よくあるご質問介助者が行う準備・心構えについて

在宅介護における防災対策にはどんなものがある

地震や台風といった自然災害の多い日本国内では、自治体や家庭ごとに様々な防災対策が行われています。在宅介護を受けている高齢者がいる家庭では、災害時でも正しいケアができるように、相応の防災対策が必要です。今回は、在宅介護における防災対策や必要な道具について詳しく紹介します。

【家庭で準備しておきたいもの】

<介護食>
災害時の食事は、保存性に優れる防災食が役立ちますが、噛む力や飲みこむ力が衰えがちな高齢者だと、防災食を食べるのに苦労することもあります。そこで、在宅介護を行っている家庭で防災対策を行う場合、高齢者でも食べられる介護食を準備しましょう。介護食の中にも、長期間保存できて調理の必要がなく食べられるものは販売されています。このほか、高齢者の誤嚥(ごえん)を防ぐ目的で、食べ物や飲料水を飲みやすくする「とろみ剤」を準備しておくと良いでしょう。介護施設の中には、災害時に備えて介護食を備蓄している施設もありますが、在宅介護においては家庭で準備することが不可欠です。
ただし、保存性に優れる介護食と言っても、永久に保存することはできません。在宅介護の防災対策に限った話ではありませんが、万が一の際に食べられないのでは意味がないため、介護食の賞味期限は定期的に確認しましょう。期限が切れそうな介護食は家庭で消費し、また新しい介護食を保存するようにしてください。
<医薬品と衛生用品>
常用している医薬品がある高齢者の場合は、災害時に備えて薬を確保しておくのが賢明です。ほかにも、高齢者用の紙おむつや血圧計など、介護に使用している衛生用品があれば、そちらも準備しておきましょう。また、服用している医薬品の情報を記した「お薬手帳」を持っておけば、万が一薬がなくなったとしても、避難先の医師や薬剤師に手帳を渡すことで、医薬品を確保できる可能性が高くなります。
先に挙げた、介護食や医薬品を「どのくらいの量を準備しておくか」に関しては、あまりにたくさんの量を準備しても「重くなって持ちだせない」という事態にもなりかねないため注意しましょう。できれば、ライフラインが復旧するまでの時間を見越して、3日から1週間分程度は確保しておくのが理想です。

【自宅の防災対策をしよう】

身体が不自由な高齢者は、災害時に身の安全を確保することが難しいため、危険を回避するには自宅の防災対策が必要となります。そのため在宅介護を行っている家庭は、自宅の防災対策にも注力しましょう。具体的な方法としては、緊急時に逃げ道となる場所を整理したり、地震による転倒を防止するために家具を金具で固定したりするなど、一般的な防災対策とあまり変わりありません。
電気式の医療機器や福祉用具を使用している高齢者の場合は、停電時に医療機器や福祉用具が使えなくなることを想定しておく必要があります。介護や医療で使用している機器の停止は命に関わるケースも多く、尚のこと注意が欠かせません。

【在宅介護における停電対策とは】

先に挙げた、介護で使用する医療機器や福祉用具には、停電用の内部バッテリーが備わっていることが多くなっています。内部バッテリーがあれば、電気の供給が止まっても機器を使い続けられますが、このバッテリーはあくまで非常用にすぎず、長時間使い続けることはできません。電力を賄う手段としては、外付けの予備バッテリーを使用する方法や、インバーターで自動車の電気を利用する方法などがありますが、緊急時においては「どちらの方法も難しい」というケースもしばしばです。
そこで、在宅介護で電気機器を使用している場合は、停電時に備えて「手動で動かす方法」を学んでおくことをおすすめします。電動ベッドや吸引機のように在宅介護で使用される機器には、手動で動かすための機能が備わっているケースが多く、電気の供給がなくても動かすことが可能です。家族や介護者が事前に動かし方を学んでおけば、災害時でも慌てずに対処が可能となります。

【日々のシミュレーションが大切】

最後に、在宅介護における防災対策は、日々のシミュレーションが大事であることを留意しておきましょう。災害を想定した訓練ができていないと、万が一の際に落ち着いて避難をすることができず、高齢者と家族の双方に危険が及ぶ可能性もあります。可能であれば、担当の医師やケアマネジャーの方に緊急時の対応方法や避難方法について確認しておくのが理想です。医療や介護の専門家の見地から、最適な方法を教えてもらえます。
日頃から災害発生時を想定した避難訓練を行っておくのが賢明ですが、高齢者を避難させるのは単独では難しいため、万が一の際に近隣住民に協力を求められるようにしておくのも良いでしょう。周囲の人間と協力できる環境であれば、より確実な災害対策を行うことができます。

2020.07.21