この記事の監修者
-
-
フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
認知症の方にとってどのようなレクリエーションがいいのでしょうか。
レクリエーションを行う効果やレクリエーションの種類などを紹介します。
2025年9月9日
認知症の高齢者の方がレクリエーションを行う目的は、楽しむことや機能を維持・向上する機能訓練などがあります。それだけでなく、心の健康や感情の安定を支えるといった精神面での効果が大きな目的としてあります。具体的には次の3つが挙げられます。
・情緒の安定・安心感の提供
ゲームやクイズなどのレクリエーションを通して楽しく、穏やかな気持ちを育みます。認知症の方にとっては「成し遂げた」という事実が大きな安心感につながることもあります。
・自尊心・自己肯定感の維持
役割を持つことや褒められた体験などで自尊心・自己肯定感の維持につながります。本人の「できること」に注目し、達成感を抱いてもらうことが大切です。
・孤独感の軽減
レクリエーションで他の利用者やスタッフなどに関わることで孤独感や気分の落ち込みを和らげることにもつながります。
―認知症の症状について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
レクリエーションには次のような効果があるといわれています。
どんな人でも加齢によって身体機能は低下していきます。
高齢や病気を理由に体を動かす機会が減ると筋肉や骨はもちろんですが体の中の臓器もうまく働かなくなっていき、心身ともに様々な機能が低下してしまいます。筋力や体力は一度衰えても軽い運動によって向上するといわれています。ですから適度に体を動かすレクリエーションは、心身機能の維持、向上に効果があります。
レクリエーションにより物事を考えたり、手先を使ったりすることで脳の活性化につながります。
脳トレ、手・指を使う工作や手遊び、軽い運動などのレクリエーションは脳の多くの機能を使うので、認知症の予防や症状の進行を遅らせるのに効果があるといわれています。
レクリエーションを行うことで、他の人とのコミュニケーションの機会を作ります。
体を動かすことが減り体力が衰えると、外出が億劫になり他人とのコミュニケーションが減ってしまいます。コミュニケーションの減少は、認知症の症状を進行させる原因のひとつともいわれています。レクリエーションを通じて他の人とコミュニケーションをとることで、同じ時間を過ごす楽しさや活気ある雰囲気を分かち合うことができ気持ちも前向きになりやすくなります。また、コミュニケーションをとることは脳のたくさんの機能を使うため、脳の活性化にもつながると言われています。
QOL(=Quality of Life)は生活の質と訳され、生きがいや楽しみを持ち、充実感のある自分らしい生活ができているかを指します。
レクリエーションは、このQOLを高める効果があるといわれています。
認知症の症状によってできないことが増え、不安や焦りを感じたり、自信を失くしたりするといったネガティブな感情を持っている人でも、レクリエーションに参加すると自分にもまだできることがあると自信を取り戻すことがあります。また、他の人と楽しい時間を過ごすことは、生きる喜びや生きがいにつながります。日常の中で新たな出会いや楽しみを生むなど、レクリエーションはQOLを高めるための大切な活動です。
集団レクリエーションは、グループでゲームをしたり、歌ったり、体操など他の人とコミュニケーションをとりながら楽しむレクリエーションです。合唱などの音楽レクリエーション、ビンゴ大会やフルーツバスケットなどたくさんの人数で楽しめるので多くの高齢者介護施設で実施されています。グループに分かれて競い合うボウリングや風船バレーなどの体を動かす運動系の集団レクリエーションもあります。

個別レクリエーションは、個人または少人数で行うレクリエーションです。簡単なゲームや手芸、将棋、計算ドリル、個別体操などひとりひとりの好みに合わせて行います。
利用者の認知症機能にはそれぞれ個人差があるので、集団レクリエーションの参加が難しくなった方でも個別レクリエーションなら参加しやすくなっています。他の方とコミュニケーションを取るのが苦手な方でも無理なく取り組める点も魅力の一つです。
基礎生活レクリエーションは、時間を設けて行うものではなく、日常生活の中で楽しみや心地良さを感じてもらうためのレクリエーションです。例えば、食事中に好きな音楽を流したり、お部屋にお花や絵画を飾ったりなど誰でも気軽に行えるのが特徴です。安心・安全かつ簡単に実施できるレクリエーションとして取り入れる施設が多いでしょう。
ダンス、体操、簡単なゲームなど体を動かすレクリエーションは心身機能の維持や改善に役立つだけでなく、脳を活性化させるのにも効果的です。
リハビリはモチベーションを保つのが難しいですが、レクリエーションは楽しみながら体を動かすことができるので前向きな気持ちで取り組めて続けやすいというメリットがあります。
体を動かすことによって便秘や筋肉のコリ、血行不良といった身体の不調を解消し、食欲増進や睡眠の質の向上など生活リズムを整えることにもつながります。
<体を動かすレクリエーションの例>
片手をグー、反対の手をパーにし、掛け声に合わせてグーとパーを交互に入れ替える運動。手拍子を入れたり、腕の動きをつけると難易度が上がって面白くなります。参加者のレベルに合わせて動きを加えるなどの工夫をしましょう。 ・風船バレー 2グループに分かれ、風船が床につかないようにうちわで風を送り落ちないようにします。相手グループの床に風船を落とした方が勝ちとなります。 ・ダンスや体操 音楽に合わせて腕や足を動かす簡単なダンスやラジオ体操など、無理のない範囲で体を動かしましょう。座ったままでもできるようにするなど、誰もが気軽に楽しめる内容にすることを心がけると良いでしょう。
2グループに分かれ、風船が床につかないようにうちわで風を送り落ちないようにします。相手グループの床に風船を落とした方が勝ちとなります。
音楽に合わせて腕や足を動かす簡単なダンスやラジオ体操など、無理のない範囲で体を動かしましょう。座ったままでもできるようにするなど、誰もが気軽に楽しめる内容にすることを心がけると良いでしょう。
クイズや計算、言葉遊びなど、頭を使うレクリエーションは脳トレといわれ脳の働きをよくする効果が非常に高いとされています。
脳トレは考える、記憶する、判断するなど、脳の機能をたくさん使うので、活性化されます。ただしあまり複雑なルールにしてしまうと、認知症の症状がある人にとっては理解が難しくなりますのでことわざクイズやパズル、しりとりなど簡単なルールで気軽に楽しめる内容にしましょう。
<頭を使うレクリエーションの例>
トランプを使ったゲームはカードを記憶したり、作戦を立てたり頭をよく使うので脳が活性化されます。特に神経衰弱は、ルールもやり方も簡単ですが記憶力を必要とするため、介護施設でよく行われます。
普通のしりとり以外にも、食べ物、地名などお題を決めるなど制限をつけることで飽きずに楽しむことができます。
バラバラに並べられた文字を並び替え、何の言葉になるかを当てるゲーム。文字数や制限時間を変えることで難易度を調整できます。
手指を使う手芸や工芸、絵画などのアートに関するレクリエーションは、脳を刺激するだけでなく達成感や生きがいを感じられることから、多くの介護施設で取り入れられています。できあがった作品を飾ったり、家族にプレゼントすることで、作品を作る喜びや楽しみを生み出すことができます。
編み物や刺繍など、昔よく行っていたことは体が覚えていて忘れにくいといわれています。このような趣味や特技は、認知症を発症してからでも楽しむことができるので自信を取り戻すことにもつながります。
<手指を使うレクリエーションの例>
折り紙をする場合は、まず参加する方と相談して、何を折るかを決めます。次にその作品の見本を見せて、どう作るのかをゆっくりと丁寧に説明してから折っていきます。最初は折り鶴や風車など簡単なものから始めましょう・。完成後、可能であればお部屋や共有スペースなどに展示すると良いでしょう。
塗り絵は、細かい部分を色分けして塗るので手先の訓練になりますし、集中力も鍛えられるのでおすすめです。塗り絵の本や用紙の中から参加される方に好きな絵柄を選んでもらってから塗り絵を始めましょう。可能であれば、完成した作品を参加者同士で見せ合うなどもコミュニケーションとなるので良いでしょう。
材料を混ぜて焼くだけのホットケーキや溶かしたゼラチンを流し込むだけのゼリーなど簡単なお菓子づくりも手指を使うレクリエーションとしておすすめです。認知症の方の状態によって差がでてくるレクリエーションにはなりますので事前にそれぞれができることを把握した上で、ペースを考えながら進行するようにしてください。
若い頃の写真を見たり、当時好きだった音楽を流したりして、昔の記憶を思い返しながら当時のことについて話してもらうなど回想するレクリエーション。過去を振り返って当時の思い出を誰かに伝えることは、脳のたくさんの機能を使うため脳の活性化につながります。また、楽しかった思い出に浸ることで、現在感じている不安や焦りから解放されて心が穏やかになることもあります。
<回想レクリエーションの例>
・ 昔使っていた洗濯板などの懐かしい道具を用意し、当時のことを思い出してもらいます。どうやって使っていたのですか?と質問して、話のきっかけを作るのも良いでしょう。
・幼い頃からの思い出を時系列で振り返ってみましょう。話にしっかり耳を傾け、話したくないことは無理して聞き出さないようしましょう。
身体の機能改善や認知症予防のためだけでなく、リラックスやリフレッシュを目的として行うレクリエーションも大切です。
高齢者は、心身の衰えによる不安や焦り、自信の喪失や孤独感など、日々の生活の中で様々なストレスを抱えています。少しでもストレスを和らげるために行われるのが、アロマセラピーやハンドマッサージなどのレクリエーションです。幼稚園児が介護施設を訪問して入居者と交流することもレクリエーションのひとつで、昔の遊びを教えてあげたりするなど子供達とコミュニケーションを取ることで自分もまだ役に立つ存在だと自信を取り戻すきっかけにもなるでしょう。
<リラックスするレクリエーションの例>
相手の手を取り、指や手のひらを優しく揉みほぐします。
動物とふれあうアニマルセラピーは心を落ち着かせ、ストレスを軽減させるといわれています。犬や猫など動物のあたたかい体に触れたり、世話をしたり、動物とのふれあいを楽しんでもらいます。
高齢者は背骨が曲がって呼吸が浅くなりがちです。深呼吸をしてリラックスしましょう。息をゆっくり吸い、ゆっくり吐くことを意識して行うことで気持ちが落ち着きます。
―認知症の方のレクリエーションついて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「認知症を予防するためにできることは?運動や食事、おすすめのゲームなどの対策も」
▶ 「デイサービスのレクリエーション代表例15選!盛り上がるレクのコツも解説」
認知症の方にレクリエーションを楽しんでもらうために、以下のポイントに注意して行いましょう。
レクリエーションの内容を説明するときは、大きな声ではっきり、ゆっくりとわかりやすく話すことを心がけましょう。身ぶり手振りをつけるなど工夫するとよりわかりやすく伝えることができます。
あまりにも簡単すぎる内容だと子供扱いされていると感じて自尊心を傷つけてしまう恐れがあります。また、対戦式のゲームなどで負けることによって自尊心が傷つく場合もあります。自尊心が傷つくことがきっかけでレクリエーションの場から遠ざかることもありますから自尊心を傷つけないよう注意しましょう。
1対1の勝負のゲームになると負けた人が傷つき、対人関係などのトラブルに発展する可能性もあります。ゲームはなるべくチーム戦にして簡単なルールで気軽に楽しめるものにしましょう。チームやグループになってゲームをすれば、負けても気持ちを分かち合うことができ、コミュニケーションも深まります。勝ち負けではなく、参加することへの楽しさや喜びを感じてもらえる内容を目指しましょう。
たくさんの人と交流することが楽しいと感じる人もいれば、ひとりで黙々と作業したいという人もいます。それぞれの個性や好みを把握し、どんなレクリエーションなら興味を持ってもらえるかを考えて行いましょう。
本人がやりたくない場合は無理強いせず、本人の意思を尊重しましょう。無理に参加を促すとストレスを感じてしまいますので参加したいという気持ちがあるときに参加してもらいましょう。
レクリエーションの内容があまりにも簡単すぎるとバカにされていると感じて自尊心を傷つけてしまうことがあります。反対に難易度が高すぎると、うまくできず自信を失ってしまいます。
参加する人の判断能力や心身状態に合わせてほどよいレベル設定のレクリエーションを行うようにしましょう。
転倒やケガなどをしないように安全に配慮してレクリエーションを行いましょう。 例えば、椅子に座ったまま行えるレクリエーションであれば転倒でのケガのリスクを減らすことができます。認知症の症状によって予想外の行動を取る場合もあるので、周りに危険な物を置かず、目を離さないように注意しましょう。身体の状況や体調などを考慮して参加する人が無理なくできる内容を考えましょう。
特技を生かせる内容や、過去に経験したことがあるものなど、興味が持てる内容のレクリエーションにして本人が自然と楽しめるようにしましょう。
脳が疲れやすいといわれる認知症の人にとって、興味のないことや苦手なことに取り組むことは大きなストレスとなります。本人が嫌がっているときは無理に参加させないようにしましょう。
楽しい活動のレクリエーションでも、長時間続けることは疲労につながります。休みたいときに休めるようなスタイルにすることで、負担を軽減しましょう。とはいえ、集中しているときに無理に中断させることもよくないので、参加者の表情や行動をしっかりと見守るようにしましょう。
会話することが難しい、顔を覚えられないなどでも共に楽しむことで他の人とコミュニケーションすることができます。認知症の症状にとらわれることなく、他の人とふれあい、コミュニケーションできるのはレクリエーションのメリットのひとつです。
レクリエーションをしている中で、認知症の方がトラブルを起こしてしまうことがあります。ここでは、レクリエーション中に認知症の方が起こしやすいトラブルについて解説をしていきます。どのようなトラブルが起こるかを知り、その対処方法を知ることでトラブルが起きたときにも、とっさに冷静な判断ができるようにしましょう。
―認知症の人へ対応方法について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
認知症の方の中には、食べ物以外の物を口に入れてしまう、異食行動がみられることがあります。認知症が進むと、食べ物の区別が付かなくなってしまったり、満腹感を感じる脳の部分の異常で食欲の抑制が効かなくなったり、味覚障害が出現したりします。
異食行動によってレクリエーションに使用する道具を口に入れてしまう場合があります。このような場合でも強く注意したり無理に取り上げたりはしないようにしてください。今はやめましょうね、と優しく止める、または本物の食べ物と交換すると良いでしょう。また、道具の使い方をもう一度わかりやすく実演すると理解してもらえることがあります。
認知症の方は、感情を司る脳の前頭葉が委縮することで、感情のコントロールが難しくなります。色々な事が理解しにくくなり、不安やいらだちを感じると、とっさに暴言や暴力が出てしまうことがあります。興奮状態の方にその場で対処しようとすると、症状が悪化する場合があります。まずは物理的・心理的に距離を置くことが大切です。レクリエーション中にこのようなトラブルがあった場合は、他のスタッフに一旦その場から連れ出してもらい、本人が落ち着くまで待ちましょう。怒っている理由は客観的には分かりにくいですが、本人にとっては原因があるため、落ち着いてから話を聞いてあげましょう。
―認知症による暴言や暴力について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
厚生労働省の調査によると、認知症患者の約15%で妄想の症状が見られています。
被害妄想の多くは、自分が被害を受けたと思い込みます。レクリエーションの最中にも、誰かにレクリエーションの道具を取られた、意地悪をされた、悪口を言われたと主張することがあるかもしれません。被害妄想であるとわかっていても、まずは否定せずに本人の話をしっかり聞き、共感してあげましょう。実際の状況を説明し、訴えを正すことは、本人の訴えを否定してしまうことに繋がります。その結果として被害妄想を強く確信してしまい、この人はわかってくれないという気持ちを抱くことになります。被害妄想の原因としては、認知症の症状による不安感や孤独さ、不安定な心情などが考えられます。共感しながら話を聞き、相手に安心してもらうことを意識しましょう。
-参考-
厚生労働省 「精神病床における認知症入院患者に関する調査」について
―認知症による妄想について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「認知症の妄想(作り話)とは?症状の特徴や原因、対応方法まで解説」
認知症の方を対象にしたレクリエーションをご紹介してきました。機能を維持・向上だけでなく心の健康や感情の安定を支えるといった精神面での効果がレクリエーションの大きな目的です。この目的の中で認知症の方が喜ぶ遊びの提供を意識して、一緒に何かを楽しみながら自信をつけてもらうことが何より大切です。看護が必要な認知症の方であっても、認知機能の状態や身体の状況に合わせて無理なく参加できるレクリエーションを取り入れてみてください。また、フランスベッドでは手や足のリハビリが必要な方におすすめのリハビリテーション機器もご用意しています。
―フランスベッドのリハビリテーション機器について詳しくはこちらをご覧ください―
<フランスベッドのリハビリテーション機器>

手の指の曲げ伸ばしを行う筋肉を電気で刺激することで、硬くなった筋肉を和らげたり、指の動きのサポートを行います。

3軸ジャイロセンサーが歩行アルゴリズムを検知し最適なタイミングで電気刺激を行います。NESSL300™では実現できなかった裸足での歩行を可能にしました。

つま先を上げる筋肉を電気で刺激することで、硬くなったふくらはぎを和らげたり、歩くときにつまずかない様にサポートを行います。

バネの力によって、歩くときに足を前に振り出しやすいようにサポートします。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
商品やサービスに関するご質問、
ご相談にお答えしています。
商品やサービスに関するご質問、
ご相談にお答えしています。
まずはお気軽に資料請求を。
無料カタログをご送付致します。
今回発送いたしますカタログは、一部商品の仕様や価格など異なる場合がございます。ご了承ください。