この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
寝たきりの状態が続くことで起こる「廃用症候群」。症状や原因、検査・診断をはじめ、リハビリや治療方法、予防方法など廃用症候群について解説します。
2025年4月7日
「生活不活発病」とも呼ばれる廃用症候群とは、長期間の安静状態や運動量の減少によって身体機能が衰え、心身の様々な機能が低下してしまうことです。
体を動かすことは、筋肉や関節を動かすだけでなく、たくさんの臓器の働きにも関わっています。そのため、体を動かさない状態が長く続くと、身体能力が低下するだけではなく、内臓の機能も低下してしまいます。
病気やケガなどで安静を保つ必要があったり、関節の痛みなどで動くことが億劫になってしまうと、体を動かす機会が減ってしまいます。その状態が続くと筋肉や関節、臓器などがうまく機能しなくなり廃用症候群を引き起こします。
廃用症候群から回復するために要する期間は、廃用症候群になっていた期間の数倍にわたると言われ、 一度なってしまうと回復するのは困難になります。さらに廃用症候群になると、全身の筋肉量が低下した状態であるサルコペニアが進行することも考えられます。ですから、長期的に安静状態になることはなるべく避けるように意識し、やむを得ない場合でも積極的にリハビリを行い廃用症候群の予防をすることが大切です。
サルコペニアとは、ギリシャ語のサルコ=筋肉、ぺニア=喪失という言葉を組み合わせて作られた造語で、筋肉の喪失を意味しています。加齢や病気によって筋肉量が減っていく現象をサルコペニアと呼び、歩く速度が遅くなる、杖や手すりが必要になるなどの身体機能の低下が見られます。一方、廃用症候群は筋肉以外にも骨や臓器、精神機能など全身に影響を及ぼすものです。廃用症候群とサルコペニアの2つの違いとしては、全身のさまざまな部位の機能低下が見られるのが廃用症候群、筋肉量と筋力の減少を特徴としているのがサルコペニアと覚えましょう。
廃用症候群の代表的な症状として、以下のような症状があります。
・筋萎縮(筋肉がやせ衰える) ・関節拘縮(関節が硬くなり動きが悪くなる) ・骨萎縮(骨がスカスカになりもろくなる) ・腰痛(腰が痛くなる) ・筋力低下(筋肉の力が弱くなる)
・誤嚥性肺炎(食べ物や唾液などが誤って気管支や肺に入って起きる肺炎) ・心機能の低下(心臓の働きが悪く、全身に十分な血液を送り出せない) ・血栓塞栓症(血のかたまりが血管で詰まってしまう) ・起立性低血圧(急に立ち上がったりした時に、血圧が下がり立ちくらみ等を起こす) ・肺塞栓症(肺の動脈に血液の塊が詰まってしまう、エコノミークラス症候群のこと) ・換気障害(肺において酸素と二酸化炭素の交換が妨げられる状態)
・うつ状態(気分が落ち込む) ・せん妄(周りの状況が理解できず、ぼんやりして幻覚や錯覚が見られる) ・見当識障害(今いる場所や時間がわからなくなる) ・睡眠障害(睡眠が異常になる状態、不眠症や過眠症など) ・認知症(脳の病気や障害により認知機能が低下して、日常生活に支障が出る状態)
・尿路感染症(尿路で細菌が繁殖して炎症が起きることで、高熱、腰や背部に痛み、排尿時の痛み、血尿などが見られる) ・尿路結石(尿路に結石がとどまることで、腰やわき腹の激しい痛み、吐き気や嘔吐、冷や汗、血尿、残尿感などが見られる) ・排尿障害(尿をためて排出するまでの過程に異常がある状態のこと、頻尿や尿失禁など)
・褥瘡(床ずれのこと。皮膚が圧迫されて血の巡りが悪くなり、赤みや水ぶくれ、内出血などが見られる。悪化すると傷が筋膜や骨まで達することもある) ―床ずれについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「床ずれの症状や原因は?床ずれを防止する対策とおすすめ用具をご紹介」
▶ 「床ずれ防止用具の選び方とは?使うメリット・デメリットについても解説!」
・逆流性食道炎
(消化途中の食べ物や胃液が食道に逆流し、胸やけ、のどの違和感、酸っぱいものが上がってくる感じなどが見られる) ・食欲低下(積極的に食べなくなることで、栄養不足や体重減少にもつながる) ・便秘
・耐糖能異常(空腹時の血糖値が正常値と異常値の間にある状態で、糖尿病予備軍とも言われる)
高齢になるに従って、糖尿病を発症しやすくなります。また耐糖能異常を放置すると、糖尿病に進行する確率が高くなります。軽度なら自覚症状は出ませんが、ひどい場合は意識障害につながることもありますので気を付けましょう。耐糖能異常と診断された方は、まずは油断せずに、できるだけ日頃から食事改善に努め、運動療法も実践するようにしましょう。
廃用症候群は体を動かさない状態が続くことで発症することはわかりました。では、具体的にどのような状況が発症の原因となるのでしょうか?
病気やケガなどで長期間安静を保つ必要がある場合、体を動かさない状態が長く続くことで運動能力が低下し、運動することが億劫になってしまいます。それによって、体を動かす機会が更に減ってしまい、廃用症候群がどんどん進行するという悪循環に陥ります。過度な安静は廃用症候群を引き起こすリスクを高めるため、積極的にリハビリをする、日常生活でできることは自分で行うなど、必要以上の安静をとらないことが大切です。
関節痛や麻痺などによって動く意欲をなくし、運動量が大幅に減ることも廃用症候群の原因のひとつです。外出する機会が減少すると、関節の動きが鈍くなり、筋力の低下が進みます。そうなると思うように動けなくなり、外出や運動がますます億劫になることで廃用症候群が進行します。脳機能が低下して認知症の進行につながることや、精神神経系の機能が低下してうつ状態などの精神疾患を発症することもあります。また自力で動ける時から車いすやおむつを使用することは、廃用症候群の原因となるため避けましょう。
寝たきりとは、長期間にわたって一日の大半をベッドの上で過ごし起き上がれない状態をいいます。
病気やケガなどをきっかけに寝たきり状態になり、筋力が著しく低下することが多くなります。特に高齢者は進行が早く、寝たままの状態が1週間続くと約10〜20%の筋力低下が見られると言われています。寝たきりで活動量が少ないと食欲不振になることも多く、栄養不足に陥って筋肉や骨の破壊が進行しやすいため注意が必要です。 脳卒中や認知症、転倒による骨折は寝たきりの原因になりやすいので、これらを予防するためにも生活習慣を見直すことをおすすめします。寝たきり状態になっても、進行しないようにできる範囲で体を動かすことが大切です。
外出するときに階段が避けられない環境で暮らしている、必要以上の介護が行われ本人が体を動かす機会がほとんどないなど、周囲の環境に問題があり廃用症候群を引き起こすことも考えられます。階段や大きな段差など、外出する際に不安に思う要素があれば、なかなか出かける気になれず、家に閉じこもってしまいやすくなります。また、本人が自力でできることまで周囲が手伝ってしまうと、体を動かす機会を奪ってしまうことになります。
廃用症候群の検査には決まったものがありません。しかし、活動ができなくなった経緯がわかれば、正確に診断してもらうことはできます。
気づいた時点から可能な範囲で詳しく情報提供をしましょう。
廃用症候群は医師だけに限らず、看護師、リハビリ関係者、家族によって発見されることもあります。
廃用症候群には決定的な検査がないため、診断が難しく場合によっては診断が遅れがちになります。ただし廃用性筋収縮の兆候は見つかりやすくなっています。廃用性筋収縮があるかどうかは廃用症候群の診断の目安となります。安静にしている時間が長く、今までできていたことが急にできなくなる、生活に支障が出始める、動けない病気になるなどした場合は、廃用性筋収縮の疑いがあります。また、関節自体の可動範囲が減ってきた場合は関節萎縮の恐れがあります。
少しでも違和感がある時は、ためらわずに医師へ相談してください。
身体の動きは、筋骨格、循環器・呼吸器、代謝・内分泌、精神神経など多数の臓器と関連しています。 内的/外的な要因が影響し合って、不活発な状態が長引くと、各臓器の機能が低下し、負のスパイラルが起きやすくなります。 廃用症候群は合併症の症状が出やすいので、診断が難しいと言われています。 認知症を一例に考えると、発症したら活動量そのものが激減し、さらに認知症の進行を早めるケースも多くあります。こうした悪循環のため、もとの原因が廃用症候群なのか認知症なのかすぐに正しい判断をすることができづらくなります。 認知症が先で廃用症候群になったのか、廃用症候群が先で認知症になったのかによって、治療方針も変わります。認知機能の低下や、活動性がダウンする原因を、血液検査や画像検査などでしっかり調べて分析してもらいましょう。
高齢者の廃用症候群のリハビリや治療はどのように行うのでしょうか。高齢者の廃用症候群を完治させるのは大変難しいと言われますが、まずは各症状の治療を行います。誤嚥性肺炎・心肺機能低下の場合には投薬治療が中心となり、「せん妄」の症状がある時は精神治療薬を使用します。自宅から入院した場合は、病気やケガの治療が済んだら速やかにもとの生活に戻らせるのが最善の方法です。長期間寝たきりの場合は、治療と並行して早めにリハビリを開始させるのが効果的とされています。入院をしている間は医師の指示のもと、次のようなリハビリを行います。
【関節可動域訓練】
固まってしまった関節の可動域を広げるために行う、関節を動かすリハビリ。大きい関節(肘や膝など)をはじめ、手足の指関節などの小さい関節も動くように訓練します。
【ポジショニング】
寝ている間の床ずれ予防のために体の向き(ポジション)を変えたり、足を伸ばして寝たりするなど関節が固まらないようにするための訓練をします。
【レクリエーション】
レクリエーションは、身体の運動や気分転換が目的で、ボールなどの道具を使って運動をしたり、ゲーム・クイズ・折り紙・歌などを楽しんだりします。個人単位で行うほか、集団で実施することもあり、他の人との交流が保てるので、うつ症状などの予防にもなります。
身体を動かさない状況が長く続くと、日々の活動量が激減し廃用症候群が発症しやすくなります。症状が出ると活動範囲が限定されるだけでなく、家族や周囲の介護の負担も増えます。ご本人の心身の状態を確認しながら、次に紹介する廃用症候群のケア・予防方法を試してみてください。
廃用症候群の防止対策として、毎日の食事のバランスを整えることがあります。一般的に、高齢者は栄養状態が不十分(低栄養)だと考えられています。低栄養のままだと体力ダウンにつながりやすく、全体の活動量ややる気も減退しがちになります。次の点に注意しながらバランスのよい食事を心がけましょう。
【食事の注意点】
■栄養バランスが整った献立を考える
■食べたくなるような工夫をする(料理の見た目、味つけ、食器・カトラリー、マット・トレイ、インテリアなど)
■食べやすい状態で提供する(小さく刻む・とろみをつけるなど)
■口腔内を清潔にする
■入れ歯が合っているかどうか確かめる
■家族や他の人と一緒に食事する
■食事中にテレビをつけない
できるだけ身体を動かすようにしましょう。寝たきりで安静にしているだけでは活動量が低下するのは当然で、次第に心身のパワーも減退していきます。基本的にはご本人が何でも行えるのが理想的です。少しでも身体を動かせば、活動量が増すだけでなく筋力低下も防げます。ご本人のやる気にもつながるので、日常生活での簡単な動作はできる限りしてもらいましょう。ただし、ご本人の対応レベルやその日の調子に合わせることも大切ですから決して無理はさせないように注意してください。
【身体を動かせる機会の例】
■寝たままで軽く足のストレッチ
■トイレや洗面所まで手すりを使って歩行
■簡単な家事をする
■近所まで歩く
■近くで買い物
ご本人が気分転換できるように、普段から周囲が配慮する必要もあります。寝たきりや安静状態が続いて活動量が減少すると、自律神経系や精神面にも影響を及ぼします。孤立感やうつ状態を招かないように、何らかの活動に取り組むようにして気分転換をしましょう。例えば、雑誌や本を読む、音楽を聴く、アロマを楽しむ、散歩する、通所介護(デイサービス)に行くなど、ご本人の希望スタイルに応じた気分転換を見つければ、廃用症候群の予防にも良い影響を与えるかもしれません。
長期間寝たきりで安静の状態が続くと、誰でも廃用症候群にかかるリスクがあります。ただし人によって出る症状は様々で、運動器・循環呼吸器・泌尿器・消化器の障害をはじめ、皮膚や代謝機能、メンタル面に支障が出ることも考えられます。廃用症候群が発症すると、その後の回復、完治が非常に難しいとされているのが実情です。発症原因を十分に理解し、正しいリハビリや治療に努め、食事/運動/気分転換などの日常的なケアや予防対策にも気を配りしましょう。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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