この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
介護食について、種類や作るときのポイント、高齢者がおいしく食べるための工夫などをご紹介します。
2023年8月9日
介護食は、かむ力や飲み込む力が弱くなった方でも食べやすいように、調理方法などを工夫した食事のことです。加齢のため歯の衰えや、筋力の低下などがみられ、今まで食べていた食事でもかみにくい、飲み込みにくいと感じることがあります。これが原因で食欲の低下や、食べ物がうまく飲み込めずに気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」を引き起こすこともあります。 介護食はこのように通常の食事が食べにくくなった方でも安全に食事を楽しめるようにアレンジされたものです。
食事は、身体に必要な栄養素を摂取することはもちろんですが、楽しみや生きがいにもつながります。普段の生活で刺激を受けることが少なくなる高齢者にとって、毎日の食事は満足感を得られる貴重な時間になります。ですから食事は、心身の健康を維持するためになくてはならないものなのです。
加齢とともに食事の量が減ることで、身体に必要な栄養素が十分に摂れずに栄養不足になる高齢者もたくさんいます。食欲の低下や、食べやすいものだけを選ぶことによる食事内容の偏りなどの理由から栄養不足になっていると考えられます。
栄養不足になることで、筋肉量の減少、筋力低下、消化機能の低下、免疫力の低下、認知機能の低下を引き起こす恐れがあります。
介護食は、日本介護食品協議会が名付けた「ユニバーサルデザインフード®」という自主規格により、食品の形状ややわらかさなどをもとにして4つの区分に分類されます。分類をもとに食べる人のかむ力や、飲み込む力に適したサイズ、硬さに合わせて調理することが大切です。
区分 |
容易にかめる |
歯ぐきでつぶせる |
舌で潰せる |
かまなくてよい |
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かむ力の目安 |
かたいものや |
かたいものや大きいものは食べづらい |
細かくてやわらかければ食べられる |
固形物は小さくても食べづらい |
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飲み込む力の目安 |
普通に飲み込める |
ものによっては |
水やお茶が |
水やお茶が飲み込みづらい |
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食材の |
ごはん |
ごはん〜 |
やわらかめの |
おかゆ |
ペーストがゆ |
魚 |
焼き魚 |
煮魚 |
魚のほぐし煮 |
白身魚のうらごし |
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りんご |
ひとくちサイズの |
煮りんご |
すりおろしたりんご |
りんごのピューレ |
刻み食とは、食材を細かく刻んで食べやすくした食事のことをいいます。介護食の区分では「区分1. 容易にかめる」に当たります。口周りの筋力が低下して大きく口を開けられない方、かむ力が弱くなってきた方に適しています。刻み食は、介護食の中でも食材の見た目や食感が比較的残っていることから食欲が湧きやすいというメリットもあります。
やわらか食はソフト食とも呼ばれ、煮込む、茹でるなどして食材をやわらかくした食事のことを言います。介護食の区分で言うと「区分2. 歯ぐきで潰せる」「区分3. 舌で潰せる」に当たります。よく煮込む、ムース状にして再形成するなどの調理方法があります。やわらか食は、歯のない人やかむ力が弱くなった人でも歯ぐきや舌で簡単に潰すことができるので、飲み込みやすいのが特徴です。
ミキサー食とは、食べ物をミキサーにかけてポタージュ状にしたものを言います。かまずにそのまま飲み込むことができるので胃腸に負担がかかりにくく、かむ力がほとんどない方や飲み込む力が弱くなった方におすすめです 。無意識のうちに喉の奥に食べ物が流れてしまい誤嚥(ごえん)を引き起こす危険性があるので、粘度の調整には注意が必要です。また、ミキサーにかけることで食材の形や見た目が崩れてしまい、何を食べさせられるのか不安に感じる方がいる場合は、調理前に食材を見せて安心してもらうようにしましょう。
ゼリー食とは、食べ物をミキサーにかけてペースト状にし、ゼラチンや寒天などを加えてゼリーのようにやわらかく固めたものを言います。口の中で潰す必要がなく喉の滑りもよいため、かむ力、飲み込む力の両方が弱くなった方に適しています。口の中でバラバラになることもなく、誤嚥(ごえん)を引き起こすリスクが低いのもゼリー食のメリットです。
食材をひとくちサイズに切る、細かく刻む、やわらかくするなど、かむ力が弱くなった高齢者でもかみやすいように調理を工夫しましょう。食べ物の硬さや形状による食べにくさが原因で、食欲の低下や栄養不足などに陥ることもあります。硬い食材には切れ目を入れるなど、食べやすいように調理方法にも工夫が必要です。
飲み込む力が弱くなっている方には、ミキサー食やゼリー食などの飲み込みやすい食事を提供しましょう。誤嚥防止のために、片栗粉や専用のとろみ剤を使って液体にとろみをつけるのもよいでしょう。
高血圧の高齢者も多いため、塩分を控えめにしましょう。味が薄すぎると食事への満足感が減ってしまう可能性もあるので、上手く塩分をコントロールすることが大切です。できるだけ素材の味を活かし、薄味で調理することを心がけましょう。
栄養バランスを考え、必要な栄養素を摂取できる食事が大切です。 筋肉づくりに必要なたんぱく質は、筋力低下の予防として毎食とるのがおすすめです。たんぱく質、カルシウム、ビタミン、ミネラルなどを補うバランスのよいメニューを考えてみましょう。
おいしそうな見た目に仕上げることを心がけましょう。介護食は食べやすく工夫されるため、もとの料理の形と異なってしまうことがあります。そのため何を食べているのかがわからなくなり、食欲がわきにくくなることもあります。料理は目でも楽しむものでもあります。食べやすさも大切ですがおいしそうな見た目になるように工夫し、食べたいと思ってもらえる介護食を目指しましょう。具体的にいうと、料理は具材別にミキサーにかけ混ぜないようにする、食材が引き立つ色に食器を変更する、やわらかくした食材は型抜きなどで形を整える、料理の彩りを華やかにするなどの方法があります。他にもお品書きを用いて、食べているメニューが理解できるように工夫すると、食欲増進に繋がるかもしれません。
介護食を作る際、どんな食材を選べば良いのか迷うこともあるでしょう。食材により、介護食に向いているもの、向いていないものがあります。食べやすい介護食にするためには食材選びも重要になってきます。そのままでもやわらかく飲み込みやすい食材、市販の惣菜やレトルト食品などを使用してアレンジできるもの、ぬめりがある食材で誤嚥防止になるなど調理の工夫によってアレンジしやすい食材を選ぶことがポイントです。そうすることで調理も比較的簡単になり、さらに高齢者にとっても食べやすくなります。一方で、咀しゃくや嚥下の過程で食べにくいものがあります。ポロポロとまとまりのないもの、弾力があるもの、水分が少なくパサついているもの、口の中に張り付きやすいものは介護食として不向きです。
―やわらかい食材としておすすめなものー
■脂ののった魚(まぐろ、かれい、ぶりなど)
■脂身のある薄切り肉(ロース肉、ばら肉など)
■豆腐
■ジャガイモやかぼちゃのマッシュ
■バナナ
―ぬめりがある食材で誤嚥防止になるもの―
介護食に少し足して調理することで、食材にまとまりが出て飲み込みやすくなります。
■納豆
■モロヘイヤ
■とろろ昆布
■なめたけ
■オクラ
■水溶き片栗粉
高齢者が食べにくい食材としては、まとまりがなくパサついた食材や噛みづらいものなどは誤嚥の危険性があるため注意が必要です。
まずまとまりがない食材として、具体的にはひき肉やおからなどが挙げられます。咀しゃくが困難な方には食べやすい食材ですが、口のなかでバラバラに崩れてしまうため誤嚥の危険性が高まります。水溶き片栗粉でとろみを付けたり、しっかり煮込んでやわらかくしましょう。他には、パンやビスケット、イモ類などの水分が少ないものが挙げられます。口の中の水分が食材に取られてしまい、飲み込みにくくなります。スープに浸して食べやすくする、飲み物をこまめに取るなど、水分を補給する工夫が必要です。噛みづらいものとしては、こんにゃく、かまぼこなどの弾力があるもの、ごぼう、れんこん、いか、たこなどの繊維質で硬いものが挙げられます。口の中で細かく砕くことができないため、飲み込みによる誤嚥の可能性が高くなります。このような食材は無理に選ばず、介護用にやわらかい代用品を探して利用しましょう。
食べやすい食材を使ったおすすめのアレンジ料理例をご紹介します。
木綿豆腐はやわらかく食べやすい食材ですが、やや水分が少なめなので、口の中に残りやすくなります。練りごま、マヨネーズ、味噌などの調味料と合わせ、白和えのように調理するとより食べやすくなります。また、野菜と一緒に豆腐ハンバーグのように混ぜ込んで調理すると、栄養価も高くなりおすすめです。不足しがちな食物繊維を摂るには、小松菜やほうれん草などの野菜と豆乳をミキサーにかけ、スムージーにしてみましょう。スムージーにすることで手軽に野菜を摂れ、同時にタンパク質も摂れます。野菜の種類を日によって変える、イチゴやバナナなどの果物を入れるなどすることで、飽きないように工夫もできますし栄養バランスも良くなります。
味つけは、本人の好みを知っておいしく食べてもらえるように工夫しましょう。高齢になると味覚が鈍ることから、これまでよりも味の濃いものや塩分の高いものを求める傾向にあります。そういう場合は、山椒やハーブなどの香辛料で風味をつけてみるとよいでしょう。酸味が強いものはむせてしまう可能性があるので、弱くするか、控えることをおすすめします。
丼ぶり、パスタなどの一皿ですむ食事よりも、主食・主菜・副菜などに分かれた料理を作るようにしましょう。バランスよく栄養を摂ることができますし、季節の旬の食材を取り入れるなど食事の楽しみや喜びにもつなげられます。
同じ食材やメニューが続くと 飽きてしまい、食欲が低下してしまうこともあります。本人のリクエストを取り入れ、連続したメニューにならないように上手に献立を考えるようにしましょう。
ひとりで食べるより、誰かと一緒に食べる食事のほうがおいしいという経験はないでしょうか?食事中の会話が弾まないなどの理由で、食事を楽しめない高齢者の方もいます。食事が楽しい時間になるよう、声掛けやコミュニケーションを充実させましょう。その日に食べたいものを尋ねる、味の感想を言い合う、食卓のコーディネートや食器のリニューアルをするなど、雰囲気づくりをすることが大切です。
高齢者の方は、お箸を上手に使えない、スプーンを上手に持てない、片手で皿から一口分を取り分けることが難しいなど、自分でやりたくてもできないことがたくさんあります。上手に身体を動かすことの出来ない方向けの、自助食器というものがあります。お皿やスプーンだけでなく、お箸などの自助食器を使うことで、自分で食事ができたという成功体験が高齢者の方の自信になり、食べる楽しみにつながることもあります。
高齢者の方にとって食べやすい環境を整えたら、実際の食事を進めましょう。具体的にどのように高齢者の方の食事を進めれば良いのか、食前、食中、食後それぞれに注意するポイントを3点ずつ紹介します。
ポイントを押さえることで、高齢者の方が安全に食事を楽しめるよう、サポートしていきましょう。
ポイント(1)ご飯の準備ができたよ、と声を掛け、食事の時間だと認識してもらいましょう。気持ちの準備ができ、食欲増進にもつながります。このとき、食事の中断を防ぐために、先にトイレに行くよう促しましょう。
ポイント(2)口の中の状態を確認しましょう。
入れ歯を装着しているか、口の中に異物はないかをチェックしてください。
ポイント(3)食事をとる姿勢を整えましょう。
できれば座位で、難しい場合は45~60度くらいの傾斜にすると誤嚥しにくい姿勢になります。
ポイント(1)一口の量を適切に調整しましょう。
一口の量が多いとむせやすくなります。高齢者が自分で食べる場合はスプーンのサイズを小さめにするなど、目安となる量を教えると良いでしょう。
ポイント(2)飲み込んだことをその都度確認しましょう。
口の中に食べ物が残っている状態で次々と食べさせると、誤嚥の危険性があがります。高齢者の方のペースに合わせましょう。
ポイント(3)適度なタイミングで水分を与えましょう。
要求されたタイミングで与えるだけでは十分な水分量がとれないため、こまめに与えることが大切です。
ポイント(1)薬を服用している場合、忘れずに飲んでもらいましょう。
薬によって服用のタイミングが異なりますので、事前に確認しておきましょう。
ポイント(2)食後は口腔ケアをしましょう。
口の中に食べ物が残っていないかチェックし、うがいや歯磨きをしましょう。入れ歯を使用している場合は、入れ歯の洗浄も忘れないようにしてください。
ポイント(3)食後すぐに横にならないようにしましょう。
食後すぐ横になると、食べたものが逆流しやすくなります。少なくとも食事から20~30分は時間をおくようにしましょう。
車いすに座った状態で食事をする場合は、フットレストは使用せず、足は床に下ろしましょう。車いすとテーブルの高さが合わないときは、車イス用のテーブルを使用しましょう。前傾姿勢が難しい方には、腰にクッションをあてて安定するようにしましょう。車いすがリクライニングであれば、本人の状態や希望に合わせて60度から80度くらいに保ちましょう。
ベッドで食事をする場合は、ベッドの角度は60~90度の範囲で対象者が楽な姿勢にしてください。腰はベッドのリクライニング部分にしっかりと沿わせ、隙間ができない様にしましょう。80度までの姿勢で食べるときは、首を安定させるため、後頭部に枕やクッションを入れると良いでしょう。
上手に身体を動かせない高齢者の方にとって、細かい動作が必要になる食事はストレスに感じてしまうこともあります。そんな時に自助食器で食事中の動きをサポ―トすることで、すこしでも食事が快適になるかもしれません。フランスベッドのホームケア全科オンラインでも高齢者向けの食器を販売していますので、ご覧ください。
―フランスベッドのホームケア全科オンライン―
▶ 「食事補助用品一覧のページ」
高齢者の方でも使いやすい、持ちやすさとすくいやすさに優れた商品です。大中小の3種類を展開しているため、食事の量に合わせてお選びいただけます。
【持ちやすさ】
・フチが幅広で持ちやすい
・フチにカーブがついているため手にフィットし、持ち上げる動作も楽にサポート
・フチの裏側にラインが入っているため、持ちやすく滑りにくい
【すくいやすい】
・深底で側面の角度があるためすくう動作がスムーズに
・底には滑り止め加工
持ちやすさと飲みやすさに優れた、ユニバーサルデザインのマグカップです。高齢者の誤嚥防止に役立ちます。
【持ちやすさ】
・取っ手形状で持ちやすい
・底面にシリコーン素材を使用しているため、滑りにくい
【食べやすい】
・カップの内側に傾斜がついているため、首を傾けなくても飲むことができ、誤嚥を防止
・フタが付いているのでほこりが入りにくく衛生的
・フタの上からストローを差せる
・二重構造のため、熱い飲み物が入っていても熱く感じにくい
握力が弱い方でも、バンド固定で食事や文字書きがラクになる補助具です。
・指でスプーンやペン等を持つときの腕、手首の動きが、本来の自然な形に近づくように開発
・手の形状になじむように曲げられる板で、手の大きさにピッタリ合わせられる
・キャッチャー部分は上下左右に曲げられ、使いやすい角度に調整が可能
・握った時に手が痛くならないよう、ベルトの端は返し縫い加工
・スプーンやフォーク以外にもボールペン、くし、歯ブラシなどを差し込んで使用可能
・ホルダー部は平らな革のタイプと丸い握りの木柄タイプから選択可能
ここまでに紹介してきた通り高齢者の方は、噛む力や飲み込む力が弱くなっていますので、食べにくいものや飲み込みにくいものがあります。このことが原因で食欲不振や栄養不足になることもありますので高齢者へ食事を提供する際は、調理方法を工夫し食べやすることが大切です。また盛り付け方や、場所、時間、座り方など、安全に食事ができる環境づくりも必要となります。
細かな注意点はたくさんありますが、何よりも大切なのは食べる本人に合った食事、そして楽しく食べられる環境を用意することです。高齢者の食事は介護する方にも負担がかかる場合がありますので、時には市販品なども使い肩の力を抜きながら、気長に取り組んでいくようにしましょう。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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