この記事の監修者
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上田悠理
医師(形成外科医・在宅訪問診療医)
ヘルステックプロモーター
床ずれってご存じですか?床ずれになると介護される方も介護する方にとっても苦痛や負担となります。床ずれの基本的なことを知ることで予防・対策をしましょう。
2023年8月9日
床ずれは、医学的には「褥瘡(じょくそう)」と呼ばれ、圧迫とずれが原因でできるキズのことです。寝たきりの人や、体に麻痺があって動けない人、長時間同じ体勢で座っていなくてはならない人などを介護する際に気をつけたいことのひとつです。
同じ姿勢で長い時間寝たままや座ったままの状態が続くと、マットレスやふとん、車いすに触れている体重のかかる部分の皮膚が圧迫されて血の巡りが悪くなります。そうすると皮膚やその下にある皮膚を支える組織(皮下組織)が死んでしまいます。このようにしてできた傷のことを床ずれ(褥瘡)といいます。
床ずれは骨の突き出した部分や脂肪の薄い部分、常時湿気ている部分などに、長時間の圧迫、摩擦などの外力が皮膚に加わってできます。
体を拭く時や上体を起こすときなどに起きる「ずれ」も床ずれの原因になります。「ずれ」とは、皮膚の表面と皮下組織が互い違いにずれること。これにより皮膚や皮下組織の細胞間にずれが生じ、組織が障害されます。その結果、皮膚や皮膚内部の組織、筋肉などに酸素や栄養が行き届かなくなり床ずれを引き起こします。
ずれや乾燥、水分でふやけているなど皮膚が弱っている状態の場合、外からのダメージを受けやすく注意が必要です。高齢者は肌が乾燥しやすく、刺激に弱くなっています。また、汗や尿・便で皮膚が汚れ、湿った状態もダメージを受けやすいため、寝たきりで失禁が続いている(または下痢が続いている)場合は注意しましょう。皮膚の状態だけではなく、栄養状態が悪かったり、痩せている、むくみがあるといった身体的要因も床ずれの原因となります。食事を十分に摂れず、 低栄養状態が続くと筋肉や脂肪が減っていき体重が減少します。痩せていて皮下脂肪が少ないと骨が出っ張り、その部分がマットレスや布団に当たって長時間圧迫され、床ずれを引き起こしやすくなります。また、むくみによって血流が悪くなっていたり、 病気によって痛みを感じにくい、体・関節が動かしにくいことも床ずれが発生する原因になります。抗がん剤やステロイド剤など、服用している薬によって皮膚が感染を起こしやすくなっている場合もあるので要注意です。
床ずれが起こりやすい箇所
仰向けに寝ている状態だと、おしりの中央にある仙骨部、肩甲骨、かかと、後頭部などが床ずれの発生しやすい箇所です。横向きに寝ている状態だと、太ももの付け根の外側にある大転子や膝、くるぶし、骨盤の左右に張り出している腸骨にできやすく、上半身だと耳や肩、肘などにもできます。うつぶせの場合、耳や肩、膝、つま先などにできやすく、女性の場合は乳房、男性の場合は性器にもできるので注意が必要です。
車いすなどに座っている場合は、おしりにある坐骨や尾骨、背中の骨や肘などに発生します。外部から圧迫を受ける部分であれば、体のどの部分でも床ずれが発生する可能性があります。介護する際は、毎日皮膚の状態を観察して異常がないか確認しましょう。
床ずれができた直後に見られる主な症状として、 皮膚に消えない赤みや水ぶくれ、内出血などがあります。床ずれは、傷の深さによって4段階に分けられます。表皮までの浅い褥瘡の場合、赤みや水ぶくれ、内出血などの症状が見られます。新しい皮膚が再生するために必要な細胞や毛根も残っているため、比較的短期間で治癒します。一方、表皮を超えて深い褥瘡になると皮膚が破綻して潰瘍になったり、赤みが黒色に変わり、ひどい場合は傷が筋膜や骨にまで達します。組織の多くが死んでしまい、それを取り除かないと傷が治らないため治るまでに時間がかかってしまいます。皮膚の赤みを発見した時は、その部分に圧力が加わらないよう体位を変えて少し様子を見てみましょう。30分程で赤みがなくなれば床ずれではありませんが、赤みが残るなどの異常が見られる場合は、自己判断せず医師や看護師などに相談してみましょう。
床ずれを予防するには、毎日皮膚の状態を観察することが大切です。
また、圧迫やずれを減らすため、体圧分散や摩擦・ずれの防止、スキンケア、栄養管理など適切なケアを行うことも予防につながります。
体圧分散ケアとは、マットレスや布団、車椅子などから体にかかる圧力・ずれ力を分散させ、皮膚の同じ部分に加わる圧力をできる限り小さくするためのケアです。 姿勢や体の向きを変える体位変換や、体にフィットするマットレスなどの体圧分散用具を上手く活用し、布団などと肌が触れる面積をできるだけ広くして圧力を分散させます。骨の突出部など一点にかかる圧力を減らすことで床ずれを予防します。寝たままの時間が長い場合、同じ姿勢が続かないように定期的に体位変換を行いましょう。仰向け、横向きが交互になるようにし、2~3時間ごとを目安に行います。体の状態や生活リズムによって体位変換のスケジュールを立てにくい場合もありますので、医師や看護師などと相談して計画を立てましょう。
①体位変換
床ずれを予防するには定期的に「体位交換」を行い姿勢を変えることで、同じ部位への圧迫を避けましょう。自力での寝返りができなくなった場合は、約2時間に1回は体位変換を行い姿勢を変えてあげることで床ずれを防ぎましょう。
②摩擦・ずれの対処方法
摩擦・ずれは、体がずり落ちたとき、シーツのしわを伸ばそうと寝たまま引っ張ったりしたときなどに生じます。寝ているときは、上半身を支えるベッドの傾きを30度以下にし、体がずり落ちないようにベッドの足側を上げるか膝下に枕を入れましょう。完全な仰向けではなく、左右どちらかのおしりなどの面積が広い部分で体を支えると、圧力がかかる面積が広くなるため床ずれのリスクを下げることができます。 パジャマやシーツの小さなしわでも摩擦・ずれが起きることがあります。きちんとしわを伸ばしましょう。体の下に手を入れてしわを伸ばす際は、すべりやすい手袋やビニール袋などを使うと便利です。
③スキンケア
皮膚を健康な状態に保つことも床ずれの予防には欠かせません。正常な皮膚の場合、十分に水分を含んだ角質層によって外からの刺激の侵入を防ぎます。しかし、皮膚が乾燥しているとバリア機能が低下し、外部の刺激を受けやすくなります。皮膚を清潔に保ち、乾燥しすぎないよう保湿して床ずれを防ぎましょう。 皮膚が乾燥しているとかゆくなりやすく、その部分を掻いてしまい傷つきやすくなります。乾燥を予防するために、清拭や入浴後は 水をはじく撥水クリームや保湿剤を塗り保湿しましょう。失禁が続いているなどで皮膚がふやけたり適度に湿っている箇所には、撥水性の高い軟膏や保湿クリームを塗り、皮膚の炎症が起きないよう予防します。オムツを使用している場合はむれや摩擦・ずれが起き、体圧もかかります。通気性がよく吸収力の高いオムツを選ぶなど、体にあったものを効果的に使用するようにしましょう。
④介護用品で予防する
体圧分散用具を使用することも床ずれを予防するケアになります。 体圧分散効果のある静止型マットレスやエアマットレスは介護保険制度を利用してレンタルすることが可能です。座っている時に使用する姿勢保持クッションなどもあるので、どれだけ自分で体を動かせるか、どんな姿勢でいる時間が長いかなどを考え、体に合った体圧分散用具を選びましょう。座っているときは、横から見て股関節、膝関節、足関節が90度になるようにしましょう。太もも裏の広い面積で圧力を受け、坐骨などの骨の突出した部分への圧迫を減らします。自分で姿勢を保つことが困難な場合は、体圧分散効果のあるクッションや、姿勢を保持できるクッションを用いるとよいでしょう。また、長時間座ったままにならないよう注意し、15分に1回おしりを浮かせて座りなおしたり、腕で体を持ち上げたりして血行不良を防ぎましょう。自分でおしりを持ち上げるのが困難な場合は、介護者が座りなおしを行うか寝かせるなどし、車椅子の場合は座る時間を1時間までとしましょう。
⑤栄養管理
床ずれの予防には、圧迫を少なくすることだけではなく、皮膚や筋肉に十分な栄養を行きわたらせることが重要です。健康な皮膚や筋肉づくりに必要な栄養素をしっかりとるため、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを補うバランスのよい食事を心掛けましょう。水分摂取量にも注意し、体の内側から床ずれを予防しましょう。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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