この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
介護保険制度とは、介護が必要な高齢者の自立支援や、介護する家族の負担軽減を目指し、介護を社会全体で支え合うことを目的として設立された保険制度です。保険者である全国の自治体が、税金や納付された保険料で運営を行っています。40歳以上になると、介護保険に加入することが義務づけられており、被保険者として保険料を納付します。介護が必要となった際、介護保険の給付を受けるには自治体の窓口で申請手続きを行い、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定を受けると介護保険が適用され、原則1割(所得に応じて2~3割)の自己負担額で適切な介護サービスを利用することができます。
―介護保険制度について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「介護保険制度とは?仕組みやサービス内容など、制度について解説」
介護保険制度が創設される前までは、老人福祉制度や老人医療費の無料化など、自治体が主体となり税金によって運営されていました。しかし、高齢化が進むにつれて介護を必要とする高齢者の増加や、長期にわたる介護も多くなり、社会保障費が増大して財政状況が厳しくなってきました。また、核家族化や介護する家族の高齢化など、介護する家族の状況も時代とともに変化し、介護ニーズもこれまで以上に増えました。このような背景から、これまでの制度では対応に限界を迎え2000年に介護保険制度が導入されました。
介護予防とは、できる限り自立した生活を送り、健康寿命を長く保つことを目指して、高齢者が要介護状態になることを遅らせること、そして要介護状態になってもその悪化を防ぐことです。2014年度から地域づくりによる介護予防推進支援事業が実施され、これを機に高齢者が継続的に介護予防に取り組める通いの場が全国に展開されるようになりました。心身の機能の維持・向上のための体操教室、健康づくりに関する相談会など、行政ではなく住民が主体となって開催する通いの場は、参加者の楽しみや生きがいになるだけでなく、住民同士による見守り体制が生まれる、地域づくりにもつながると期待されています。厚生労働省が公表している、一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会の取りまとめによると、今後は専門職の関与や多様な事業との連携、ボランティア活動の対価としてポイントを付与するなどの取り組みを行い、通いの場をより拡充させることが必要とされています。また、こうした取り組みを効果的かつ効率的に行えるよう、一連の業務管理プロセスに沿って進めていき、国・都道府県・市町村がそれぞれの役割を最大限に果たすべきであると考えられています。
2017年の介護保険法改正で、保険者機能の強化等の取り組みの推進が盛り込まれました。これにより、すべての自治体が保険者としての機能を発揮し、高齢者の自立支援・重度化防止などに向けて取り組むよう、下記の仕組みが制度化されました。
●国が提供するデータに基づいて、地域の課題を分析する
●介護保険事業計画を作成し、取り組むべき内容と目標を記載する
●市区町村が実施する取り組みには、都道府県が研修などを通じて支援を行う
●適切な指標によって、取り組みの達成状況を評価する
●実績に応じて、交付金などのインセンティブを付与する
実績評価を活用しながら実施状況を検証し、取り組み内容の改善を行うなど、適切にこのサイクルを繰り返していくことが重要だと考えられています。好事例については見える化することや横展開を図っていくことも大切です。地域差をなくすために国や都道府県による支援を行っていくべきとされています。また、市区町村の取り組み実績に応じて付与されるインセンティブ保険者機能強化推進交付金の抜本的な強化が必要という意見もあり、予算額の増額、配分基準のメリハリの強化、評価指標の見直しなども検討されています。調整交付金についても、計算方法の見直しを行い、人口構造の変化等に応じて検討していくことが重要です。さらに、介護関連のデータを利活用できる環境を整備するため、データ収集によるデータの充実なども検討されています。
重度の要介護状態になったとしても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最期まで続けられるように、医療、介護、予防、生活支援サービスが一体的に提供される地域包括ケアシステムが推進されています。高齢化が進み、医療と介護の両方のケアが必要になる高齢者が増えると予想され、様々な介護ニーズに対応できる体制が必要となります。高齢者人口や介護ニーズなどを見据え、地域の実情に応じて介護サービスの基盤を整備していくことが必要です。有料老人ホームなどの高齢者向け住まいの質を確保すべく行政が現状を把握して関与することも必要でしょう。その人らしい生活を続けられるように、自宅と介護施設の中間的な住まいを普及していくことも求められ、生活困窮者施策と連携しながら住まいと生活の支援を一体的に行っていくことも求められています。さらに、医療と介護の連携のために、日常的な医療ケアや看取りに対応する介護サービスの在り方、介護医療院への円滑な移行についてなどが検討事項として議論されています。
2015年に「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が策定され、認知症の方の意思を尊重し、できる限りその人らしい暮らしを住み慣れた地域で続けられる社会を目指した取り組みが進められてきました。2019年には、共生と予防を両輪に位置付けた施策、「認知症施策推進大綱」が取りまとめられました。認知症の発生を遅らせること、また認知症になっても希望を持って日常生活を送れる社会を目指す取り組みが進められています。共生という言葉は、尊厳と希望を持って認知症とともに生きていくこと、そして認知症があってもなくても同じ社会でともに生きていくことを意味します。また、予防という言葉は、認知症になることを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにするということを意味します。こうした考え方をベースに、正しく理解されていない認知症について知ってもらうための普及啓発などを進めることが重要であるとされています。認知症の方やその家族を手助けする認知症サポーターの養成、認知症サポーターが活躍できる仕組みづくりも必要となり、認知症予防に向けた活動も重要視されています。また、認知症の早期発見、早期対応に向けて、医療と介護の連携を強化することも求められます。そして、認知症の方の家族を支援するために、認知症カフェや家族教室のような介護の負担軽減につながる取り組みも進めていかなければなりません。
高齢化率が高まり、今後さらに現役世代の減少が著しくなることから、地域の高齢者介護を支える人材不足は大きな課題となるでしょう。介護職員の処遇改善、介護ロボットやICTの活用、若者から現役高齢者まで多様な人材の確保と育成、介護職の魅力向上のための情報発信、外国人の受け入れ、事務作業量の削減など、人材確保と生産性の向上を目指し、介護現場の革新をより一層進めていくことが必要となります。
高齢化に伴い、介護費用の総額もどんどん増加していることから、給付と負担のバランスを図りつつ、持続可能な制度を再構築していく必要もあります。補足給付やケアマネジメントに関する給付の在り方、多床室の室料負担、軽度者に対する給付の見直しなど、給付と負担に関してさまざまな議論が繰り広げられています。また、現在は65歳以上が第1号被保険者、40歳~64歳が第2号被保険者となっていますが、介護保険を取り巻く状況の変化も踏まえながら、被保険者と受給者の範囲を見直すかどうかについて、引き続き検討されることになっています。
介護保険の財源不足は介護保険制度が直面している大きな問題のひとつです。介護保険の財源は、50%が公費・税金、残りの50%は40歳以上の被保険者が納める保険料で構成されています。先に述べた通り、高齢化が進むにつれて介護費用も増加傾向にあり、介護給付費の総額は、介護保険制度創設時から約3倍にまで膨れ上がっています。団塊世代が全員75歳以上となる2025年には、介護ニーズがますます高まって介護費用もさらに増加すると予想されています。2025年以降は、介護保険料を負担する40歳以上の被保険者の人口が減っていくことから、どのようにして財源を確保するかが課題となるでしょう。財源確保の方策として、介護保険料の引き上げや納付開始年齢の引き下げ、利用者負担額2~3割の対象者拡大などが考えられますが、どれも国民の反発を招くことが予想されます。そこで期待されているのが、介護予防の強化です。介護予防を強化することで、要介護となる高齢者の数を減少・抑制、要介護度の維持・改善につなげられることから、介護給付費が抑制されて財源の確保が期待できます。ただし、こうした取り組みだけでは財源を確保することは難しいと考えられるため、新たな制度を設けるなどの対策が必要となるでしょう。
介護現場で働く労働力の不足も、介護保険制度における深刻な問題のひとつです。少子高齢化によって、介護を必要とする高齢者が増え続ける中、介護を担う若者の数は減っていく一方です。さらに、介護業界に対して、待遇がよくない・体力的にも精神的にもきつそうなどといったネガティブなイメージを持たれることが多く、介護の仕事に就くことを躊躇してしまう若者も多いのが実情です。介護の仕事は離職率が高いこともあり、介護業界の人手不足は大きな問題となっています。先にも述べた通り、労働力不足の解消に向けた取り組みは進められており、労働環境の整備やイメージアップのための情報発信、外国人の働き手の受け入れ拡大などといった動きはあるものの、まだまだ十分な人材を確保できていないのが現状です。今後高まる介護ニーズに対応していくために、介護助手として介護の現場で働く元気な高齢者を増やす、通いの場のように住民同士が支え合うなど、介護職以外の多様な人材による支援の促進も必要であるとされています。
時代とともに介護のニーズは変化していくことから、3年に1度のタイミングで介護保険法が見直されることになっています。今回は、社会保障審議会介護保険部会が公表している介護保険制度の見直しに関する意見をもとに、2021年の法改正に向けて議論された内容をご紹介しました。介護保険の財源不足や労働力の不足といった大きな問題に直面しており、今後の行方が気になりますが、高齢者の自立支援や家族の介護負担軽減を目指して、さらなる見直しが行われるはずです。今後の改正で、様々な課題が解消されることを期待したいです。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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