化させてしまう場合もあります。冷静に対応できないときは決して無理をせず、他の人に任せて安全な距離を保ちましょう。
物理的な距離だけでなく、感情的な距離をとることも必要です。暴言や暴力が認知症の症状であるとわかっていても、介護する側にとっては心身ともに大きな負担になります。無理をしすぎて介護者が体調を崩してしまう場合もあるので、感情的な距離をとるために意識的に介護から離れ息抜きすることも大切です。ショートステイなどの介護サービスなどをうまく利用して、趣味を楽しむ、気分転換に出かけてみるなど、休息できる自分だけの時間を作って気持ちを落ち着かせましょう。
認知症によって起きる症状は様々ですが、その一つである暴言や暴力が現れるときは限界を感じる前に対策をとるようにしましょう。具体的にどのようなケースがあるのか、ここでは3つの事例をご紹介します。
【具体例】
お風呂に入るときに使用する給湯器や、オーブン機能付きの電子レンジなどの家電を上手く扱えないことに対して腹を立て叩いて壊してしまう。
【対応例】
本人が使い慣れていない複雑な操作が必要な生活用具は、使いこなせないイライラ感から暴言や暴力につながっていく可能性があります。電子レンジはシンプルな機能のものにする、給湯器は時間設定でお風呂に入れるようにするなど本人ができるだけ違和感なく簡単に使用できるものを選択しましょう。
【具体例】
財布をどこに置いたか忘れてしまったのに、物盗られ妄想によって「誰かが盗った」などと介護者を犯人扱いし、暴言をはいてしまう。
【対応例】
介護している時間が長い人ほど物盗られ妄想の対象者になりやすいと言われています。泥棒扱いされることは気分が悪いですが、感情的になって言い合いをしても状況は良くなりません。否定をせずに「一緒に探してみましょう」と声をかけたり、探しながら本人が興味のある話に切り替えたりすることで注意が逸れて暴言がおさまることがあります。
【具体例】
介護や対応が気に入らないと言って、家族や介護施設の職員などに暴力をふるったり、物を投げつけたりしてしまう。
【対応例】
暴言や暴力に対しては、それを向けられた家族や職員の方の安全を確保することが何よりも大切ですのでまずは、ある程度の物理的な距離を保つことで逃げるようにしてください。物を投げつけるのは身の危険にもつながりますので危険な物は周りに置かずにすぐに片付けるように心がけるようにしてください。
認知症による暴言や暴力が原因で、介護する側が過敏に反応すると心身ともに疲弊してしまう恐れがあります。では、暴言や暴力を少しでも改善するためにはどのようにすれば良いのでしょうか?
実践してもらいたい具体的な方法を7つご紹介しましょう。
本人の気持ちに寄り添い、意思を尊重しましょう。
本人が望んでやろうとしていることを制止したり、嫌がっていることを無理にさせたりすると大きなストレスとなり暴言や暴力の原因になります。過剰に心配し本人に代わって何でもやってしまうことも自尊心を傷つけてしまう恐れがあります。
また、本人自身、いつも不安や恐怖を感じながら何とか今の状態を自分なりに理解しようとしていますので日頃から本人の言動を否定しないことが大切です。否定感を与える「でも」「だけど」などの表現も避けるようにして、本人の判断が間違っていても否定しないようにしましょう。
自尊心を傷つけられると誰でも嫌な思いをして怒りを感じますが、それは認知症になっても同じことですので本人の自尊心を大切にしましょう。
認知症の症状の進行に伴って、周りから注意されることや制止されることが増えてしまいますが、なるべく「大丈夫?」などの過剰な声掛けは控え、できることは本人に任せてあくまでも陰からサポートする方針で対応し、本人の気持ちや自尊心を大切にしてください。
認知症による状況理解の困難さは、本人に不安や混乱をもたらし、その結果、暴言や暴力へつながる場合があります。そうならないための対策としては、現在どのような状態や立場に置かれているか、今後どうしたら良いかなどの情報を本人へわかりやすく伝達するようにしましょう。一度説明しただけでは大事なことを忘れてしまう可能性があるので、できるだけ何度も繰り返して丁寧に本人へ伝えるようにすると安心でしょう。なお、認知症の方には可能な範囲でメモを活用すると、何度も説明する手間が省けて非常に効率が良いでしょう。
興奮しているときは、他のことに関心を向けてみましょう。
好きな音楽をかけたり、かわいがっている孫の写真を見せたりすることで注意をそらし、自然と気持ちが落ち着くことがあります。一緒に散歩して気分転換するなど、いざというときのために、日頃から注意をそらす方法を考えておきましょう。
介護者は、本人の感情はもちろんですが、同じように介護者自身の感情も大切にすることが重要です。
介護する日々の中で抱く感情を、態度や表情などから本人が敏感に察してしまうため、介護者がマイナスの感情を持つと、本人にもマイナスの感情が連鎖して悪感情が投げ返される場合が多くなり、暴言や暴力に発展していく危険性があります。
特に、疲労感や不安・イライラは知らないうちに大きなストレスになりますので、まずは自分の感情に目を向けて、定期的に気分転換をはかりましょう。介護者に気持ちの余裕が生まれると、本人の感情を大切に寄り添いながら対応できるようになります。
認知症の方との関わり方をどのようにすれば良いのかをよく考えてコミュニケーション方法を工夫しましょう。
何かをしてもらう場合にも力で抑えこむといった無理強いするようなやり方は、反発を招きますので恐怖心や不安を抱かせないよう十分に注意が必要です。介護の際はいつも本人を尊重するように努めましょう。介護者がすべて代わりにやってしまうのではなく、できることは本人に任せることが大事です。また、適度なスキンシップは本人に安心感を与えるので、優しく体をさすったり手を当てたりすると良いでしょう。
そして置かれている状況やこれから何をするのかなど、本人が理解できるようにコミュニケーション方法を工夫してわかりやすく説明してあげましょう。一度伝えたことでも忘れてしまうことがあるので頻繁に声かけをしましょう。突然体に触れたり、介護者がイライラしながら接したりすると恐怖心や不安を感じ暴力的な態度をとってしまうことがありますので、介護するときは感情的にならず、丁寧にわかりやすく話しかけることを心掛けましょう。
認知症による暴言や暴力は、身近にいる家族に対して最も起こりやすいと言われます。暴言や暴力の症状で悩んでいる、原因がよくわからないといった場合には、介護者を変えてみるのも一つの方法です。
例えば、プロの介護者であるヘルパーに依頼することが挙げられます。ヘルパーは様々な状況に対応するために必要なスキルや知識について、専門的な教育を受けて習得しており、豊富な経験も積んでいるので、介護を安心して任せることができます。実際にプロのヘルパーに介護を依頼してから、暴言や暴力行為などの症状がおさまったということもあります。ただし、担当するへルパーが頻繁に入れ替わると、本人が環境の変化についていけず落ち着かない可能性がありますのでヘルパーに介護を任せるときは、顔なじみのヘルパーを数人作っておくと良いでしょう。
一人で抱え込まず、暴力や暴言で悩んでいることを家族や親族、医師、ケアマネジャーなどに相談して、周囲のサポートを得ることが大切です。感じている不安や辛さを吐き出すことで気持ちが楽になるだけでなく、第三者の意見から暴言や暴力の原因が何なのか気付く場合もあります。介護の専門家であれば経験から効果的な対応策や最適なアドバイスをしてくれます。相談することに抵抗がある、話し相手が見つからないなどの場合はノートに記録するだけでも、今後相談するときの資料にもなります。
例え認知症であったとしても身内から暴言や暴力を受けるのは大変つらいことです。他人に話しにくい内容でもあり、相談したところで何も解決しないと思ってしまうかもしれませんが、親しい人に話すことで辛い介護を客観的に見ることができ、抱えている苦悩を癒すことができる場合もあります。介護者も本人のことも熟知している家族や親族だからこそ、話を聞いてもらいやすく、より身近な相談相手にもなってくれます。介護で抱えている問題や悩みを共有し、何かあれば協力してもらうことも検討しましょう。
また、同世代の友達なら、介護の悩みを理解してもらえることも多く、友達自身の経験談などから、役に立つアドバイスが見つかることもあります。
体調不良や服用している薬が原因となっている可能性もあるため、医師に相談してみましょう。便秘など体の不調に対する治療を行うことで、暴言や暴力がおさまるというケースや、服用している薬を変えてもらい症状が改善したというケースもあります。普段の様子を医師に伝えられるよう日常的に不調や痛みを感じていないかなど体調をチェックしておくと良いでしょう。
医師だけでなく、介護の専門職であり、蓄積した知識や経験を持ち合わせているケアマネジャーも、専門的な立場から介護者をサポートしてくれます。認知症による暴言や暴力で困っているなら、すぐにケアマネジャーへ連絡し、相談することで介護者の抱える問題に合わせて、対応の仕方や的確なアドバイスを提案してくれることがあります。介護者が疲弊していて息抜きが必要な場合には、その旨をケアマネジャーに必ず伝えることで、ショートステイなどの介護サービスや利用できる施設などを具体的に提案してくれます。
かかりつけ医やケアマネジャーの他にも、認知症による暴言や暴力について専門的に相談できる窓口があります。例えば、自治体の福祉課や地域包括支援センター、認知症疾患医療センター、病院のもの忘れ外来などが挙げられ、認知症専門医により入院治療が必要だと判断された場合は、家族の同意のもと、認知症治療が可能な精神科のある病院へ入院が決まることもあります。
他にも、全国各地に「公益社団法人 認知症の人と家族の会」が設置されており、暴言や暴力に関する悩みを個人的に相談することができます。
また、介護者がつらい思いをする前に施設入居を検討することも一つの方法で、特に認知症に特化したグループホームや、重度の認知症に対応できる介護付き老人ホームなど様々な施設がありますので、早めに下調べを始めて施設に相談しましょう。
―相談先などの関連情報について、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「厚生労働省 認知症に関する相談先」
▶ 「厚生労働省 認知症疾患医療センターの整備状況について」
▶ 「厚生労働省 全国の地域包括支援センターの一覧」
▶ 「公益社団法人 認知症の人と家族の会 全国もの忘れ外来一覧」
▶ 「公益社団法人 認知症の人と家族の会 電話相談」
認知症が原因で暴言や暴力に至るまでには様々な原因がありますが、条件が多様に重なって発症すると考えられています。まず原因を探ったうえで、状況が悪化しないよう物理的にも感情的にも距離をとりましょう。毎日介護をする中で身内から暴言や暴力を受けると、介護者は心身ともに過度なストレスにさらされます。暴言や暴力の改善を目指して、ご紹介した具体的な方法を試してみてください。また、一人で抱え込まずに家族や友達、医師やケアマネジャーなどの専門家に相談することも大切です。
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