介護耳より情報2024年5月号(Vol.176)

編集協力:シルバー産業新聞社

福祉用具貸与・販売の選択制始まる

24年介護保険改正で、4月から福祉用具貸与・販売の選択制が始まった。選択制の対象になる福祉用具は、スロープ(敷居等の小さい段差解消のための固定スロープに限る)、歩行器(固定式・交互式歩行器に限る。歩行車は含まない)、歩行補助つえ(多点杖などで、松葉杖は含まない)の3種目で、「対象福祉用具」という。福祉用具専門相談員は、対象福祉用具の提案では、貸与または販売のいずれかを利用者が選択できることや、メリットおよびデメリットなど、利用者の選択にあたって必要な情報を提供する。提案にあたり、医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士からのいずれかの意見を介護支援専門員等と連携するなどの方法により聴取するが、やむを得ない事情がある場合は、この限りではないとされる。

貸与か販売かの提案は利用期間の見通しがポイントになる。医療職やケアマネジャー、サービス事業所の担当者ら多職種の意見や、サービス担当者会議や退院・退所カンファレンスなどでの協議を踏まえての提案を求めている。

「財務諸表の提出義務」
毎会計年度終了3月以内

24年の介護保険法改正で、経営情報の報告義務とデータベース化が決まり、4月から実施される。経営情報の報告義務は、毎会計年度終了後3月以内に都道府県に報告しなければならない。初回に限り24年度内の提出でよい。
過去1年間のサービス対価が100万円以下の事業所と災害等の正当な理由のある事業所は除外される。報告項目は① 名称、所在地その他の基本情報②収益および費用の内容③職員の職種別人数その他人員に関する事項④その他必要事項とされる。職種別の給与(給料・賞与)およびその人数は、任意事項となる具体的な報告内容は今後示される。
都道府県知事への報告とともに、介護サービス情報公表制度において、介護事業者は財務諸表の公表を行わなければならない。対象となる財務諸表は、損益計算書(事業活動計算書)、資金収支計算書(キャッシュフロー計算書)、貸借対照表(バランスシート)。事業所・施設単位を原則とするが、区分けが困難な場合は、拠点単位や法人単位の公表も可能とする。1人当たりの賃金は、個人を特定されないように配慮して、任意での公表情報とされた。

財務諸表等の都道府県知事への報告義務は社会福祉法人と医療法人で実施されており、介護サービス事業者への拡大について、国は介護の現状についての国民に理解の促進や、介護サービス事業者への的確な支援、介護職の処遇の適正化、介護経営実態調査の補完など理由を掲げている。

訪問介護 受給者・費用額・1人費用額 
ともに拡大

介護給付費実態統計(2023年10月審査分)によると、訪問介護は順調に受給者、費用額、1人費用額ともに拡大している(表)。サービスの実日数も前年比で4.8%伸びる。受給者は109万人(前年同月比0.8%増)、費用額は955億円(同4.9%増)、1人費用額は8万7000円(同4.1%増)となった。重度者がより伸びている。請求事業所数は、3万5,252事業所で、前年より5事業所増えた。また、身体介護と生活援助、身体+生活は、単位数で72.2%対9.7%対13.3%となった。身体介護のウェイトが高まり、生活援助は減っている。

訪問介護は、通所介護とともに、要支援者・事業対象者に対する総合事業の訪問型サービスと本記事の介護給付がある。ヘルパー不足が深刻化するなかで、サービスの重点が中重度者へシフトしている。

ケアマネ事業所の指定介護予防支援
地域包括の関与は情報提供と助言

24年改正により、地域包括支援センターの業務負担の軽減を図るために、ケアマネ事業所が市町村から介護予防支援の指定を受けることができることになり、4月以降の介護予防支援は、従前の地域包括支援センターと同センターから受託したケアマネ事業所に加えて、新たに指定介護予防支援事業となったケアマネ事業所の3ルートができた。介護報酬も、地域包括支援センター(438円/月)と、新たに指定居宅介護支援事業所(472円/月)の2類型になった。
介護予防支援事業所の指定を受けたケアマネ事業所に対して、市町村から介護予防サービス計画の検証のため必要があるときは、実施状況や介護予防支援の経過記録・評価などを求めることができる。
地域包括支援センターとの関係では、地域包括支援センターの業務に介護予防サービス計画の検証を追加する一方、居宅介護支援事業者も介護予防支援の適切・有効な実施のため必要があるときは助言を求めることができるとした。

要支援者は要介護者の3倍の勢いで受給者が増えて、要支援者のケアプラン作成である介護予防支援業務が逼迫している。多重的な地域課題への対処を抱える地域包括支援センターの業務負担軽減は待ったなし。ケアマネ事業所の指定介護予防事業所に、地域包括支援センターの総合相談業務を委託する道も拓かれた。

新型コロナ公費負担 
通常診療と同じ

政府は、4月以降の新型コロナウイルス感染症の診療体制について、公費負担を全廃し、通常の診療と同様の所得などに応じた自己負担とすることを決めた。
ワクチン(標準的接種費用自己負担7,000円、低所得者無料)をはじめ、治療薬や入院費の補助などは3月で打ち切り、患者の保険料負担も1~3割の支払いが求められる。

24年介護報酬改定においても、たとえば「新興感染症等施設療養費」には、第5類になった新型コロナウイルスは、新興感染症に含まれていない。季節性インフルエンザと同様な扱いになっている。

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