介護耳より情報2021年11月号(Vol.146)

編集協力:シルバー産業新聞社

20年度医療費3.4%減 コロナの影響で受診控え
訪問看護は約2割増に

厚生労働省は8月31日、2020年度の概算医療費が前年より1.4兆円(3.2%)減の42兆1648億円だったと公表した。新型コロナウイルス感染拡大に伴う受診控えなどが影響した(グラフ)。受診延べ日数でみると、8.5%の減少になった。
全面的な診療種別の落込みの中で、診療報酬の訪問看護は、3600億円(19.8%)増になった。近年の訪問看護療養の伸びは大きく、毎年15~17%増で推移し、16~20年の4年間で2倍近く伸張している。
また、日本訪問看護協会などは7月30日、「新型コロナウイルス感染症訪問看護師による自宅療養者への対応マニュアル」第2版を作成。訪問看護師が在宅療養中の新型コロナ感染者に対して電話や訪問時のフォローアップを行う際の手順を示している。

コロナによる受診控えの一方で、在宅療養が増加した。訪問看護には、医療と介護があり、要介護認定を受けると、介護保険が適用され、原則診療報酬の訪問看護は受けられなくなる。近年の改正で、終末期などは医療保険の訪問看護が利用できるようになり診療報酬の訪問介護も伸びてきた。

居住系 平均居室稼働率
有料老人ホーム92.1%・サ高住90.4%
有老協20年調査

全国有料老人ホーム協会は、20年度の高齢者向け住宅の運営状況や入居者の状況調査を発表した。有料老人ホーム1983施設、サ高住1123施設が回答。平均の居室稼働率は、有老で92.1%(介護付き92.5%、住宅型92.0%)、サ高住90.4%だった。近年の居室稼働率はその±1%前後で推移する。
新規入居者の状況は、平均年齢は有料85.0歳、サ高住84.6歳。入居時の平均要介護度は、介護付き2.2、住宅型2.4、サ高住2.2。生活保護受給の入居者の割合は、介護付き2.5%、住宅型20.8%、サ高住9.7%。定員に対する新規入居者の割合は、介護付き11.2%、住宅型12.7%、サ高住11.1%。入退去の状況で多いのは、介護付きは病院・診療所から39.0%、自宅から36.7%。退去先は、死亡による契約解除59.8%、病院・診療所15.5%、住宅型、サ高住とも同傾向を示す。
また、紹介事業者との契約状況は、全体の41.5%が契約し、47.2%が契約していない。都会地の事業者ほど紹介事業者と契約をする傾向が強い。

有老の介護付きと住宅型の違いは、介護保険の特定施設入居者生活介護の指定を受けているかどうか。介護付きは、住宅型に比べて重症の人が多い訳ではない。介護保険の利用ができる分、利用者負担は比較的軽い。逆に、住宅型の利用者の生活保護受給者割合が高い傾向にある。

介護労働安定センター 介護職の離職率
過去最低の14.9% 介護労働実態20年調査

2020年度の介護職の離職率が過去最低の14.9%になった。介護労働安定センターが8月23日発表。07年の21.6%から介護職の離職率は低下傾向が続き、前年度から0.5ポイント低下した。全産業の平均離職率の15.6%(19年度雇用動向調査)を下回る状況になった。一方、介護職の不足感は、「不足」が60.8% で、ホームヘルパー80.1%で最も高く、次いで介護職員66.2%、ケアマネジャー32.0%、サービス提供責任者(訪問介護計画作成者)31.9%などと続き、不足感が高いのは変わらない。

背景には、介護職員処遇改善加算の創設などにより、介護職員の処遇が改善傾向にあること。訪問介護員は、施設やデイサービスなどの介護職員が無資格者も勤務が可能なのに対して、資格が必要であることから、高齢による退職者数を補うだけの新規のホームヘルパーが育っていない。

介護福祉士養成施設 入学者 3分の1 留学生

介護福祉士養成施設の入学者の3分の1が外国人留学生が占めている。20年度入学者は7024人で、このうち外国人留学生は20カ国から2395人、34.0%となった。17年度に日本での在留資格「介護」が創設されて以降、留学生が急増し、5年前の留学生94人の時から、養成校の入学者に占める留学生の割合は25倍に増えた。留学生が増えたことで、介護福祉士養成校の入学者定員充足率は51.7%となり、5年ぶりに5割を超えた。

介護福祉士養成校(多くは2年制)を卒業すると、介護福祉士の国家資格が付与される経過措置がある。この経過措置は、外国人介護職を確保するために、26年度の卒業生まで延長されている。これによって、難関の国家試験が不要になる。

神戸市 コロナ禍で運動機能低下・うつ傾向の割合増加
「社会参加」群は良好

神戸市は、新型コロナウイルス感染症拡大による、高齢者の外出機会減少による影響を調査するため、75歳以上の高齢者を対象にコロナ感染拡大前後に実施した運動器の機能等の比較検討を実施、フレイルが進んでいることが分かった。
「運動器の機能が低下した人の割合」は、感染拡大前の2019年度では23.9%だったのに対し、2020年度は2ポイント増え25.9%だった。
「気分がうつ傾向にある割合」では19年度30.8%から、20年度35.2%へ4.4ポイント増加した。

一方で、新型コロナ感染拡大前後も趣味やボランティア等に月1回以上参加するなど継続して社会参加した人の群はフレイルの割合が18.3%だったのに対し、参加していない人の群は32.8%とフレイルの割合が高かった。

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