介護耳より情報2023年2月号(Vol.161)

編集協力:シルバー産業新聞社

24年改正論議 複数の在宅サービス組み合わせた
新たな複合型サービス創設 提案

厚労省は11月14日の介護保険部会で、訪問と通所を組み合わせた「新たな複合型サービス」創設を 提案した。通所事業所から訪問介護を提供するなどのイメージで、ヘルパー不足を背景に、既存資源の有効活用と在宅利用者の多様な介護ニーズへ対応するねらいがある。
複合型サービスは、現行では「看護小規模多機能型居宅介護」(訪問看護+小規模多機能型居宅介 護)のみであり、市区町村が指定権者となる地域密着型サービスに位置付けられている。新たな複合型サービスの提供方法については、▽通所介護の一部のスタッフが訪問介護に従事する▽訪問介護 と通所介護が連携していずれか一方が新類型の指定を受け報酬算定する――など現時点では既存サービスの実態を踏まえて、様々な可能性が考えられるとしている。

定期巡回と夜間対応型の統合を提起
同時に、厚労省は定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護など、機能が類似・重複 しているサービスについて、将来的な統合・整理に向けて検討する必要があるとした。今年7月審査分の受給者数は、定期巡回は3.6万人( 前年比8 . 7 %増)、請求事業所数1186事業所。夜間対応型は7千人( 同▲ 1 . 3 % )、同174事業所の現状。両サービスの利用者像やケア内容は共通する点が多い。

訪問介護は、初任者研修の修了やサービス提供責任者の配置などの要件があり、一方、通所介護は資格要件が必ずしもなく、誰もがサービスの担い手になれるため、今回の新しい複合型サービスは、通所介護事業所の管理のもとで在宅への訪問を行うねらいがある。

福祉用具貸与・販売種目のあり方「引き続き検討」へ

厚労省の介護保険部会は12月5日、「介護保険制度の見直しに関する意見」(案)を公表した。その中で、福祉用具に関して、「22年2月より外部有識者が参画する『介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会』において、6回にわたり幅広く検討を行い、同年9月14日に議論の整理をとりまとめた。こうした議論の整理を踏まえ、福祉用具貸与・販売種目のあり方や福祉用具の安全な利用の促進等について、引き続き、検討を進めることが適当である」との方針を示し、このまま了承されると、24年度には貸与と販売の選択制など法改正を伴う改正は行わない方向になる。

9月14日に示された「同あり方検討会」では、「比較的廉価で、ある程度中長期の利用が実態上見受けられる用具(例:歩行補助つえ、スロープ等)について、貸与又は購入の選択を可能にする」など、選択制の対象用具の例示が行われていた。一方、同会で提起された「介護保険における福祉用具選定の判断基準の見直し」については、2004年度の判断基準策定以降に給付対象に追加された福祉用具があることなどを理由に、きめ細かな調査や研究事業を行っていくと方針が示されている。

介護予防支援の委託先 
直接、居宅介護支援事業所にも拡大検討

厚労省は11月24日、社会保障審議会介護保険部会を開き、介護予防支援(要支援者のケアマネジメント)の委託先を、現行の地域包括支援センターだけではなく、これまで地域包括からの再委託先であった居宅介護支援事業所へ直接委託する考えを示した。
その場合、地域包括支援センターが介護予防支援の実施状況を把握するなどの関与が必要としたほか、配置要件である「主任介護支援専門員その他これに準ずる者」の「準ずる者」について、現行の「ケアマネジメントリーダー研修の修了者であって、介護支援専門員としての実務経験を有し、かつ、介護支援専門員の相談対応や地域の介護支援専門員への支援などに関する地域や能力を有する者」の範囲を拡大する考えも示された。

現行では、介護予防支援は市町村の専属サービスとされ、市町村は地域包括支援センターに介護予防支援業務を委託している。居宅介護支援事業所が介護予防支援業務を行う場合は、地域包括支援センターから再委託されて実施する関係にある。
そのため、介護予防支援費438単位全額が入らず、居宅介護支援事業所が再委託を拒否する要因のひとつになっている。全国自治体から政府に対して、介護予防支援の介護報酬の見直しや負担軽減の取組みが求められてきた。

介護福祉士をめざす学生に 毎月5万円 5年勤務で返済免除

閣議決定した今年度の第2次補正予算で、厚労省は介護福祉士の養成学校に通う人らへの学費を補助する「介護福祉士修学資金貸付制度」の財源として、新たに12億円を計上した。資格の取得と5年間の勤務により、返済をすべて免除する。介護福祉士就学資金貸付制度はこれまでも実施されており、養成施設に在学する期間、▽入学準備金として20万円▽学費として毎月5万円▽国家試験対策費として4万円▽就職準備金として20万円(いずれも上限額)。介護現場に就職しなかったり他産業に移ると返済しなければならない。

同様な貸付制度は、介護福祉士のほか、福祉系高校、介護福祉士実務者研修、社会福祉士についてもあり、主に都道府県社協が窓口になっている。

高齢者施設 新型コロナクラスター急増 介護サービス抑制に

厚労省が11月28日に発表した高齢者施設の新型コロナウイルス感染者の集団発生(クラスター、1事業所で2人以上の陽性者)件数は、直近4週間で2167件となり、前4週間の865件の2.5倍になった。医療機関でも直近4週間で670件(前4週301件の2.2倍)、障がい者施設は169件(同1.6倍)、児童施設は115件(同1.8倍)に増加した。介護サービスが抑制される可能性がある。

コロナ第7波がピークだった22年8月審査分では、1人あたりの費用額が、全サービス平均で、介護給付は19万8600円(前年同月比▲1.1%)、予防給付2万7400円(同▲2.3%)と減少した。中でも、通所介護は9万1900円(同▲5.3%)、地域密着型通所介護8万2100円(同▲5.3%)と、前年同月より減少した。

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