この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
高齢者のひとり暮らしについて。現状の分析、増加の原因、問題と対策をご紹介します。
2022年9月30日
65歳以上の高齢者のひとり暮らしの割合は、少子高齢化が進む中、年々増加傾向にあることがわかっています。内閣府が公表している「令和3年版高齢社会白書※」によると、65歳以上の人口に占めるひとり暮らしの割合は、2015年時点で男性が約192万人(13.3%)、女性が約400万人(21.1%)となっています。1980年時点では男性が約19万人(4.3%)、女性が約69万人(11.2%)という結果と比べてみても高齢者のひとり暮らしがかなり増えたことがわかります。今後も高齢者のひとり暮らしは、さらに増加していくと見込まれており、2040年には65歳以上のひとり暮らしの割合が男性で20.8%、女性で24.5%にまで増加すると推計されています。 様々な理由から高齢者のひとり暮らしは行われていますが、その中で日常生活上の問題、健康面の問題など生じる問題はたくさんあります。孤独死を身近に感じる人の割合も60歳以上のひとり暮らし世帯は50.8%を超えており、不安を感じながらひとり暮らしをしている高齢者が多いこともわかります。
では、高齢者のひとり暮らしが増えているのは一体なぜなのでしょうか?原因として考えられるのは、以下の3つがあります。
頼れる人が周りにいないというのがひとつの原因と考えられます。少子化や核家族化が進み、誰かに頼りたくても頼れなくなっているのです。昔は二世帯同居や三世帯同居がよく見られましたが、最近は、子どもが遠方で暮らしていることも多く、近くに頼れる家族がいない場合が多くなっています。しばらく夫婦で暮らしていたけれども死別し、ひとり暮らしになったという場合もよくあります。身内以外に頼れる人がいれば良いですが、高齢になるにつれてコミュニティが狭くなり、社会との関わりが薄れてしまいやすいというのが現状です。
現状に満足していて不自由を感じていないこともひとり暮らしを続ける原因のひとつです。内閣府の「令和3年版高齢社会白書※」では老後生活の満足度についても調査が行われており、60歳以上の中で、「満足している」が約2割、「まあ満足している」が約6割という結果となっています。8割を超える人が現在の生活に満足しているのです。満足している理由はそれぞれ異なると思いますが、楽しめる趣味や仲間との交流など生きがいがあること、安定した収入があって経済的な不安がないことなどが理由として考えられ、誰かを頼らずとも生活していけるということがひとり暮らしを続けている原因になっています。
あえてひとりで暮らしていることも原因と考えられます。ひとりの方が気楽だという理由から望んでひとり暮らしを選択しているのです。高齢になると子や孫との同居や介護施設への入居が選択肢として出てきますが、誰かと一緒に暮らして気を遣うことにストレスを感じる場合もあります。住み慣れた家から離れたくないという気持ちが強い高齢者の方も多くいます。身内に迷惑をかけたくないという想いでひとり暮らしを続けることもあるでしょう。
続いて、ひとり暮らしをする高齢者に起こり得る問題やトラブルについて解説していきましょう。
孤独死は年々増え続けています。身近にある大きな問題としてメディアで取り上げられる機会も増えました。ひとり暮らしの場合、体調が急変してもとっさに誰かに助けを求めることが難しく、そのまま誰にも気づかれずに亡くなってしまうこともあります。高齢者が誰にも看取られずに孤独死し、亡くなったことに気付いてもらえないという事態は、ひとり暮らしをする高齢者の誰に起きてもおかしくないことです。このようなことにならないように注意が必要です。
認知症の症状は自覚しにくく、ひとり暮らしの場合は自覚がないまま進行してしまうこともあります。特にコミュニケーションをとる機会が少ない高齢者は脳への刺激が少なく、認知症がどんどん進行してしまう恐れがあります。認知症の症状は様々ですが、進行すると服薬管理ができない、金銭管理ができないなどの日常生活に支障をきたす症状が見られるようになります。日常生活に支障をきたすと火の不始末など命に関わる危険につながることもあるため気を付けなければなりません。
高齢者を狙った詐欺や犯罪などが近年増えています。ひとり暮らしの高齢者は被害に遭いやすいため注意が必要です。高齢者が巻き込まれやすい犯罪やトラブルの例として、以下のようなものがあります。
●還付金詐欺
電話口で役所の職員を装って、医療費の還付金があるなどと言い、ATMの操作を指示して現金を指定の口座に振り込ませる手口。
●架空請求
ありもしない契約や利用していないサービスなどの料金を請求し、金銭をだまし取る手口。
●悪質リフォーム
突然訪問してきた業者が、床下の無料点検ですなどと言って点検を行い、今すぐ工事しないと危険です、のように不安を煽ってリフォーム工事の契約をさせる手口。高額請求や、他の箇所の工事契約を次々に迫ってくることがある。
●定期購入トラブル
通信販売で、初回お試し価格と書かれた商品を1度購入したところ、定期購入の契約がされていて高額な料金を請求されるトラブル。
上記以外にもワンクリック詐欺や訪問販売、投資詐欺など様々な手法があり、判断能力が低下している認知症の方は特に注意が必要です。
ひとり暮らしで家族や友人と交流する機会が少ない、楽しめる趣味もないといった場合は生きがいが感じられず生活意欲が低下してしまいます。日常的にコミュニケーションをとる相手がいなくて普段誰かと顔を合わせることもなければ自分の身なりに気をかけることもなくなって、食事、入浴、掃除など基本的な家事すらおろそかになりがちです。そうなるとQOL(=生活の質)の低下につながります。没頭できる趣味や仲間との交流などは生活意欲を高めることにつながります。社会活動への参加などを積極的に行い生活にメリハリをつけることが大切です。
高齢になると健康や病気について考える機会が増え、自身の健康状態に不安を覚える方も多いようです。特にひとり暮らしの場合は、急な病気やケガなどに見舞われても頼れる人がおらず不安が大きいものです。例えば自宅で倒れてしまったとき、誰かが一緒にいてくれれば異変に気付いて救急車を手配するなどの対応ができますが、ひとり暮らしの場合はそうはいきません。加齢とともに運動機能は低下していくため、たとえ住み慣れた家でも小さな段差につまずいて転倒するなど予期せぬケガをすることもあります。病気やケガなどの緊急事態に備えて、しっかりと対策をとっておく必要があります。
ひとり暮らしの場合、地震、台風、豪雨、洪水などの自然災害が発生した際に自力で対処するのは難しくなります。いざ避難が必要になっても避難所まで自力で向かうことが難しいなど、誰にも頼ることができず避難するタイミングを逃してしまうことも考えられます。日本は自然災害が多いこともあり、いざというときのために普段から備えておくことが大切です。地域住民とのつながりを持ち、助け合える関係性を築いておくと安心です。
ここまでは高齢者のひとり暮らしで発生しやすいトラブルや問題についてご紹介しましたが、これらのリスクに巻き込まれないようにするには一体どうすればよいのでしょうか?ここからは具体的な対策を6つご紹介しましょう。
高齢者の一人暮らしの対策としてまず挙げられるのが、家族との同居もしくは近居です。一緒に生活していれば小さな異変にも気付くことができますし、先に述べたリスクを回避することにつながります。 とはいえ、いきなり同居はハードルが高いかもしれません。同居による仕事への影響や子どもの進学などを考えるとこれまでどおりの生活を続けるのは難しく、状況が大きく変わることも想定されます。また、同居だとどうしても気を遣いストレスになるのでなかなか前向きに検討できないこともあるでしょう。 そのようなときは、住まいは別でも日常的に行き来ができる距離に住む近居という選択肢も視野に入れて考えることをおすすめします。住む家が別であればお互いの生活習慣や生活リズムを崩すことなく生活できますし、緊急時にはすぐに駆け付けることができるので安心です。 しかし、同居や近居は高齢者のひとり暮らしの対策にはなりますが、それが必ずしも正解とは言えません。どこで、どういった暮らしをしていきたいのかなど幸せのかたちは人それぞれ異なります。住み慣れた家から離れたくないと考える高齢者もいますし、友人が多い地域で暮らし続けたいという気持ちが強いこともあります。また子育てが始まってすぐに親と同居することになれば、子育てと介護の両方に追われて体調を崩してしまう恐れもあります。老後の暮らしについては元気なうちからよく話し合い、本人の希望を聞いておくのはもちろん、家族の考えについてもしっかりと共有しておくことが大切です。
ひとり暮らしで金銭管理や契約手続きなどが難しくなったときは、成年後見制度を利用するのがおすすめです。成年後見制度とは、判断能力が不十分な高齢者の金銭管理や契約手続きなどを後見人に代行してもらえる制度です。成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。法定後見制度は判断能力が衰えてしまった際に家庭裁判所によって後見人が選任されます。一方で任意後見制度は判断能力があるうちに自分で後見人を選んで契約を結んでおくことができます。 加齢とともに誰でも判断能力は低下します。さらに認知症の発症となると理解力や思考力も衰え、日常生活を送る上で何かを判断しなければならない状況に直面しても正しい判断ができなくなります。成年後見制度を利用すれば後見人に必要な手続きを代行してもらえますし、不利益な契約を結ぶこともなくなり安心です。
見守りサービスを利用することも高齢者のひとり暮らしにおすすめです。見守りサービスには下記のようにいくつか種類があります。
●センサー型
自宅のよく通る場所に専用のセンサーを設置し、一定時間センサーが感知せず室内での動きがないと判断された場合は異常信号が送信されるシステム。
●ボタン型
自宅に非常ボタンを設置し、緊急時にボタンを押すとセキュリティ会社のスタッフが駆けつけてくれるシステム。
●ペンダント型
ペンダント型の通報ボタンを首からかけておいて、急なケガや体調が急変した際にボタンを押すとセキュリティ会社や家族に連絡がいくシステム。
上記のような専用機器を買い取って使用するプランだけでなく、月額でレンタルできるプランも提供されています。急病やケガだけでなく火災やガス漏れ、不審者の侵入などひとり暮らしの生活で心配なことはたくさんあると思います。万が一の時のためにこうしたサービスの利用を検討してみましょう。
介護保険サービスを利用し、日々の生活をサポートしてもらうのもひとつの対策です。介護保険サービスは要介護認定を受けた方が利用できるサービスで、原則として費用の1割(所得に応じて2~3割)を自己負担すればサービスを受けられます。 自宅で受けられるサービスもあれば、施設に通って受けられるサービス、施設に入所するサービスなど利用できるサービスの種類は様々です。例えば、料理や掃除などの家事にサポートが必要な場合は自宅にヘルパーが来てくれる訪問介護の利用、ひとりで自宅にいるのが退屈な場合はデイサービス施設へ通って他の利用者と交流をするなど、利用者の身体状況や生活状況に合わせて必要な支援を組み合わせることが可能です。 介護保険制度や高齢者の生活について相談したい場合は、各地域に設置されている地域包括支援センターを利用しましょう。地域包括支援センターにはケアマネジャーや社会福祉士、保健師など介護や福祉、医療などに関する専門家が在籍し高齢者の生活を支援してくれます。相談は無料、本人以外にも家族や友人、近隣住民などからの相談も受け付けています。気になることや困り事があれば相談してみるとよいでしょう。
―要介護認定について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。―
▶ 「介護保険制度とは?仕組みやサービス内容など、制度について解説」
自治体独自の高齢者向けサービスも上手に活用していくとよいでしょう。自治体によってサービスの内容は異なりますが、自宅訪問や電話などによる安否確認サービス、食事を自宅まで届けてくれる配食サービス、ゴミ出しサポートなどひとり暮らしの高齢者に役立つ様々なサービスが提供されています。いくつか利用できるサービスの例を紹介します。
【大阪府吹田市】
●緊急通報システム 緊急通報装置を自宅に設置し、緊急時は非常ボタンを押せば市の委託業者に通報できる。
●寝具乾燥消毒サービス
寝具を干すことが難しい方などを対象に寝具一式の乾燥消毒を行ってもらえる。
【千葉県船橋市】
●軽度生活援助員の派遣
援助員が自宅を訪問し、買い物や新聞・雑誌の搬出、手紙の代筆・投函など日常生活上の簡単なお手伝いをしてくれる。
●配食サービス
食事を作ることが難しい一人暮らしの高齢者宅に昼食・夕食を届け、安否確認もしてくれる。管理栄養士による栄養指導なども受けられる。
自治体によってサービス内容は異なるため、住まいのある自治体ではどのような支援が行われているのか調べ、積極的に活用しましょう。
ここまでに紹介したサービスを利用するのもよいですが、近隣住民との付き合いや友人との交流など人と関わる機会をつくることが大切です。趣味の集まりや地域のイベントへの参加、友人と定期的に集まるなど積極的に人と関わるようにしておきましょう。身体状況などに変化があったときには気付いてもらうことができますし、急病やケガ、災害発生時など緊急事態のときには助け合うこともできます。コミュニケーションをとることは認知症の予防や進行を遅らせることにもつながるので、普段から人と関わる機会をつくることはとても大切です。
年々増加傾向にある高齢者のひとり暮らしについてご紹介しました。高齢者のひとり暮らしには様々なリスクが潜んでいますが、見守りサービスや介護保険サービスの利用、人との積極的な関わりなどしっかりと対策をとっておけば、リスクを軽減することが可能です。高齢のご家族が安全かつ安心して日々の生活を送るためには何が必要か、どのような支援ができるのかを家族でしっかり話し合い、各家庭に合った対策をとることが重要になります。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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