この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
介護施設・老人ホームの費用について、入居時のシステムや内訳、介護保険を利用する場合の自己負担額などを介護施設選びの参考になるようにご紹介します。
2024年10月21日
介護施設や老人ホームなどの「高齢者向けの住まい」は、大きく分けると公的施設と民間施設の2種類があり、選ぶ施設の種類や地域によってかかる費用は大きく変わります。公的施設は民間施設に比べて比較的安い月額利用料で利用することができます。一方、民間施設では月額利用料に加えて、敷金、保証金、入居一時金などの初期費用が発生し、高額になる場合もあります。
公的施設は、国や地方公共団体、社会福祉法人などによって運営されています。民間施設に比べて費用負担が少ないため、入居希望者も多く、希望する施設になかなか入居できない場合もあります。公的施設の費用相場は次の表のようになります。
初期費用 | 月額利用料 | |
介護老人福祉施設/特別養護老人ホーム | なし | 約10万~13万円 |
介護老人保健施設 | なし | 約8万~15万円 |
介護医療院 | なし | 約8万~15万円 |
ケアハウス (軽費老人ホーム:一般型) | 0円〜数十万円 | 約6万~17万円 |
民間施設は、民間企業によって運営されています。公的施設に比べて費用は高くなりますが、他の施設との差別化のために、それぞれの特性を活かしたサービスを提供するなど、質の向上を目指しています。また、施設数が多いので、比較的入居しやすくなっています。
民間施設の費用の目安は、次の表のようになります。
初期費用 | 月額利用料 | |
介護付有料老人ホーム | 0円〜数千万円 | 約15万円〜30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0円〜数百万円 | 約10万円〜20万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 (サ高住) | 数十万円 | 約12万円〜20万円 |
グループホーム | 0円〜数十万円 | 約10万円〜15万円 |
■公的施設(介護保険施設)
公的施設の中で介護保険サービスを利用できる施設を介護保険施設と呼び、主に次の4つです。
①介護老人福祉施設:特別養護老人ホーム/特養
介護老人福祉施設は、特別養護老人ホーム(特養)とも呼ばれています。入浴、排せつ、食事等の日常生活の介護や機能訓練を受けながら長期入居できる施設です。介護保険によって比較的低価格でサービスで受けることができるので、人気が高く入居希望者 が多いためすぐに入居できないこともあります。また看護師は夜間には駐在していないため常時医療ケアが必要な場合は入所が受け入れられない場合があります。
原則として要介護3以上と認定された方が入居可能です。
【初期費用】:0円
【月額費用】:約10万円〜15万円
―要介護3について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「要介護3とはどんな状態?特徴や受けられるサービス・要介護度との違いを解説!」
②介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、老健とも呼ばれます。自宅での生活の復帰をめざし、入居者ひとりひとりの状態や目標に合わせたサービスを提供しています。医師による医学的管理のもと、看護・介護といったケアはもとより、医学療法士や作業療法士等によるリハビリテーション、栄養管理・食事・入浴などの日常サービスまで合わせて提供していて、夜間でも安心できる体制を整えています。原則として65歳以上で要介護1以上の方が入居可能です。平均的な入居期間は3ヶ月から1年で、自宅での生活に戻れる状態かどうかが3か月ごとに検討され、難しい場合はそのまま入居、在宅復帰可能と判断されれば退去となります。
【初期費用】:0円
【月額費用】:約8万円〜15万円
―介護老人保健施設(老健)について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「老健(介護老人保健施設)とは?費用や特徴、入所条件を解説」
③介護医療院
介護医療院は、医療ケアが必要な要介護者に、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する施設です。緊急対応もおこない、医師や看護師も配置されていて、施設の人員基準などから、医療ケアが強化されたⅠ型と、I型よりも比較的容体が安定したリハビリや在宅復帰を目指す方に適したⅡ型に分かれています。原則として要介護1以上で入居が可能で、医療ケアの必要性が高い方の入所が優先されます。 また、看取りやターミナルケアの提供も行っているので、状態の急変などの際にもあわてることなく過ごすことができます。
※「介護医療院」の前身である「介護療養型医療施設」は令和6年3月31日で廃止になりました。
【初期費用】:0円
【月額費用】:約8万円〜15万円
④ケアハウス
ケアハウスは、低所得でかつ自立した日常生活を営むことが 難しい高齢者の生活を支える「軽費老人ホーム」の一種です。所得や家庭環境よりも住宅面に重点をおいているのが特徴で、食事その他日常生活上必要なサポートを提供しています。また、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている介護型の場合は、施設の介護サービスを受けることができますが、介護保険法上軽費老人ホームは「居宅」にあたるので、一般的には介護サービスが必要な場合、外部の事業者と必要に応じて個別に契約することになります。
【初期費用】:一般型 0円〜数10万円 介護型0円〜約数100万円
【月額費用】:約6万円〜17万円
■民間施設
民間施設には次のようなものがあります。
(※初期費用には敷金、保証金、入居一時金などが含まれます)
①有料老人ホーム
有料老人ホームとは、高齢者を対象に、①食事の提供、②介護(入浴・排泄・食事)の提供③洗濯・掃除等の家事の供与、④健康管理のいずれかのサービス(複数も可)を提供している施設です。特定施設入居者生活介護の指定をうけた「介護付き有料老人ホーム」と指定を受けていない「住宅型有料老人ホーム」があります。
●介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設なので、入所後に介護が必要となっても、施設が提供する介護サービスを利用しながら施設の居室で生活を継続することが可能です。特養などの公的施設に比べて費用がたかくなる分、設備やサービスなどが充実しています。
【初期費用】:0円〜数1,000万円
【月額費用】:約15万円〜30万円
●住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、介護度が低い高齢者向けの施設で、安否確認や生活支援といったサービスが提供されます。ただし、特定施設入居者生活介護の指定を受けていないので、介護が必要となった場合は別途外部の介護サービス事業所と個別に契約・利用する必要があります。
【初期費用】:0円〜数100万円
【月額費用】:約10万円〜20万円
②サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅は、単身高齢者や夫婦世帯が安心して暮らすための環境がととのっていると認められた賃貸住宅です。バリアフリー構造、面積、設備、ケアの専門家による安否確認、生活相談サービスの提供、居住の安定が図られた契約など登録基準が設けられています。介護サービスの利用が必要な場合、入居者自身で必要なサービスを選ぶことになりますが、特定施設入居者生活介護の指定を受けている場合は、施設の介護・看護職員による、食事や入浴などの介助も受けられます。
【初期費用】:数10万円
【月額費用】:約12万円〜20万円
③グループホーム
グループホームとは、比較的安定した状態にある認知症の要介護者がスタッフのサポートを受けながら5人~9人程度の少人数で共同生活を送る施設です。利用者の能力・状態に応じて介護や日常生活上の世話や機能訓練を行います。
【初期費用】:0円〜数10万円
【月額費用】:約10万円〜15万円
④シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションとは、高齢者が安心して快適に生活しやすいようにバリアフリー化された分譲住宅です。一般的な分譲住宅よりも金額は高めで、「自立した生活が送れる高齢者」を対象としており、介護サービスは提供されないため、介護が必要な場合は外部の介護サービスを利用します。
【初期費用】:数100万円~数億円
【月額費用】:約10万円〜30万円
―施設の種類については、こちらもご覧ください。―
参考:▶ 厚生労働省「高齢者向け住まいの概要」
介護施設・老人ホームの費用の仕組みとしては、「入居一時金」と「月額利用料」の2つに分けられます。簡単に言うと、「入居一時金」は、施設へ入居する際に支払う前払い金のことで施設の運営費や建設費などの一部をカバーするために使われます。途中で施設を退去した場合には一部返還されることもありますが、条件は施設ごとに異なります。
「月額利用料」は、入居後に毎月支払う費用のことで家賃・食費・管理費・介護サービス費などが含まれます。他にも、介護施設・老人ホームの費用に関しては、聞き慣れない難しい用語がいろいろあります。初期償却、返還金、クーリングオフなど利用するにあたって覚えておい用語をとりあげそれぞれ解説していきましょう。
入居一時金は、介護施設や老人ホームへの入居時に支払う前払い金のことで、契約時に決められた割合で少しずつ償却され、月々の利用料が安くなるというメリットがあります。
しかし、初期費用として高額なお金を支払う必要があるため、経済的負担が大きいのがデメリットです。早期に退去となる場合は未償却分が返還され、契約から90日以内の解約ならクーリングオフ制度で全額返還が保証されています。
高級な施設では、入居一時金が500万円以上、場合によっては1,000万円以上になることもありますので施設側との金銭的なトラブルや、一時金の納入による資産価値の目減りも考慮すべきリスクです。時間とともに物価が上昇することを考慮すると、入居一時金として先払いすることで資産運用の機会が失われ、資産の価値が減少する可能性があるためです。入居中に施設が倒産した場合は、一時金の一部(最大500万円)が返還される制度があります。契約時に「重要事項説明書」でこの措置の記載を確認したり、入居一時金が不要の施設を選んだりするのもリスクを避けるためには必要です。
初期償却とは、入居時に一定の割合を一度に償却する方法です。例えば、600万円の入居一時金があり、初期償却率が20%、償却期間が5年の場合、初期償却で120万円が償却され、残りの480万円が5年間で均等に償却されることになります。償却とは、資産の価値を使用期間にわたり徐々に減少させることです。老人ホームの入居一時金は、一定の期間で償却されます。例として、5年間で均等償却の場合は、毎年の償却額は(600万円-120万円)÷5年=96万円となります。
返還金が発生するのは以下のような場合となります。
●入居期間よりも早く退去し、未償却分の入居一時金が返還される
●契約後90日以内に退去し、初期償却分を除いた全額が返還される
具体例として、入居一時金600万円初期償却20%(120万円)償却期間5年(毎年96万円)の場合、もし1年で退去すると、未償却分は480万円 – 96万円 = 384万円となり、この金額が返還されます。償却率や償却期間は、施設によって違うため必ず契約前に確認してください。
クーリングオフとは、契約後90日以内に退去する場合、無条件で初期償却分を除いた入居一時金全額が返還される制度のことです。クーリングオフのメリットは、入居後施設が合わなかった場合や体調の悪化で退去の場合でも短期間で解約できる点です。デメリットとしては、実際に入居中の家賃や共益費などの支払いが必要となることや、施設によっては初期償却として一定額が返還されない場合もあります。入居前に施設の契約内容をきちんと確認することが大切です。
老人ホームの費用の内訳は、施設の種類や地域によって異なりますが、一般的な内訳とその相場は以下の表のとおりです。
表は、厚生労働省の介護保険の解説サービスにかかる利用料 を参考に目安として作成たものですので実際の費用はケアマネジャーや施設担当者に問い合わせてください。
また、表以外に光熱費・通信費、生活用品購入費、医療費(施設外の医療機関を受診した場合など)、アクティビティ参加費なども必要となります。
費用項目 | 内容 | 月額費用の目安 |
家賃 | 居室の使用料 | 5万~15万円 |
管理費 | 共用部分の維持管理費 清掃費など | 1万~3万円 |
食費 | 食事の提供費用 (1日3食) | 3万~5万円 |
介護サービス費 | 介護保険サービスの自己負担分(1割~3割負担) | 2万~5万円 |
―介護施設について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「介護サービスとは?種類ごとの内容や利用の流れを解説」
費用よって設備や人員体制、食事やレクリエーションなど介護施設・老人ホームのサービスは違ってきます。どのように違うのかその内容を説明していきます。
立地条件による違いとしては、都市部にある施設は交通の便が良く、近くに医療機関や商業施設が多くなっていますが、その分費用も高くなります。一方、郊外や地方にある施設は、自然に囲まれた静かな環境で、費用も比較的安くなります。
このように首都圏と地方との違いや、同じ都道府県内でも都市部と郊外で異なる条件を考慮し、予算や希望に合った施設や老人ホームを選ぶのが良いでしょう。
施設の設備も費用に直結しており、入居費用が上がると共用スペースも広く、カラオケや理美容室・医務室などの生活環境が整っているなど設備が充実しています。高級な施設では、最新の医療機器やリハビリ設備、プールやフィットネスジムなどがある場合もあり、より快適な生活を望む方におすすめです。
これに対して、基本的な設備のみの施設は費用を抑えられますが、提供されるサービスの範囲も限られます。基本的な設備は、個室または多床室・食堂やリビング・リハビリ室などが含まれます。公的施設では、居室の面積やトイレや浴室など入居者が安全かつ快適に過ごせる基準をクリアしています。
いずれの場合も入居を検討されている方は、実際に施設の設備を見学し、入居する方に合っているか確認するようにしましょう。
居室の機能性や快適さも、費用に影響を与えます。高額な施設では、広々とした個室やスイートルームが用意されており、プライバシーが確保されています。家具やインテリアも高品質なものが使用され、快適な生活が送れます。一方、費用を抑えた施設では、相部屋やシンプルな個室が一般的で、必要最低限の設備となっています。相部屋(多床室)のメリットは、複数の入居者が一つの部屋を共有する形式で、費用を抑えつつも他の入居者との交流がしやすい点です。ユニット型個室は、個室と多床室の利点のバランスが取れています。
人員体制も費用によって差があります。高級な施設では、介護スタッフの数が多く、一人ひとりに対するケアが手厚くなっています。専門的な知識を持ったスタッフが常駐していることも多いので安心して生活を送ることができます。これに対して、費用を抑えた施設では、スタッフの数が限られており、ケアの質もそれに応じて変わります。
特に医療的ケアが必要な場合は、医師や看護師の常勤体制や緊急時の対応、職員による通院が可能かなど、人員体制の違いがサービスに影響するので入居の際は必ず確認したい条件となるでしょう。
食事の質やバリエーションは、費用に影響します。高級な施設では、専属のシェフが季節の食材を使ったバランスの取れた食事を提供し、イベント食など特別なメニューも豊富となっています。一方、費用を抑えた施設では、基本的な食事が提供され、特別なメニューやイベント食の頻度は少なくなります。それでも、公的施設では、管理栄養士が栄養のバランスや個々の状態に合わせたメニューを考案しており、予算内で四季折々の工夫がなされ、毎日の食事が入居者の楽しみとなっています。
施設の費用にはレクリエーションの充実度も大きく影響します。高額な施設では、多様なレクリエーション活動やイベントが企画されており、趣味のサークルや習い事など入居者が楽しめる環境も整っています。これに対して、費用を抑えた施設では、基本的なレクリエーション活動が中心で、提供されるプログラムの数や種類も限られます。具体的には年中行事に合わせたお花見・夏祭り・敬老会・クリスマスなどのイベントや外部の催し物の招待、リハビリ目的のレクリエーションなどが行われます。
施設や在宅の介護保険サービスの自己負担額の目安は、所得や要介護度に応じ1割〜3割の負担となっています。
施設・居宅とも負担限度額は要介護度別に上限があり、超えた分は全額自己負担(10割)です。
例えば、特別養護老人ホームで1割負担の方が要介護5で多床室に入居の場合、1ヶ月の自己負担額は約104,200円です。
●施設サービス費約25,200円(847単位×30日)
●居住費、約25,650円(855円/日)
●食費約43,350円(1,445円/日)
●日常生活費 約10,000円(施設ごと設定)
などが含まれます。
外部の事業者と在宅で契約する居宅サービスの場合は次のようになります。
1割負担で要介護度5の方
●訪問介護: 週5回1日1時間 月20想定6,780円
●訪問看護:週2回1回30分 月8想定4,696円
●福祉用具のレンタル:車椅子・ベッド 2,428円
●通所介護:週3回 1日6時間(入浴、食事込み)14,004円
合計27,908円(実質279,080円)
支給限度額362,170円内のため追加自己負担はありません。
―居宅サービスについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「居宅サービスとは?種類ごとの内容・自己負担額、利用の流れまで解説」
介護施設や老人ホームの支払いは、一時金を払うか、払わないかが大きな違いとなります。
支払い方法は大きくわけて4つに分類されます。
支払い方法 | メリット | デメリット | |
一時金前払い方式 (全額前払い方式) |
終身にわたり支払う費用を一括前払いする | その後に高額な支払いの必要がなく、 経済的に安定した見通しを立てやすい |
入所中に何らかの理由で利用料が値下げされても、差額が返金されない場合が多い |
一部前払い 一部月払い方式 |
終身にわたり支払う家賃などを一部前払いにして、他の費用を月払いにする | 返還金制度があるため、償却期間が終了以前に退去する場合、 入居一時金として支払い済みの金額の未償却分を返金してもらえる |
全額前払い方式と比べると、月々の支払いが高めの設定になることが多い |
月払い方式 (初期費用0円プラン) |
前払いは一切行わず、月ごとに家賃や必要なサービスの費用を支払う | 初期費用がかからないため、短期間に利用する場合に向いている | 月額利用料が値上げされた場合は、毎月の負担額が大きくなる傾向がある |
選択方式 | 上の3方式のいずれかを選べる | 3つ方法のメリット・デメリットを見極める必要がある |
厚生労働省の発表によると、令和4年度末の厚生年金受給者の平均受給額は月額144,982円、国民年金受給者の平均は月額56,428円となっています。公的年金だけで費用を賄うことができないわけではありませんが、入居できる施設の選択肢が少なくなり、厳しい状況と言えます。
年金以外の収入がなく、経済的に余裕がない場合は、入居一時金が不要な特養のような公的施設があります。所得に応じた軽減制度なども適用されるので入居できる可能性があります。ただし、待機者が多いこともあり、入居を希望してもすぐに入居できないことが考えられます。有料老人ホームのような民間施設は、施設数も増加していて比較的入居しやすいですが、入居一時金や月額費用を考えると公的年金だけで賄うのは厳しいでしょう。
―参考―
▶ 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」
介護施設や老人ホーム、医療費や薬代など、介護を始めるにあたって発生する様々な費用があります。日本では介護費用の負担を軽減してくれる制度が数々整備されていますが、認知されておらず、上手く活用できていない制度や利用するための申請手続きが必要な制度も多々あります。介護費用の負担をできるだけ軽くするために、最低限把握しておいた方がいい控除や制度がありますので、理解しておきましょう。
介護保険が適用される以下の施設では、民間施設に比べて費用が安く設定されています。有効に活用しましょう。
【介護保険適用可能な施設】
・介護老人福祉施設(特養)
・介護老人保健施設(老健)
・介護医療院
民間施設の場合でも、介護付有料老人ホームのように一定の基準を満たして特定施設の指定を受けている施設では、日常生活上の世話や機能訓練、療養上の世話に介護保険が適用されます。
住宅型有料老人ホームの場合は、特定施設の指定を受けていないので、外部の介護サービスを個人で契約することになりますが、訪問介護や訪問リハビリなど、必要に応じて契約したサービスには介護保険が適用されます。
介護保険が適用されることで、自己負担額は費用の1割(所得に応じて2〜3割)となりますので活用しましょう。ただし介護保険が適用されるのは要介護認定を受けた方に限られます。要介護度によって、利用できる施設のタイプや介護サービスなども変わりますので確認が必要です。
要介護認定を受けていない方は、まず各自治体の窓口で要介護認定の申請を行いましょう。
―介護保険・要介護認定について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「介護認定調査とは?当日に心がけるべきこと」
▶ 「介護保険制度とは?仕組みやサービス内容など基礎をわかりやすく解説」
公的介護保険サービスの自己負担額は原則1割(所得応じて2〜3割)とされています。
高額サービス費支給制度とは、介護保険サービス費が毎月の限度額を上回った際に超過分を払い戻してくれる仕組みのことです。1ヶ月に負担する上限額は、個人や世帯の前年の所得などに応じて決められています。
対象者の所得条件 | 月々の負担上限額 |
生活保護を受給など | 個人 15,000円 |
前年の合計所得と公的年金収入の合計額 年間80万円以下など | 個人 15,000円 世帯 24,600円 |
世帯全員が市区町村税 非課税 | 世帯 24,600円 |
市区町村税〜課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 世帯 44,400円 |
課税所得が380万〜690万円(年収約770〜1,160万円)未満 | 世帯 93,000円 |
課税所得が690万円(年収約1,160万円)以上 | 世帯 140,100円 |
なお、居宅サービス・介護施設サービス・地域密着型サービスは払い戻し対象となりますが、特定福祉用具購入や配食サービス、施設での食費・居住費などは、対象外のサービスも多いので、確認が必要です。
【申請について】
支給を受けるためには、介護サービスの利用開始から2年以内に申請が必要です。申請書に記入捺印のうえ、役所などへ郵送または持参してください。自治体ごとに申請方法が違いますので、手続きや必要品について事前に各自治体へ問い合わせましょう。一度申請すれば、その後の該当する月々の超過分は、指定口座へ自動的に振り込まれます。
高額医療費制度は高額療養費制度とも言いますが、医療費の家計負担が大きくならないように、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1ヶ月で上限額を超えると、超過額を支給する制度があります。ただし、入院時の食事負担や差額ベッド代などは含まれません。上限額は年齢や所得によって異なっています。70歳以上の場合は、世帯合算に加えて、外来のみの上限額も設定されています。また、医療機関1ヶ所で自己負担が上限額を超えなくても、同月の別の医療機関での自己負担分を合算して、1ヶ月の合計額が上限を越えれば支給対象になります。
特別減額措置とは、長期的に考えて、介護保険施設に対して支払いが難しいと判断される場合、居住費および入居中の食費を減額してもらえる仕組みです。所得や貯金額などが基準値を下回る際に、介護保険負担限度額認定証が自治体から交付されて、特別措置を受けることができます。
利用者負担軽減措置とは、利用者が経済的に困窮している場合、介護費用に対して25%の軽減措置を受けることができる措置です。ただし、施設を運営している社会福祉法人が利用者負担軽減制度の活用を申告済みの場合に限ります。介護費用の負担が75%になるため、できるだけ活用したい制度と言えます。希望の施設で実際に制度が使えるかどうかを、担当する自治体の福祉課へ事前に問い合わせておきましょう。
年金受給をしていても、生活が困窮していると認定されると、生活保護が受けられます。生活保護を受給すると介護扶助が適用され、自己負担が無くなります。また生活保護法のもと、指定の施設に入居することが可能になり、施設を探す際にも有利です。ケアマネジャー・ケースワーカーや自治体の生活支援担当窓口に相談しましょう。
収入状況などの変化で介護施設や老人ホームの費用が払えないという場合があります。ただ、どうしても費用が支払えなくなったときでも、すぐに退去を迫られるわけではありません。3〜6ヶ月程度の猶予期間が与えられるのが通常となります。施設により猶予期間の規定が異なるため、事前に契約書や重要事項説明書をよく確認しておくことが重要となります。万が一の場合は、猶予期間内に、次の2つの方法で冷静に対処しましょう。
費用が払えないとなったら、施設のスタッフやケアマネジャーに相談しましょう。専門的な立場からのサポートや、いろいろな解決策を提案してくれます。現費用の一部を延期/分割できるかどうかの確認や、今の施設よりも負担の軽い施設の紹介、仲介業者などの紹介を頼めるかもしれません。ためらわずに早い段階から相談するようにしましょう。
―ケアマネジャーについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?役割・仕事内容・資格について解説」
負担額の少ない施設へ転居を考える際にはいくつかの選び方があります。
一つめとして築年数が古く駅から遠い施設は、低めの料金が設定されている場合があります。建物が古いから質が良くないというわけではなく、設備やスタッフに恵まれているところもありますので、実際に見学したり、話を聞いたりして入居する方にあった良い施設を見つけましょう。
二つめとして、郊外型の施設を選択することで都市部に比べ、家賃や利用料金が低めとなりますので費用を抑えたい場合は、郊外の施設も検討してみましょう。
三つめは、多床室の選択です。個室やユニット型は一人当たりの居室面積も比較的広く、備品も個人用に準備されるため、入居に関わる費用も高くなりがちです。大部屋や相部屋は、一人では寂しいと思う方やおしゃべりが苦手でない方には向いている居室ですのでコストダウンを考える際には、多床室も選択肢に入れましょう。
介護施設や老人ホームの費用を誰が負担するのかは、あくまでもケースバイケースになります。親が費用すべてを負担する場合もありますし、子どもが肩代わりすることもあります。家庭の事情や経済状況などによると思いますので、前もって家族で十分話し合って、トラブルが起きないようにしましょう。ただし、税務上で贈与税の課税対象になって、高額な税金を払う必要が出てくる場合があるので、注意しましょう。
自立単身者が有料老人ホームに入居する場合の入居時および入居後に必要な費用を概算してみましょう。例として、68歳独身女性が今後のことを考慮して、介護付き有料老人ホーム入居時自立型を利用する場合で、余暇を楽しく過ごせるような設備が充実した施設を選択したと仮定します。また、一部家具/生活用品の持ち込みをして、生活用品費は押さえ気味にしてあります。
【入居時にかかる費用】
①入居一時金: 3,000万円 ②引越し費用:5~10万円 ③生活用品の費用 :10万円
【入居後にかかる費用(月単位)】
①月額使用料: 18万円 ②介護サービス費用 :なし ③その他 諸費用: 趣味/レジャー/交際費など
入居一時金は0〜数千万円まで幅広く設定されています。無料に近い設定の施設の場合、月額使用料に家賃が加算されているケースが普通で、毎月の月額費用が高額になります。今回のように入居一時金が高いのは、立地条件のよさや、サービス・施設の充実度に因るところが大きいです。長期の入居を考える場合は、入居一時金を支払い、月額費用を抑えた方がいいでしょう。
次に、要介護1の認定を受けた73歳独身男性が住宅型有料老人ホームに入居が決まった場合の費用の概算をまとめてみました。
【入居時にかかる費用】
①入居一時金(敷金) :1,000万円 ②引越し費: 6万円 ③生活用品の費用 :5万円
【入居後にかかる費用(月単位)】
①月額使用料: 15万円 ②介護サービス費用 :*16,765円(1割)、33,530円(2割)、50,295円(3割負担) ③その他 諸費用: 医療費/通院付添料
*居宅介護の料金体系により、区分支給限度額の上限まで使ったときの金額を示す
要介護度 | 支給限度額 | 1割負担額 | 2割負担額 | 3割負担額 |
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
次に息子夫婦と同居をする場合の介護保険負担額や、介護サービス費、医療費などの費用の概算をシミュレーションしました。
【設定】
・女性 81歳 要介護2
・自宅で暮らしたいが、できる限り家族に迷惑をかけたくないと思っている
・息子夫婦と同居
・夫婦の収入と年金 45万円
【1ヶ月の費用】 合計 393,417円
(1)生活費 350,000円 (2)介護保険自己負担額 19,417円
[内訳] ① デイサービス9回/月 7,533円 ②デイケア 5回/月 7,503円 ③訪問介護 13回/月 4,381円
(3)介護サービス自費(デイサービス食事代)
700円 × 13 = 9,000円
(4)医療費 15,000円
【1ヶ月の収支】
収入450,000円 ― 支出 393,417円 = + 56,583円
次に夫婦どちらかが在宅で介護をおこなう場合もどれくらいの費用がかかるのか、概算をシミュレーションしました。
【設定】
・女性 85歳 要介護3
・夫婦で年金暮らし 計18万円
・本人が自宅での生活を希望
・娘は遠方で暮らしているので、介護のために戻ることは困難
→介護費用に使えるお金が限られているため、介護保険の範囲内で介護保険サービスを最大利用する
【1ヶ月の費用】 合計 229,102円
(1)生活費 180,000円 (2)介護保険自己負担額 22,202円
[内訳] ① デイサービス17回/月 16,337円 ②訪問介護 13回/月 4,199円 ③福祉用具貸与(車いす/ベッド)1,666円
(3)介護サービス自費(デイサービス食事代)
700円 × 17 = 11,900円
(4)医療費 15,000円
【1ヶ月の収支】
収入180,000円 ― 支出 229,102円 = -49,102円
上記はあくまでシミュレーションですが、想定されるケースに置き換え、イメージしておくと良いでしょう。
介護に直面した際には、在宅介護、介護施設・老人ホームの利用などご家族の状況に合わせて選択肢は様々です。
在宅介護を選ばれた場合には、介護用品・福祉用具でのサポートが必要となるでしょう。そんなときは
全国97カ所に福祉用具貸与事業所をもつフランスベッドを利用しましょう。フランスベッドは、介護用品・福祉用具のパイオニアとして長年にわたり介護用品提供の実績があり、信頼性と実績は高く評価されていますので、介護を受ける方も介護をする方も安心して利用できるでしょう。福祉用具専門相談員の資格を持つプランナーが多数在籍していますのでまずは、フランスベッドに相談してみましょう。利用者様一人ひとりに最適な介護用品・福祉用具を提案してくれるでしょう。
介護施設や老人ホームには、様々な種類があり、提供されるサービス内容や費用も異なります。快適な老後を過ごすためには、無理のない資金計画を立てて、最適な施設を選ぶのが大切です。そのためには、費用の内訳や介護保険・医療の仕組みを理解が必要でしょう。情報を集めながら、ケアマネジャーや施設の担当者へ相談し、実際に施設を見学することをおすすめします。この記事を参考に、ご自身やご家族に合った施設や介護サービスを見つけてください。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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