この記事の監修者
-
フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
認知症の人の食事について、気を付けなければいけないこと、認知症予防に効果的な食事方法や食べ物、料理、食生活などを詳しく解説します。
2024年7月29日
認知症の患者数は増加する一方で、近い将来には高齢者の2割程度が認知症になるとも言われています。
認知症は完治することが難しい病気ですが、悪化させないためには日頃からの予防が大切になります。現時点で完璧な予防法はないものの、運動などの対策で一定の効果が期待されていること、認知症になりにくい食事などが最近注目され始めています。
食事はバランスよく食べることが大切です。認知症の一因として脳内にある特殊なタンパク質の蓄積があると言われ、その抑制が可能なのは、ドコサヘキサエン酸(DHA)・エイコサペンタエン酸(EPA)などの多価不飽和脂肪酸、カテキンやポリフェノール等の抗酸化物質です。
ドコサヘキサエン酸(DHA)は脳細胞の中に多く見られ、脳神経や神経の働きに役立つので、記憶機能の向上が期待できます。
エイコサペンタエン酸(EPA)はDHAと違って脳へ到達はしないものの、血液がサラサラになる血栓予防効果が見込めます。
DHA、EPAを含む食品をメニューに取り入れ、できるだけ満遍なく色々な食品を組み合わせたバランスのいい食事を心がけましょう。
摂取カロリーに気を付けることも大切です。肥満はアルツハイマー型認知症を引き起こすリスクが高まると言われていますが、それだけではなく内臓脂肪の蓄積など生活習慣病につながる恐れがあります。糖尿病や高血圧、高脂血症といった病気の引き金になりやすいため、毎日の摂取カロリーは1日に必要な基準内で留めるようにしましょう。
■1日あたりのエネルギー必要量(単位:kcal)
男性 | 女性 | |
65〜74歳 | ① 2050 ② 2400 | ① 1550 ② 1850 |
75歳以上 | ①1800 ② 2100 | ①1400 ② 1650 |
①生活の大半が座位で活動が静的 ② 座位中心で、立位や移動も可能
肥満対策としては、糖分総量をコントロールして、間食を摂りすぎないようにしてください。
塩分の過剰摂取にも気を付けましょう。塩分過多は認知症の発症につながる可能性があります。また、脳血管性認知症は、脳梗塞によって血液が届かなくなった脳の機能障害で起こると考えられています。
普段から塩分が多い食事にすると、高血圧の原因にもなるうえ、脳梗塞が発生しやすいと言われるため、食生活の中で減塩対策を欠かさないようにしましょう。
70歳以上の高齢者の場合は、1日6g以内の摂取量を目安にしてください。
意識的によく噛むようにしましょう。よく噛まず飲み込んで早食いするのは健康上良くありませんし、意識してよく咀嚼(そしゃく)すると、認知機能を改善する効果が期待できます。
前頭前野(思考や創造力に関わる)や海馬(記憶を司る)の活性化を促すため、よく噛み食事をしましょう。
糖質の摂取を控えることも効果的です。アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症は、糖尿病・耐糖能異常の影響を受けると、発症リスクがアップすると考えられています。ですから、血糖値の急上昇を抑制するために、パン、麺類、スイーツなどの炭水化物をメインにした高糖質の食事はできるだけ普段から避けるようにし、野菜・きのこ・海藻類などで食物繊維を多く摂取するように心がけましょう。
認知症のリスクを高める食べ物はとはどのようなものでしょうか?
人間は食べずに生きていくことはできない生物ですが、私たちが毎日摂取する食べ物には、体が喜ぶものから、健康を損ねる食品まで多種多様な食べ物があります。
その中には、認知症の危険性を上げる食品もありますので、正しく見極めて選択できるように認知症を防ぐために避けた方がいい食べ物についてご紹介していきます。
動物性の赤身肉や脂身を食べ過ぎた場合、魚系の脂よりも高血圧を発症する可能性があります。
高血圧が継続するとアミロイドβなどの特殊タンパク質が蓄積しやすくなり、アルツハイマー型認知症につながる可能性が高くなります。
また、赤身肉に含まれる鉄分が多すぎると体が糖化し、老化の原因にもなります。
さらに、飽和脂肪酸が多い肉の脂身は認知症を悪化させやすくなります。
ただし、赤身肉・脂身はビタミンB・ミネラル類も豊富なので、すべてがダメなわけではなく1週につき500gを目処に摂取するなら問題はありません。
トランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニング、ラードを過剰に摂取すると、血中LDLコレステロールが増加するため動脈硬化のリスクが高まります。動脈硬化の影響で脳にダメージが加わり、認知症が発症する可能性があります。
ファストフードや菓子パン、市販されている惣菜などには、マーガリンやショートニングなどが含まれていることが多く、購入前に成分表示を確認するようにしましょう。
過度のアルコールは、脳に与える影響が大きくなります。飲酒量が増えるほど脳が萎縮しやすく、逆に、飲酒を控えれば脳の萎縮率を抑制できます。
アルコールの中でも赤ワインに含まれるレスベラトロール(ポリフェノールの一種)などは認知症対策の効果があると報告されているものもありますが、いずれにしてもお酒はほどほどの量で留めておきましょう。
では、認知症におすすめの食べ物とはどういったものでしょうか?
私たちが食べるものと脳とは強い結びつきがあり、栄養の摂り方が脳の健康を大きく左右しています。脳には血流脳関門と呼ばれる部位があり、物質の関所の役割を果たしています。
血液脳関門には様々な栄養素を受け取る箇所があり、栄養素がそこから脳へ入り、脳の代謝や神経伝達物質の材料として使われています。脳は腸とも関係が深く、腸の迷走神経や免疫細胞から、直接脳に影響を及ぼしているとも言われます。
脳に良い影響を与え、認知症予防の効果が見込まれている栄養素を含む食品をご紹介していきます。
脳に良い効果をもたらすと言われているDHA(ドコサヘキサエン酸)は、マグロ、イワシ、サンマ、アジ、ブリ、すじこなどの青魚に多く含まれています。
脳細胞の働きを支援する栄養素のNGF(神経成長因子)を増やす役目もあり、注目を集めている栄養素です。オメガ3脂肪酸の一種で悪玉コレステロール撃退に役立ちます。
色々な調理方法で味が楽しめる食材なので、毎日の献立に、主菜や副菜としてぜひ活用していきましょう。
大豆製品は、中性脂肪やコレステロールを下げる機能を備えた栄養素が含まれています。また、豆腐・しょうゆ・みそなどの大豆製品には、脳神経細胞膜を生成するレシチンが含まれています。レシチンは、アセチルコリン(記憶の伝達物質)を生成してくれるので、毎日摂取すると、脳内の情報伝達が円滑になり、認知症予防につながります。
アルツハイマー型認知症は脳内に特殊なたんぱく質が溜まる事で発症すると考えられていますが、その特殊なたんぱく質を減らす効果があるとされているのが、オレイン酸です。オリーブオイルやナッツ類にオレイン酸が多く含まれています。あくまでも、1日あたりで大さじ2杯を目安に摂取するようにしましょう。健康にいいからと言って摂り過ぎには十分気を付けてください。
ほうれん草・小松菜などの野菜や、いちご・キウイ・オレンジなどの果物は、ビタミンB群の一種である葉酸の含有率が高くなっています。この葉酸が不足すると、動脈硬化の進行や、アルツハイマー型認知症の主原因と言われる物質が増加する可能性があります。
葉酸不足による赤玉アミノ酸(肝臓で生成)は認知症のみならず脳血管疾患を招く恐れがありますので葉酸の含まれた野菜を摂るようにしましょう
なお、抗酸化作用を持つビタミンCやEは緑黄色野菜や果物(ベリー類・りんご)に多く含まれています。
認知症予防に役立つとされているカフェイン。コーヒーをはじめ、緑茶や紅茶に多く含まれており、集中力のアップや、眠気を覚す効果があるため、気分転換にもよく用いられます。アルツハイマー発症物質の作用を抑えてくれる効果がありますが、過剰摂取すると自律神経を損なって逆効果になる恐れがあります。くれぐれも適量をよく考えて摂取しましょう。
認知症予防におすすめの料理はどのような料理でしょうか?
ある研究結果によると、日本食の比率が高い高齢者の方が、動物性食品や高乳製品をよく摂取する高齢者よりも、認知症発症の危険性が2割低いという結果もでています。
また、ギリシャ・イタリア・スペインなどの地中海食も認知症予防に効果があると報告されています。これは、ナッツやオリーブオイルに含まれる不飽和脂肪酸や抗酸化物質を料理に多用しているのが理由と言われています。
料理のメニューでは、例えば地中海風のメニューなら、オリーブオイル・トマト・魚介類を材料にした、アクアパッツァが栄養学的に脳の老化防止に役立つといわれおすすめです。
食事のジャンルとしては、和食を主体にすると、認知機能の向上につながりやすいです。
肉よりも魚中心の料理にして、副菜や味噌汁・スープを野菜で具沢山にするとバランスの良い食生活が実践できます。
●主菜→ 青魚(イワシ、さばなど)を主体にしましょう。カロリーを考えると焼き魚が良いです。
●副菜→ 大豆、豆腐、小豆、野菜、海藻などバリエーション豊富に摂りましょう。
●発酵食品→ 納豆、漬物などは悪玉コレステロール対策になります。
●油→ エゴマ、亜麻仁油、シソ油。
●調味料→しょうゆ、みそなど。
●デザート→ 果物。
高齢になると、一度に食べる量が少なくなるため、少ない食事量でも栄養素をたくさん摂れるように工夫したメニュー構成を考えるのが大事です。
一汁二菜から一汁三菜を基本にバランスを考えて、認知症予防に効く食品を一回で効率よく摂取できるようにしましょう
ご紹介してきた認知症予防におすすめの食べ物や料理を総合してまとめると、「まごわやさしいよ」というキーフレーズになり、それぞれの頭文字の付いている食品が認知症患者さんにおすすめです。ぜひ、日常のメニューや献立に取り入れてみてください。
ま | 豆類 |
ご | ごま |
わ | わかめなどの海藻類 |
や | 野菜 |
さ | 魚 |
し | 椎茸などのきのこ類 |
い | いも類 |
よ | ヨーグルト |
認知症になり、進行する過程で、日常の食事に関する行動に支障をきたす場合があります。
どのように支障がでるかについては、個人差があり症状も異なります。
どのような症状がでるか、そしてどのように認知症の方に継続して食べてもらえばいいのか、気を付けることやその原因、対策などを説明していきます。
高齢になるほど、総エネルギー量は少なくなる傾向にあるので食欲がなくなることはよくありますが、認知症によって食事拒否が続く場合は大きな問題となります。
食事をしなくなると、当然のことながら栄養状態が保てなくなり、栄養状態が保てないと体力が落ち衰弱して寝込んでしまう場合もあります。水分が摂取できずに脱水症状を引き起こすといったこともあり得ます。拒食が起こる要因と、その対策の一例を紹介します。
【要因→対策】
●食べ方がわからない → 一緒に食事する、盛付けや提供の仕方を工夫する
●食べ物だと判別できない → 食べ物だと分かるよう声かけをする、嗅覚や触覚に訴える
●食事環境が整っていない → 家具や照明、食器などを工夫、食事しやすい環境を整える
●口腔トラブル → 入れ歯や義歯の噛み合わせに気を付け、嚥下(えんげ)障害になっていないか確認する
●好き嫌い→好きなものを献立に取り入れ、食べたい気持ちを引き出す
なかなか食事をしてくれないからといって、無理やり食べさせたり、叱ったりしてはいけません。今後、継続的に食事をしてもらうためにも、優しく声を掛け、本人の気持ちに寄り添う事が大切です。
―認知症の方の食事拒否について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。―
認知症による記憶障害は、体験をそのまますべて忘れるという特徴があり、食事したこと自体を忘れて、再度食事を要求することがあります。
このような場合は、食後も満腹感や満足感がないため、手当たり次第食べる可能性があり、糖尿病や肥満につながるため、可能な限りの予防が必要です。過食の対策について、いくつか紹介します。
【対策】
●食卓についていたことを見てわかるようにするため、食後すぐに食器を片付けない。
●手の届く範囲に食品を置かないようにする。食べ物は見えない位置に保管するか、鍵を付けてしまっておく。
●食べる回数や量を調整する。
●どうしても欲しがる場合は、低カロリーの軽食(おにぎりや果物など)を手渡す。
認知機能が低下すると、食品以外のものを、食べ物と勘違いして口に入れてしまうことがあります。
間違えて口にしてしまうものの例として、ティッシュペーパー・服のボタン・タバコ・電池・ゴミ・洗剤・ペットボトルのキャップなどが挙げられます。窒息や中毒の危険性があるので、細心の注意が必要です。
【対策】
●(異食する可能性のあるものを)手の届かないところへ保管する
●食事/おやつの時間を切り分ける
●食事の回数を多くし、空腹時間をできるだけなくす
●食事以外の楽しみを増やす
・無理やり取り上げず、他の食品と交換する
―認知症の方の幻視・見間違いについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。―
物忘れなら食事の内容を忘れる程度ですが、認知症の場合は、脳の萎縮が原因で満腹中枢機能が衰え、食事の体験自体を忘れてしまいますのでどれだけ食べても満腹感が得られないだけでなく、認知機能の低下に伴い食後でも食事をしていないと訴えやすくなります。対応策としては軽食やおやつを用意する、毎回の食事量を少なめにする、食べ終わってもすぐ食器類を片付けず、食べたことがわかるよう出したままにするといった方法もあります。
会話もせず黙々と一人で食事をしても楽しい気分にはなりにくいのでご本人の要介護度に合わせて、できる限り「孤食」とならないよう一緒に食事をする習慣をつけるようにしましょう。また食事が楽しいと思えるテーブル演出としてご本人が好むテーブルウェアの他、好きな色・柄のトレイやランチョンマットなどを使用すると効果的です。盛り付けを彩りよくすると食欲増進にもつながるので良いでしょう。
認知症予防は早期から取り組むと効果的です。食事以外にも、下記のように生活習慣を整えて過ごしましょう。
認知症予防には、適度に運動することが有効だと言われます。
理由は、有酸素運動により酸素を継続して体内に吸入できるためです。
認知症予防として、週3〜4回の運動が理想で、毎日10分以上軽く体を動かすだけでも効果的です。
有酸素運動を行えば、酸素が体内に取り込まれ、体全体だけでなく、脳の血管にも酸素が巡ることになります。脳内の血流がよくなると脳の神経細胞が新たに作られます。
脳内の酸素量が増えると、神経細胞を接続するシナプスが活発に機能するため、脳の機能が良くなり、認知症状が出にくくなります。
社会や人との関わりを保ちコミュニケーションをとることも認知症リスクを低下させる効果が見込めます。できるだけ機会を設け、会話や外出、食事などを心がけるようにしましょう。
―認知症予防のコミュニケーションついて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。―
糖尿病・肥満・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病と、認知症の発症とは関連性があると言われ、複数の生活習慣病を兼ねている場合は、発症リスクがアップするため要注意です。また、動脈硬化の診断を受けている人は、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症の原因になるので、早めの対策が必要です。
喫煙は認知症の発生リスクが高くなると考えられています。喫煙により、癌などのリスクが生じるうえに、記憶機能への影響や、脳の萎縮を招く恐れもあるので禁煙をしましょう。
身体全体だけでなく、脳を休める意味でも、規則的な生活を送り、自分に適した十分な睡眠を取ることは大切です。
脳と栄養は大変密接に関連しています。日々摂っている食事や栄養が脳機能に直結しますので、認知症予防も含めて、何を食べるのかはとても重要です。
生活習慣病の代表格である肥満・高血圧・高脂血症・糖尿病などの対策をするという意味でも、食習慣には気を付けましょう。
認知症のリスクが高まる食事はできるだけ避け、魚と豆製品、野菜・果物を主体にしたバランスの良い食事を心がけ、認知症予防に努めましょう。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
商品やサービスに関するご質問、
ご相談にお答えしています。
商品やサービスに関するご質問、
ご相談にお答えしています。
まずはお気軽に資料請求を。
無料カタログをご送付致します。
今回発送いたしますカタログは、一部商品の仕様や価格など異なる場合がございます。ご了承ください。