介護現場では重大な事故につながりかねないヒヤリハットが発生しています。重大な事故の背景には300件のヒヤリハットと、29件の軽微な事故があるといわれ、これをハインリッヒの法則といいます。重大な事故につなげないためにも、どのようなヒヤリハット事例があるか見ていきましょう。
ヒヤリハットのシーン別事例
大きな事故には至らなかったものの、場合によっては大きな事故に直結したかもしれない出来事のことをヒヤリハットといいます。ヒヤリハットには介護の場面に応じて様々な事例があります。ほとんどの場合、確認不足や目を離したことで発生しています。各シーンにおける事例を見ていきましょう。
【車椅子関連のヒヤリハット】
■車椅子のブレーキをかけ忘れた状態で利用者が立ち上がろうとしたため、バランスを崩して転倒した
■車椅子の脇に利用者が手を下ろした状態で介護者が車椅子を押したため、車輪のスポークに利用者の手を巻き込みそうになった
■車椅子の足置きをセットしない状態で走行していたら、利用者が足を車椅子の下に巻き込みそうになった
【歩行関連のヒヤリハット】
■自力で歩行できない利用者が、目を離しているうちに自力で歩行を試み、バランスを崩して転倒した
■何かにつかまっていれば立ったり歩いたりできる利用者が、不安定な椅子などに体重を預けたために転倒した
【服薬関連のヒヤリハット】
■介護者が利用者の服薬を取り違え、別の利用者の薬剤を投薬しそうになった
■食事中に利用者の隣席の人物が、薬を口に入れてしまった
ヒヤリハットが起きた後にするべきこと
ヒヤリハットを100%防ぐことは困難でしょう。完全に防ごうとすると利用者の自由を奪うことになりかねません。過度な拘束は虐待にもつながってしまうので注意が必要です。しかし、事故の事例をしっかり共有することで、気配りをすべき状況やチェックするべきポイントを介護者が把握することができます。ヒヤリハットが起きた際に記録する事故報告書はそのためにあります。
「事故報告をすると叱責されるから隠しておこう」、「事故報告書を書くと自分がミスしたことがバレてしまう」などの理由から、事故報告書を書くことを嫌がる介護者もいるかもしれません。しかし本来は、責任を追及するためのものではなく、介護者全員でヒヤリハットの事例を共有し、介護するうえでの安全を高めるための取り組みなのです。ですので、ヒヤリハットが起こった場合には必ず共有してください。管理をする立場側の方もいたずらに介護者を責めるのではなく、「環境自体に問題がないか」、「介護者に過度な負担がかかっていないか」を、ヒヤリハットから読み取る努力をする必要があります。
以上、介護現場でよくあるヒヤリハットについて解説してきました。大きな事故につながってしまわないようにヒヤリハットが起きた際には必ず報告をしましょう。
2020.07.16