介護耳より情報2024年11月号(Vol.182)

編集協力:シルバー産業新聞社

次年度 介護テクノロジー補助金対象
「機能訓練」「食事・栄養」「認知症ケア」追加

厚労省と経産省は、25年4月から、介護ロボットの新分野として、「機能訓練支援」「食事・栄養管理支援」「認知症生活支援・認知症ケア支援」の3分野を追加する。これまでの移乗介助、移動介助、排泄支援、見守り支援、入浴支援などと合わせて、補助金の対象となる機器・システムの範囲が全9分野16項目に拡大する。
機能訓練支援は、身体機能や生活機能の訓練で職員が実施するアセスメント、計画作成、訓練実施などを支援する機器・システム。歩行姿勢を撮影して動作解析するものや歩行訓練機器の使用時間、距離、速度計測等を自動計測するものなどが想定される。食事・栄養管理支援は、誤嚥を検知する機能や栄養管理を支援する機器・システムを想定。高齢者等の誤嚥発生や誤嚥リスクを検知し、速やかに介護職等に通報する支援を行い、食事摂取量・内容などのデータの蓄積できるもの等とする。認知症生活支援・認知症ケア支援は、認知機能が低下した高齢者等の自立した日常生活支援する機器・システムで、時間や場所、目的など認知機能の低下による日常生活のしづらさを解消し、自身で操作しやすい工夫や介助者に情報共有する機能をもつものを想定するとしている。
同時に、介護テクノロジー重点分野を、介護記録のペーパーレス化や通所サービスの送迎ルート作成・変更対応の自動作成、ケア必要時間の傾向からのシフト最適化などの「業務支援機器」などに代用される「ICT系」と、介護現場の職員の身体負担の軽減を図りながら、排泄や入浴のための離床・歩行による自立支援の機会を最大化するなどの「ロボット系」との2系統に整理。ICTとロボットの両面から介護の生産性向上推進をめざす。

国は、「介護テクノロジーを福祉用具貸与・販売の対象に追加する」方向性を示しており、新たな給付対象を探る「福祉用具・住宅改修評価検討会」の今後の動向が注目される。

「就職お祝い金」禁止 求人サイトにも

2021年4月から禁止されている有料職業紹介事業者が就労時に提供する「就職お祝い金」が、25年4月から、求人サイトなどの募集情報提供者にも禁止されることになった。職業紹介事業者は、求職者に対して、お祝い金その他、社会通念上相当に認められる程度を越えた金銭等の提供によって、求職の申込みの勧奨を行ってはならないとする規定があり、募集情報提供者にも適用を拡げる。都道府県労働局に、「お祝い金」目当てでの転職が後を絶たないとする相談事例が相次いで寄せられている。
国はこれまで職業紹介事業への指導監督など規制を強めるとともに、職種別手数料の公表やお祝い金の無支給や早期離職時の返戻金制度を行う職業紹介事業所を適正認定事業所として認定してきた。23年3月時点で、医療・介護・保育分野で49社が認定されている。
21年度の有料職業紹介所の手数料は、介護サービスは平均42.0万円、看護師は57.2万円、保育士は53.7万円。

紹介手数料や「お祝い金」は、還元すれば、診療報酬や介護報酬などが源泉であり適切な対応が不可欠。介護事業所にとっては、人員基準の維持に必要な人材の確保との間で厳しい選択が続く。適正認定を受けた職業紹介事業所や無償のハローワーク(公共職業安定所)の活用も有効とされる。

法人一括、サービス種別一括OK 経営情報の報告

24年改正で、請求額が年100万円を超える介護保険全事業所に義務づけされた、毎年度の経営情報の都道府県への報告について、8月20日、国は事業所向けのQ&Aを発出し、法人単位で報告する場合、都道府県単位ではなく、法人の全サービス事業所データを、一つの報告にまとめて差し支えないとした。また、法人内のサービス種別に分けての報告が必要かとの問いには、事業所・施設ごとに会計区分を行っている場合は、事業所・施設単位での報告でよいと回答した。3年に1度実施する介護事業経営実態調査を補完する。
初年度となる24年度は、25年3月末までに、対象事業所は国の報告システム(介護事業財務情報データベースシステム(仮称))を使って報告する。国は、収集・分析した個別の経営情報をグルーピングしデータベース化して公表する。
Q&Aでは、請求額年100万円以下の者と、災害その他都道府県知事に報告できないことについて正当な理由がある者については、報告の対象外とする。サービス付き高齢者向け住宅は、特定施設と見なされる場合は報告対象となる。居宅療養管理指導、介護予防支援は報告対象外とするが、訪問看護や通所・訪問リハビリなどの「みなし指定」となる保険医療機関等は、介護サービスの部分を報告する必要がある。医療分と分けて報告できない場合は、合算した内容の報告でも差し支えないとした。
報告事項は、介護施設・事業所における収益および費用、職員の職種別人数、職種別の給与(給料・賞与)とする(8月2日の介護保険最新情報1297参照)。

原則、全介護保険事業所に経営情報の報告・開示を義務づけたのは、介護人材不足や地域力の衰退、新規感染症の発生、物価上昇など、今後の介護保険サービス供給に行政が的確に対処するためとしている。これまでも社会福祉法人には財務諸表の報告が義務づけられている。

地域別最低賃金 全国平均1,055円に
51円アップ 10月から

今年の全国の地域別最低賃金は、加重平均で、平均1,055円になった。前年の1,004円から51円(4.83%)上昇した。
最高は、東京都の1,163円(50円増)、次いで神奈川県1,162円(50円増)、大阪府1,114円(50円増)、埼玉県1,078円(50円増)、愛知県1,077円(50円増)、千葉県1,076 円(50円増)。最低は秋田県951円(54円増)、次いで岩手、高知、熊本、宮崎、沖縄の各県が952円と続く。引き上げ額でもっと高かったのは、徳島県の980円(84円、8.57%増)だった。
今年10月から発効するが、具体的な発行日は、都道府県によって異なる。

地域別最低賃金は2002年度663円から今年度1, 055円まで、22年間で392円( 59. 1% )増になった。処遇改善加算は26年度にさらなる引上げが想定されているが、岸田文雄首相は最低賃金について、2030年代半ばまでに「1, 500円に引き上げる」と目標を表明。今後、介護職員の賃金は継続して上昇をめざす方向になっている。

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