この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
大腿骨頸部骨折について原因、症状、治療法からおすすめの介護用品・福祉用具までを紹介します。
2024年4月5日
大腿骨頸部骨折とは、股関節の内側にある頸部と呼ばれる部分が骨折することを言います。脚の付け根にある股関節は、骨盤と太ももの骨である大腿骨をつないでいる関節です。大腿骨の先端の丸い部分を骨頭、そのすぐ下の細い部分を頸部と呼び、この頸部が折れてしまうのが大腿骨頸部骨折です。骨の表面には、折れた骨をくっつけるのに重要な外骨膜があるのですが、大腿骨頸部には外骨膜がありません。そのため、骨がうまくくっつかず完全に治らないままの偽関節という状態になってしまうことがあります。また、骨折により動脈が傷つけられて血が巡らず骨頭が壊死する、骨頭がつぶれてしまうなどすることもあり、治療が難しい骨折と言われています。
大腿骨頸部骨折は、交通事故や転落事故など外部から大きな力が加わり起こることもありますが、高齢者の場合は骨粗しょう症が原因で骨折することが多いです。骨粗しょう症によって骨がもろくなっていると、ちょっと足を捻る、少し転ぶ等程度の軽い衝撃でも大腿骨頸部骨折を引き起こすことがあります。骨の強度がひどく低下している場合は、骨折が先に起きてから転倒している可能性もあるのではないかと言われています。骨がとてももろくなっている場合には、おむつ交換の際に骨折するといったこともまれにありますので注意しましょう。
大腿骨頸部骨折の主な症状は脚の付け根部分の痛みと腫れによって立つことや歩くことができなくなる症状がほとんどです。大腿骨は、姿勢を保つ、歩く上で重要とされる骨ですので、転倒後に立ち上がれないようであれば大腿骨頸部骨折が疑われます。
大腿骨頸部骨折が起きると、立つことも歩くこともできなくなるので日常生活に支障をきたすことが大半です。骨折前にしっかり歩いていた方でも元の状態に戻ることは難しいと言われています。歩行困難となり要介護状態になることも少なくありません。骨折して思うように動けなくなると身の回りのことを周囲に任せることが多く、活動量は減少、生活への意欲も次第に低下していきます。外出せず誰かと交流する機会が減ると脳への刺激も少なくなり、認知症になることも考えられます。 治療には手術を行うのが一般的ですが、回復までには時間がかかることから筋力が低下してしまい、寝たきり状態になるリスクが高くなります。手術後は合併症が起きることもあり、それが原因で命を落とすといった場合もあります。
大腿骨頸部骨折を調べるには、最初に痛みのある部分を確認してレントゲン検査を行います。レントゲン検査では、骨折の型や骨のずれがどの程度なのかを診ることはできますが、亀裂が少し入っているくらいの場合はわかりにくく、診断が難しいことがあります。その場合は、CT検査やMRI検査を行って診断を行います。MRI検査は、骨折線だけでなく骨内出血なども鮮明に写し出せることから、不全骨折(骨にひびが入っているなど)の診断にも有効であるとされています。 認知症の方の場合、骨折したきっかけを忘れる、状況をうまく伝えられないといったこともあります。転倒や転落などが起きてから立ち上がれない、歩けないといった異変を見つけたらすぐに病院を受診し、家族など周囲から医師に状況を伝えましょう。
大腿骨頸部骨折の予防方法としては、骨粗しょう症の予防・治療を行うこと、そして転倒防止に向けた環境づくりが重要となります。 骨粗しょう症の予防・治療は、食事と運動がポイントになります。食事は栄養バランスの整ったメニューにし、骨の構成に欠かせないカルシウムを意識して摂取しましょう。カルシウムの吸収を助けるビタミンDは魚類やキノコ類に多く含まれているので、そちらも意識して摂取するとよいでしょう。また、適度な運動も骨粗しょう症の予防において大切です。ウォーキングなど無理のない範囲でできる運動を習慣化しましょう。 骨折を予防するには、転倒しにくい環境づくりも欠かせません。住み慣れた家であっても転倒する恐れがあるため、なるべく床に物を置かないように心がけ、わずかな段差をなくす、手すりを設置するなどして安全に過ごせる環境づくりを目指しましょう。
大腿骨頸部骨折の治療には、骨接合術または人工骨頭置換術という手術を行うのが一般的です。それぞれの治療法について、詳しくご紹介しましょう。
骨接合術とは、骨折した部分を金属などの器具で固定して骨をくっつける手術のことです。この手術は比較的身体への負担が少ないと言われていますが、骨がうまくくっつかずに偽関節と呼ばれる状態になる、骨頭が壊死してしまう、潰れた骨が内部に陥没してしまうなどの合併症が起こる可能性があります。骨折部の骨のずれが大きい場合に骨接合術を行うと、こうした合併症による再手術が必要になる確率が高いことから、医学的には骨のずれが少ない場合に行うのがよいとされています。手術後に合併症が起きてしまった場合は、骨を固定していた器具を抜去して、次に紹介する人工骨頭置換術という手術を行う必要があります。
人工骨頭置換術とは、折れてしまった頸部から骨頭までを切除し、その部分を金属やセラミックなどでできている人工骨頭に置き換える手術のことです。この手術は骨折した部分の骨が大きくずれている場合に実施されるだけでなく、前述したように骨接合術の後に合併症が起きた場合にも行われます。骨接合術よりも手術時間が長い上に輸血が必要になることが多く、手術後に細菌感染を起こす恐れもあるなど身体への負担が比較的大きい手術となります。しかし、骨接合術のような偽関節や骨頭が壊死してしまうなどの合併症を避けることができるというメリットがあります。 人工骨頭置換術を受けた後は深くしゃがむ、股関節を内側に捻るような動きなどをすると脱臼してしまう恐れがあるため、日常の動作に気をつける必要があります。
大腿骨頸部骨折になっても歩くことができるように、そして寝たきり状態にならないようにするためにリハビリテーションはとても重要です。大腿骨頸部骨折の手術を受けた後は、以下のような流れでリハビリを行うのが一般的です。
1. ベッド上坐位保持訓練
2. 車いすへの移乗訓練
3. 立位保持訓練
4. 平行棒を使用した歩行訓練
5. 歩行器を使用した歩行訓練
6. 松葉杖を使用した歩行訓練
7. T字杖を使用した歩行訓練
リハビリは、手術を受けた翌日から開始されます。まずはベッドから起きて座ることから始め、状況を見ながら立ち上がる訓練などに進みます。関節の動きをよくするトレーニングや筋力をつけるためのトレーニングを行い、リハビリが順調に進めば階段の昇降や入浴動作などの練習を行い日常生活に戻れるように機能回復を目指します。 人工骨頭置換術を受けた場合は、前述した通り深くしゃがむ、股関節を大きく捻るような動作は脱臼を引き起こす恐れがあります。日常生活上では、低い椅子に腰をかける、横座りする、和式トイレでしゃがむ、足を組むなどの動作が脱臼を引き起こしやすいため、リハビリの専門家である理学療法士や作業療法士と正しい動作方法を確認しながらしっかり身につけることが大切です。
大腿骨頸部骨折の治癒時間はもともとの身体能力や骨折の程度によって異なりますが、一般的に1~3ヶ月ほどと長期にわたります。しかし骨折前から元気に歩いていた患者の場合は1ヶ月もかからないうちに退院でき、杖や歩行器などを使いながら歩行できることもあります。
大腿骨頸部骨折にならないために日常生活で気を付けたい注意点は、生活習慣の乱れです。栄養バランスの偏った食事や過度の飲酒、運動不足など生活習慣の乱れは、骨粗しょう症の原因になります。栄養バランスの整った食事をとり、ストレッチやウォーキングなどの適度な運動を習慣にして骨粗しょう症予防に努めましょう。カルシウムの吸収を助けるビタミンDは太陽の光を浴びると体内でつくりだされるので、日光浴をするのもおすすめです。 もう1つ注意したいのが住環境です。家の中の段差、滑りやすい床など転倒リスクになる多いと転びやすくなります。電気コードに足をひっかける、和室と洋室のわずかな段差につまずいて転んでしまうこともありますし、足もとが暗くて階段を踏み外してしまうなどの転落事故も発生しかねません。床にはなるべく物を置かないようにし、スロープや手すりを設置するなどして、できる限りバリアフリーな環境になるように整えましょう。
手すりについてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
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大腿骨頸部骨折の原因となる転倒リスクを減らすために、高齢者の安全な暮らしをサポートしてくれる介護用品・福祉用具を活用しましょう。 フランスベッドでは、介護用品・福祉用具のレンタルサービスを行っています。要介護認定を受けている場合は介護保険を利用してレンタルすることも可能です。 フランスベッドおすすめの介護用品・福祉用具をご紹介しますので、参考にしてください。
手すりがあれば立ち上がりや歩行が安定しやすく、バランスを崩しやすい高齢者も安心です。ベッドサイド、廊下、トイレ、浴室、玄関などに設置するのがおすすめです。
―フランスベッドおすすめの手すりはこちらをご覧ください―
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高齢者に多い大腿骨頸部骨折は、手術による治療を行っても要介護状態になるリスクが高く、寝たきり状態になってしまうことも少なくありません。合併症を引き起こす恐れもあり、高齢者にとっては命に関わる危険性のある大きなケガの1つです。大腿骨頸部骨折を防ぐためにも、骨粗しょう症の予防と治療を意識した生活を心がけ、身体機能の維持・向上を目指すことが大切です。介護用品・福祉用具を活用しながら、高齢者が安心して過ごせる環境づくりに取り組んでみましょう。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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