この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
高齢者によくみられる脱水症について、熱中症をおこす高齢者の特徴、脱水症になりやすい理由と見逃さないようにするためのサイン、そして対処方法及び、予防方法をご紹介します。
2026年2月21日
脱水症とは、体の機能を維持するために不可欠な体液が不足している状態のことをいいます。水分・リンパ液・組織液などから構成されている体液は、水に電解質が溶けている状態であり、体温調節や栄養分を体中に運ぶなど生命を維持するために重要な役割を担います。水分は成人の体の約60%を占めています。
人は体内の水分量・塩分量を一定に保つことで、体温、神経、筋肉などを正常に動かしています。水分を補給し、汗で体温調節をして尿などの老廃物を外へ排出することで体液のバランスは保たれていますが、何らかの原因で体内の水分や体液にあるナトリウムなどの電解質が同時に失われた場合、脱水症状を引き起こしかねません。脱水状態になると、のどの乾き、立ちくらみ、頭痛、筋肉の痙攣、動機、不整脈など体内の水分不足の程度に応じて様々な症状が現れます。
人間は生まれてから年齢を重ねるにつれて、体内の水分量が少しずつ減っていくと言われています。子どもの頃の体内の水分量は約70%ですが、大人に成長すると10%減少して60%程度になり、さらに高齢になると身体の水分量が減って、体重に占める割合が50%にまで減少するといわれています。したがって成人に比べて体内の水分の割合が少ない高齢者は脱水症を発症しやすくなります。また、年齢を重ねると「口渇中枢(喉の渇きを感じる中枢)」の機能が低下するため、汗をかいて水分を必要としている場合でも、高齢者は喉の渇きを感じにくく、水分を摂取するのが遅れて、脱水症状を起こす傾向にあります。そのため、高齢者の脱水症状には早い段階から、十分な注意が必要です。
脱水症によって体液が不足すると、酸素や栄養素を体の中に届けることができなくなるため、これを放置しておくと思わぬ病気につながる可能性があります。血液の濃度が高くなって固まりやすくなると血栓ができるリスクが高まり、脳梗塞や心筋梗塞の発症につながり命を落とす危険性もあります。糖尿病や排尿障害などの病気の予兆として脱水症になるケースもあるため、できるだけ早いうちに発見することが重要です。
万が一、次のような症状が見られる場合は脳梗塞や心筋梗塞の初期症状の可能性もありますので、すぐに病院へ行く、救急車を呼ぶなどの対応をしてください。
【脳梗塞の場合】
・片側の顔がゆがむ
・片側の腕や脚に力が入らない
・突然ろれつが回らなくなる、など
【心筋梗塞の場合】
・胸の強い痛み、圧迫感、締めつけ感が長く続いている
・冷や汗、息切れ、動悸
・顔面蒼白、など
厚生労働省の発表によると、熱中症による死亡者のおよそ80%が65歳以上の高齢者となっています。
高齢者は、温度に対する感覚が鈍っていることや、体液の減少によって体温調節がしにくいこともあり、夏の暑い日でもクーラーを使用せずに過ごして熱中症になるケースが多くみられます。体の1~2%の水分量が失われることで起こる軽度の脱水状態を「かくれ脱水」と呼びます。
脱水症になると体内の血液量が減り、汗が出にくくなる、体温が下がりにくくなるといった症状が出ます。このように体温調節がうまくできなくなると、脱水症が進行して熱中症を引き起こす危険があるのです。
熱中症になってから脱水が原因だと判明することも少なくないため、まずは脱水症にならないための予防をすることが、熱中症のリスクを減らすことにもつながります。
■熱中症による高齢者死亡数の年次推移
| 年間死亡総数(人) | 65歳以上の死亡者数(人) | 65歳以上の死亡者割合(%) | |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 2,160 | 1,835 | 85.0 |
| 2023年 | 1,651 | 1,375 | 83.3 |
| 2022年 | 1,477 | 1,274 | 86.3 |
| 2021年 | 755 | 641 | 84.9 |
| 2020 年 | 1,528 | 1,316 | 86.1 |
熱中症をおこす高齢者にどのような特徴が挙げられるのかについて、熱中症が重症化して入院された65歳以上の高齢者を調査したところ、発症時の環境や条件で次のような共通した特徴がありました。
【発症時の環境】
・気温が28℃以上
・若年層と比べて、屋外よりも自宅の室内で起こりやすい
・室内に空調設備がない、または、あっても使用しない
・一人暮らし、または配偶者と二人暮らしの場合
【本人の状況/要介護度】
・介助なしで自立している、または介護サービスを何も利用していない
・認知症の症状がある
先に述べたように、高齢者は若年成人と比較して10%ほど体内の水分量が少ないとされています。さらに、食事の全体量が減る、嚥下(えんげ)障害によって水分摂取量が減るなど、体内の水分量が不足することが原因で脱水症を引き起こします。
加齢によって筋力が低下し、水分を蓄える筋肉量が減ることも脱水症を引き起こす原因のひとつと考えられます。
加齢による腎臓の機能の低下も脱水症に陥る原因と考えられています。腎臓は体内の水分量を調整する役割がありますが、機能が低下すると体内に必要な水分や電解質を留める力が弱まってしまいます。これにより体液のバランスが崩れて脱水症を引き起こしやすくなります。
加齢による感覚機能の低下によってのどの渇きに気づかないことが原因で、摂取する水分量が少なくなり脱水症になるリスクが高まります。認知症の影響から飲み物を飲んだかどうかを忘れて長時間水分を摂らないまま過ごしてしまい、脱水症になることもあります。
服用している薬が影響して脱水症になることも考えられます。血圧を下げる降圧薬の種類によっては利尿作用があり、尿の排出によって必要な塩分や水分が不足して脱水症を引き起こすことがあります。
皮膚のかさつきや唇・口の中が乾燥しているときは軽度の脱水症を疑いましょう。汗で湿っていてもおかしくない脇の下が乾燥している場合も注意が必要です。その他にも、前胸部(胸骨の上部)や手の甲の皮膚をつまんだとき元に戻るのに時間がかかる、爪を押した後すぐにピンク色に戻らないといった状態であれば、脱水している可能性があります。ぼーっとしている、うとうとと傾眠(けいみん)気味になる、手足が冷たい、めまいやふらつきなどの症状があれば、脱水症の恐れがあるため注意深く観察しましょう。
【軽度の脱水症状のサイン】
□皮膚がかさついている
□唇・舌・口の中が乾燥している
□前胸部(胸骨の上部)や手の甲の皮膚をつまんだとき、元に戻るまでに時間がかかる
□爪を押した後すぐにピンク色に戻らない
□ぼーっとしている
□傾眠(けいみん)気味になる
□手足が冷たい
□めまいやふらつきがある
脱水症が中度に進行すると、頭痛や吐き気などの症状が見られます。血圧が下がる、嘔吐や下痢など明らかな体調の異変が見られることがあります。トイレへ行く回数が少なくなるのも脱水症のサインのひとつなので、トイレの回数やおむつの尿量、尿の色が濃くなっていないかなどをチェックしましょう。
注意深く様子を見て、必要な場合は医療機関を受診するよう努めましょう。
【中度の脱水症状のサイン】
□頭痛や吐き気がある
□皮膚がかさついている
□血圧が下がっている
□嘔吐や下痢がある
□トイレの回数が減っている
症状が悪化して高度になると意識がもうろうとしたり、話しかけても反応がなくなったりします。ひどい場合は意識を失う、痙攣を起こすこともあります。
このようなときは、命に関わる危険な状態ですので家庭で様子を見るのでなく、すぐに救急車を呼びましょう。
軽度の症状のあいだは、水分を摂取するだけで改善することが多いです。日常生活での水分補給は水やお茶でも構いませんが、脱水症になったときには水分とミネラルを補う必要があるため、水分・塩分(電解質)の両方を効率よく摂取できる経口補水液を飲むのがおすすめです。経口補水液を常備していない場合は、自宅で作ることも可能です。
【経口補水液の作り方】
容器に水500ml、砂糖20g、食塩1.5gを入れ、よくかき混ぜれば完成です。レモン汁を少し加えると飲みやすくなります。
中度になると、倦怠感などに加えて立ちくらみ、頭痛、吐き気、腹痛などの症状が見られる場合もあります。チェック方法として、皮膚をつまんで元に戻るまでに数秒時間がかかる、尿の色が濃い黄色や茶色っぽい色になるといった違和感があれば脱水している可能性が高いので注意が必要してください。また、下痢の症状がある場合は排泄する度に水分を摂取してください。中度の脱水症は、放置すると高度に進行する恐れがありますので、水よりも経口補水液を優先して摂取するよう心がけましょう。
重症化し高度の脱水症の場合は、口からの水分補給だけでは対処できない可能性が高いです。点滴などの処置が必要になるため、病院を受診しましょう。意識がない、痙攣を起こしている場合は、命の危険もあるため速やかに医師の処置を受けましょう。
1日に必要な水分量を把握してきちんと摂取できているか、本人だけでなく周囲も意識して確認するようにしましょう。高齢者の場合、1日に必要な水分量の目安は食事以外で体重1kgあたり約25~30mlといわれています。体重が60kgの場合は、約1500~1800mlの水分が必要ということになりますその日の体調や運動量などによっては普段より多めに水分補給をすることも大切です。水、白湯、場合によっては経口補水液などを優先して飲み、アルコールやカフェインが多く入った飲み物はなるべく避けましょう。
【体重別1日に必要な水分量の目安】
| 体重 | 1日あたりの水分摂取量 |
|---|---|
| 40㎏ | 1,000~1,200ml |
| 50㎏ | 1,250~1,500ml |
| 60㎏ | 1,500~1,800ml |
室内の湿度・温度管理をしっかり行いましょう。冬場、部屋が乾燥している場合は、加湿器の使用や濡れタオルを干すなどして湿度を上げます。夏の暑い日はエアコンを使用して室内の温度を適温に保ちましょう。就寝中にエアコンを使わずに脱水症を引き起こすケースは少なくありません。エアコン嫌いや節電のためにエアコンの使用を避ける方もいますが、命に関わる危険もあるため積極的に使用して室内環境を整えましょう。
普段からこまめに水分を摂取することが大切です。1日に7~8回以上、コップ1杯分の水分を補給することを目安にしてください。起床時、入浴の前後、就寝前など水分補給するタイミングを事前に決めておくことがおすすめです。摂取する飲み物は、日常の水分補給や食事が問題なく取れているときは水、そして脱水が心配なときや体調不良時は、体への吸収が早い経口補水液にするなど状況に応じて使い分けましょう。水分は意識的にこまめに摂ることが大切です。もしも水分補給が難しい場合、水分を多く含むゼリーや水ようかん、フルーツなどの食べ物に変えるなど水分の摂り方を工夫してみるのも良いでしょう。
水分補給は、季節や場面に応じて変える必要もあります。季節、場面による対策方法を表にまとめましたので参考にしてください。
【体重別1日に必要な水分量の目安】
| 場面 | 脱水リスクが高まる理由 | 対策法 |
|---|---|---|
| 夏季 |
・発汗量が多い |
・30~60分ごとに水分補給する |
| 冬季 |
・空気が乾燥している |
・起床時、就寝前にも少量の水を飲む |
| 入浴時 |
・発汗と血管拡張で水分が減る |
・入浴前後には必ずコップ1杯の水を飲む |
夏の暑さ対策として脱水症と同時に熱中症も同時に予防する必要があります。一番のポイントは、室温管理です。部屋の室温は28度以下、そして湿度60%以下を目安にエアコンや除湿を行いましょう。カーテンやすだれを利用して、直射日光を避けるのも良いでしょう。
外出や散歩はなるべく朝夕の涼しい時間帯を選び、帽子や日傘を使用し、服は通気性が優れた白や薄い色のものを選びましょう。起床時や室内ではコップ1杯の水をこまめに飲み、出かける前後には経口補水液などを摂取しましょう。
意外と危険なのが冬の脱水症です。実は汗をかいていなくても水分は失われているので、冬でも脱水症の注意は必要です。エアコンやストーブなどの暖房器具を使うことが多い冬は、室内の湿度が低下して、乾燥した空気から体の中の水分が奪われます。のどを乾燥させないように加湿器の活用、さらには水分補給も大切です。冷たい水が飲みにくいと感じる場合は、口やのどに刺激が少ない白湯をこまめに飲むと良いでしょう。
入浴時の脱水症予防として大切なのは水分補給です。入浴の10~30分前と入浴後にできるだけすぐコップ1杯の水を飲みましょう。
脱水症以外にも安全に入浴するために、のぼせ・めまい、転倒、心臓負担、やけどにも気をつける必要があります。入浴時間が長いと、のぼせて転倒する危険性があるため入浴時間は10分以内を目安すると良いでしょう。入浴の温度が熱すぎると心拍数や血圧が上昇し、心臓にも負担をかける恐れがありますのでお湯の温度は38~40度程度に留めましょう。温度が高すぎてやけどしないようにシャワーもぬるめに設定してください。
介護する方は高齢者の水分補給のサポート方法を知っておく必要があります。高齢者は、加齢により口腔やのどの渇きを感知する感覚が低下して、のどが渇いたと感じにくくなっています。
水を飲むとトイレに行く回数が増えるので、尿意や頻尿を避けたいという理由から水分摂取を拒否する方もいます。その他にも嚥下機能の低下によってむせる、飲みにくいなどの症状を避けるために無意識に控えてしまう方もいるかもしれません。介護する方は高齢者のこういった状況を理解し、工夫をして水分補給を促すようにしてください。具体的な水分補給のサポート法をご紹介しますので実践してみてください。
水分補給を習慣化させるためのコツは、起床時、朝、昼、夕食時、入浴前後、就寝前など生活の中に水分摂取を組み込むことです。その際に忘れにくくなるようにコップや飲料を常に手の届く場所に置くと、より効果的に生活の中に組み込みやすくなります。介護者が、定期的に「そろそろお水を飲みませんか?」と優しく声かけをし、飲んだ量を一緒に確認して達成感を得てもらうなどの工夫をすることも効果的です。
食事から水分を摂るのも水分補給の一つの方法です。水分の多い食材として、きゅうりやトマト、かぼちゃ、大根などがあります。例えば、きゅうりは生で食べるとたくさん水分を摂取できますので、薄切りや細切りにしてサラダにするなど食べやすく工夫しましょう。トマト、かぼちゃ、大根は、やわらかい煮込み料理にすると嚥下が難しい方でも食べやすくなります。野菜を使ったスープは、水分だけでなく栄養と食欲を同時に満たせるのでおすすめです。
認知症の方の脱水症は、本人が認知機能の低下によってのどが渇いたことを自覚しにくいため見逃しやすくなりがちです。自分でコップを探す、口まで運ぶという動作が困難な方もいますし、水を飲むという行動を忘れてしまう方、トイレが近くなるから飲まないといった誤った判断をする方もいます。言葉で訴えられない場合、トイレに行く回数が減った、唇が渇いてひび割れている、食欲が低下しているなどの変化を見逃さないよう普段から観察を行い、毎日記録を残すことが予防につながるでしょう。
高齢者の脱水症は、軽度の場合は本人が気づかない可能性があります。しかし、そのまま放置すると思わぬ大きな病気につながってしまう恐れもあります。脱水症についてしっかり理解し、軽視せず予防するために日頃から計画的に水分補給をしましょう。水分補給の仕方は、水を飲むだけでなく野菜など食べ物から水分を摂る方法もあります。体の状況や適切なタイミングなどをチェックし、その時々に応じて水分の摂り方を工夫することで、脱水症のリスクが回避できる基本習慣を身につけましょう。
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