この記事の監修者
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フランスベッド
メディカル営業推進課
課長 佐藤啓太福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級、福祉用具プランナー、
社会福祉主事任用資格、知的障害者福祉司任用資格、児童指導員任用資格、
可搬型階段昇降機安全指導員、スリープアドバイザー
傾眠傾向とはどういう症状なのか、傾眠の要因や対策、認知症との関係などをご説明します。
2024年3月20日
傾眠傾向とは、高齢者に多い軽度の意識障害のひとつで、ウトウトしているときに声かけや肩をポンッと叩くような軽い刺激で意識を取り戻す状態のことを言い、傾眠・昏迷・半昏睡・昏睡の4段階(場合によっては5段階)の意識障害レベルがあります。傾眠は意識障害のレベルの中では最も軽度の状態です。
(1)傾眠
傾眠は、声かけや肩を叩くなど、外部からの軽い刺激で目を覚ます状態です。そのまましばらく何もしないで放っておくと眠ってしまいます。
(2)昏迷(こんめい)
昏迷(こんめい)は、大声での呼びかけや、体を揺するなどの強い刺激に対して反応する状態のことをいいます。
(3)半昏睡(はんこんすい)
半昏睡は体を強くつねるなどの強い刺激を与えたときに、避けようとする、顔をしかめるなど、身体の一部が反応する状態です。
(4)昏睡(こんすい)
昏睡は、まぶたを閉じたままで、外部からの刺激に対しても全く反応しない状態のことです。
傾眠傾向のある方は、覚醒した後も注意力に欠ける、無気力になるといったことがおこります。進行すると錯覚や妄想、せん妄といった症状が現れることもあります。ウトウトしていて、うたた寝だろうと放っておくと、症状が重くなる可能性があるため注意が必要です。
高齢者によく見られる傾眠傾向は、ただウトウトとうたた寝しているように見えますが、もしかすると認知症や慢性硬膜下血腫、内科的疾患などの病気のサインかもしれません。放っておくと意識障害が進行してしまう恐れがあり、食事中に傾眠傾向が見られる場合は誤嚥のリスクも高まるため、注意が必要です。
ただのうたた寝なのか、傾眠傾向なのか、見た目から判断するのは難しいですが、昼間も含めて一日中ウトウトする様子がよく見られる、ある日を境に明らかにウトウトすることが増えたといった場合は、傾眠傾向を疑ったほうがよいでしょう。何か気になる事や不安なことがあれば、早めに医師に相談することをおすすめします。
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では、傾眠傾向の要因にはどのようなものがあるのか、要因についてご紹介します。
認知症の初期症状のひとつである無気力状態(アパシー)になると、意欲を失って脳が興奮状態になりにくく、傾眠傾向が強くなります。また、認知症になると睡眠のリズムが崩れやすく、夜間の睡眠不足により傾眠傾向が見られることもあります。
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加齢とともに神経伝達の機能が低下するため、自然と傾眠が起こることもあります。夜間の眠りが浅い場合は、日中に眠気が取れないことも考えられるため、健康面で何も問題がない場合は加齢によるものかもしれません。
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脱水症状によって、意識が朦朧として傾眠状態になる場合もあります。高齢になると、のどの渇きを感じにくい上に、体内に水分を蓄える機能が低下してしまうため脱水症状を引き起こしやすいので注意が必要です。
肝臓や腎臓などの代謝に関わる臓器に何かしらの異常が起きている場合も、傾眠が起きやすくなります。体内で炎症が起きていることが原因の場合や、発熱など風邪のような症状で身体が休みたがっていて、傾眠を引き起こしている場合も考えられます。このような場合は、疾患が治る、熱が下がることで傾眠傾向がなくなります。
慢性硬膜下血腫とは、頭を打ったときに血管に傷がつき、硬膜と脳の間に血腫ができてしまう脳疾患で、この血腫が大きくなると傾眠傾向が見られます。高齢者の血管はもろく、軽く頭をぶつけた程度でも硬膜下血腫を起こしやすくなります。頭を打った直後ではなく、1〜2ヶ月程度経過してから症状が現れることも多いです。小さい血腫であれば自然治癒する可能性もありますが、基本的には外科手術が必要となるため、早期発見が大切です。
薬の副作用が要因となり、傾眠傾向が見られることもあります。普段服薬している薬が原因となっている可能性もあるため、気になることがあれば医師や看護師に相談してみましょう。
食事を摂取した後、急激に血圧が下がる食事性低血圧が傾眠の要因になっていることもあります。食事性低血圧は、パーキンソン病やアルツハイマー病、脳血管障害、高血圧、糖尿病、高齢などが原因で起こると言われており、降圧薬や利尿薬を服用している方によく見られます。急激な血圧低下を防ぐためにも、食事内容を見直し、ゆっくりと時間をかけて食事をすることが大切です。
睡眠障害の中には、過眠症と呼ばれるものがあり、症状は傾眠傾向と似ていますが、過眠症は、夜間十分な睡眠をとっているにも関わらず、日中に強い眠気に襲われる病気です。過眠症は、中枢神経の機能異常または、慢性の睡眠不足によって起きていると考えられ、一般的な睡眠不足の場合、十分な睡眠をとれば眠気はなくなりますが、過眠症の方は、睡眠を妨げる病気や睡眠不足等がないにも関わらず、発作的に強い眠気が出現し、入眠してしまうという特徴があります。日々の生活に支障が出ることもあるため、症状が疑われる場合は、医師や専門機関で検査を行うようにしてください。
では傾眠傾向が見られたときにできる対策としてはどのようなものがあるのかを順に紹介していきます。
話しかけて会話する機会を増やすことで、眠る隙を与えないようにしましょう。声かけによって目を覚ますことができますし、コミュニケーションをとることで脳の働きが活発になります。
日中、散歩に出かけるなど体を動かすことも効果的です。体を動かすことで、血流がよくなって脳が活性化されますし、夜間の睡眠の質をあげることにもつながります。昼夜逆転していることが傾眠の原因である場合は、生活リズムを整えることが大切です。
脱水症状を防ぐためにも、こまめに水分補給しましょう。適切な水分補給は、傾眠の対策になるだけでなく、熱中症の予防にも効果的です。起床時、入浴前後など、水分補給する時間を決めておくのもよいでしょう。のどが渇いている自覚がないことも考えられるため、周囲が様子を見ながら声をかけ、必要に応じて水分摂取を促すようにしましょう。
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薬の副作用が原因であると考えられる場合は、医師に相談して薬の量や内容を調整してもらいましょう。介護する家族は、服用している薬の成分や副作用などを把握しておき、薬を飲み始めてから変わったことがないかなど、日頃から様子を気にかけておきましょう。
傾眠によって十分な食事が摂れないと、脱水症状や栄養不足を招く恐れがあります。食事中に傾眠傾向がある場合は、誤嚥を防ぐためにも食事の内容を見直しましょう。食事性低血圧が見られる場合は、一度にたくさん食べない、ゆっくり時間をかけて食べるなど、食事の摂り方を見直すことが大切です。
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傾眠傾向について医師に相談し、高齢が原因だと考えられる場合には、安心して日常生活を送れるように家族が見守り、支えてあげましょう。転倒や誤嚥などに気を配り、安全に暮らせるようサポートすることが大切です。
その他にも、日中に短時間の仮眠をとるといった対策方法があり、脳を覚醒させるために昼過ぎに15~30分程度昼寝をするのが効果的な対策になります。例えば、毎昼食後に30分の昼寝時間を設けるなど、日々の生活の中で習慣にしていくとよいでしょう。ただし、昼寝の時間が長すぎてしまうと、夜の睡眠に影響が出る可能性があるため、注意してください。
高齢者で傾眠傾向が見られる場合は、症状が進むにつれて起きる可能性がある次のようなトラブルに注意が必要です。
食事中の入眠による誤嚥のリスクに注意しましょう。高齢者は食べものを噛んだり飲んだりする力が衰えて誤嚥することがあり、これを繰り返していると、気管や肺に細菌が入り込んで誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなります。誤嚥を起こさないよう食事内容に気を付けることや、食事に集中してもらえる環境づくりをするように心がけましょう。
傾眠傾向が進むと活動量が低下し、筋力が落ちて姿勢が崩れるため急に転倒や転落する恐れがあります。座っていた椅子や、車椅子から落ちてしまうなどの事故につながる危険性があるので、体勢が崩れている場合は、体の向きを整えるなど安全に過ごせるような配慮が必要です。
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日中に眠ってしまい、生活リズムが崩れることに加えて徐々に食欲が落ちてしまうことも傾眠傾向で気を付けたいことのひとつです。食事を摂らなくなると、栄養不足に陥り、生命の危険度が高まります。食習慣や栄養摂取の量を記録するなどの対策をとるとよいでしょう。
先にも述べましたが、傾眠傾向の原因が慢性硬膜下血腫、内科的疾患の可能性もあります。傾眠傾向が疑われる場合は、病気の早期発見・早期治療のためにも、なるべく早く医師に相談することをおすすめします。たとえ傾眠傾向の原因が病気でないとしても、傾眠によってきちんと食事が摂れていなければ、脱水症状や栄養不足などに陥ることも考えられます。また、処方されている薬の副作用が原因の場合もありますので、少しでも気になることがあれば、かかりつけ医に相談してみましょう。
傾眠傾向の原因のひとつとして考えられる認知症は、誰でも発症する可能性があります。認知症によって今までできていたことができなくなる、これまでなかった症状が出るなど日常生活における介護が必要になるだけでなく、認知症が進行するにつれて、理解しがたい行動をとることもあります。家族は現実を受け入れづらく、これからの介護に不安を抱く方も少なくありません。
このような不安を少しでも解消するためにも、早めに介護プランの検討を始めることをおすすめします。認知症と診断されて何より不安を感じているのは認知症である本人自身です。したがって、本人の気持ちに寄り添いながら、本人と家族の望みに合わせた介護プランを検討することが大切であり、介護に関する正しい知識を身につけながら、本人そして家族にとってよりよい介護を目指しましょう。
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傾眠傾向は、4段階(場合によっては5段階)のレベルの中で軽度の状態であるとはいえ、放置してしまうと症状の進行を早めてしまうことや、事故につながる恐れがありますので、昼間も含めて一日中居眠りしていることが多い場合は、傾眠傾向による症状を疑い、早めにかかりつけ医へ相談するのが良いでしょう。本人では対応できない場合もあるため、家族や介護者がサポートし、医療機関の受診、日頃の見守りなど適切なケアを実施するようにしましょう。
フランスベッドは、日本で初めて療養ベッドのレンタルを始めたパイオニアとして40年以上にわたり介護用品・福祉用具のレンタル事業で選ばれ続けてきました。
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