介護耳より情報2026年9月号(Vol.204)

編集協力:シルバー産業新聞社

27年介護報酬改定 
在宅サービスを議論 
サービス量確保など共通論点に

第259回介護給付費分科会(6月29日開催)は、27年度介護報酬改定に向け、訪問介護、訪問看護、居宅療養管理指導、居宅介護支援・介護予防支援、福祉用具貸与・住宅改修など在宅系サービスの現状と課題を議論した。
論点は共通して、在宅生活を支えるサービス量の確保、中重度者・医療ニーズへの対応評価、担い手不足下での生産性向上、複雑化した加算体系の整理に集約される。
  • 『訪問介護』は、請求事業所数が20年以降微増し3.5万事業所、利用者数は111万人で増加傾向にある。要介護1、2が約6割を占める。立地、規模、事業形態による経営状況の違いを踏まえた検討、サービスの安定供給、加算体系の簡素化が課題とされた。委員からは「24年度の平均収支差率は9.6%だが、人員を充足すれば赤字。立地や規模の特性を精査すべき」「移動時間や距離の適切な評価が重要」などの意見が出た。
  • 『訪問入浴介護』は、請求事業所は減少し1,862事業所。利用者は約6.6万人で、約9割が要介護3以上。日常的な医療的ケアの利用者は全体の約66%。キャンセルや長い提供時間が経営に影響している。「多様な働き手(スポットワーカー等)の活用が進む中、加算要件である健康診断の実施基準を明確化すべき」などの意見。
  • 『訪問看護』は、ステーション数が増える一方、病院・診療所からの提供は減少。利用者数・費用とも増加しており、24年度決算の収支差率は10.3%だった。医療ニーズの高い在宅療養者が増える中、緊急時対応や関係機関との連携を効率的に行う事業所の評価が論点となった。「入院前からの情報連携や急変時対応を評価すべき」「集合住宅での医療系サービス連動モデルは、軽度者を中心に包括報酬化も検討すべき」などの意見。
  • 『訪問リハビリテーション』は、請求事業所は増加傾向。25年の受給者は約15万人。利用は週2回以内、1回40分が多い。内容は筋力増強、関節可動域、歩行訓練が中心。リハ会議で目標。達成度・取組効果を確認しているのは約半数。「IADLや社会参加に資するリハをより評価すべき。通所リハのような栄養・口腔と一体的なマネジメント(加算ハ)が訪問リハにも必要」などの意見。
  • 『居宅療養管理指導』は、請求事業所数が増加し約5万件。薬剤師による算定が最も多い。療養の場に応じ、多職種が専門性を発揮する連携方策が論点となった。低栄養リスクのある利用者に対し、多職種がスクリーニングを行い、医師の迅速な指示につなげる仕組みを求める声があった。
  • 『居宅介護支援』は事業所数が減少傾向で、大規模化・併設化が進む。ケアマネジャーの3割以上は60歳以上。ケアプランデータ連携システムの導入率は足元で約45%まで急増した。委員からは、2人訪問など安全対策、基本報酬引き上げ、処遇改善加算の拡充、24時間連絡体制の緩和を求める意見が出た。
  • 『福祉用具貸与』は利用が増加傾向にある。24年度から固定用スロープなど4種目で貸与・販売の選択制を導入。上限価格の見直しでは88・7%の商品が減額となった。委員からは、物価高を踏まえた上限価格の見直し、既存商品の手続き簡素化、購入・住宅改修の支給限度額引き上げを求める意見が相次いだ。

介護給付費分科会で展開中の介護報酬論議は全サービスの第1ラウンドが終わった後、団体ヒアリングを経て、本格議論となる第2 ラウンドを迎え、年末の意見集約をめざすことになる。処遇改善のいっそうの引上げと社会保険料の抑制がせめぎ合う情勢の中で、産業界の賃上げ率にどこまで迫る賃金アップを果たせるのか。介護保険部会においては、2割負担拡大の検討も始まる。

「生産性向上」「経営改善」の推進責務 
介護保険法など改正

厚生労働省は6月25日、同日公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(2026年法律第51号)について、都道府県や市町村などに通知した。同法律案は6月19日の参議院本会議で可決、成立した。施行日は原則として27年4月1日だが、改正項目によって異なる。高齢者介護に関連する主な改正内容は次の通り。
  • 夜間対応型訪問介護を廃止
    地域密着型サービスの一つである夜間対応型訪問介護を廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に統合する。24年度介護報酬改定では、両サービスの将来的な統合を見据え、夜間のみサービスを必要とする利用者を対象とした定期巡回サービスの新たな報酬区分が設けられていた。
  • ケアマネジャーの更新制廃止、研修制度見直し
    介護支援専門員証の有効期間を廃止し、研修受講を要件とする更新制度をなくす。一度交付された介護支援専門員証が、期限の到来によって失効することはなくなる。
    一方、ケアマネジャーの資質を確保するため、定期的な法定研修は継続する。厚労省は、一定期間内に分割して受講できる仕組みを設けるほか、初回更新研修相当の研修などを中心に全体時間数の縮減を検討し、国による教材の一元作成やオンライン受講を推進する方針である。
    事業者には、ケアマネジャーの就業・離職状況を都道府県に報告するとともに、受講時間を確保するなど研修機会を確保する措置が義務付けられる。施行時期は、公布日から1年6カ月以内の政令で定める日で、遅くとも2027年12月25日までとなる。
  • 人口減少地域向けに「特例居宅介護サービス費」等を新設
    人口減少などにより、通常の指定基準では介護サービスの確保が難しい「特定地域」で、都道府県条例による基準を満たすサービスについて、市町村が特例居宅介護サービス費を支給できるようにする。
    地域の実情に応じ、管理者や専門職の常勤・専従要件、夜勤職員の配置要件などの人員配置基準を弾力化できる仕組みを設ける。出来高払いに加え、月単位の定額報酬など包括的な評価も選択可能とする。ただし、職員の負担やサービスの質、安全確保への配慮を前提とする。対象は居宅サービスに限らず、居宅介護支援、施設サービス、介護予防サービス、介護予防支援にも広げる。
  • 人材確保協議会は努力義務、生産性向上等協議会は設置義務
    都道府県は、福祉人材を確保するため、市町村、公共職業安定所、都道府県福祉人材センター、介護労働安定センター、事業者団体、教育機関、介護サービス事業者などで構成する協議会を置くよう努める。地域の人材養成・定着状況や採用活動などについて情報を交換し、人材確保策を協議する。
    これとは別に、介護サービスの質の確保、生産性向上、安定した経営基盤の確立に向けた協議会の設置を都道府県に義務付ける。国と都道府県には、生産性向上や経営改善支援などの取り組みを促進する責務を明記した。
  • 登録有料老人ホーム制度を創設
    一定の要介護状態などにある者を入居させ、介護等を供与する有料老人ホームについて、都道府県知事の登録を受ける制度を創設する。登録は5年ごとの更新制とする。
    登録拒否、登録簿の閲覧、報告徴収、立入検査、改善命令、事業停止命令、登録取り消しなどの監督規定も整備する。厚労省は、入居対象者の要件によって判断した場合、現存する有料老人ホームの大半が登録対象になると想定している。施行時期は、公布日から2年以内の政令で定める日である。
  • 登録施設介護(予防)支援を創設
    登録有料老人ホームの入居者を対象に、「登録施設介護支援」と「登録施設介護予防支援」を創設する。登録施設サービス計画または登録施設介護予防サービス計画を作成し、介護サービス事業者との連絡調整、地域活動への参加支援、介護保険施設などへの入所が必要になった場合の紹介などを行う。
    厚労省は、当面、既存の居宅介護支援事業者について、新たな指定申請を不要とする予定である。居宅介護支援全般のケアプランを有料化するものではなく、登録有料老人ホームの入居者を対象とする新たなケアマネジメント類型について、原則1割の利用者負担を求める制度である。施行時期は、公布日から3年以内の政令で定める日。

市町村・都道府県が策定する第10 期介護保険事業(支援)計画(27 ~ 29 年度)では、人材確保、生産性向上、経営改善に向けた取り組みと目標を明記する。特定地域制度は、人員配置基準や報酬を地域の実情に応じて柔軟化し、中山間・人口減少地域の介護サービスを維持するための新たな選択肢となる。一方、制度上も職員の負担やサービスの質、安全確保への配慮が前提とされている。自治体には、基準緩和を単なる人員削減策とせず、処遇改善、事業者間連携、生産性向上、経営支援と組み合わせてサービス基盤を維持する制度設計が求められる。

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