介護耳より情報2026年7月号(Vol.202)

編集協力:シルバー産業新聞社

27年度改定へ議論スタート 
基本報酬引き上げ求める声相次ぐ

厚労省は4月27日、社会保障審議会介護給付費分科会(岩村正彦分科会長=東京大学名誉教授)を開催し、2027年度介護報酬改定に向けた議論を本格的にスタートさせた。同省は、団塊世代が90歳を迎える2040年を見据えたサービス提供体制の構築など、4つの検討テーマを提示。委員からは、物価高騰や他産業の賃上げに押される介護現場の「存立の危機」を訴える声が相次いだ。
特養や老健などの厳しい経営状況への早急な対処や報酬の底上げ、複雑化した加算の整理・統合を求める意見などが噴出。人材確保に向けた全産業との賃金格差解消も喫緊の課題とされ、制度存続やサービス提供体制維持へ向けた議論は初日から熱を帯びた。
27年改定は地域を、大都市部、都市部、人口減少地域に分類し、地域の実情に応じたサービス提供体制の構築を進める必要性が示された。自治体や地域規模によって高齢化や人口減少の進み方には大きな差が生じることから、介護給付の効率化・適正化も重要な論点となる。
年内に基本的考え方取りまとめ

分科会は今後、夏頃まで主な論点の議論や事業者団体等からのヒアリングを行い、10~12月頃に具体的な方向性の議論に入る。地方自治体の条例制定・改正に要する期間を踏まえ、基準に関しては先行して整理を進める。報酬・基準に関する基本的な考え方は12月中に取りまとめ、来年1月頃に介護報酬改定案の諮問・答申を行う見通し。
委員からは、「在宅介護を支えるヘルパーの処遇安定が最優先」(志田信也委員=認知症の人と家族の会副代表理事)、「24年度経営概況調査で特養の収支差率が0.6%にとどまる。基本報酬の大胆な引き上げを」(小泉立志委員=全国老人福祉施設協議会副会長)、「毎年度の期中改定を行うべき」(江澤和彦委員=日本医師会常任理事)など、現行の経営状況の厳しさを訴える意見が相次いだ。

今年度の期中改定では、改定率+2.03%のプラス改定が実施された。次期改定に向けては、その実効性や介護サービス事業者の経営状況を把握した上で、物価高騰や賃金上昇をより適切に報酬へ反映させる仕組みが議論の焦点となる。

LIFEの運営 国保中央会に移管 
7月末までに移行作業必要

5月11日、科学的介護情報システム(LIFE)の運営主体が厚労省から国民健康保険中央会へ移管された。4月1日に介護情報基盤が稼働したことに合わせた対応で、新たな「国保中央会運用LIFE」としてサービスが始まっている。現在LIFEを利用している事業所・施設がLIFE関連加算を継続して算定するには、5月11日から7月31日までの間に移行作業を終える必要がある。
新LIFEでは、利用者情報をサーバー上で保持し、利便性や安全性を高める。具体的な作業内容などを記載した「移行ガイド」は、厚生労働省ホームページの「科学的介護情報システム(LIFE)について」のページで公開している。
QRコード
厚生労働省
マニュアル一覧
https://life-web.mhlw.go.jp/help

医療・介護データを取り扱う介護情報基盤は、26年4月から準備が整った市町村で順次スタートしている。一方で、介護サービス事業者経営情報データベースシステムの稼働停止が続く中で、国は課題に一つずつ対処しようとしている。

登録有料老人ホーム向け支援を創設 
利用者負担を設定
介護保険改正法案 介護保険改

介護保険改正法案を含む社会福祉法等一部改正法案が4月3日、国会に提出された。その中で、懸案のケアマネジメント有料化に関わる制度として、有料老人ホームのうち、都道府県知事の登録を受けた「登録有料老人ホーム」を新たに制度化し、入居者向けのケアマネジメントと相談支援サービスとして「登録施設介護(予防)支援」を創設する。
一般の有料老人ホームが老人福祉法上の届出対象施設であるのに対し、登録有料老人ホームは、今後政令で定める要介護状態区分の該当者を受け入れ、契約や運営、設備などの基準に適合した上で、都道府県知事の登録を受ける仕組みとなる。登録は5年ごとの更新制とする。
ケアマネジャーは、ホーム設置者から生活状況などを聴取し、本人・家族の希望も踏まえて登録施設サービス計画を作成する。居宅サービス事業者等との連絡調整を行い、地域活動への参加支援や、必要時には特養、老健などへの入所紹介も担う。
登録施設介護(予防)支援には、利用者負担を要する。入居者は他の介護サービスと同様、原則1割、所得に応じて2割・3割の自己負担が生じる。離島・特定地域における特例給付(特例登録施設介護サービス計画費等)の対象にも含める。
【登録有料老人ホームのポイント】
  • 登録有料老人ホームとは

    今後政令で定める要介護状態区分該当者などを入居させる有料老人ホームについて、都道府県知事の登録制を設け、登録を受けた施設を「登録有料老人ホーム」とする。登録は5年更新で、契約、運営、重要事項、設備・運営基準への適合が要件となる。

  • 登録施設介護支援・介護予防支援の概要

    登録有料老人ホームの入居者を対象に、サービス計画作成、事業者間の連絡調整、地域活動への参加支援、必要時の施設入所紹介を行う。

  • 利用者負担の導入

    1~3割の自己負担がある。

  • 地域差への対応

    指定事業所がない場合に備え、基準該当、特定地域、離島等での特例給付を行う。

  • 介護保険事業計画との関係

    市町村介護保険事業計画では、届出有料老人ホームと並んで、登録有料老人ホームの入居定員総数を勘案事項に加える。

これまで在宅サービス扱いだった住宅型有料老人ホームについて、届出制とは別に登録制を設け、同時にケアマネジメント料の有料化を実施する。厚労省は、財務省からのケアマネジメント有料化の要請を、ここで食い止めたい考えだ。

介護テク市場、2030年に1,370億円規模へ
介護業務支援・見守り・入浴支援が市場牽引

介護現場の人材不足を背景に、介護テクノロジー市場の拡大が見込まれている。このほどまとめられた老人保健健康増進事業報告書「介護テクノロジーに係る市場動向調査報告書」(PwCコンサルティング)では、2024年度の介護テクノロジー市場は売上高ベースで796億円と推計。2030年には年平均成長率9.48%で拡大し、1,370億円に達する見通しを示した。
2024年度の介護テクノロジー市場を分野別に見ると、最も大きいのは介護業務支援で422億円。次いで見守り(施設)が176億円、入浴支援が154億円となった。いずれも導入施設数が多く、補助金活用も比較的進んでいることなどから100億円を超えており、市場全体を牽引する。
一方で、移乗支援や移動支援、排泄支援などは、現時点では数億円規模にとどまる分野が多い。
介護テクノロジー市場の拡大を後押しするのが、政策面からの支援だ。政府は2029 年までに、介護分野でICT・介護ロボット等の導入事業者割合を90%にするKPI(重要業績指標)を掲げている。
生成AIについても、利用者の日々の様子や健康情報からケアプランのたたき台を作成したり、認知症の人との自然な会話を通じて孤独感の軽減につなげたりする活用が想定されている。

今後の介護テクノロジーの普及に向けては、機器を導入するだけでなく、現場に入り込み、課題整理から運用定着まで支援する伴走型のサポートが欠かせない。報告書でも、パッケージ導入や伴走支援、制度面の後押し、在宅での利用促進、情報発信の強化などを普及推進の鍵に挙げている。

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