若年性認知症のチェックリスト
もしかして若年性認知症かも…と不安に感じている方は、次のセルフチェックをしてみてください。
□ 1.何度も同じことを言う、同じことを聞くことがある
□ 2.今日の日付や曜日がわからないことがある
□ 3.鍵や財布など物の置き忘れ、しまい忘れがよくある
□ 4.知り合いの名前が思い出せないことがある
□ 5.言おうとした言葉、物の名前などがすぐに出てこないことがある
□ 6.つい先ほど聞いた話の内容を思い出せないことがある
□ 7.よく知っている場所で道に迷ったことがある
□ 8.日課や趣味に興味を示さなくなった
□ 9.蛇口の閉め忘れや火の消し忘れがある
□ 10.ささいなことで怒りっぽくなった
□ 11.やる気がなく、だらしなくなった
上記のチェックリストはあくまでも参考ですが、チェックリストにいくつか当てはまる方は、認知症の可能性があります。気になる方は早めに病院を受診し、専門医に相談してください。
1.相談先を見つける
医療機関のソーシャルワーカー、地域包括支援センターなど相談できる場所を見つけましょう。
若年性認知症コールセンターは、電話で専門の教育を受けた相談員が対応してくれます。また、都道府県ごとに配置されている若年性認知症支援コーディネーターが利用できる制度やサービスの紹介、各種手続きや関係機関との連絡調整などをサポートしてくれます。適切な制度やサービスを知るためにまずは専門知識を持つ人に相談することが大切です。
2.職場の理解を得る
上司や人事担当者、産業医などに相談し、職場の理解を得ましょう。一度退職すると再雇用が難しいケースが多いため可能であれば今の職場で仕事を継続するのがよいと考えられます。若年性認知症であることを説明し、労働時間の短縮や配置転換をしてもらえるか相談してみましょう。これまでの職場で働き続けるのが難しい場合は障害者雇用枠(※)に入るという方法もあります。
※障害者雇用枠として働くには、障害者手帳が必要です。
3.社会保険制度を利用する
若年性認知症をサポートする様々な制度を活用しましょう。
・自立支援医療制度
若年性認知症で通院治療を受けていると医療機関や薬局で支払う医療費の自己負担が1割(または所得等によって定められた上限額)に軽減される場合があります。市区町村の窓口で申請が必要なため、住まいのある市区町村や通院中の医療機関に確認しましょう。
・障害者手帳
認知症などの精神疾患によって日常生活に支障をきたす場合は精神障害者保健福祉手帳、脳血管性認知症などで身体的障害がある場合は身体障害者手帳を申請できます。どちらも初診日から6ヶ月経過した時点で申請が可能です。手帳が交付されると税金面での優遇措置、公共交通料金や施設利用料の割引などを利用できます。
・障害年金
障害年金は病気やケガなどで障害を負って仕事を続けることが難しくなった人に給付される公的年金です。国民年金や厚生年金など公的年金の受給資格があり、定められた障害等級に該当している場合に申請できます。初診日から1年6ヶ月経過した時点で請求が可能です。
・傷病手当金
傷病手当金は病気やケガなどで仕事を休んで給料をもらえない場合、その期間の生活を保障するために給付されます。傷病手当金については加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合に確認しましょう。
・医療費や介護費の減免制度
医療費や介護サービス費などの自己負担額が一定の額を超えたときに超過分の金額が減免され支給される制度があります。手続きについては加入している健康保険組合や市区町村などに確認しましょう。
4.運転免許証の返納
認知症と診断されたあとに運転を続けるのは大変危険です。自尊心を傷つけるような発言に気を付け本人に納得してもらった上で、運転免許証を返納しましょう。家族のから説得が難しいときは、主治医や警察署や免許センターの運転適性相談窓口に相談して説得してみましょう。
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5.住宅ローン返済の相談
住宅ローン契約時に加入した保険の種類にもよりますが、若年性認知症の症状が高度障害状態と認定されている場合、返済が免除されることがありますので住宅ローンを契約した金融機関の担当者に確認しましょう。
6.介護保険サービスの利用
介護保険サービスを利用できるのは原則65歳以上ですが、認知症と診断された場合は40歳以上であれば利用可能(※)です。多くの介護サービスが高齢者向けのため利用しにくいかもしれませんが、最近は若年性認知症を受け入れる若い人向けのデイサービスも増えてきています。福祉用具のレンタルや住宅リフォームにも介護保険が適用されますから必要に応じてうまく活用しましょう。
※認知症などの特定疾病により、要支援・要介護認定を受けた人が対象
7.日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業は認知症の症状によって判断能力が低下しても、自立した生活が送れるように、福祉サービスの利用援助や金銭管理などを地域でサポートする事業です。市区町村の社会福祉協議会の窓口で申請により利用できます。
8.成年後見制度
成年後見制度は認知症などにより判断能力が不十分な人を法的に保護してサポートする制度です。 家庭裁判所に認められた成年後見人が本人に代わって財産の管理や必要な契約を結ぶなどの支援を行います。
若年性認知症の特徴
若年性の認知症は高齢の場合と症状は大きくは変わりませんが、若い年齢で発症するということでの特徴や影響があります。
【1】経済的ダメージが大きい
若年性認知症を発症すると、これまでのように仕事を続けられず、収入が減少する場合が大半です。働き盛りで家計を支えている方が発症すると経済的ダメージが大きくなります。介護のために配偶者も仕事を続けられなくなる、住宅ローンの支払いや子供の教育資金の不足など、家族の生活に大きな影響を及ぼします。
【2】精神的ダメージが大きい
認知症は、高齢者がなるものというイメージが強いため、若年性認知症と診断されると、この若さで認知症になったというショックから現実を受け止められなくなります。これまでに描いていた将来設計の変更を余儀なくされ、本人だけでなく、周囲の方にとっても精神的ダメージは大きくなります。
【3】若年性認知症を専門としたサービスが少ない
最近は、若年性認知症の方を受け入れるサービスも増えつつあります。しかし、身近な地域にないことも多く、適切なサービスがまだまだ不足しているのが現状です。高齢者向けのプログラムを行なっているデイサービスに通っても、年齢層が合わず本人の意欲につながりづらいこともあり、本人や家族からは、同じ悩みを持つ仲間と出会える場所が欲しい、軽度でも通いやすい施設が欲しいなどの意見が多くあります。
若年性認知症の方への対応
家族などが若年性認知症を発症された場合は、次のように対応しましょう。
●告知する場合は家族によるサポートを
若年性認知症であることを本人に告知するかどうかは、家族の中でも意見がわかれるところです。仕事ができる段階で告知を受けると、精神的ダメージが大きく、うつ傾向が加速する恐れがあります。しかし、理解力があるうちに告知をすることで、本人の希望や意思を確認してから治療を行えるというメリットもあります。告知すると決めた場合は、本人の心に寄り添いながら、家族みんなで協力して乗り越える気持ちでサポートすることが大切です。
●無理強いをしない
これまでできていたことができなくなり、家族が戸惑うこともあります。そこで、無理強いすると、拒否が強くなり、興奮する可能性があります。無理強いせず本人のペースに合わせるように心がけましょう
できなくなったことばかりに目を向けるのではなく、ひとつひとつ着実にできることを続けていける工夫をしましょう。
●本人の話を否定しない
若年性認知症の影響で、財布を盗まれたなどと物盗られ妄想が出現することもあります。本人は本当に無くなったと思い込んでいるため、嘘だと否定しても納得してくれません。こういった場合は、否定せずに話を受け止めてあげましょう。
若年性認知症のケアや介護
若年性認知症のケアや介護について以下のことに気を付けましょう
① 生活習慣を見直す
生活習慣の見直しは、認知症の予防、認知症の進行を緩やかにすることにもつながります。乱れた食生活、運動不足や睡眠不足、過度の飲酒や喫煙などは生活習慣病の原因となります。心当たりのある方は生活習慣を見直し改善するようにしましょう。
【生活習慣見直しのポイント】
ポイント1:栄養バランスのよい食事を心掛け、糖質や塩分は控えめにする。
ポイント2:ウォーキングやラジオ体操など、適度な運動を習慣にする。
ポイント3:質の良い睡眠を十分に取る。
ポイント4:人とコミュニケーションをとる。
ポイント5:脳トレなどの知的活動を行う。
② 適度なリハビリを行う
適度なリハビリを行い、脳を活性化することが認知症の進行を遅らせるために効果的と言われています。パズル、囲碁、将棋などの脳トレ、昔のことを思い出しながら話をしてもらうなどもよいリハビリになります。音楽鑑賞や、歌うこと、簡単な計算などもよいです。本人の趣味や特技を活かして、ガーデニングや簡単な家事などの手先を使う活動を行うのもおすすめです。決して無理強いをせず、本人の負担にならない程度に行うことが大切です。
③ 日常生活での工夫
日常生活での工夫によって、困り事を改善できることもあります。本人の状況に応じて以下を参考に工夫してみましょう。
【工夫1:物は決まった場所に置く】
眼鏡など普段よく使うものは、定位置に置くようにしましょう。引き出しは、中に入っている内容を書いてラベルにして貼っておくなどしましょう。外出時に必要な財布や鍵、携帯電話などはまとめてひとつの箱に入れて置く、見やすいところに持ち物リストを貼っておくとわかりやすいです。
【工夫2:メモをとる】
忘れそうなことはメモをとり、その都度メモをチェックするようにしましょう。本人がメモをとれない場合は、家族や周囲の方が代わりに書いてあげましょう。メモにはたくさんの情報を盛り込まず、要点や大事なことだけを書いて、わかりやすくすることも大切です。家族の電話番号などもメモに書き、見やすいところに貼っておくと便利です。
【工夫3:カレンダーやタイマーを活用する】
カレンダーやタイマーを活用して予定を忘れないようにしましょう。カレンダーには、その日の予定を書き込むだけでなく、薬1回分を袋にまとめて貼る、ゴミ出しの日を書き込むなど、目で見て手がかりを得られるようにしておきます。1ヶ月ごとのカレンダーで不便に感じる場合は、日めくりカレンダーの利用もよいかもしれません。薬の飲み忘れ防止には、薬を飲む時間にタイマーを設定しておき、音が鳴ったら飲むようにするという方法もあります。目で見る手がかりだけでなく、耳で聞く手がかりがあることで思い出しやすくなります。