この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
傾眠傾向とはどういう症状なのか、傾眠の要因や対策、認知症との関係などをご説明します。
2025年1月24日
傾眠傾向とは、高齢者に多い軽度の意識障害のひとつです。「傾眠」の読み方は「けいみん」で、介護や看護の現場で “傾眠が強くなってきている”“傾眠が続いている”といった使い方がされます。ウトウトしているときに声かけや肩をポンッと叩くような軽い刺激で意識を取り戻す状態を指し、この状態が頻繁にみられる場合を傾眠傾向と呼んでいます。
傾眠を含む意識障害には、傾眠・昏迷・半昏睡・昏睡の4段階(場合によっては5段階)の意識障害レベルがあります。
(1)傾眠
傾眠は、声かけや肩を叩くなど、外部からの軽い刺激で目を覚ます状態です。そのまましばらく何もしないで放っておくと眠ってしまいます。
(2)昏迷(こんめい)
昏迷(こんめい)は、大声での呼びかけや、体を揺するなどの強い刺激に対して反応する状態のことをいいます。
(3)半昏睡(はんこんすい)
半昏睡は体を強くつねるなどの強い刺激を与えたときに、避けようとする、顔をしかめるなど、身体の一部が反応する状態です。
(4)昏睡(こんすい)
昏睡は、まぶたを閉じたままで、外部からの刺激に対しても全く反応しない状態のことです。
傾眠傾向のある方は、覚醒した後も注意力に欠ける、無気力になるといったことがおこります。進行すると錯覚や妄想、せん妄といった症状が現れることもあります。ウトウトしていて、うたた寝だろうと放っておくと、症状が重くなる可能性があるため注意が必要です。
傾眠傾向の症状が見られる場合には次のような原因があります。
認知症の初期症状のひとつである無気力状態(アパシー)になると、意欲を失って脳が興奮状態になりにくく、傾眠傾向が強くなります。また、認知症になると睡眠のリズムが崩れやすく、夜間の睡眠不足により傾眠傾向が見られることもあります。
―認知症の初期症状について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「認知症の初期症状とは?早期発見のポイントと進行を遅らせる方法を解説」
加齢とともに神経伝達の機能が低下するため、自然と傾眠が起こることもあります。夜間の眠りが浅い場合は、日中に眠気が取れないことも考えられるため、健康面で何も問題がない場合は加齢によるものかもしれません。
―加齢に伴う体力低下について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「廃用症候群とは何?症状や原因、予防法と寝たきりにさせないためのリハビリについて」
脱水症状によって、意識が朦朧として傾眠状態になる場合もあります。高齢になると、のどの渇きを感じにくい上に、体内に水分を蓄える機能が低下してしまうため脱水症状を引き起こしやすいので注意が必要です。
―脱水症について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「脱水症とは?原因やサイン・予防法を解説」
肝臓や腎臓などの代謝に関わる臓器に何かしらの異常が起きている場合も、傾眠が起きやすくなります。体内で炎症が起きていることが原因の場合や、発熱など風邪のような症状で身体が休みたがっていて、傾眠を引き起こしている場合も考えられます。このような場合は、疾患が治る、熱が下がることで傾眠傾向がなくなります。
慢性硬膜下血腫とは、頭を打ったときに血管に傷がつき、硬膜と脳の間に血腫ができてしまう脳疾患で、この血腫が大きくなると傾眠傾向が見られます。高齢者の血管はもろく、軽く頭をぶつけた程度でも硬膜下血腫を起こしやすくなります。頭を打った直後ではなく、1〜2ヶ月程度経過してから症状が現れることも多いです。小さい血腫であれば自然治癒する可能性もありますが、基本的には外科手術が必要となるため、早期発見が大切です。
薬の副作用が要因となり、傾眠傾向が見られることもあります。普段服薬している薬が原因となっている可能性もあるため、気になることがあれば医師や看護師に相談してみましょう。
食事を摂取した後、急激に血圧が下がる食事性低血圧が傾眠の要因になっていることもあります。食事性低血圧は、パーキンソン病やアルツハイマー病、脳血管障害、高血圧、糖尿病、高齢などが原因で起こると言われており、降圧薬や利尿薬を服用している方によく見られます。急激な血圧低下を防ぐためにも、食事内容を見直し、ゆっくりと時間をかけて食事をすることが大切です。
過眠症とは、夜に睡眠時間を確保できていて、睡眠を妨げる病気がないにも関わらず、日中発作的に眠気に襲われてしまう病気のことをいいます。過眠症は傾眠傾向と症状が似ている部分もありますが、発症の原因は特定されておらず、睡眠や覚醒に関わる中枢神経系の機能異常が考えられています。また食事などをしている最中であっても、突然入眠してしまう「ナルコレプシー」と呼ばれる睡眠障害も過眠症の一つとされており、比較的若い世代に発症が見られます。
―参考―
「厚生労働省 e-ヘルスネット」
うつ病は、疲労や強いストレスを感じることで精神的な症状が出るほか、動機や震え、食欲の変化など様々な身体的症状も現れます。いくつかある症状の中でも、不眠などの睡眠障害を発症する方は多く、夜に眠れないことがきっかけで、うつ病に気が付くということも少なくありません。その一方で、不眠ではなく、傾眠傾向の症状が見られる方もいます。
では傾眠傾向が見られたときにできる対策としてはどのようなものがあるのかを順に紹介していきます。
話しかけて会話する機会を増やすことで、眠る隙を与えないようにしましょう。声かけによって目を覚ますことができますし、コミュニケーションをとることで脳の働きが活発になります。
日中、散歩に出かけるなど体を動かすことも効果的です。体を動かすことで、血流がよくなって脳が活性化されますし、夜間の睡眠の質をあげることにもつながります。昼夜逆転していることが傾眠の原因である場合は、生活リズムを整えることが大切です。
脱水症状を防ぐためにも、こまめに水分補給しましょう。適切な水分補給は、傾眠の対策になるだけでなく、熱中症の予防にも効果的です。起床時、入浴前後など、水分補給する時間を決めておくのもよいでしょう。のどが渇いている自覚がないことも考えられるため、周囲が様子を見ながら声をかけ、必要に応じて水分摂取を促すようにしましょう。
―高齢者の脱水症について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「脱水症とは?原因やサイン・予防法を解説」
薬の副作用が原因であると考えられる場合は、医師に相談して薬の量や内容を調整してもらいましょう。介護する家族は、服用している薬の成分や副作用などを把握しておき、薬を飲み始めてから変わったことがないかなど、日頃から様子を気にかけておきましょう。
その他にも、日中に短時間の仮眠をとるといった対策方法があり、脳を覚醒させるために昼過ぎに15~30分程度昼寝をするのが効果的な対策になります。例えば、毎昼食後に30分の昼寝時間を設けるなど、日々の生活の中で習慣にしていくとよいでしょう。ただし、昼寝の時間が長すぎてしまうと、夜の睡眠に影響が出る可能性があるため、注意してください。
傾眠傾向の症状が見られるようになった場合、その背景には病気が潜んでいる恐れもあるためかかりつけの医師などに相談するようにしましょう。医師に相談することで、病気の早期発見につながる場合もありますし、原因が病気ではないとしても、傾眠傾向によって脱水症状や栄養不足に陥ってしまい、症状の悪化や別の病気を招く可能性もあります。ですから早めに医師に診断してもらう必要があります。
高齢者で傾眠傾向が見られる場合は、症状が進むにつれて起きる可能性がある次のようなトラブルに注意が必要です。
食事中の入眠による誤嚥のリスクに注意しましょう。高齢者は食べものを噛んだり飲んだりする力が衰えて誤嚥することがあり、これを繰り返していると、気管や肺に細菌が入り込んで誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなります。誤嚥を起こさないよう食事内容に気を付けることや、食事に集中してもらえる環境づくりをするように心がけましょう。
傾眠傾向が進むと活動量が低下し、筋力が落ちて姿勢が崩れるため急に転倒や転落する恐れがあります。座っていた椅子や、車椅子から落ちてしまうなどの事故につながる危険性があるので、体勢が崩れている場合は、体の向きを整えるなど安全に過ごせるような配慮が必要です。
―転倒予防について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「転倒を予防するには?高齢者が転ぶ原因と場所、予防グッズを紹介」
日中に眠ってしまい、生活リズムが崩れることに加えて徐々に食欲が落ちてしまうことも傾眠傾向で気を付けたいことのひとつです。食事を摂らなくなると、栄養不足に陥り、生命の危険度が高まります。食習慣や栄養摂取の量を記録するなどの対策をとるとよいでしょう。
傾眠傾向の原因が慢性硬膜下血腫や内科的疾患など病気の可能性もあるので、傾眠傾向が疑われる場合は早期発見・早期治療のためにも、なるべく早めに医師へ相談することをおすすめします。処方されている薬の副作用が原因の場合もありますので、本人の症状で少しでも気になることがあれば、必ずかかりつけ医に相談してください。
傾眠傾向の原因の一つとして考えられている認知症は、誰でも発症する可能性があります。今までできていたことができなくなったり、これまでなかった症状が出始めたりするなど予期せぬ展開が起こり、本人はもちろんのこと、家族や周囲も戸惑い、不安を抱いてしまうかもしれません。認知症になると、日常生活における介護が必要になるだけでなく、進行するにつれて理解しがたい行動をとることもあります。このようなときの不安を少しでも解消するために、介護に関する正しい知識を身につけ、早めに介護プランについて検討しましょう。介護プランを作成するときは、本人の気持ちに寄り添うことはもちろん、本人だけでなくできるだけ家族の希望も叶うようにしていく工夫が大切です。
フランスベッドでもたくさんの介護用品・福祉用具を取り扱っています。
▶ フランスベッド介護用品・福祉用具のレンタルと購入についてはこちら
―認知症について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「認知症の症状一覧種類や進行段階、速度、早期発見のコツを解説」
―介護の不安について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください―
▶ 「介護に不安を感じるポイントとその解消方法について」
傾眠傾向は、4段階(場合によっては5段階)の意識障害レベルの中で軽度の状態であるとはいえ、放置してしまうと症状の進行を早めてしまう、あるいは事故につながる恐れもあるため軽視できません。昼間も含めて一日中居眠りしていることが多い場合は、傾眠傾向による症状を疑い、早めにかかりつけ医へ相談すると良いでしょう。傾眠傾向の症状から本人では対応できない場合もあるため、家族や介護者がサポートし、医療機関の受診や、日頃の見守りなど適切なケアを実施していきましょう。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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