24年改定
介護保険運営基準見直し案発出
厚労省は12月4日、運営基準等の改正があった場合、市町村等の条例改正の必要性があることから、介護報酬に先駆けて、介護保険サービスの運営基準等の見直し案を発出した。サービスごとの主要な見直し点はつぎの通り。
貸与・販売の選択制の導入で利用者への説明・提案義務づけ
「福祉用具貸与・特定福祉用具販売」
選択制の対象福祉用具の提供について、医師や専門職の意見、利用者の身体状況等を踏まえて、福祉用具専門相談員による利用者等への説明と提案を行うことを義務づける(選択制は、利用者が貸与か販売を選ぶ仕組みで、固定用スロープ、歩行器※ただし歩行車は除く、多点杖、単点杖が対象になる)。
選択制で利用後6カ月内にモニタリング 結果をケアマネジャーへ交付
「福祉用具貸与」
- ① 貸与計画に貸与後のモニタリングの実施時期を明記する。
- ② モニタリング結果の記録及びケアマネジャーへの交付を義務づける。
- ③ 選択制の対象福祉用具を貸与した後、利用開始後6カ月以内に少なくとも1回モニタリングを行い、貸与継続の必要性について検討することを義務づける。
選択制で販売後のサービス計画の目標達成状況を確認
「特定福祉用具販売」
- ① 選択制の対象福祉用具の販売後、サービス計画の目標の達成状況の確認を義務づける。
- ② 利用者等からの要請等に応じて選択制の対象福祉用具の販売後の使用状況の確認と指導、メンテナンスに努める。メンテナンス費用は利用者との契約により定める。
老健・介護医療院にみなし指定
「訪問リハビリテーション」「通所リハビリテーション」
- ① 院中に医療機関が作成したリハビリ計画書の入手と把握の義務化。
- ② 老健および介護医療院に訪問リハ、通所リハのみなし指定を行い、医師の配置基準を満たしたものとみなす。
虐待防止・BCP策定 経過措置3年
「居宅療養管理指導」
委員会の開催や研修の実施など高齢者虐待防止の取組と、感染防止や非常災害時の業務継続計画( B C P ) 策定等の取組について、経過措置期間をさらに3年間延長する(※居宅療養管理指導を除き、業務継続計画の作成に経過措置期間の延長はなく、一部のサービスでBCP未策定事業者への減算が行われる)。
施設サービス
入所者の急変時等の協力医療機関との連携
緊急時の対応 協力医療機関と定める
「特養、地域密着型特養」
緊急時の対応方法を配置医師および協力医療機関の協力を得て定め、1年に1回以上見直しを義務づける。
「施設系サービス共通(特養、地域密着型特養、老健、介護医療院)」
- ① ユニット型施設の管理者は、ユニットケア施設管理者研修の受講に努める
- ② 協力医療機関との連携体制の構築として
- (ア) 入所者の病状急変時の医師又は看護職員による相談体制や診療を行う体制を常時確保、入院を原則として受け入れる体制の確保。
- (イ) 1年に1 回以上入所者の病状急変時の対応を確認し自治体に届ける。
- (ウ) 協力医療機関等からの退院には速やかに再入所できるように努める。
- ③ 新興感染症時等の対応を、第二種協定指定医療機関間で取り決めるよう努める。
「居住系サービス共通(地域密着型特定施設、特定施設、認知症対応型共同生活介護)」
- ① 上記施設系サービス共通②を満たす(アの入院受け入れ体制の確保要件は除く)協力医療機関を定めるように努める。
- ② 新興感染症の発生時等の対応を第二種協定指定医療機関の間で取り決めるよう努める。
生産性向上委員会設置
「短期入所系・多機能系・居住系・施設系サービス共通」
介護現場の生産性向上に向けて利用者の安全、介護サービスの質の確保、職員の負担軽減のための方策を検討する委員会の設置を義務づける。(3年間の経過措置期間あり)
「全サービス共通」
- ① 「書面掲示」事業所の運営規程の重要事項について、書面掲示に加えて、原則として法人のホームページ又は介護サービス情報公表システム上に掲載する。
- ② 管理者が兼務できる事業所の範囲は同一敷地内の他事業所・施設等でなくても差し支えない旨を明確化する。
- ③ 身体的拘束等の適正化の推進として
- (ア) 短期入所系、多機能系サービスについて、委員会の設置、指針の整備、研修の実施を義務づける。( 1年間の経過措置期間あり)
- (イ) 訪問系、通所系、(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、居宅介護支援、介護予防支援について、利用者や他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならない。身体的拘束等を行う場合の記録を義務づける。
介護保険受給者652万人過去最多
22年度介護給付費
厚生労働省の2022年度介護給付費実態統計(22年5月~23年4月審査分)によると、1年間に一度でも介護保険サービスを利用した実受給者は652.4万人で、前年度に比べ14.2万人(2.2%)増加し過去最多になった。介護サービスが559.1万人( 12.3万人、2.2%増)、介護予防サービスが118.4万人(4.0万人、3.5%増)と、要支援者の伸びが大きい。サービス別に19年度に比べて、受給者の3年間の増加率を高い順に並べると、介護医療院(18年4月創設、22年度実利用者6.8万人)115.4% 増、看護小規模多機能型居宅介護(3.2万人) 53.1% 増、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(5.7万人)35.8%増、居宅療養管理指導(141.9万人)26.0%増、訪問看護(93.5万人)25.3%増、訪問入浴介護(14.4万人)19.3%増、訪問リハビリテーション(18.1% )15.1%増、福祉用具貸与(282.2万人)13.3%増、特定施設入居者生活介護(31.7万人)9.4% 増が受給者を伸ばしている。居宅介護支援(介護予防支援含む)の実利用者は389.5万人、7.0%増。