外国人労働者 技能実習制度廃止へ 転籍制限の緩和検討
外国人労働者へ技術移転をめざすシステムの位置づけだった技能実習制度(1993年創設)が廃止され、人材の確保・育成を目的とした新たな制度に転換される。転籍禁止の原則を見直して、一定の範囲内での転籍を認める方向で検討される。5月11日、国の有識者会議で中間報告を取りまとめた。
技能実習生は22年6月時点で32万7689人(うち介護は1万5011人)。受入れの多い国は、①ベトナム55.5%②インドネシア12.0%③中国11.0%。19年に41万人に増えたが、コロナ禍もあり21年に27.6万人まで減少、22年になって戻してきた。
一方、介護分野など人手不足が深刻な特定産業が対象となる特定技能制度(2019年創設)は存続される。在留期間が通算5年の1号と、在留期間に更新回数の上限がない2号がある。1号は相当の知識・経験が必要、2号はより熟練した技能が求められる。1・2号とも、同じ分野であれば転籍ができる。
60歳以上の労働災害発生率
30代と比べて男性で約2倍、女性で約4倍
厚労省労働基準局は22年度高年齢労働者の労働災害発生状況を発表した。年齢別の労災発生状況は、30~34歳が最も低く(死傷年千分率、男1.94、女0.88)、年齢が上がるごとに増えて、70~74歳(同、男4.23、女4.58)まで死傷率は上昇する。60歳以上でみると、男(同3.90)、女(同4.04)。年齢別の休業見込み期間の長さについても、高年齢ほど長期間になっている。
「転倒」は高年齢ほど労働災害発生率が上昇。特に女性の転倒が多く、最も高い70代前半は、20代後半の転倒に比べて18倍に増える。腰痛などの要因となる「動作の反動・無理な動作」も、全年齢層で発生率が高いが、高年齢はより発生率が高い。
こうした状況を受けて、60歳以上の高年齢労働者に特有の労働災害被災リスクを低減するための設備の改善などに最大100万円の補助を行うエイジフレンドリー補助金制度が今年もスタートした。
障がい福祉サービス 9年間で総費用は2倍増に
厚労省の調べによると、障がい者総数は1160.2万人で、人口の約9.2%にあたる。身体障がい者436.0万人、知的障がい者109.4万人、精神障がい者614.8万人の内訳。年齢別では65歳未満が51%、65歳以上49%。在宅で1111.0万人(95.8%)、施設入所49.3万人。
障がい福祉サービス等の総費用額は2012年度の1兆5492億円から2021年度の3兆1792億円に倍増している。1人あたりの費用額(月額)は、障がい者22.2万円、障がい児12.1万円。
2020年12月時点で障がい福祉サービスを利用するのは147.0万人。障がい者が98.8万人、障がい児が48.2万人。前年同月比で合わせて5.4%増加している。
サービス種別の総費用割合でみると、生活介護25.6%、就労継続支援A・B計18.5%、放課後等デイサービス12.9%、共同生活援助8.8%、居宅介護7.1%、施設入所支援6.5%、児童発達支援5.7%、重度訪問介護3.6%など。放課後等デイサービス、児童発達支援が伸び、生活援助、施設入所が減っている。
24年介護報酬改定 来年1月提示へ本格審議スタート
処遇改善の拡充求める意見
2024年度介護報酬改定の審議が5月24日、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会(田辺国昭分科会長=国立社会保障・人口問題研究所長)でスタートした。12月に基本的な考え方の整理・とりまとめを行い、来年1月に介護報酬改定案を諮問・答申し、4月1日からの実施になる。
通例、同分科会では、訪問介護や通所介護といったサービスごとの審議のほかに、分野横断の柱となるテーマを設定して検討を行う。
今回示されたテーマは①地域包括ケアシステムの深化・推進②自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進③介護人材の確保と介護現場の生産性向上④制度の安定性・持続可能性の確保の4項目。21年改正でテーマのひとつだった「感染症や災害への対応力強化」は、新型コロナウイルス感染症への対応の経験などを踏まえて今回外している。
6月~夏頃、主な論点について議論。9月頃、事業者団体からのヒアリング、10~12月頃、具体的な方向性について議論、12月中、報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・取りまとめ。24年度政府予算編成を経て、1月に介護報酬改定案の諮問・答申が行われる予定。
各委員からは処遇改善の拡充を求める意見が相次いだ。「介護現場で働く全ての職員の処遇改善が不可欠」(老施協)、「若い世代をもっと増やすために安心して働き続けられるような処遇が極めて重要」(民間介護事業推進員会)など。