この記事の監修者
-
フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
老健(介護老人保健施設)とは何か?サービス内容や入所条件、費用について、入所を検討するときに事前に理解しておきたいメリットとデメリットについて、特別養護老人ホームとの違いなどをご紹介します。
2024年10月10日
老健とは、介護老人保健施設の略称のことで、在宅復帰を目指して医療ケアやリハビリを受けられる公的施設のことをいいます。有料の老人ホームや特別養護老人ホームなどの他の介護施設と比べると長期間入居することはできませんが、他の介護施設と違う役割があります。介護老人保健施設はどのような施設なのかご紹介していきます。
様々な介護サービスがある中で、介護老人保健施設(老健)で受けられるサービスには、主に以下のような内容があります。
介護老人保健施設(老健)では、週2回以上のリハビリを受けられます。1回のリハビリ時間は20〜30分程度で、ベッドから起き上がり車椅子へ移乗する訓練や歩行訓練など、利用者の状況に合わせた内容のリハビリが行われます。
介護老人保健施設(老健)には医師が常駐しているため、入居者の体調管理や薬の処方などが行われます。特別養護老人ホームなどに比べて看護職員の数も多く、たん吸引やインスリン注射、経管栄養などの医療的措置が受けられます。看護職員は24時間常駐しているところが多いですが、施設によっては日中しかいないところもあります。
介護老人保健施設(老健)では、食事介助や排泄介助、入浴介助などの身体介護も受けられます。居室の掃除などの生活援助も受けられますが、洗濯や買い物については家族が行うか、別料金で外部の業者に委託していることが多いです。
介護老人保健施設(老健)では、栄養士によって監修された栄養バランスのとれた食事が提供されます。嚥下(えんげ)機能が低下している方に対して食べやすいようにされた介護食や、身体の健康状態を良好に保つために塩分が制限された食事など、利用者の状況に合わせたサポートも受けられます。
介護老人保健施設(老健)は、特養護老人ホームに比べると医療、看護が充実しているため費用は高くなっていますが、毎月発生する料金には介護保険が適用され、原則として1割(所得に応じて2〜3割)の自己負担額で利用できます。介護保険法に基づいて設立された公的施設であるため、入所一時金のような費用を支払う必要はありません。介護老人保健施設(老健)では、施設職員の配置や対応する処置などに応じてサービス提供体強化加算や経口維持加算と呼ばれる加算料金が発生することがあります。
介護保険サービスの費用は、円ではなく単位で示されます。住んでいる地域によって多少の変動はありますが、今回は1単位あたり10円換算にて表記しています。介護老人保健施設(老健)を利用するにあたっては、施設の立地や居室面積、スタッフの配置、個室や多床室などの居室のタイプによって費用が異なることを認識しておきましょう。また要介護度の段階別でも費用は異なり、さらには基本型か在宅強化型かによっても自己負担額が変わります。在宅強化型とは、主に在宅復帰率が50%を超えていて、ベッドの回転率が10%以上であること、そして要介護4または要介護5の方が35%であるという一定の条件を満たした施設を指します。
利用料金の一日の目安(自己負担額1割の場合)
<従来型個室> 基本型 | <従来型個室> 在宅強化型 | <多床室> 基本型 | <多床室> 在宅強化型 | |
要介護1 | 717円 | 788円 | 793円 | 871円 |
要介護2 | 763円 | 863円 | 843円 | 947円 |
要介護3 | 828円 | 928円 | 908円 | 1,014円 |
要介護4 | 883円 | 985円 | 961円 | 1,072円 |
要介護5 | 932円 | 1,040円 | 1,012円 | 1,125円 |
ユニット型の介護保健施設は、10名前後の少人数のグループをひとつのユニットとして介護する施設でユニット型個室、ユニット型個室的多床室があります。ユニット型個室にはグループ共有のリビングがあり、その周りを囲うように個室が設置されているタイプがほとんどですが、ユニット型個室的多床室の場合、大部屋を簡易的に仕切って使用するタイプの部屋が多い傾向にあります。ユニット型介護保健施設は少人数制であるため、従来型の施設と比較すると介護職員や看護職員によるケアも手厚いですが、その分料金が高くなることを知っておきましょう。
利用料金の一日の目安(自己負担額1割の場合)
<ユニット型個室> 基本型 | <ユニット型個室> 在宅強化型 | <ユニット型個室的多床室> 基本型 | <ユニット型個室的多床室> 在宅強化型 | |
要介護1 | 802円 | 876円 | 802円 | 876円 |
要介護2 | 848円 | 952円 | 848円 | 952円 |
要介護3 | 913円 | 1,018円 | 913円 | 1,018円 |
要介護4 | 968円 | 1,077円 | 968円 | 1,077円 |
要介護5 | 1,018円 | 1,130円 | 1,018円 | 1,130円 |
介護老人保健施設(老健)の一日の食事に関する標準費用は、1,445円です。施設によって食費に大きな差が生じないように、この金額が基準額となっています。
介護老人保健施設(老健)の居住費(家賃)は、利用者本人の所得金額に応じて段階的に負担する金額が定められています。ユニット型個室的多床室の場合は、複数で一つの部屋を使用するタイプの居室であるため、居住費は他の部屋と比べると安くなり、ユニット型個室の居住費は高めになります。このよう居室のタイプによって金額の差がある居住費ですが、費用面だけでなく、介護者本人の意向や症状、家族の負担軽減などを考慮して入所するかどうか決めるようにしましょう。
利用料金の目安
部屋のタイプ | 基準居住費(日額) |
従来型個室 | 1,668円 |
多床室 | 377円 |
ユニット型個室 | 2,006円 |
ユニット型個室的多床室 | 1,668円 |
要介護2の方が基本型施設の多床室に30日間入所した場合の費用を計算すると、およそ8万円の費用が想定されます。下記の表の費用のうち、施設サービス費に関しては介護保険が適用され、自己負担額が1割と想定した金額になっています。多床室の場合は、大きな部屋を数人で使用するタイプで、1日あたりの居住費は377円となっています。この他にも通信費代や理美容代、日用品などの項目で施設ごとに料金が設定されているため、表の費用はあくまでも目安として考えておきましょう。
1か月の利用料金の目安
施設サービス費 | 25,290円(843円×30日) |
居住費 | 11,310円(377円×30日) |
食費 | 43,350円(1,445円×30日) |
合計 | 79,950円 |
要介護3の方が基本型施設のユニット型個室に30日間入所した場合の費用は、介護保険の自己負担額が1割とすると、全体でおよそ13万円の費用がかかることが想定されます。基本型施設の多床室と比較すると、居住費は高めとなりますが、食費と居住費に関しては、所得の少ない方や生活保護を受給している方などは減免措置(特定入所者介護サービス費)を受けることができます。利用者が住んでいる自治体でこの制度の申し込みをすると、自己負担限度額を超える金額は免除されるため、費用負担を抑えられます。
1か月の利用料金の目安
施設サービス費 | 27,390円(913円×30日) |
居住費 | 60,180円(2,006円×30日) |
食費 | 43,350円(1,445円×30日) |
合計 | 130,920円 |
―参考―
介護老人保健施設(老健)の入所対象者は、要介護1以上の認定を受けている方となります。病気やケガなどで一度入院し、その後は病状が安定しているが、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門知識を持った人のリハビリテーションを受けることを必要としており、すぐに自宅に戻るのが難しいケースなど在宅復帰を目指す方に限られます。その他にも病気による長期入院の必要がない、感染症にかかっていないなど、施設によって条件を加えている場合もあります。
介護老人保健施設(老健)は、待機者が多くてなかなか入居できない特別養護老人ホームに比べると待機期間が短く、申し込んでから3〜6ヶ月で入所できることがほとんどです。入所できる期間が限られているため空きが出やすく、都心部などの施設数が多いところでは待機者が少ない傾向にあります。
介護老人保健施設(老健)へ入所する際の流れについて要介護認定、施設選び、入所申込、面談
入所判定、契約までを順にご紹介していきます。
要介護認定を受けていない方は、まず要介護認定を申請する必要があります。自治体の窓口または地域包括支援センターで申請を行いましょう。
―要介護認定について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「要介護認定とは?認定基準や区分、申請~通知の流れを解説」
入所したい介護老人保健施設(老健)を選びましょう。入院している場合は病院のソーシャルワーカーに、在宅介護の場合は担当のケアマネジャーに相談してみましょう。入所を考えている介護老人保健施設(老健)には一度見学へ行き、サービス内容や設備などを実際に目で見て確認するようにしましょう。
入所したい介護老人保健施設(老健)が決まったら、施設に直接申し込みましょう。必要な申込の書類を提出し、支援相談員との面談が行われます。面談では、利用目的や現在の身体状況 、日常生活の様子などが確認されます。
提出書類や面談の内容をもとに、入所判定が行われます。
入所が認められたら、施設との契約を交わし利用開始となります。
介護老人保健施設(老健)では多くの職種の人が、連携しながら入所者の健康維持や、生活支援、機能訓練などを行っており、常勤の医師や看護職員の配置も義務付けられています。また、リハビリを主なサービスとしているため、理学療法士や、作業療法士、言語聴覚士などの専門職が配置されていることも介護老人保健施設(老健)の特徴です。
職種 | 人員配置基準 | 仕事の役割 |
医師 | 入所者100人に対して常勤1人以上 | ・医学的管理を行う ・施設の管理を兼ねていることも |
看護職員 介護職員 |
看護・介護職員合計で入所者3人に対して1人以上 (そのうち看護職員の人数は、看護・介護職員総数の7分の2程度、介護職員の人数は7分の5程度を標準とする) |
・看護職員は医療行為など ・身体の介護や生活援助などは状況に応じて看護職員、または介護職員が担当する |
介護支援専門員 | 入所者100人に対して1人以上 | ・入所者の介護、看護、機能訓練、投薬管理、栄養管理など総合的なサービス計画を作成する |
理学療法士 作業療法士 (または言語聴覚士) |
入所者100人に対して1人以上 | ・リハビリテーションの計画をし、実行していく |
支援相談員 | 入所者100人に対して1人以上 | ・入所および退所における相談 ・入所生活における相談や支援 |
栄養士 | 入所者100人に対して1人以上 | ・献立の作成 ・栄養管理や食事量などのチェックを行う |
薬剤師 | 施設の実情に応じた適当数(300対1を標準とする) | ・入所者の投薬の管理 |
調理員、事務員、その他の従業者 | 実情に応じた適当数 | ・栄養士の献立のもと食事を作る ・電話対応やデータ管理、必要書類の作成などオフィスワーク |
入所者は、療養室か共有スペースで過ごすことが多くなるため、入所者が不快に感じない程度の療養室の広さや共有スペースが必要になります。定員4人以下の多床室では1人当たり8㎡以上、ユニット型の個室などは、10.65㎡以上と義務付けられています。介護老人保健施設(老健)では入所者が限定されるため、一般的に2~4人の多床室が主流になっています。
療養室にはベッドや身の回りのものを保管できるタンスや、ナースコールの設置が義務付けられています。共有スペースにおいては、トイレ、洗面所、リビング、調理室、食堂、洗濯室などの一般的な設備が義務付けられています。それに加えて、機能訓練室などの設置があることも介護老人保健施設(老健)の大きな特徴といえます。機能訓練室は、1㎡×入所定員数で最低面積が決定され、設備には歩行訓練や関節可動域改善を目的とした運動療法機器などが設置されています。
療養室面積 | 設備 |
多床室8㎡以上(4人以下) 個室10.65㎡以上 |
ベッド、タンス、エアコン、ナースコールなど |
食堂2㎡×入所定員数以上 | テーブル、椅子、食器など |
機能訓練室1㎡×入所定員数以上 | ベッド、平行棒、階段、運動療法機器など |
浴室 | 身体の不自由な入所者が入浴するのに適した設備 |
費用 | 一時入居金:なし 平均自己負担額(月額):約6万〜17万円 |
介護老人保健施設(老健)の魅力やメリットはどのようなものがあるのかを項目をあげて具体的に解説していきます。
介護老人保健施設(老健)には、看護職員だけでなく常勤の医師がいるので、手厚い医療ケアが受けられます。体調管理はもちろんですが、たん吸引やインスリン注射、経管栄養などの医療的措置の対応も可能で、施設内で薬も処方してもらうことができます。
介護老人保健施設(老健)には、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門スタッフがいるので、リハビリテーションが充実しています。利用者の症状に合わせて、在宅復帰に向けた適切なリハビリを受けることができます。
ショートステイとして、必要な介護を短期間だけ受けられるサービスが利用できるので、介護者が一時的に外出しなければならないときや、体調を崩して介護ができなくなったときに、介護老人保健施設(老健)に入所することができます。ショートステイには、医療を必要とされる方を対象とする短期入所療養介護と、比較的体調が安定している方が対象の短期入所生活介護の2種類があり、介護老人保健施設で利用できるのは、短期入所療養介護です。
有料老人ホームとの違いの一つに、介護老人保健施設(老健)が公的な介護施設に分類されるため、入居一時金などの初期費用がかからないことが挙げられます。また、保険給付の対象ではない居住費や、食費、生活費などは自己負担となりますが、低所得者の方には、世帯の所得に応じて居住費や食費の軽減措置が取れる制度もあります。
要介護1から入所が可能なのもメリットといえるでしょう。介護老人保健施設(老健)は、要介護1~5の認定を受けた方が入所の対象となり、認知症の専門的なケアに力を入れている施設もあるため要介護1以上の方であれば、認知症の診断を受けていても入所が可能となっています。
介護老人保健施設(老健)にはメリットがある一方で、次のようなデメリットもあるので注意してください。
介護老人保健施設(老健)に入所中は、介護保険と医療保険を同時に利用することができませんので注意してください。施設に常駐している医師による医療行為や施設内で処方される薬は、介護保険が適用されます。施設内では対応が難しい病状などで他の病院を受診する必要がある場合も施設側が費用を負担してくれます。しかし、もしも無断で施設以外の医療機関を受診した場合は全額自己負担となる可能性があるため注意をしましょう。万が一入院が必要になったときは、一度介護老人保健施設(老健)を退去し、医療保険を利用して病院に入院となることを覚えておきましょう。
介護老人保健施設(老健)にあるトイレやキッチン、浴室などの設備は個人用ではなく共有で使用する設備として用意されていることが一般的です。
介護老人保健施設(老健)は、原則として入居期間は3ヶ月となっています。これは、介護老人保健施設(老健)が在宅復帰することを目的とした施設であり、3ヶ月ごとに在宅復帰可能かどうかを検討しているため、在宅復帰することが難しいと判断された場合はそのまま入居を継続できますが、自宅で生活できる状態まで回復し在宅復帰可能と判断されれば退去しなければなりません。その場合は自宅での生活の準備が必要となります。平均的な入居期間は約3ヶ月〜1年ですが、数年にわたって入居しているケースもあります。
一般的な有料老人ホームでは、趣味や娯楽を楽しむための余暇活動に力を入れていますが、介護老人保健施設(老健)においては、それほどレクリエーション活動が充実していません。あくまでも在宅復帰を目的としており、空いた時間などはリハビリが優先して行われますので、レクリエーション活動が少ないということを理解しておきましょう。
かかりつけ医の診療が受けられなくなるという点にも注意が必要です。介護老人保健施設(老健)は施設に常駐している医師が行わなければならないと決められています。つまり、入所前にお世話になっていたかかりつけ医がいたとしても、入所後には常駐している医師の診察に切り替わります。医師が変わると不安な気持ちになるといった点ではデメリットといえるかもしれませんが、これまでの症状など、情報を共有しているため診察自体に問題はありません。
―在宅介護と施設入所の費用について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「在宅介護と有料老人ホーム、費用面で比較するとどちらがいい?」
介護老人保健施設(老健)と特別養護老人ホームでは、何が違うのか?
それぞれの施設の概要をまとめた表で比較してみましょう。
介護老人保健施設(老健) | 特別養護老人ホーム | |
施設の目的 | 在宅復帰を目指す | 長期にわたり安定した介護を 受けながら生活する |
主なサービス | ・リハビリ ・医療ケア ・身体介護 |
・身体介護 ・生活支援 ・レクリエーション |
入居条件 | 要介護1以上 | 要介護3以上 |
入居期間 | 3ヶ月ごとに継続するか判断 | 終身利用 |
費用 | 一時入居金:なし 平均自己負担額(月額):約6万〜17万円 |
一時入居金:なし 平均自己負担額(月額):約5万〜15万円 |
医師の 配置基準 |
入居者100人あたり1人以上 (常勤) |
必要な数 (非常勤も可) |
待機期間 | 特養よりも短く、入所しやすい | 待機者が多く、数ヶ月から 数年待機する場合がある |
―特別養護老人ホーム(特養)について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「特別養護老人ホーム(特養)とは?費用や特徴、入所条件を解説」
要介護と認定された高齢者の方が病院から退院した後、すぐに自宅で生活するのが難しい場合は、在宅復帰を目的として介護老人保健施設(老健)への入所を検討してみるのも良いでしょう。介護老人保健施設(老健)は手厚いリハビリや医療ケアを受けることができ、公的施設であることから一時入居金が不要となるため、費用の負担軽減にもつながります。在宅復帰という目標を持つことで、前向きな気持ちでリハビリに取り組みやすいということもメリットと言えるでしょう。また、家族は在宅介護に向けて住環境を整えることもできるため、入居している間に自宅へ迎え入れる準備をすることもできます。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
商品やサービスに関するご質問、
ご相談にお答えしています。
商品やサービスに関するご質問、
ご相談にお答えしています。
まずはお気軽に資料請求を。
無料カタログをご送付致します。
今回発送いたしますカタログは、一部商品の仕様や価格など異なる場合がございます。ご了承ください。