この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
認知症とはどのように発症するのか、一気に進行するきっかけとなる原因、認知症のタイプ別の進行速度、受診の目安になる症状や認知症の進行を遅らせるための対策などについて詳しく解説いたします。
2025年6月19日
認知症は、脳の神経細胞の働きが低下することで認知機能が低下し、社会生活に支障をきたしている状態を指します。高齢化の進展とともに認知症の方は増加しており、2022年の統計によると、65歳以上の高齢者のうち認知症の方は約12%、443万人となっています。
原因はいろいろと考えられますが、脳細胞が破壊されることで、脳の働きが低下していき、徐々に生活の中で多くの障害が現れ始めます。認知症の発症の仕方には個人差があり、原因となる病気によって認知症を引き起こすメカニズムも異なります。
―認知症の種類や進行速度などについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「認知症の初期症状とは?早期発見のポイントと進行を遅らせる方法を解説」
▶「認知症の症状(中核症状・周辺症状)を一覧で紹介!4つの種類や特徴も解説」
▶「認知症の4つの種類とは?特徴や症状、割合を一覧で解説」
―参照―
▶政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」
認知症が一気に進む原因には、脳への刺激の不足、ストレス過多、急な環境の変化、他の病気の合併や行動の制限など様々な理由が考えられます。ここでは認知症が一気に進む原因についてひとつずつ紹介していきます。
認知症が一気に進む原因として、脳に与える刺激が足りないことが一番に挙げられます。脳への刺激が少なくなると、脳自体が不活性化して老化につながりますので、脳の機能を使わない生活が続くと、自然と認知症の症状が出始めて一気に悪化する可能性が高まります。例えば、ほとんど外出せず家の中だけの生活になる、寝たきりの生活が続くといった場合などで、急速に認知症が進行する傾向があります。
ストレスが多いことも認知症を進める原因となります。日々の生活で過度なストレスを受けると、コルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌されます。コルチゾールは、肝臓での糖の新生や筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での脂肪の分解、抗炎症および免疫抑制など生体にとって必須のホルモンですが、多量に分泌されると、記憶力の低下、注意力散漫、感情のコントロールができなくなり不安になるなどの症状があらわれます。このような症状は認知症の状態を悪化させる恐れがありますので、ストレス過多には注意が必要というわけです。
失敗を責められることも原因の一つとなります。認知症の症状が出ると、約束を忘れる、排泄の失敗をするなど、どうしても生活の中で失敗することが増えてしまいます。このような時に家族や周囲から失敗を責められると本人はショックで自尊心を失い、責められることが怖くなって自分で行動することを避けるようになる場合があります。やる気や意欲をなくしてしまうと活動レベルが下がり、急激に認知症が進む恐れがありますので、できるだけ失敗を責めないように心がけましょう。
急な環境の変化が認知症を加速させてしまう原因となることもあります。例えば、病気やケガの治療で入院した場合に、入院中に認知症の程度が一気に進んでしまうことがあります。
これは入院することで、料理・掃除・洗濯といった家事など日常生活で行っていたことをする必要がなくなり、ベッドで1日過ごすだけの毎日が続くという、急な環境の変化が認知症の進行に影響を与えていると言えます。
他の病気を併発することが原因で、認知症が一気に進んでしまうこともあります。例えば脳梗塞や脳出血などの脳血管障害は、脳細胞にダメージを受けるため認知症と合併し、症状が悪化することがあるといわれています。認知症の高齢者の多くは免疫機能が低下しているため、肺炎や尿路感染症などにもかかりやすいので、これが認知症を進行させてしまう原因になることもあります。転倒など軽い頭部外傷が原因で引き起こる慢性硬膜下血種は、発症すると徐々に出現してくる症状が認知症と似ています。気が付かないまま悪化させてしまうことのないように注意が必要です。
行動の制限も、認知症が一気に進む原因の一つといえます。自宅での介護中や入院中などに転倒や転落を起こす危険性などから行動を制限する場合があります。しかし、過度に行動を制限し、認知症の方に苦痛や不安、怒り、諦めなど様々な精神的・身体的な弊害をもたらすことは、自主性が損なわれ、認知機能をさらに低下させてしまう可能性があるため社会的、医療的観点の両方でも望ましくありません。安全面を優先するのであれば行動制限をするのではなく、ベッドを低くする、足元に物を置かないなどの対策を取り、本人の自主性を尊重しましょう。
認知症の種類と原因、症状や特徴、進行速度を次の表にまとめてみました。
種類 | 原因 | 症状 | 特徴 | 進行速度 |
アルツハイマー型認知症 | 脳(海馬)の萎縮 | ・初期症状は物忘れ ・見当識障害 ・判断力の低下 |
・女性に多い ・年代問わず発症率がもっとも高い |
長い年月をかけてゆっくり進行 |
血管性認知症 | 脳血管障害 (脳梗塞/脳出血など) |
・初期症状は物忘れ ・手足の痺れ/まひ ・嚥下障害 ・感情コントロール困難 |
・男性の発症率が高い ・まだら認知の傾向 |
急に発症し段階的に進行 |
レビー小体型認知症 | 特殊なタンパク質が脳に蓄積 | ・幻覚/妄想 | ・うつやパーキンソン症状など発症 ・個人差がある |
調子の良い/悪い時を繰り返し進行 |
前頭側頭型認知症 | 脳の前頭葉/側頭葉の萎縮 | ・無感情 ・言語障害 ・意欲低下 ・同じ行動の継続 ・行動異常 |
・ほぼ70歳までに発症 ・50歳代に多い |
緩やかに進行 |
認知症は早い段階で適切な対応を行わないと病状が一気に進行すると言われています。家族や周囲の人たちによって認知症を早期発見することが何よりも大切です。
―認知症の種類や進行速度などについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「認知症の症状(中核症状・周辺症状)を一覧で紹介!4つの種類や特徴も解説」
認知症は初期の段階なら、自宅で介護はできますが、認知症が進むにつれて、記憶力だけでなく身体機能も低下し、医師や専門家による治療、介護が必要となります。適切な治療を早期に開始するためにも、家族や周囲の人たちが次のような症状を目安として、気づいたらすぐにかかりつけの医師や認知症/物忘れ外来などの専門医療機関を受診するようにしてください。
【受診の目安になる症状(例)】
■頻繁に同じことを話したり尋ねたりする
■紛失や探し物が多い
■約束やルールを忘れることが多い
■行動がだらしなくなる
■家事や運転など生活上のミスが増える
■日時や季節、場所がわからなくなる
■やる気がなく顔つきが無表情/無関心になる
■性格が極端に変わる
■モノ(所有物)やお金が盗まれたと人を疑う
■自分で着替えをすることが難しくなる
■尿や便の失禁がある
■家族や友人のことがわからなくなる
■衝動的な言動がある
■幻覚や妄想の症状が出る
認知症患者には主に次のような死因があります。
・肺炎(特に誤嚥性肺炎、気管支肺炎)
・がん
・心臓疾患
身体機能が低下し食べ物を飲み込む力が弱まって誤嚥性肺炎を引き起こすほか、がんや心臓疾患などの合併症によって亡くなることが多くなっています。
急に症状が悪くなったときにご家族ができる対応にはどのようなものがあるのかを知っておきましょう。
まずは、自治体の高齢福祉課や地域包括センターなどに相談しましょう。ケアマネジャーの紹介や、訪問介護、介護施設のサービスの活用など今後どのように対応していけば良いのかアドバイスをしてくれます。様々な病気の可能性を考え、かかりつけ医に伝えることや医療機関で検査もしてください。早期に医療機関を受診すれば、原因を特定して適切な治療が行える可能性もあります。日頃から本人の様子をこまめに観察し、変化にすぐ気付けるようにしておくことが大切です。
認知症に悪い影響を与える恐れがあると指摘されている肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病の予防や改善には、有酸素運動が非常に役立ちます。
代表的な有酸素運動としてはウォーキングがおすすめです。短時間で構いませんので、まずは近所を気軽に散歩することから始めてみましょう。水泳も効果が高い有酸素運動ですので、自宅の近くにプールなどの施設がある方は、水泳を行うのも良いでしょう。有酸素運動を行う際は、集中して一度に長時間ハードな運動をするのではなく、無理しない程度の軽い運動を習慣化することが大切です。
規則正しい生活を送り、心身のリズムを整えることが認知症の対策として重要です。まずは起床や就寝、食事など毎日決まった時間に行いましょう。
認知症が進むと睡眠時間が乱れやすくなり、昼夜逆転してしまうことがよくあるのですが、本人がつらいだけでなく、夜中に介護をする家族や周囲の人も、体力・精神ともに追い詰められる恐れがありますので規則正しい生活を送ることはとても重要です。睡眠の質を向上させるために朝起きたら太陽の光を浴びて、セロトニン分泌を促進し、昼間には有酸素運動を行うと、夜は適度な疲労感で気持ちよく眠れるリズムが作れます。また認知症予防や改善に役立つ食事の内容を考えることも必要でしょう。塩分やカロリーを控えめにして、和食をベースにしたバランスの取れた食事を心がけましょう。
―認知症の方の食事について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「認知症予防に効果的な食事とは?認知症の方の食事についても解説」
日頃から認知機能を向上させる効果があるトレーニングを行うようにすることも良いでしょう。認知症はそのまま放置しておくと進行してしまう病気ですので、実際の医療/リハビリや介護の現場でも、非薬物療法の一環として様々な作業療法(認知症患者向けに生活の中で脳や心身を動かしてリハビリを行う療法)を実施しています。
中でも、認知刺激療法では五感を刺激して認知機能の改善を目指します。例えば習字や塗り絵、音楽鑑賞などは、直接的に脳の活性化につながると期待されます。また家族や周囲の人の補助のもと料理することもトレーニングとして効果的です。他にも、絵画や陶芸、ゲームやパズルなどの趣味やレクリエーションを通して、楽しみながら認知機能のトレーニングを行うことができます。
―認知症を予防するトレーニングについて、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「認知症を予防するためにできることは?運動や食事、おすすめのゲームなどの対策も」
徐々に聴力が低下していき、気が付かないまま難聴になってしまう場合も多くあり、聴力の低下や難聴も認知症につながる危険性があるため、注意が必要です。聴力が低下すると、外からの情報を耳から得られず脳に伝達することができなくなるため、脳の機能が衰えて認知症に発展するリスクが高くなります。
もし会話の中で聞き返す回数が増えてくるようなら、気づいた家族や周囲の人が本人に対して病院や専門機関を受診するように促しましょう。
最新の補聴器は非常に性能が良いため、現在の聴力に合わせた最適なタイプを選んで、認知症対策として普段から補聴器を使用するのがおすすめです。
―認知症の初期症状・早期発見について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶「認知症の初期症状とは?早期発見のポイントと進行を遅らせる方法を解説」
認知症が一気に進む原因として、脳への刺激不足が一番に挙げられます。
また、ストレス過多・失敗を責められること・急な環境の変化などによっても、認知症が一気に進行する危険性があります。
認知症の症状を緩和する薬はいくつか開発されているものの、一部の認知症を除いて、一度症状が進むと回復は見込めないと現代医学では考えられています。少しでも認知症の進行を抑えるために必要なことは、早い段階から認知症予防法を実践する、早期発見や早期治療をする、認知症の進行速度を低下させることです。
予防対策として、聴力低下に気をつけながら、規則正しい生活を送り、日頃から有酸素運動や認知機能が向上するトレーニングを実施しましょう。
そして家族や周囲の協力をもとに、早期発見と早期治療に努めることが何より大切です。
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