24年改正論議 「介護事業者の財務状況見える化」
7月25日開催の社会保障審議会介護保険部会において、職員の処遇改善につなげるためにも、介護事業者の財務諸表の公表は必要であると指摘がされた。介護事業者の財務状況の把握は、社会福祉法人は社会福祉法上、法人や拠点単位で貸借対照表などを都道府県へ報告義務があり、さらに2017年度から厚労省「財務諸表等電子開示システム」での公表が行われている。
これに対して、介護保険法上は情報公表制度での対応と介護報酬改定時の「介護事業経営実態(概況)調査」が行なわれ、保険者や指定権者への財務状況の報告義務や電子開示システムの対象にはなっていなかった。
骨太の方針2022において、経営実態の透明化を図るため、医療法人・介護サービス事業者の経営状況に関する電子開示システムを整備するとともに、処遇改善を進めるために費用の見える化の促進策を講じるとされた。
老人ホームなどの入居権を譲ってという電話は詐欺
国民生活センター
国民生活センターは、「老人ホームなどの入居権を譲って」や「火災保険で自己負担なく住宅の修理ができる」などと勧誘するのは詐欺、と注意喚起している。介護施設運営会社を名乗る人から「市内に介護施設ができ、市内在住者のあなたには入居権がある」など不審な電話がかかってきたという相談が寄せられた。実在する企業名を名乗ったりして、話を聞いてしまうと様々な口実で金銭を要求されることがあるという。また、「保険金が使える」と勧誘する住宅修理サービスは、2020年度6,560件、2021年度5,093件発生している。国民生活センターでは、請求期限が迫っているなどの勧誘やインターネット広告を、うのみにせず、安易に契約などしないこと、不安に思った場合やトラブルになった場合は早めに消費生活センター等に相談しましょうと呼びかけている。チェックポイントとして、①まずはご自身で損害保険会社や代理店への連絡、②修理等の依頼時は契約内容をしっかり確認(キャンセル料など)を上げる。
次期改正 販売移行「引き続き検討」に 「選択制」提起も
福祉用具の種目あり方検討会で
厚労省の「第5回介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」は7月27日、「これまでの議論の整理(案)」を示し、21年改正論議で財務省の財政制度等審議会等における「介護保険の福祉用具貸与種目のうち歩行補助つえ、歩行器、手すり等を販売種目へ移行すべき」との指摘に対して、販売への移行は「引き続き検討」とした一方で、「選択制」への移行と「福祉用具の選定の判断基準」の見直しを提起した。
「選択制」の対象 当面歩行補助つえと固定用スロープ等を例示
「選択制」への移行については、利用者による貸与または販売(購入)の選択を可能にするもので、まずは、対象を「廉価で、ある程度中長期の利用が実態上見受けられる用具」として、歩行補助つえと固定用スロープ等を例示した。 ただし、選択制の導入になると、貸与原則の中で例外的に販売を認める現行制度を見直すことになり、利用実態調査や、市町村・被保険者のアンケート調査が必要との意見が添えられた。
選定の判断基準 見直し求める
「介護保険の福祉用具の選定の判断基準」(2004年6月17日厚労省老健局振興課長通知)は、たとえば、車いすについて「車いすは、歩けない人や長時間歩くことが困難になった人が利用する福祉用具であって、歩行がつかまらないでできる場合が多い『要支援』での使用は想定しにくい(※個別の利用者の生活状況や課題等によっては、使用が考えられる場合もある)」など、用具選定の判断基準を示したもので、本検討会では04年以降に追加された福祉用具があることや、商品の種類が豊富になったこと、軽度者の利用割合が増えたこと、多職種連携が促進したことなどを踏まえて、判断基準の見直しが必要だとした。
9月にも本検討会は中間整理案を取りまとめ、24年改正を目指して議論する社会保障審議会介護保険部会に提起される見込みで、同部会は12月にも「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」を取りまとめ、年明けには次期介護保険法改正案が国会に上程される。
「選択制」への移行の検討は、前回の「福祉用具の保険給付の在り方検討会」においては全国市長会の石川良一東京都稲城市長(当時)などから主張されていたが、今回の検討会では過去、第1回~第4回まで検討の俎上に上がらなかった。「選択制」になっても、利用者の転売問題は残る。
21年平均寿命
女性87.57歳(▲0.14歳)男性81.47歳(▲0.09歳)
コロナの影響
労省は21年簡易生命表を公表。平均寿命は、男女とも新型コロナの死者の影響で前年を下回った。女性は87.57歳で前年を0.14歳下回り、男性も81.47歳で前年を0.09歳下回った。
前年を下回ったのは男女とも東日本大震災のあった11年以来、平均寿命自体は過去2番目に高い水準。21年、新型コロナの死者数は1万6,771人に達し、前年の3,466人の4.5倍に増え、全体の寿命を縮める状況に働いた。
施設や医療機関は依然気を緩めることはできない状況にある。