在宅介護について髙瀬先生にお伺いしました(2)
髙瀬 義昌先生(医療法人社団 至髙会 たかせクリニック)
信州大学医学部卒業。東京医科大学大学院修了。麻酔科、小児科を経て、以来、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索し、2004年東京都大田区に在宅を中心とした「たかせクリニック」を開業する。 現在、在宅医療における認知症のスペシャリストとして厚生労働省推奨事業や東京都・大田区の地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務め、在宅医療の発展に日々邁進している。
食べたものを忘れるは日常、
食べたことを忘れるは認知症。
【東さん】 | それではここで認知症の介護について専門家の解説をお送りします。お話いただくのは、東京都大田区の医療法人社団至髙会 たかせクリニック理事長の髙瀬義昌さんです。 |
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【髙瀬さん】 | よろしくお願いいたします。 |
【東さん】 | あれ?もしかして認知症じゃないかしらと疑われる症状を分かりやすいのはどういう? |
【髙瀬さん】 | はい。簡単に定義しますと。 |
【東さん】 | はい。 |
【髙瀬さん】 | 1度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下して徐々になので。 |
【東さん】 | はい。 |
【東さん】 | 毎日見てると分からない程度なんですが、1年に1回帰ってくる娘さんが、あれ?ちょっと最近、お父さん、物忘れどうかしら?毎日一緒にいるお母さんは気が付かない程度のゆっくりとした記憶の低下。 |
【東さん】 | よく歳のせいよって笑っちゃうことありますけど。 |
【髙瀬さん】 | それが実は日常の始まりだったりすることもよくあるわけですね。 |
【東さん】 | はい。 |
【髙瀬さん】 | 日常生活や社会生活に支障をきたすようになってきた状態を認知症というふうに定義されてるわけです。 |
【東さん】 | はい。 |
【髙瀬さん】 | 症状として特徴的なのはですね。2つのことが同時にできない、記憶が長続きしないことも含めてですね。それから、季節に合った服が選べない。私の患者さんでは冬なのに下着同然でスリッパで外へ出て行っちゃったり、夏に重ね着。 |
【東さん】 | 重ね着したり。 |
【髙瀬さん】 | コートを着てということがありました。それから同じものを何回も買ってきて。 |
【東さん】 | それは1度買ってきたことを忘れるということですか? |
【髙瀬さん】 | そうです。それから、お金の管理ができなくなるのも多いですね。特に少額の小銭は扱えるんですけど、ある金額より大きくなると計算・・ |
【東さん】 | それは計算ができなくなる? |
【髙瀬さん】 | 計算ができなくなるとか、後お釣りがなんとか勘定できないので、とにかく何を買うにも1,000円、小銭入れはパンパンになっちゃったりとかいうことがありますね。それから、日時や場所が分からなくなるというのは見当識障害とよく言われてる、これもよくある症状でいつものルートも忘れるようになったら、かなり認知が進んできていると考えた方がいいかな。 |
【東さん】 | 後、よく聞くのが食べたことを忘れる、食べたものを忘れる。それと違うんですよね? |
【髙瀬さん】 | 食べたものを忘れるのは日常でも私たちもよくあることなんですが。 |
【東さん】 | 昨日食べたものを言って、夕食何を食べたか言ってって言ったら、えーっとってなっちゃいます。 |
【髙瀬さん】 | 食べたことを忘れる。 |
【東さん】 | 食べたことを忘れる。 |
【髙瀬さん】 | さっき食べたのに今日夕御飯いただいてないわよって言って、またいさかいになっちゃったりすることがあるのは、やはり認知症と考えた方がいいかなと思います。で、おかしいなと思ったら、サポート医の先生とか、あと各地区で認知症疾患医療センターという鑑別診断をするとこがありますので、もうできる限り早く。 ご本人が嫌がられないのであれば、そういう認知症疾患医療センターなんかに行っていただく。 |
【東さん】 | なんかついね、歳だからって言って。 |
【髙瀬さん】 | そうそうそう。 |
【東さん】 | そこをなんかスルリと抜けたいなという気持ちが。 |
【髙瀬さん】 | それがね、治る認知症を見逃す。 |
【東さん】 | あー、なるほど。 |
【髙瀬さん】 | ことがあるので勿体ないんですね。それ以外の生活の困り事や介護の悩みについては、全国の各地に認知症の人と家族の会という非常に長く歴史のある認知症の方とご家族を支援する団体がありますので、相談していただくのももう一方かと思います。 |
【東さん】 | こういった会は経験も豊富ですからね。頼りになりますよね。認知症の人と家族の会。要は当事者の方とそのご家族の会がございます。 |
コミュニケーションの方法を、ちょっと変えるだけで、
症状が劇的に緩和することもある。
【東さん】 | 認知症の患者さんを自宅で介護するとなりました。そうなると家族は具体的にはどんな生活になっていきますか? |
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【髙瀬さん】 | はい、症状の進み方や症状そのものも様々なんです。一概にこのような生活でこうですよってとは言えないんですけれども。 |
【東さん】 | そうですね。 |
【髙瀬さん】 | おおむね、どの認知症のタイプであっても、前期、中期、後期といったような区分があります。 まず前期では見守りがあれば何とか日常生活が自立できるという、それから中期は徐々に日常的にも手助けが必要、あるいは介助が必要な場面もだんだん増えていく。 ご本人もできないことが増えるがゆえに、不安やいら立ちが積もったりとか、精神症状もあったりして、本当に死にたいなって思う方も中にはいらっしゃるわけですね。 で、後期になりますと生活全般に、いわゆる寝たきり状態っていうような形で介助が必要になりまして、 少しずつ心身が徐々に衰弱していって天に召される準備というような形になるかなと思います。 また、ご家族の特に介護の現場ではそのコミュニケーションの方法を、ちょっと変えるだけで、症状が劇的に緩和するっていうのは・・ |
【東さん】 | 例えば? |
【髙瀬さん】 | やっぱり優しい言葉掛けとか。 |
【東さん】 | まだご飯を食べてないって言われて、いや食べたよっと思っていても、あ、お腹すいたの?と言ってちょっと一緒にちょっと口にすると、何か満足する、なるほど。 |
【髙瀬さん】 | その症状についてのいろいろ知識量が増えますと、介護される方のイライラも減ったり、上手に専門的なそのコミュニケーションのアプローチについても、いろんな本が今は出てきていますので。 |
【東さん】 | 主治医の先生とそして専門的な知識を持った方とあと行政も民間的なプログラムも、あと家族の会とかいろいろなところと繋がりながら。 |
【髙瀬さん】 | はい、そうですね。 |
【東さん】 | ありがとうございました。 |
番組について
日本は高齢化が進み、2025年には高齢化率は30パーセントを超えると言われています。
また、その頃には認知症患者の数も700万人に達し、高齢者の5人に1人が認知症という社会になると予想されています。
在宅介護は、今後、ますます増えていくことが確実であり、誰にでも身近な問題です。
この番組では、在宅介護をテーマに、介護経験のあるMCがゲストを迎え、
お互いの在宅介護の経験についてお話をいただきます。