介護耳より情報2025年2月号(Vol.185)

編集協力:シルバー産業新聞社

財務状況報告義務
「情報公表」と「DBシステム」の
両方での報告必須

24年4月の介護保険制度改定で毎年、原則として全介護サービス事業所に財務状況報告が義務化された。従来の介護サービス情報の公表制度と、今年1月6日に開設された「介護サービス事業者経営情報データベースシステム(DBシステム)」の2つへの報告が求められ、報告する内容や期限も異なる。財務状況を公表する規定は、社会福祉法人や障害福祉サービス事業所、医療法人で先行して設けられている。
【情報公表制度】
財務三表アップロード・公表

情報公表制度では、これまでの報告内容に加えて財務状況の項目(財務三表)が入り、例年同様に都道府県から介護保険事業所に同システムへ情報公表が求められる。財務三表のうち、貸借対照表と損益計算書の開示は公表義務があるが、キャッシュフロー計算書は会計基準上作成が求められていない場合は必ずしも報告する義務はないとされる。
【DBシステム】
前期会計に基づき介護事業の収益・費用などを報告

DBシステムは、25年1月の開設時から各事業者はシステム上で報告することになる。こちらも報告単位は、原則として事業所・施設ごとだが、会計区分をしていないなど、やむを得ない場合はサービス・拠点別や法人単位での報告も認められている。DBシステムで報告する財務情報は、損益計算書に基づく介護事業の収益と費用のほか、給与費や水道光熱費、職種ごとの人数(会計期首時点)を必ず記載する。収益や費用の内訳、職種ごとの給与などの報告は任意事項とされるが、厚労省ではできる限り報告を求めている。
DBシステムは、介護事業者の経営情報を収集するデータベースで、国はグルーピングされた分析結果を公表する。3年に1度の介護事業経営実態調査を補完する役割があり、経営情報の報告を踏まえて、昨今の物価高騰や災害・新興感染症による影響に対処する支援を行うとしている。なお、DBシステムの利用には、GビズID(行政サービス利用システム)のアカウントの取得が必要になる。

公的価格である医療、介護、障がい福祉、教育・保育の報酬は、その提供に要する費用の額を勘案して決定するしくみ。2012年からは、介護職員の処遇改善加算の創設や拡充が行われてきた。今後、人材不足の一段の加速が見込まれる中で、制度の維持に向けて個別の事業所の経営状況の把握が求められるようになった。

健康保険証の新規発行廃止
当面、現行の
保険証/マイナ保険証/資格確認書で

昨年12月2日から健康保険証の新規発行が廃止され、今後は医療機関の受診には、健康保険の利用登録をしたマイナンバーカードである「マイナ保険証」を基本にする。ただし、現行の健康保険証も今年12月1日まで有効期間内は利用できる。マイナ保険証を持たない人向けには、保険証と同等に使える「資格確認書」(有効期間最大5年)が加入している医療保険者から郵送される。

マイナンバーカードは本人の管理を基本にしているが、自身での管理が困難な場合は、入所契約や預かり証などに基づき、施設側で入所者のカードを管理してもよいとされる。総務省「福祉施設・支援団体の方向けマイナンバーカード取得・管理マニュアル」がある。

実務経験5年の受験要件緩和へ
ケアマネ諸課題検討会中間整理

厚労省は12月12日、「ケアマネジメント諸課題検討会」中間整理を発表した。中間整理の主な内容は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーの業務範囲について、業務を①法定業務(利用者からの相談対応、連絡調整、ケアプラン作成など)②保険外サービスとして対応しうる業務(書類作成、代筆、救急搬送時の同乗など)③他機関につなぐべき業務(部屋の片付け・ゴミ出し、預貯金の引き出しや振込、徘徊時の探索、死後事務など)④対応困難な業務(医療同意など)――の4分類とする。対応例として②③は「地域の関係者間での協議」とした上で、②については、「保険外サービスとしてケアマネジャーが対応、または他の地域資源につないで対応」とした。そのほか、ケアマネジャーの確保・定着に向けた方策として、ケアマネ試験対象となる国家資格の範囲の拡大、実務経験5年の受験要件の緩和を掲げた。法定研修については、経済的・時間的負担の軽減を図り、全国統一実施の検討やオンライン受講の推進を行うなどの方向性が示された。今後、制度改正や介護報酬改定に向けて、必要な検討を進めていくとしている。

【ケアマネジャーの業務の在り方】
  • 居宅介護支援事業所のケアマネが実施している業務は
    ①法定業務
    ②保険外サービスとして対応しうる業務
    ③他機関につなぐべき業務
    ④対応困難な業務――に分類。
    ①以外は市町村を主体として協議し、社会資源の創出をはかるなど地域の課題として対応を基本にする
【人材確保・定着に向けた方策】
  • ケアマネ試験の受験対象である国家資格の範囲の見直し
  • ケアマネ試験の受験要件である5年の実務経験年数の見直し
【法定研修の在り方】
  • 可能な限り経済的・時間的負担の軽減をはかる
  • 全国統一的な実施が望ましい内容を国で一元的に作成
  • オンライン受講の推進・更新までの5年間で分割受講を可能にするオンデマンド化等の環境整備

中間整理は、「高齢者が最期まで尊厳をもって自分らしい自立した日常生活を送ることができるようにするための要であるケアマネジャーが、専門性を発揮して、一人一人の高齢者に寄り添ったケアマネジメントに注力できる環境の整備が必要である」と結んでいる。

合格率32.1% 20年ぶり30%台
昨年のケアマネ試験

11月25日、都道府県は今年度の介護支援専門員実務研修受講試験の合格者数を発表した。合格率は、昨年の21.0%を上回る32.1%となり、20年ぶりに30%台に達した。全国で5万3702人が受験し、1万7228人が合格した。

都道府県は、国が示した今年度の合格ラインにもとづいて合格者を決める。今年の合格ラインは、介護支援分野(25問)18点と保健医療福祉サービス分野(35問)25点。両分野の合格が必要。

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