この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
胃ろうとは何か?そのメリット・デメリットから胃ろうの方を介護する際のポイントや介護施設を選ぶときの注意点までを紹介します。
2024年7月11日
胃ろうとは、手術で腹部に小さな穴を開け、チューブを通し、直接胃に栄養を注入する医療措置のことで、病気や加齢によって口から食事がとれなくなったときに、衰弱しないよう、口以外から栄養を補給する方法のひとつです。胃ろうの手術は、比較的リスクが少ないといわれ、PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy):経皮内視鏡的胃瘻造設術(けいひないしきょうてきいろうぞうせつじゅつ)と呼ばれる内視鏡を使用して行い、順調に進めば15分〜30分程度で終わります。入院期間は、術後の経過観察などによりますが、一般的には1〜2週間程度の短期間で済むことが多いです。
胃ろうの対象者は、身体機能の低下や重度の認知症などにより、口から食事をとることが難しい方となっています。食べ物をうまく飲み込めず、むせてしまう方は、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こす恐れがあります。このようなリスクを避けるために医師や介護者が胃ろうを推奨する場合があります。 胃ろうを行っても口から食事をとることはできますので、口から食べる練習を続けることが望ましいです。
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胃ろうは、健康状態が回復するまでの間、必要な栄養を補給するために行われるものです。しかし、本人の判断力や理解力が低下している状態で行われることが多いため、回復を目指した医療行為ではなく延命治療の一種だといわれることがあります。食事ができない方に手術をして栄養を与え続けることが、本人の意思に反する延命ではないかと、その是非が問われる場合もありますが、胃ろうと併行して口から食べる練習を行っていた方が、再び口から食べられるようになった事例もあるので、単なる延命治療であるとも言い切れません。胃ろうは、身体への負担が比較的少なく介護者の負担を減らすことにもつながります。本当に胃ろうが必要なのかと議論される中、家族が胃ろうを行うかの判断をすぐにするのは簡単ではありません。胃ろうのメリットとデメリットをしっかりと把握し、本人と家族が納得のいく選択をすることが大切です。可能な場合は本人の意思を事前に確認しておくとよいでしょう。
メリット1)不快感や負担が少ない
胃ろうは、チューブが鼻や喉を通らないため不快感や違和感、身体への負担が少ないのがメリットです。
胃ろう以外の栄養補給法のひとつとして、 鼻から胃までチューブを入れて栄養を送る経鼻胃管栄養がありますが、こちらは痛みや息苦しさなどの不快感を与えてしまい、身体への負担になります。
メリット2)カテーテルが抜けにくい
胃ろうは、腹部にあるのでカテーテルを自分で引き抜く心配が少なくなります。服を着れば見た目ではわからないので外出もしやすいです。
鼻から胃までチューブを通す経鼻胃管栄養の場合は、違和感や不快感を理由に自分で引き抜いてしまうことがあります。
メリット3)口から食事ができる
胃ろうは腹部に行い、喉や食道にカテーテルが通っていないため、口から食事ができます。再び口から食事を行うための嚥下訓練(えんげくんれん)もしやすくなります。
メリット4)入浴できる
胃ろうを造設しても、特別な処置をせずに普段通りに入浴することができます。皮膚トラブル予防のために、身体を清潔に保つことはとても重要ですが、入浴する際に、胃ろう部分をカバーするなどの手間がかからないので、介護者の負担軽減にもなります。
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デメリット1)手術が必要
胃ろうの造設には、手術が必要になります。内視鏡を使って行う短時間の手術なので身体への負担は小さいですが、体に穴を開けるなど手術で身体に傷をつけることに抵抗を感じる方にはデメリットとなります。認知症の方は、カテーテルを自分で引き抜いてしまう場合もありますが、一度カテーテルが抜けてしまうと、穴が一晩でふさがってしまい再手術となりますので注意が必要です。
デメリット2)定期的なメンテナンスが必要
胃ろうは、定期的にカテーテルの交換を行う必要があります。交換する手間と費用がかかるため、不便に感じることもあります。カテーテルの種類により、バルーン型は1〜2ヶ月に1回、バンパー型は4〜6ヶ月に1回の交換が必要です。交換にかかる料金は、材料費と手技料を合わせて、バルーン型は約10,000円前後、バンパー型は約22,000円前後となります。1回あたりの料金で比較するとバンパー型が高くなりますが、交換頻度を考えると、結果的にはバンパー型の方が安くなります。カテーテルなどの使用する器具を清潔に保つことは大変重要ですから、適切な期間内に必ず新しいものに取り替えましょう。
デメリット3)誤嚥性肺炎のリスクがある
胃ろうは、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクを減らすために有効ではあります。しかし唾液を誤嚥(ごえん)してしまうことや胃に注入された栄養剤が逆流して気管に入ってしまうことなどがあり、誤嚥(ごえん)のリスクがすべてゼロになるわけではありません。誤嚥(ごえん)を予防するためには、口腔ケアを徹底しておこない栄養剤の逆流を防ぐことが大切ですので、栄養剤を注入する前には姿勢を整えるようにしましょう。また、胃の中のものが逆流しやすい胃食道逆流症という症状が見られる方には、とろみのついた栄養剤を使用するなどの工夫も必要です。
デメリット4)口腔内が不潔になりやすい
胃ろうによる栄養補給で口から食べる機会が減ってしまうと、唾液の分泌が少なくなり口腔内が乾燥するため不潔になりやすいです。誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)は、自分の唾液が原因で引き起こされることもあります。口から食事をしていないことを理由に口腔ケアを怠ると、雑菌の混ざった唾液を誤嚥(ごえん)する恐れがあるので注意が必要です。
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胃ろうのカテーテルの種類には、体外部に使用するボタン型、チューブ型、胃の内部に使用するバルーン型、バンパー型があります。これらを組み合わせて使用する、「ボタン・バルーン型」「ボタン・バンパー型」「チューブ・バルーン型」「チューブ・バンパー型」の4つの種類があります。
(1)ボタン型
ボタン型は、体外にチューブが出ていないため、動作の邪魔になりにくく目立ちません。栄養剤が通るチューブの長さも短いため、内側が汚れにくくお手入れの負担軽減にもなるのがメリットです。逆流防止弁がついているのもボタン型の特徴のひとつです。デメリットとしては、栄養剤を注入するチューブの接続に手間がかかることでしょう。
(2) チューブ型
チューブ型のメリットは、栄養剤を注入するとき、チューブの接続がしやすいことです。デメリットは体外にチューブが出ているため、動作の邪魔になりやすく、自分で引き抜いてしまう恐れがあることとチューブの内側が汚れやすいことです。
(1)バルーン型
バルーン型は、挿入後にバルーン内部に蒸留水を注入し、膨らませて固定します。カテーテルを交換するときに、バルーン内部の蒸留水を抜いて小さくするため、痛みを感じにくく、交換が容易であることがバルーン型のメリットです。バルーンが破裂してしまう恐れがあることや、1〜2ヶ月に1回は交換が必要になることがデメリットとなります。
(2)バンパー型
バンパー型は、胃の内壁にしっかりと固定するため、抜けにくいのがメリットです。交換頻度は約半年に1回と、バルーン型に比べて期間は長いですが、交換時に痛みや圧迫感を感じやすいのがデメリットです。
胃ろうの方を介護する際のポイントを知り、よりよいケアが行えるように準備しておきましょう。
口から食事をとるときと同様に、胃ろうを通して栄養剤を注入するときも、身体を起こして姿勢を正すことが大切です。正しい姿勢になっていないと、栄養剤が逆流してしまう恐れがありますので、注入するときは上体を30〜45度以上起こし、無理のない姿勢に整えましょう。逆流防止のためにも、注入後は30分〜1時間程度を目安に上体を起こしたまま保っておくとよいでしょう。
口から食べる機会が少なくなると、唾液の分泌が減り、口腔内の菌を減らす自浄作用がうまく機能しなくなります。口からは何も食べていないから大丈夫と口腔ケアを怠ると、口腔内で繁殖した菌が唾液やたんに絡んで気管に入り、気管支炎や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こす恐れがあります。口からの食事が難しい人は、嚥下機能(えんげきのう)や免疫力が低下していることが多く、肺炎などを発症しやくなります。症状が悪化すると、生命に関わる危険性もあるため、口腔ケアは念入りに行いましょう。
胃ろう周りの皮膚が赤くなる、一部が腫れあがるなどの皮膚トラブルが起きることがあります。症状が悪化して膿が出ることもあるため、異変があれば早めに医師に相談しましょう。皮膚とカテーテルの摩擦をできるだけ減らし、胃ろう周りを清潔にしておきましょう。胃ろうをしていても入浴はできますので、石鹸を使ってきれいに洗い流し、入浴後はよく乾燥させて清潔な状態を保ちましょう。入浴ができない場合は、清拭(せいしき)を行なって体を清潔にしましょう。
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胃ろうに使われる栄養剤は、大きく半消化態栄養剤と消化態栄養剤の2種類に分けられます。半消化態栄養剤は、タンパク質がそのままの状態で含まれているため、消化の過程が必要になります。消化管機能が正常または軽度の障害がある場合に適しています。消化態栄養剤は、すでにタンパク質が分解された状態で含まれているので、消化の過程を必要としませんから、消化吸収能力が低下している方に適しています。
半消化態栄養剤、消化栄養剤ともに、水に溶かして使用する粉末タイプや、水に溶かさずそのまま使える液状タイプ、逆流防止に効果的と言われるゼリータイプがあります。カテーテルによっては使えないタイプもあるため、状態に合わせた適切な栄養剤を選ぶようにしましょう。
胃ろうに使用する器具の衛生面には注意しましょう。栄養剤は高カロリーのため、清潔にしておかないと雑菌が繁殖する原因になります。カテーテルなど胃ろうに関わる器具は、使用後しっかりと洗浄を行い、十分に乾燥させてホコリや菌がつかないところに保管しましょう。認知症の方の場合は、洗浄後の清潔な器具に手で触れてしまう可能性があるため、触れる心配がない場所へ保管しましょう。新しいものに交換が必要な器具は、適切な交換期間内に取り替えましょう。
在宅介護で胃ろうの方を介護するのは、介護者の負担も大きく、ストレスや体調を崩してしまうリスクもあります。在宅介護を続けることが難しくなったときは、ケアマネジャーなどに相談し、介護施設の利用を検討して適切な施設を選びましょう。
胃ろうは、医療行為のひとつですから誰でも介助できるわけではありません。しかし、2012年の介護保険法の改正により、医師や看護師しか扱えなかった胃ろうが所定の研修を受けた介護職員であれば行えるようになりました。これによって、胃ろうの方の受け入れ可能なデイサービスや老人ホームは増えましたが、資格を持っている介護職員がいなかったり、看護師の24時間常駐が必要であったりと受け入れ条件は各施設によって異なるため、施設への入居を断られてしまう場合もあります。胃ろうを使用していることを最初に伝えた上で介護施設選びをしましょう。
介護施設を選ぶ際には、まず胃ろうに対応できる体制が整っているかどうかを確認しましょう。在宅介護の場合は、家族であれば胃ろうを扱うことができますが、施設の場合は、看護師や一定の研修を受けた介護職員でなければ対応できません。また、胃ろうの方は、嚥下機能(えんげきのう)の低下によって、たんを自力で吐き出せない場合もあるので、たん吸引も必要になります。たん吸引も医療行為のため、看護師や資格を持った介護職員しか行うことができません。そのまま放置すると誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクもありますので、たん吸引への対応体制も事前に確認しましょう。他にも嚥下(えんげ)のリハビリを希望される方は、専門的なリハビリに対応しているか、どのようなリハビリを行っているか、リハビリによって改善した事例など実際に話を聞いてみるとよいでしょう。
認知症や精神疾患を発症している方の場合には、ベッドで安静にすることが難しく、胃に栄養が注入されているかの確認が難しくなります。動き回り栄養剤が逆流してしまう恐れもあるなど、目が離せなくなります。認知症や精神疾患を発症している方の場合でも対応してもらえる施設であるかどうか、しっかりと確認しましょう。
―たん吸引について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「吸引器を使用した たん吸引の手順は?おすすめの吸引器もご紹介」
初めて胃ろうの方の介護をする家族の中には、分からないことがあって不安に感じる方も多くいるかもしれません。その不安を解消するために、ここでは胃ろうに関するよくある3つの質問について回答します。
胃ろうの方の主な介護費用の内訳は、カテーテルの交換費用と栄養剤代、さらに治療費などが加わり月々6万円ほどかかることが一般的とされています。胃ろう手術は医療行為のため、手術費用、カテーテル交換費用、栄養剤代はそれぞれ介護保険が適用され、原則1割(所得に応じて2~3割)負担となります。
胃ろうの経管栄養は、看護師や所定の研修を受けた介護職員、そして家族も行うことができるため、在宅介護が可能といえるでしょう。ただし、在宅介護は現実的に考えると1日3回の食事を専門職員に頼ることは難しいため、経管栄養の実施は家族が担当する場合がほとんどです。
胃ろうの方は要介護4~5の介護認定を受けている方が多いとされています。その理由は、身体機能の低下で口から食事をするのが難しい状態だと判断されるためでしょう。なお、要介護度は介護にかかる時間基準によって認定されるため、胃ろうを造設したことで要介護度が上がるということではありません。
胃ろうとは、腹部にカテーテルを取り付けることで栄養を補給できるようにする方法のことです。口から食事をすることが難しくなった方でも直接栄養を注入できるため、必要な栄養素の確保がしやすいことや、身体への負担が比較的少ないことがメリットといえます。その一方で、手術後はカテーテルの定期的な交換やこまめな口腔ケアなど、衛生面にも気を配らなければなりません。こうした日々の介護が重要となるため、胃ろう造設後の対応については本人と家族との間でしっかり話し合いを行いながら決めることが大切です。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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