介護耳より情報2026年10月号(Vol.205)

編集協力:シルバー産業新聞社

特養の特例入所
自治体に適切な運用求める 
地域差踏まえ周知

厚生労働省は都道府県などに対し、特別養護老人ホームの「特例入所」が適切に運用されるよう、管内市町村や関係団体への周知を続けるよう求めた。要介護1、2の人についても、在宅生活が困難な事情を地域の実情に即して判断し、入所の必要性が高い場合には円滑な入所につなげる必要があるとした。
特養の新規入所者は原則として要介護3以上だが、要介護1、2でも、居宅で日常生活を営むことが困難なやむを得ない事情があれば、特例入所が認められる。
国の指針では、特例入所を判断する際に考慮する事情として、▽認知症による症状や行動、意思疎通の困難さが頻繁にみられる▽知的障害や精神障害などを伴い、日常生活に支障を来す症状や行動などが頻繁にみられる▽家族などによる深刻な虐待が疑われ、心身の安全・安心の確保が難しい▽単身世帯である、同居家族が高齢または病弱であるなど、家族の支援が期待できず、地域の介護サービスや生活支援も不十分――などを挙げている。
これらに加え、自治体が地域の実情を踏まえて入所が必要と認める事情も考慮できる。ただし、地域や施設に空床があることだけで特例入所の対象となるわけではなく、本人が在宅生活を続けることの困難性を個別に判断する必要がある。
特例入所の運用状況には保険者ごとに差があり、厚労省は、入所の必要性が高い人が適切に特養を利用できるよう、制度の趣旨に沿った運用を求めている。

特例入所は、空床を埋めるための経営支援策ではなく、要介護1、2でも在宅生活が困難な人を施設につなぐための救済的な仕組み。一方、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の増加により、特養に空床が生じる地域もある。第10期介護保険事業計画では、有料老人ホームなどの定員も踏まえて介護サービスの必要量を見込む。特例入所の適切な運用と、地域全体の住まい・施設整備を一体的に考える必要がある。

ケアマネ更新制廃止へ
新たな法定研修教材、12月ごろ内容提示

厚生労働省は7月15日、全国介護保険担当課長会議で、ケアマネジャーの資格更新制廃止と法定研修の見直しについて説明した。
6月に成立した社会福祉法等改正法により、介護支援専門員証の5年間の有効期間と、更新に必要な研修制度が廃止される。関係規定は、6月25日の公布日から1年6カ月以内の政令で定める日に施行される。
見直し後は、介護支援専門員として業務に従事する者に対し、資質の維持・向上に必要な研修を定期的に受講することを義務付ける。5年間など一定の期間内に研修を分割して受けられる仕組みとし、全体の研修時間も可能な限り短縮する。
講義については、国が全国共通の教材や動画を一元的に作成し、オンラインやオンデマンドで受講できるようにする。直近の制度改正や介護報酬改定、単身高齢者への支援なども盛り込み、都道府県による研修内容のばらつきを抑える。教材は今年度中に作成し、12月ごろまでに内容を示す予定。
現行の再研修は廃止し、ケアマネジャーとしての業務を離れていた間の制度改正や介護報酬改定などを学び直す、簡素な復職研修を新設する。研修時間を大幅に短縮し、オンライン受講を基本とするほか、一部を復職後に受けられる仕組みも検討する。具体的な内容は、年内をめどに都道府県へ示す方針。
介護サービス事業者等には、所属するケアマネジャーが研修を受けられるよう、受講時間の確保や受講状況の確認など、必要な措置を講じることを求める。必要な措置を講じない事業者に対しては、都道府県知事が勧告し、その内容を公表できる。勧告に従わない場合には、必要な措置を取るよう命令できる。
事業者が必要な措置を講じたにもかかわらず、ケアマネジャーが正当な理由なく研修を受講しない場合、都道府県知事は本人に研修の受講を命じることができる。受講命令に従わない場合には、1年以内の期間を定めて、介護支援専門員としての業務を禁止できる。業務禁止命令に違反した場合などは、登録消除の対象となる。研修を受講しなかっただけで、直ちに資格を失う仕組みではない。

5年ごとの更新手続は廃止されるが、ケアマネジャーが研修を受けなくてよくなるわけではない。更新研修に代えて、業務に従事するケアマネジャーには定期的な研修受講を求め、介護サービス事業者等には受講機会を確保するための措置を求める仕組みに変わる。今後の焦点は、研修時間や受講周期、事業者が勤務時間として確保すべき範囲、未受講者に対する行政上の手続を政省令や通知でどう具体化するかである。

27年度改定 
「コスト増に見合う報酬」求める声相次ぐ
医療ニーズ対応 施設改修も重荷

厚生労働省は7月9日、社会保障審議会介護給付費分科会を開き、2027年度介護報酬改定に向け、施設・居住系サービスについて議論した。物価や人件費の上昇に加え、入所者の重度化、医療ニーズの高まり、施設の老朽化などを踏まえ、安定した施設運営をどう支えるかが焦点となった。
特別養護老人ホームの24年度決算の収支差率は、広域型が1.4%、地域密着型が2.2%で、いずれも前年度から改善した。だが、全サービス平均の4.7%を大きく下回り、物価や人件費などの上昇に対応するには厳しい経営状況にある。入所者の平均要介護度は3.92で、医療対応や看取りのニーズも高まっている。
小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会)は、同会の調査では収支差率が0.0%で、赤字施設が49.5%に達したとして、基本報酬の大幅な引上げを訴えた。離島や過疎地域の小規模特養は、大規模化や他施設との統合が難しく、通常の報酬では事業継続が困難になるとして、現行の経過的な報酬に代わる恒久的な小規模施設向け報酬の創設を求めた。
介護老人保健施設は、請求事業所数と利用者数が18年以降、緩やかに減少し、24年度の収支差率は0.6%と低調だった。新型コロナウイルス感染症や季節性感染症が発生し、新規入所の受入れや退所支援を一時停止すると、空床期間が長引いて稼働率が低下するほか、在宅復帰・在宅療養支援等指標が悪化し、基本報酬の施設類型にも影響しかねないことが課題となっている。
東憲太郎委員(全国老人保健施設協会)は、築30年以上の施設が約42%に達し、低収益のため修繕や建替えの資金を賄えないとして、報酬の引上げを要請した。感染症発生時における在宅復帰・在宅療養支援等指標の弾力的な運用に加え、入所前後訪問指導加算について、同様のリハビリテーションを行っていても、入所前後の訪問要件を満たさなければ評価が半分になる仕組みや、認知症短期集中リハビリテーション実施加算の見直しなどを求めた。
介護医療院の24年度の収支差率は3.5%。入所者の約8割を要介護4、5が占め、82.7%が病院から移っている。医療処置や看取りに対応する必要性が高い一方、医療・介護連携に関する加算は、要件の複雑さや業務負担から十分に活用されておらず、報酬体系の簡素化も課題とされた。
田中志子委員(日本慢性期医療協会)は、急性期病院などから状態の重い患者を受け入れる際、要介護度の区分変更が間に合わず、実際のケア量と報酬が見合わないケースがあるとして、実態調査と評価の見直しを求めた。
特定施設入居者生活介護については、住宅型有料老人ホームにおける過剰な介護サービス利用、いわゆる「囲い込み」の防止や、サービスの透明性確保などが課題とされた。厚労省は、改正法に基づく有料老人ホームの登録制度を具体化するとともに、入居者の状態やサービス提供の実態が特定施設に近い住宅型有料老人ホームについて、外部サービス利用型を含む特定施設への移行を促す方向性を論点として示した。
志田信也委員(認知症の人と家族の会)は、特定施設への移行は囲い込み対策として有効だとしつつ、住宅型有料老人ホームより利用料が高くなる可能性を指摘した。住宅型有料老人ホームには、身寄りのない認知症高齢者や低所得者も入居しているため、移行によって行き場を失うことがないよう配慮を求めた。

26年6月から介護報酬が臨時改定されたものの、今回の議論では、人件費や物価の上昇だけでなく、施設の老朽化、感染症による稼働率低下、入所者の重度化・医療ニーズへの対応など、現行報酬では吸収しにくい構造的なコストが浮かび上がった。27年度改定では、基本報酬の引上げに加え、施設の修繕・建替え費用をどう評価するか、感染症発生時の実績指標をどう扱うか、重度者を受け入れる施設の機能をどう報酬に反映するかが焦点となる。

障がい福祉の生産性向上ガイドライン策定へ
人材確保検討会が初会合

厚生労働省は7月28日、「障害福祉分野における人材確保・生産性向上に関する検討会」の初会合を開いた。深刻化する人手不足を背景に、ICTやロボット技術の活用、業務の標準化などを通じて職員の負担を軽減し、利用者への直接支援を充実させる方策を議論する。生産性向上ガイドラインの策定や、障害福祉の仕事の魅力を伝える広報戦略などを検討する。
ガイドラインは、全サービスに共通する考え方や業務改善の手順を示す「共通編」と、サービスの特性に応じた「各サービス編」で構成する。 各サービス編では、①訪問系・相談支援系②施設入所系・居住支援系③通所系④児童系――の4類型を想定。記録・請求業務、スケジュール作成、夜間の見守り、情報連携、タスクシフトの5分野について、課題の設定方法や業務改善の事例を示す方針。
今後、10月ごろに共通編の暫定版、11月ごろに各サービス編の暫定版を検討する。12月ごろには社会保障審議会障害者部会とこども家庭審議会障害児支援部会でガイドライン暫定版を審議し、27年2月ごろに検討会として26年度の取組を最終報告する予定。27年3月ごろに開くフォーラムで、ガイドラインや実証事業の好事例を周知する

厚労省は、障がい福祉分野の生産性向上を「支援を減らすこと」や「人を減らすこと」ではなく、支援者一人ひとりの力を引き出し、チームで利用者に届けることによって新たな価値を生み出す取組と位置付ける。今後の焦点は、障がい特性やサービス類型の違いを踏まえながら、取組の成果を削減できた業務時間だけでなく、支援の質や利用者の生活の変化として、どのように評価するかにある。

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