この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
高齢者の肥満について、急増する理由、肥満の特徴、リスク、原因、対策方法をご紹介します。
2022年9月30日
厚生労働省が発表している「国民健康・栄養調査」によると男性、女性ともに高齢者の肥満率が高まっています。1984年に19.7%だった60歳代男性の肥満率は、2019年には35.4%に達しています。70歳以上の男性は、1984年の14%が2019年には28.5%と2倍以上に増えるなど、近年高齢男性の肥満率は高まっています。女性も2019年は60歳代で28.1%、70歳以上で26.4%という結果となっています。男女ともに高齢者の3〜4人に1人が肥満ということになっています。70歳以上の高齢者の肥満率増加は、寿命が長くなったことにより比率自体が高まっていることもありますが、主に加齢による内臓脂肪の増加や生活習慣の乱れなどが理由であると考えられます。
一般社団法人日本肥満学会(http://www.jasso.or.jp/)によると、肥満は疾患ではないとされています。しかし、一定基準を上回る肥満で、それに起因・関連する健康障害があるケースなどを、肥満症として医学的な治療が必要な疾患と定義しています。2018年には、日本老年医学会のホームページに「高齢者肥満症診療ガイドライン 2018」が公開され、肥満と認知症、ADL(日常生活動作)の低下、心血管疾患などとの関係について解説されています。こうした資料が作成されるほどに、年々増加する高齢者の肥満症は問題視されています。
歳をとると身長が縮み、BMIが実際の数値よりも高めになってしまうことがあります。また、高齢者の場合は低栄養や心不全、腎不全などの病気によって体がむくむこともあり、BMIだけで体脂肪を判定することは難しいです。日本ではBMI 22kg/㎡を標準体重としていますが、この数字は60歳未満のデータに基づいた数値となり注意が必要です。
高齢者は、BMIの数値が高いからといって必ずしも死亡リスクにつながるとは限らず、死亡リスクを低下させる場合もあると言われています。がんや心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、感染症などは体重の減少により死亡リスクが高まる病気で、BMIの数値が低い高齢者への影響の方が大きい可能性があり、BMI数値が高い高齢者の死亡リスクが低くなる場合があります。
高齢者の肥満を正確に判断するには、BMIだけではなく、内臓脂肪量の目安となるウエスト周囲長やウエスト・ヒップ比などから判定することが重要とされています。男性の場合はウエスト周囲長が85cm以上、女性の場合は90cm以上であれば、内臓脂肪蓄積の疑いがあります。また、腹部CT(へその位置)で内臓脂肪面積が100㎡を超えると、内臓脂肪蓄積があると判定されます。こうした内臓脂肪蓄積があり、血糖・血圧・ 血清脂質のうち2つ以上が基準値から外れていれば、メタボリックシンドロームと診断されます。
加齢とともに筋肉量が減っていく現象をサルコペニアと言います。サルコペニアと肥満が合併することをサルコペニア肥満とよび、単なる肥満と比べると転倒や骨折、ADL(日常生活動作)の低下を招きやすくなりますので死亡リスクは高まります。要介護まであと一歩の段階とも言われる心身が虚弱した状態のフレイルにもなりやすくなります。また、サルコペニア肥満の高齢男性がうつ状態になるリスクは2.7倍であるという研究結果もあります。
肥満の判断方法として用いられるBMI値は次のように計算します。
<BMI値の計算方法>
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
BMI値が25以上が肥満、35以上であれば高度肥満と判定されます。 ただし、先にも述べたとおり、高齢者の場合は身長が縮むことによりBMI値が実際よりも高くなることや、病気などによるむくみで体脂肪量を正確に判断することが難しい場合があるためBMI値だけでは判断ができないので注意が必要です。
肥満症と診断されるのは、BMI値が25以上で、内臓脂肪面積が100c㎡以上の内臓脂肪型肥満の場合または、肥満に起因あるいは関連していて、減量を必要とする健康障害が1つ以上ある場合です。肥満に関連する健康障害は以下の11個あると言われています。2型糖尿病や脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風を引き起こし、動脈硬化の原因となる心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす場合もあります。いびきをかく人は睡眠時無呼吸症候群も要注意です。膝や股関節などが変形する関節症のリスクにもなりますし、女性は肥満症が原因で月経異常や不妊にもなります。腎臓病が、肥満症に合併すると、タンパク尿や透析の原因にもなります。
【肥満に関連する健康障害】
①耐糖能障害 ②脂質異常症 ③高血圧 ④高尿酸血症・痛風
⑤冠動脈疾患 ⑥脳梗塞 ⑦脂肪肝 ⑧月経異常
⑨睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群 ⑩運動器疾患
⑪肥満関連腎臓病
世界保健機構(WHO)の調査によると世界の肥満患者は1980年から2倍以上に増加、肥満は世界の死亡原因の5番目となっています。糖尿病患者の44%、虚血性心疾患の23%、悪性腫瘍の7-41%で肥満が原因の死因となっていると考えられています。
高齢者のメタボリックシンドロームが、認知症の発症と関連していると言われる調査があります。調査によるとメタボリックシンドロームがあると、認知症の一歩手前の軽度認知障害(MCI)から認知症へと移行してしまうリスクが高まるという結果がでています。さらに慢性炎症が重なった場合は血管性認知症のリスクが高まるという結果もあります。65歳から74歳までの前期高齢者の場合、BMI値が25〜29.9であれば35%、BMI値30以上であれば74%も認知症を発症するリスクが高まるという研究結果もあります。
75歳以上の後期高齢者は、反対にBMI値が低い方が認知症を発症するリスクが高まると言われていますが、肥満が良いというわけではありません。特に40歳前後の中年期や前期高齢者のメタボリックシンドロームは、認知症を発症するリスクが高いものだと知っておきましょう。
―認知症について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「認知症とは?症状と原因・種類について、介護ポイントを解説」
▶ 「認知症の初期症状について早期発見と進行のしかたについて解説」
▶ 「認知症はどのように進行するの?中核症状や周辺症状とは?」
高齢者が肥満になる原因のひとつが、加齢による内臓脂肪の増加です。これまでの研究によると、高齢になるにつれて内臓脂肪が増えていくことがわかっています。BMI値も加齢とともに増加する傾向にありますが、40〜60歳でピークを迎えてからは減っていきます。そのため、BMI値が25以下にも関わらず、ウエスト周囲長が大きい隠れ肥満が高齢になるにつれて増えていきます。
運動不足や食事の偏りなどの生活習慣の乱れが肥満の原因になっていることも考えられます。
筋肉量が減り、運動機能の低下や基礎代謝の低下が見られる高齢者が運動不足になるとさらに筋力が衰え、体脂肪率が上がり肥満になります。
また食事の偏りにより好きなものや食べやすいものばかりを食べる、間食が増えるなど、食生活の乱れが肥満の原因になっていることも考えられます。炭水化物や脂質ばかりに偏って栄養バランスがとれておらず、必要な栄養素が不足していることも少なくありません。
生活習慣の乱れが肥満のほか生活習慣病を引き起こす原因にもなるため注意が必要です。
高齢者の肥満対策方法として、まずは食事に気を付けましょう。高齢者の場合、ダイエットのためと考えて食事の量を減らしてしまうと、必要となる栄養素を十分にとれず栄養不足になってしまう恐れがあります。摂取カロリーを気にしながらも、栄養バランスのとれた食事を心がけることが大切です。下記を参考に、食生活を見直してみましょう。
●バランスよく栄養をとる
バランスよく栄養をとるように心がけましょう。毎食、主食・主菜・副菜を揃え健康な身体づくりに必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素がとれる、バランスのよい食事にしましょう。
揚げ物や中華料理などの脂質が多い食べ物は、エネルギーの過剰摂取につながります。過剰分は体脂肪として体内に蓄えられてしまうため、油の多い食べ物は食べる量や頻度に注意しましょう。
●自分に必要なエネルギー量を把握する
自分に必要なエネルギー量はどれくらいなのかを把握し、食べ過ぎを防ぎましょう。適切な食事量の目安は、年齢や体型、身体活動量などにより異なります。これを知っておけば、外食するときや市販の食品を購入するときにも役に立ちます。
●1日3食きちんと食べる
1日3食きちんとなるべく決まった時間に食事をするように心がけましょう。食べないことで、身体に必要な栄養素とエネルギーが十分にとれないこともありますし、暴飲暴食につながることも考えられます。夜にドカ食いをすると、エネルギーの消費量が少ないため、太りやすくなってしまいます。身体に必要な栄養素とエネルギーをしっかり摂取するために、規則正しい食事を目指しましょう。
●ゆっくりよく噛んで食べる
ゆっくりよく噛んで食べることで、脳の満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを防ぐことができます。早食いは、食後に血糖値が上がりやすく、糖尿病を発症するリスクも高まりますので、毎食ゆっくりよく噛んで食べましょう。
●塩分、糖分の摂りすぎに注意する
塩分、糖分のとりすぎに注意しましょう。 塩分の摂りすぎは、心臓や腎臓の異常につながる可能性があります。出汁や香辛料、ハーブなどを活かして塩分控えめでの調理や、濃い味のスープは飲み干さずに残すなど、減塩のために工夫しましょう。糖分の摂りすぎにも注意が必要です。お菓子など甘いものの間食が多いと、糖分の摂りすぎや食事量が減ってしまい、栄養バランスが崩れてしまうことが考えられます。また、ジュースなどの糖分を多く含む飲料は、肥満の原因になるだけでなく、血糖値の急激な上昇につながり、さらなる喉の渇きを感じさせてしまいます。間食はなるべく控え、水分補給はできるだけ水やお茶などの糖分が含まれていない飲み物にしましょう。 肥満症の場合、体質や持病の有無など、身体状況によって食事療法は異なります。食生活の改善を始める前に、まずはかかりつけの医師などに相談しましょう。
適度な運動をすることで筋肉をつけましょう。筋力が落ちると運動不足になって肥満になりやすいだけでなく、心肺機能の低下や死亡リスクまで高まると言われています。運動しないことで筋肉量はますます低下していくため、日常生活に無理なくできる運動を取り入れて継続していくことが大切です。
高齢者でも手軽に始められる運動としておすすめなのが、ウォーキングです。身体的負担をあまり感じずにできる有酸素運動なので、これまで運動習慣がなかった人でも始めやすいでしょう。 20分以上運動を継続することで体脂肪が燃焼されるため、週3回30分のウォーキングを行うと効果的です。ウォーキングに慣れてきたら、早歩き3分とゆっくり歩きを交互に行うインターバル速歩にチャレンジするのもよいでしょう。
<ウォーキングのポイント>
・無理のない範囲でよいので、できるだけ大股で歩きましょう。
・顔はまっすぐ、進行方向に向けましょう。
・肘を軽く曲げて、腕を大きく振りましょう。
・かかとから地面につくようにしましょう。
・足裏の重心移動は、かかとからつま先へ転がすようにイメージしてみましょう。
歩く力を維持するためには、 太ももやお尻の筋肉を鍛えるスクワットも効果的です。慣れないうちは、手すりや椅子の背もたれなどにつかまって行うのがおすすめです。決して無理はせず、痛みのない程度に運動を行いましょう。
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