よくあるご質問介助者が行う準備・心構えについて

混合介護ってなに?

介護業界では今、「混合介護」が注目を集めています。混合介護は、介護保険サービスと保険外のサービスを組み合わせて利用するのですが、なぜ高い関心を集めているのでしょう。混合介護の特徴や期待されるメリットやデメリットについても解説します。

混合介護とは

混合介護とは、介護費の一部を負担する介護保険サービスと、全額自分で負担する介護保険外のサービスを同時に利用することを言います。例えば、訪問ヘルパーに被介護者の食事作りをお願いできても、家族の分まで一緒に作るのは介護保険外のため、お願いすることができません。介護保険外のサービスには、他にも、洗濯、食材の買い物、庭の草むしりなどの家事があります。混合介護は、従来の介護保険サービスを利用しつつ、これら保険外の家事も一緒にお願いすることで、被介護者および家族の生活負担を軽減できるメリットがあります。

混合介護の規制緩和に向けた動き

現行の介護保険制度でも混合介護は認められていますが、保険内サービスと保険外サービスが同時に提供できない課題があります。例えば、保険内のサービスとして、訪問ヘルパーに身体介護を依頼したとします。引き続き、保険外サービスとして家のリビング掃除を依頼する場合、訪問ヘルパーはいったん事業所に戻り、手続きを取ってから再訪して保険外サービスを提供するか、または別のヘルパーが交代で訪問することになります。これでは、利用者だけでなく事業者にとっても非効率で便利な制度とは言えません。こうした課題を受けて、国では混合介護の規制緩和に動き出し、介護保険サービスと保険外サービスを同時に提供できて、かつ混合介護の価格を自由化し、多様なサービスの提供を可能にする、「混合介護の弾力化」を行う考えを示しました。

混合介護のモデル事業を東京都豊島区でスタート

混合介護の規制緩和の動きに合わせ、東京都の豊島区では混合介護のモデル事業を2018年4月からスタートさせ、以下の2つが可能になりました。
(1) 介護保険サービスと介護保険外のサービスが同時一体的に提供できる
(2) 介護保険サービスの付加価値をつけた部分に料金を上乗せ設定できる

また、介護保険内のサービスと保険外のサービスをより明確に分けて、利用者が選択しやすいようにしました。

【介護保険内のサービス】

介護保険を使ってできることには、以下のサービスがあります。なお、利用にあたっての負担は、介護費の1〜3割程度です。

●身体介護
食事や入浴、排泄など被介護者の身体に直接触れる介助サービス
・食事の介助
・服薬の介助
・着替えの介助
・身体の整容、洗面
・入浴の介助・清拭
・通院・外出の介助
・起床・就寝の介助 など

●生活援助
被介護者のための居室の清掃、衣類の洗濯、調理などの日常生活の援助
・食事の準備や調理
・掃除や整理整頓
・衣類の洗濯や補修
・日常生活に必要な買い物
・薬の受け取り など

【介護保険外のサービス】

介護保険で適用されないものには、以下のサービスがあり、利用のあたっては全額負担になります。

●介護保険外のサービス
・被介護者以外の者のための洗濯・調理・買い物
・主として被介護者が利用する居室以外の掃除
・家具・電気器具等の移動、修理、模様替え
・日用品以外の買い物(お酒類等)
・WEBカメラやセンサーによる見守り
・趣味等への同行
・ヘルパーと一緒に種類の確認、分別
・大掃除(窓のガラス拭き、床磨き)
・草むしり、花木の水やり
・一緒に食事
・電球、蛍光灯の交換
・ペットの世話

混合介護の利用例

上記で紹介した介護保険で利用できること、できないことを組み合わせた混合介護の利用例を紹介します。例えば、被介護者または家族から食事の調理から一緒に食事まで行ってほしい、自宅に届けられる郵便物の整理もお願いしたいというニーズがある場合、混合介護の利用例としては次のようになります。

混合介護が弾力化した場合のメリット

混合介護の弾力化(利用規制や条件の緩和)がされることで得られるメリットには、以下のようなものがあります。

●利用者の生活の質が上がる
介護保険外のサービスの中で、最もニーズが高いのが「外出支援」と「家事代行」と言われています。保険内では日常的に必要な買い物しか付き添えませんが、規制が緩和すれば、お酒など嗜好品の買い物や、被介護者が行きたい場所にも同行することができます。また、被介護者の居室以外の掃除や整理整頓も可能になり、生活の質がより向上します。

●利用者家族の負担が軽減できる
被介護者の分だけでなく、同居家族の分の食事も同時に作れるため、家族の負担も軽減できます。

●介護サービス事業者は収益を上げられる
介護保険外サービスを提供することで、事業所の収益向上にもつながり、介護職員の待遇の改善も期待できます。

混合介護が弾力化した場合のデメリット

●利用者の費用負担が増える
介護保険が適用されるものは1〜3割の費用負担となり、適用外のものは10割負担となります。保険外サービスを利用すると、その分だけ費用負担が増えてしまうというデメリットがあります。
また、利用者の中には判断能力が低下している方もいるので、保険サービスと保険外サービスを選択して依頼するのが難しいケースも想定されます。費用についてよく検討することなく、利用者の希望どおりに保険外サービスを利用した結果、支払が高額となる可能性もあります。

介護保険内のサービスのみならず、同居する家族の家事もサポートして欲しいニーズから生まれた混合介護。これまでの規制も緩和され、本格的な導入に向けて動き始めました。すでに東京豊島区でもモデル事業もスタートしているので、改めて利便性や課題点も浮き彫りになるでしょう。混合介護の今後の動きにも注視したいところです。

2020.07.16