介護耳より情報2024年12月号(Vol.183)

編集協力:シルバー産業新聞社

ケアマネの業務範囲の類型案提示

厚生労働省は9月20日、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」で、ケアマネジャーの業務範囲を明確化するために、ケアマネジャーが抱えている業務についての類型案を示した。同省が示した類型案は、ケアマネジャーが①本来業務として対応している業務 ②保険外として対応している業務等 ③他機関につないでいる業務等 ④対応が難しい業務の4つ(表)。 ケアマネジャーの本来業務は、利用者からの相談対応、関係機関との連絡調整、ケアプラン作成を挙げ、緊急搬送時の同乗などは保険外の業務に位置づけた。他に、保険外の業務としては、郵便・宅配便等の発送・受取、書類作成・発送、代筆・代読を例示した。
他機関につないでいる業務については、主な事例と対応例として、預貯金の引き出しや振込などは市町村、地域包括支援センター、社協と連携して、地域福祉権利擁護事業や成年後見制度の利用へつなぐなどとしている。
委員からは、「関係機関への引き継ぎ自体も負担が発生し、経験も必要」、「社会資源の整備が不十分な段階で業務整理することの課題もある」などの指摘のほか、「ケアマネジャーが制度の枠にとどまらない連絡調整も含めた『トータルケアマネジメント』を行うための支援の仕組みを検討すべき」などの意見もあった。
同検討会は、今後、これまでの意見を踏まえた中間整理案を提示して議論を行う予定。

27年度の次期介護保険期間の開始までに結論を出すと、24年度の改定論議で明記されたケアマネジメントの利用者負担化。その検討を控える中で、ケアマネジャーの業務範囲の明確化は、重要なテーマ。来年度の介護保険部会では、介護保険法等の次期改正が検討され、25年12月には方針が決まる見込み。

介護職員の給与アップ率 2.52% 業界団体が調査

特養、老健や訪問介護など介護サービスの業界団体9団体が、24年度の介護職員の賃上げの動向について緊急調査の結果を公表した。正社員として働く介護職員の今年度の賃上げ額は、平均6,098円。賃上げ率は2.52%だった。
今年度は介護報酬のプラス改定もあり、前年度の平均賃上げ額4,600円を上回った。国は、24年改定(1.59%プラス改定)時に、今年度2.5%、25年度2.0%の平均賃上げ率を可能と、説明しており、今回の調査結果はこの水準の給与アップが実現したことになる。

国は、26年度は予算措置で給与アップを検討するとしており、諸物価高騰への対応や処遇改善を目指して、引き続き対処していく方針を示している。

介護福祉士国家試験のパート合格 科目3分割公表

厚労省は9月25日、「介護福祉士国家試験パート合格の導入の在り方」報告書を公表し、25年度試験から導入予定のパート合格の3分割案など具体的な実施方法を示した。
3分割案は、全13科目を「Aパート(6科目60問)」介護の基本、社会の理解、生活支援技術など、「Bパート( 5科目45問)」認知症、障害の理解、医療的ケアなど、「Cパート(2科目20問)」介護過程、総合問題。
初回は全パートを受験し、その総得点で合否判定を行う。不合格だった場合、パートごとの合否を判定し、合格パートは翌年の受験が免除される(再受験時に合格パートの受験も可)。パート合格の支援免除の有効期間は受験年の翌々年まで。

パート合格導入には、27年度以降、養成校卒業者も国家試験合格が必須となる背景がある。27年3月末までに養成校を卒業した者は、介護福祉士に不合格の時でも、5年間は介護福祉士となる者とされ、5年間継続して介護現場で働き続けた場合、介護福祉士となる資格を得ることができる。

高齢期のタンパク質の摂取 1日の推奨量は男60g/女50g

25年版日本人の食事摂取基準が発表された。科学的根拠に基づく栄養政策の基礎となるもので、5年ごとに改定されている。高齢期の食事と栄養での留意点として、やせや低栄養への対応とタンパク質摂取の重要性が指摘された。
高齢者(65~75歳)の推定エネルギー必要量は、身体活動レベルに応じて、男性で2,100~2,650k c a l / 日、女性で1,650~2,050kcal/日。タンパク質は1日の食事摂取平均必要量(推奨量)は、男性で50g(60g)、女性で40g(50g) とされる。推奨量は、必要量より10g多い。

タンパク質の摂取不足は、フレイル(様々な健康障害をもたらす虚弱状態)やサルコペニア(高齢期の骨格筋量の減少)発生のリスクとされる。介護保険24年改定では、リハビリ(機能訓練)とならんで、栄養と口腔ケアの一体的提供が求められている。

アルツハイマー病新薬「ドナネマブ」承認

厚労省は、9月24日、米イーライリリーが開発したアルツハイマー病新薬「ドナネマブ(商品名ケサンラ)」の製造販売を承認した。脳に蓄積して神経細胞を傷つけるタンパク質「アミロイドベータ」を除去して進行抑制をねらう新しいタイプの薬。日本のエーザイなどが開発し昨年実用化した「レカネマブ」に続き、2例目。11月にも保険適用される見通し。7月に承認された米国では1年分の費用は3.2万ドル(約460万円)。

東京都は10月10日、先に承認された認知症抗体薬「レカネマブ」の特設ホームページを開設。認知症の原因となる病気、アルツハイマー病による脳の変化、レカネマブの作用・副作用などを説明する。8月2日時点の自院で初回投与が可能な医療機関55機関を明記する。自己負担額は、保険適用(1~3割)と高額療養費制度によって軽減される。

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