介護人材不足感66%に上昇
離職率は横ばい14.4%
介護労働安定センターは8 月21 日、「2022 年度介護労働実態調査」の結果を公表した。
介護人材不足感66.3%に上昇
介護人材不足感は、前年に続いて上昇し、事業者全体での不足感(「大いに不足」+「不足」+「やや不足」)は全体で66.3%(前年63.0%)だった。
職種別の不足感でみると、訪問介護員が83.5%(同80.6%)で最も高く、介護職員が69.3%(同64.4%)、看護職員が47.2%(同44.7%)、ケアマネジャーが37.7%(同32.9%)、サービス提供責任者37.2%(同33.6%)など全職種で上昇した。
離職率ほぼ横ばい14.4%
一方で、訪問介護員と介護職員を合わせた離職率は、14.4%(同14.3%)で、ほぼ横ばい。採用率は16.2%(同15.2%)で、その差は1.8 ポイント(同0.9 ポイント)と広がった。22 年の全産業の平均離職率15.0%(厚労省雇用動向調査)を下回るとともに、採用率は16.0%で離職率を上回り、介護分野の人材が増大していることが分かる。
65 歳以上の職員が69%の事業所に
65 歳以上の労働者(有期職員、無期職員)がいる事業所は69.1%(同68.0%)。65 歳以上労働者の占める割合は、訪問介護員が26.3%で最も高く、次いで看護職員が14.2%、ケアマネジャーが12.3%、介護職員が11.0%、サービス提供責任者が10.8%だった。
外国籍労働者の受入れ
外国籍労働者を受け入れている事業所は、「技能実習生」が 4.4%で最も高く、次いで「在留資格(特定技能1 号)」が 3.5%、「在留資格(介護)」が 2.6%だった。
また「留学生」は 1.5%、「EPA(経済連携協定)による受け入れ」が0.7%となった。一方で、「いずれも受け入れていない」という事業所は 83.9%で、前年度の87.9%より減少し、外国人介護人材の受け入れが進んでいる。
社会保障給付費最高138兆円
コロナ対策費用が増加
国立社会保障・人口問題研究所は2021年度の社会保障費用統計を公表した。年金や医療、介護などに支払われた社会保障給付費が過去最高の 138兆7,433億円(前年度比4.9%=6兆5,283億円増)と発表。
高齢化の進展に加え、コロナ感染拡大に伴う対策費用の増大などが影響。内訳は、「年金」が55兆8,151億円(0.3%=1,815億円増)、「医療」が47兆4,205億円(11.0%=4兆7,012億円増)、「福祉その他」が35兆5,076億円(4.9%=1兆6,455億円増)、「介護」は11兆2,117億円(1.8%減減少)。
国民1人当たりの給付費は、110万5,500円(同5.5%=5万7,400円増)で過去最高。
訪問+通所の新しい複合型検討
事業者の期待「十分な報酬と基準緩和」
厚生労働省は8月30日、社会保障審議会介護給付費分科会を開催し、「新しい複合型サービス」のテーマについて初めての検討を行った。「新しい複合型サービス」は、訪問や通所系サービスの組み合わせを念頭に置く、複合型サービスの新類型。複合型サービスは介護保険法上、市町村が事業指定する地域密着型サービスに位置づけられている。事業者団体からは参入しやすい基準や十分な報酬設定が要望された。
半数の事業者が両サービス提供
訪問介護利用者のうち、通所介護(地域密着型含む)を併用するのは46.7%と、半数近い。また事業所ベースでも、半数以上が両サービスを提供している。
併用するメリットについて「利用者と接する時間が長い通所介護で利用者の性格やニーズを把握し、訪問介護側にフィードバックできる」「独居の利用者に朝の服薬や、訪問介護と連携して吸入薬の回数の確認をしている。訪問介護で通所介護に行くための準備をすることもあり効果的」などの声が挙げられた。そのために、十分な報酬設定、参入しやすい基準などを求める意見が相次いだ。
「ケアマネの位置づけ、報酬のあり方、柔軟に運営できる人員基準などについて、サービスが有効に活用される制度設計が必要だ」(古谷忠之委員・全国老人福祉施設協議会参与)、「人材の有効活用などに繋げるには、一定数以上の事業者参入が前提となる。
収益が確保できる仕組みや報酬の設定、思い切った基準の緩和が欠かせない」(稲葉雅之委員・民間介護事業推進委員会代表委員)。
一方、訪問サービスを提供する際の、職員のスキルや適切な提供量の確保などについて、検討や対応が必要という声もあがった。
特養 医療対応力の強化、論点に
配置医不在時「救急搬送」3割
厚生労働省は8月7日、社会保障審議会介護給付費分科会を開催し、施設系サービスについて次期改定に向けた検討を行った。そのなかで、特養では医療提供体制の強化が俎上に上った。
特養は基準上、入所者の健康管理や療養上の指導を行う配置医師がいる。配置医師が施設にいない時間帯に生じた急変などの対応方法は、「配置医師によるオンコール対応」が最も多いが、「原則、救急搬送」も26.0〜30.3%ある。算定が1割に満たない特養の配置医師緊急時対応加算について、未算定の理由を尋ねたところ、「配置医師が必ずしも駆けつけ対応ができないため」が45.3%で最も多く、次いで「緊急の場合はすべて救急搬送で対応しているため」が32.1%と、医療体制の弱い特養内での対応の難しさがある。
全国老人福祉施設協議会参与の古谷忠之委員は「まず特養が行う『健康管理及び療養上の世話』の範囲の明確化が必要。その範囲を超える対応について、特養の配置医師と協力病院などの役割も整理し、協力医療機関との体制強化、オンライン診療との組み合わせなどを含め、特養の医療アクセスの向上を図っていくべき」と要望した。