介護耳より情報2024年1月号(Vol.172)

編集協力:シルバー産業新聞社

24年改定案 訪問介護+通所介護の新複合型サービス
ケアマネ外付けに

厚労省は11月6日の社会保障審議会介護給付費分科会において看護小規模多機能型居宅介護に次いで創設をめざす訪問介護と通所介護を組み合わせた新複合型サービスについて、基準や報酬のイメージ案が示された。
新サービスは、市町村が指定権者となる地域密着型サービスに位置づけ、介護職員が訪問・通所の双方を担えるようにして効率的なサービス提供をめざす。
国が示した基準等の案は次の通り。

役割・機能 
一体的なサービス提供により利用者の状態を随時把握・共有しながら、ニーズへの即応や生活機能の維持・向上などを図る。利用登録定員は29人以下とし、うち通所介護の利用者は19人以上とする。

報酬 
介護度別の包括報酬とする。加算は訪問介護と通所介護のものを基本とする。

運営基準
ケアマネジメントは、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担う。6カ月に1回以上の運営推進会議の設置を義務づける。

人員基準 訪問介護のサービス提供責任者、通所介護の生活相談員や看護職員、機能訓練指導員などの人員基準は両サービスと同様に設定する。介護職員の配置もそれぞれの基準に準ずるが、兼務を認めて、「柔軟な働き方をしやすいよう、事業所全体で必要な人員を確保することで基準を満たす」とした。

施設基準
食堂・機能訓練室・相談室、事務室などの設備は各サービスに定められたものを共有して使う。

新複合型サービス創設の目的は不足する訪問介護員の確保とされてきた。現状では通所介護や施設の介護職員に資格要件はないが、訪問介護員には全130時間の介護職員初任者研修の修了が義務づけられている。コロナ禍での特例としてデイサービス職員による訪問によるサービスを認めた。11月6日の審議会では慎重意見が相次ぎ、訪問スタッフの人員基準は示されていない。

「固定用スロープ」「歩行器」「つえ」
一部の福祉用具に選択制導入へ

厚労省は10月30日、介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会において一部の貸与種目・種類について利用者が貸与か販売を選ぶ選択制を導入する方針を取りまとめた。
選択制の対象となるのは「固定用スロープ」「歩行器(歩行車は含まない)」「単点杖(松葉杖は含まない)」「多点杖」の4種類。11月16日の介護給付費分科会で大筋で了解がされ、今後実施に向いた検討が省内でされる。
貸与か販売かは利用者が選択するが、サービス担当者会議等において、取得可能な医学的所見などに基づき、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が利用者に対して貸与か販売を提案する。「貸与」が選択された場合、福祉用具専門相談員は利用開始後少なくとも「6カ月以内に1度」モニタリングを実施し貸与継続の必要性について検討する。「販売」が選択された場合は、福祉用具専門相談員は福祉用具サービス計画における目標の達成状況の確認などを行う。

福祉用具の貸与と販売について、自立支援の観点から選択制の導入によって利用者の意向を反映する仕組みにする。心身の状態が変化して用具が合わなくなった場合、販売を選択している時には自費による再購入の必要性が生まれるなど課題が指摘されている。

24年改定案 ケアマネ訪問 最低2カ月に1回へ
テレビ電話など活用で提起

11月6日の社会保障審議会介護給付費分科会において、ケアマネジャーの訪問によるモニタリングは、月1回(介護予防支援は3カ月に1回)を原則としつつ、一定の要件を設けた上で、テレビ電話などを活用したモニタリングを認め、最低2カ月に1回実施する案が提起された。
今回示された要件案は次の通り。
①利用者の同意を得ること②サービス担当者会議などで主治医、サービス事業者などから「利用者の状態が安定していること(主治医の所見等も踏まえ、繁雑なプラン変更が想定されない等)」「利用者がテレビ電話装置等を介して意思表示できること(家族のサポートがある場合を含む)」「テレビ電話等によるモニタリングでは収集できない情報は他のサービス事業者との連携により情報を収集すること(情報連携シート等の活用)」について合意が得られていること③最低2カ月に1回(介護予防支援は6カ月に1回)は利用者の居宅を訪問すること――の3点を掲げた。オンラインでのモニタリングによる情報収集や他事業所との連携によりケアマネジャーの訪問による負担を軽減するねらい。

ケアプラン1人44件まで 予防支援件数は3分の1でカウント
居宅介護支援のケアマネジャー1人あたり取扱件数を「39件」から「44件」に引き上げる案を示した。介護報酬が引き下がる逓減制の適用を45件以上に緩和する。さらに事務職員の配置と今年4月から稼働するケアプランデータ連携システムの活用を行った場合は、逓減制適用を50件以上に緩和する。また現行では「2分の1」でカウントしている要支援者の介護予防支援件数を「3分の1」へ緩和する案も提示された。21年改定においてICT活用や事務職配置を要件に逓減制適用を44件に引き上げたが、業務時間や利用者とのコミュニケーションの頻度は「変化なし」が最も多かったなどとする調査結果が示されている。

同一建物減算の導入を提案
訪問介護などに設けられている「同一建物減算」を居宅介護支援にも導入する案が提起された。「居宅介護支援においても、利用者が居宅介護事業所と併設・隣接しているサービス付き高齢者向け住宅等に入居している場合や、複数の利用者が同一の建物に入居している場合には、ケアマネジャーの業務実態を踏まえた評価を検討してはどうか」とした。

「同一事業者割合」などの利用者への説明は努力義務に 情報公表での開示義務は継続
前6カ月間のケアプランにおける訪問介護、通所介護(地域密着型含む)、福祉用具貸与の同一事業者割合の利用者への説明義務を努力義務に改める提案がなされた。前21年改定で公正中立の確保の取組として義務化されたが、「利用割合が高い事業所の利用を助長するケースがある」との声が上がっていた。
ただし「介護サービス情報の公表での情報開示は引き続き義務としてはどうか」とした。

予防プランの居宅介護支援事業所への事業者指定で報酬引上げ
24年4月から市町村が直接、居宅介護支援事業所に介護予防支援の事業指定を行えることになったが、「居宅介護支援事業者が指定を受けて行う場合は、市町村長に対し、介護予防サービス計画の実施状況等に関して情報提供することを運営基準上義務づけるとともに、これに伴う手間・コストを基本報酬上評価してはどうか」として、事業指定を受けた居宅介護支援事業所が行う介護予防支援の報酬引上げの方向を示した。

24年改定では介護人材不足の中で介護保険の人員基準などの規制緩和が進む。介護保険のキーパーソンであるケアマネジャーの不足も顕著で、テレビ電話などの活用により利用者宅への訪問は2カ月1回以上とする案や、ケアマネ1人の取扱件数を39件から44件に引き上げる案が示された。

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