この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
高齢者によくみられる脱水症について、熱中症をおこす高齢者の特徴、脱水症になりやすい理由と見逃さないようにするためのサイン、そして対処方法及び、予防方法をご紹介します。
2023年6月23日
脱水症とは、体の機能を維持するために不可欠な体液が不足している状態のことをいいます。水分・リンパ液・組織液などから構成されている体液は、体温調節や栄養分を体中に運ぶなど生命を維持するために重要な役割を担い、水分は成人の体の約60%を占めています。汗や尿などによって体外へ排出される水分量・塩分量と、体内に補給する水分量・塩分量が一定に保たれることで体液のバランスは維持されていますが、下痢や嘔吐などの体調不良や発汗によって体外に出ていく水分が増加すると体液のバランスが崩れてしまいめまいやふらつき、頭痛などの脱水症状を引き起こします。
人間は生まれてから年齢を重ねるにつれて、体内の水分量が少しずつ減っていくと言われています。子どもの頃の体内の水分量は約70%ですが、大人に成長すると10%減少して60%程度になり、さらに高齢になると身体の水分量が減って、体重に占める割合がほとんど50%にまで減少します。したがって成人に比べて体内の水分の割合が少ない高齢者は脱水症を発症しやすくなります。また、年齢を重ねると「口渇中枢(喉の渇きを感じる中枢)」の機能が低下するため、汗をかいて水分を必要としている場合でも、高齢者は喉の渇きを感じにくく、水分を摂取するのが遅れて、脱水症状を起こす傾向にあります。そのため、若い人たちより早い段階から、十分な注意が必要です。
脱水症によって体液が不足すると、酸素や栄養素を体の中に届けることができなくなるため、これを放置しておくと思わぬ病気につながる可能性があります。血液の濃度が高くなって固まりやすくなると血栓ができるリスクが高まり、脳梗塞や心筋梗塞の発症につながり命を落とす危険性もあります。糖尿病や排尿障害などの病気の予兆として脱水症になるケースもあるため、できるだけ早いうちに発見することが重要です。
厚生労働省の発表によると、熱中症による死亡者のおよそ80%が65歳以上の高齢者となっています。
■熱中症による高齢者死亡数の年次推移
年間 死亡総数 (人) |
65歳以上の 死亡者数 (人) |
65歳以上の 死亡者割合 (%) |
|
---|---|---|---|
2021年 | 755 | 641 | 84.9 |
2020年 | 1,528 | 1,316 | 86.1 |
2019年 | 1,224 | 1,000 | 81.7 |
2018年 | 1,581 | 1,288 | 81.5 |
2017 年 | 635 | 496 | 78.1 |
―引用―
「厚生労働省 年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和3年)」
高齢者は、温度に対する感覚が鈍っていることや、体液の減少によって体温調節がしにくいこともあり、夏の暑い日でもクーラーを使用せずに過ごして熱中症になるケースが多くみられます。体の1~2%の水分量が失われることで起こる軽度の脱水状態を「かくれ脱水」と呼び、この状態からさらに脱水が進行して、熱中症を引き起こす場合があります。熱中症になってから脱水が原因だと判明することも少なくありません。
熱中症をおこす高齢者にどのような特徴が挙げられるのかについて、熱中症が重症化して入院された65歳以上の高齢者を調査したところ、発症時の環境や条件で次のような共通した特徴がありました。
【発症時の環境】
・気温が28℃以上
・若年層と比べて、屋外よりも自宅の室内で起こりやすい
・室内に空調設備がない、または、あっても使用しない
・一人暮らし、または配偶者と二人暮らしの場合
【本人の状況/要介護度】
・介助なしで自立している、または介護サービスを何も利用していない
・認知症の症状がある
食事の全体量が減る、嚥下(えんげ)障害によって水分摂取量が減るなど、体内の水分量が不足することが原因で脱水症を引き起こします。加齢によって筋力が低下し、水分を蓄える筋肉量が減ることも脱水症を引き起こす原因のひとつと考えられます。
加齢による腎臓の機能の低下も脱水症に陥る原因と考えられています。腎臓は体内の水分量を調整する役割がありますが、機能が低下すると体内に必要な水分や電解質を留める力が弱まってしまいます。これにより体液のバランスが崩れて脱水症を引き起こしやすくなります。
加齢による感覚機能の低下によってのどの渇きに気づかないことが原因で、摂取する水分量が少なくなり脱水症になるリスクが高まります。認知症の影響から飲み物を飲んだかどうかを忘れて長時間水分を摂らないまま過ごしてしまい、脱水症になることもあります。
服用している薬が影響して脱水症になることも考えられます。血圧を下げる降圧薬の種類によっては利尿作用があり、尿の排出によって必要な塩分や水分が不足して脱水症を引き起こすことがあります。
皮膚のかさつきや唇・口の中が乾燥しているときは軽度の脱水症を疑いましょう。汗で湿っていてもおかしくない脇の下が乾燥している場合も注意が必要です。その他にも、前胸部(胸骨の上部)や手の甲の皮膚をつまんだとき元に戻るのに時間がかかる、爪を押した後すぐにピンク色に戻らないといった状態であれば、脱水している可能性があります。ぼーっとしている、うとうとと傾眠(けいみん)気味になる、手足が冷たい、めまいやふらつきなどの症状があれば、脱水症の恐れがあるため注意深く観察しましょう。
脱水症が中度に進行すると、頭痛や吐き気などの症状が見られます。血圧が下がる、嘔吐や下痢など明らかな体調の異変が見られることがあります。トイレへ行く回数が少なくなるのも脱水症のサインのひとつなので、トイレの回数やおむつの尿量、尿の色が濃くなっていないかなどをチェックしましょう。
症状が悪化して高度になると意識がもうろうとしたり、話しかけても反応がなくなったりします。ひどい場合は意識を失う、痙攣を起こすこともあります。
軽度の症状のあいだは、水分を摂取するだけで改善することが多いです。日常生活での水分補給は水やお茶でも構いませんが、脱水症になったときには水分とミネラルを補う必要があるため、水分・塩分(電解質)の両方を効率よく摂取できる経口補水液を飲むのがおすすめです。経口補水液を常備していない場合は、自宅で作ることも可能です。
【経口補水液の作り方】
容器に水500ml、砂糖20g、食塩1.5gを入れ、よくかき混ぜれば完成です。レモン汁を少し加えると飲みやすくなります。
中度の脱水症の場合も経口補水液を摂取しましょう。下痢の症状がある場合は、排泄する度に水分を摂取します。嘔吐したときは、吐いた量と同じくらいの経口補水液を摂取しましょう。
重症化し高度の脱水症の場合は、口からの水分補給だけでは対処できない可能性が高いです。点滴などの処置が必要になるため、病院を受診しましょう。意識がない、痙攣を起こしている場合は、命の危険もあるため速やかに医師の処置を受けましょう。
1日に必要な水分量を把握してきちんと摂取できているか、本人だけでなく周囲も意識して確認するようにしましょう。高齢者の場合、1日に必要な水分量の目安は体重1kgあたり約40mlといわれています。体重が60kgの場合は、約2.5Lの水分が必要ということになります。食事の際、食べ物から約1Lの水分が摂取できますが、それ以外に約1~1.5Lの水分補給が必要になります。その日の体調や運動量などによって、普段より多めに水分補給が必要なこともあるため注意が必要です。
室内の湿度・温度管理をしっかり行いましょう。冬場、部屋が乾燥している場合は、加湿器の使用や濡れタオルを干すなどして湿度を上げます。夏の暑い日はエアコンを使用して室内の温度を適温に保ちましょう。就寝中にエアコンを使わずに脱水症を引き起こすケースは少なくありません。エアコン嫌いや節電のためにエアコンの使用を避ける方もいますが、命に関わる危険もあるため積極的に使用して室内環境を整えましょう。
普段からこまめに水分を摂取するようにしましょう。起床時、入浴の前後、就寝前など、水分補給をする時間を決めておくことがおすすめです。場合によってはのどが渇いている自覚がないこともあるので、周りの人が声をかけて水分の摂取を促しましょう。
脱水症を予防する水分の摂り方
常に飲み物を手元に置いておき1日7~8回以上、コップ1杯分の水分を摂取することを心がけましょう。起床時、食事中、次の食事までの合間、入浴前後、就寝前のように水分を摂るタイミングを決めておき、定期的に水分補給することが大切です。水分を多く含むゼリーや水ようかん、フルーツなどで水分補給するなど、水分の摂り方を工夫してみるのもよいでしょう。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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