介護保険で利用できるサービスについて

Q.

住宅改修費支給とは

要介護者が住み慣れた自宅で安心して暮らすには、手すりの設置や段差解消など、自宅の環境を整えることが必要です。ところで、介護保険を利用して、住宅改修費の7~9割を支給してくれるサービスをご存知ですか。全額負担は経済的にも重荷になるので、こうしたサービス利用も検討してはいかがでしょう。住宅改修費の支給の仕組みや、対象となる改修工事の種類、申請・手続きの流れについて紹介します。

住宅改修費支給とは

要介護・要支援認定を受けている人が、自宅に手すりを付ける等の住宅改修を行う場合、支給限度額を20万円として、住宅改修費の9割(所得によって異なる)の支給を受けることができます。利用者の目的に応じて改修内容は様々ですが、介護保険が適用されるものには、主に次のような種類があります。

【手すりの取付け工事】

玄関や玄関から道路までの通路、廊下、トイレなど移動する際の転倒防止用の手すりが対象となります。手すりの形は、二段式、縦付け、横付けなど、利用者が使いやすいものに限られ、手すりを使う際にも、衣類の袖が引っ掛かって転倒する恐れがないよう、より安全な設置が求められます。また、転倒防止用の手すりなら全てOKかというと、そうでもなく、住宅改修費の支給対象とならない手すりもあります。
<支給の対象とならない手すり・工事>
・手すりの老朽化による工事
・福祉用具貸与にあたる手すり
・紙巻器付き棚手すり
・スライドバー付シャワーフック など

【段差の解消工事】

玄関、浴室、トイレ、廊下等にある段差や、玄関から道路までの通路の段差を解消する工事。具体的にはスロープの設置や浴室の床のかさ上げ工事などがあります。段差の解消にも一部対象にならない工事があるため紹介します。
<支給の対象とならない工事>
・福祉用具貸与にあたる「浴室用すのこ」「浴槽用すのこ」
・福祉用具貸与にあたるスロープ、踏み台
・昇降機やリフト等の動力を使って段差解消する器具の設置工事

【引き戸等の扉の取替え工事】

開き戸を引き戸や、アコーディオンカーテン等への取替えや、取替えによる扉の撤去、ドアノブの変更の工事も対象となります。また、対象とならない工事には、以下のものがあります。
<支給の対象とならない工事>
・扉の老朽化に伴う工事
・自動ドアの設置工事 など

【滑り防止・スムーズな移動のための床材の変更】

浴室や屋外の通路における滑りにくい床材・舗装材の変更工事が対象となります。対象とならない工事は、以下のとおりです。
<支給の対象とならない工事>
・畳の老朽化によるフローリングの変更
・ベッドを設置する目的でのフローリングの変更

【洋式トイレへの取替え工事】

和式トイレから洋式トイレに取り替えるときの工事。対象にならない工事は、以下のとおり。
<支給の対象とならない工事>
・洋式トイレから洋式トイレへの変更
・福祉用具にあたる「腰かけ便座」
・暖房や洗浄などのオプション機能の取り付け
・トイレの水洗化工事 など

住宅改修費支給の対象となる人

支給の対象となるのは、介護保険を利用する人ですが、具体的には、要支援1・2、または要介護1~5と認定された人で、在宅で生活されている人が対象となります。現在、要介護認定を申請中の人は、申請中でも住宅改修の申込みをすれば、改修を行うことができます。ですが、改修費は認定後の支給になります。もし、認定されず「非該当」の場合は、支給されませんのでご注意ください。
また、病院や施設に入院(入所)中の方は、退院(退所)が決まっているなら、入院(入所)中に、改修の事前申込みをしておけば、改修を行うことができますが、要介護認定を申請中の人と同様、改修費の支給は、認定後になります。もし、退院(退所)できなくなった場合、改修費は支給されません。

住宅改修費の限度額

改修費が20万円までなら負担が可能で、その費用の7~9割(所得によって異なる)を負担します。残りの1~3割(所得によって異なる)は自己負担となります。
●対象工事費が25万円の場合

項目 費用
住宅改修費支給 18万円(20万円の9割)
自己負担額 7万円(20万円の1割)

●対象工事費が10万円の場合(残り10万円は次回の改修時に利用可能)

項目 費用
住宅改修費支給 9万円(10万円の9割)
自己負担額 1万円(10万円の1割)

住宅改修の申請・手続きの流れ

申請手続きの流れは以下のとおりになります。
(1)相談・検討(改修を行う前に担当のケアマネージャーに相談)
(2)介護保険課へ事前申請(改修着工前、以下の書類を介護保険課に提出)
・住宅改修費事前確認及び支給申請書
・住宅改修が必要な理由書(ケアマネージャーが作成)
・見積書(被保険者本人あてのもの、コピー可)
・改修箇所の工事前の写真(日付入りのもの)
・住宅の平面図
・住宅改修の承諾書(住宅の所有者が被保険者本人以外の場合必要)
・委任状(被保険者本人以外の口座へ振込を希望する場合必要)
(3)事前申請確認書兼完成届出書の交付
(4)住宅改修着工
(5)介護保険課へ事後申請(住宅改修が完了後、以下の書類を介護保険課に提出)
・事前申請確認書兼完成届出書
・領収書
・請求明細書
・改修箇所の工事後の写真(日付入りのもの)
(6)住宅改修費の支給(事後申請書類を提出した翌月末日に振込)

現在、介護保険を利用している人で、住宅改修を検討中の方は、今回紹介したサービスを利用してみてはいかがでしょうか。全額自己負担では、経済的にも重荷になりますので、まずは担当のケアマネージャーへ一度相談してみてください。

2020.07.16