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プライバシーに配慮した
療養環境を整備し
生活空間に配慮した
介護医療院

【医療法人永寿会 陵北病院での活用事例】

改正介護保険法により創設された「介護医療院」の開設に拍車がかかっています。2020年4月に開設した陵北病院(東京都八王子市)では、施設内の一部を改修し、「介護医療院」を併設した病院としてリニューアルしました。長期療養者の生活を医療で支えるため、同院が行った改装についてご紹介します。

写真:陵北病院

介護療養型369床のうち317床を介護医療院に移行

都心から約40㎞の八王子市。JR高尾駅からバスで15 分ほどのところにある陵北病院(医療法人永寿会)は、昭和43 年の開業以来、高齢者医療に特化した療養型病院として地域に貢献してきました。現在、長期にわたり療養を受けられる「介護療養型医療施設(療養病床)」を369 床、急性期から安定期に入り在宅復帰に備える「地域包括ケア病床」42 床を有しています。地域に欠かせない介護保険施設の一つであり、最後まで口から食べられるよう援助する“摂食嚥下”を柱とした医科・歯科連携を特色としています。

陵北病院は、2020年4月1日に介護療養型医療施設369 床のうち317 床を「介護医療院」に移行しました。残りの病床もいずれは介護医療院に転換するといいます。

生活が医療を支える 肝心なのはハードよりソフト

「八王子地区は、八王子地区は、介護保険施設は特養・老健・有料ホームで6,000床を数える過密かつ激戦区です。その中で、利用者・入所者の皆さんやご家族に、いかに満足される医療・看護・介護サービスを今後も継続して提供していくかを考えた結果、介護医療院への移行がベストという判断を下しました。ハード面では、既存の建物を極力活用したうえで療養環境を整備する方針を立てました」(村山正道事務長)

間仕切り家具とカーテンを組み合わせたプライバシーに配慮した療養室を目指し、食堂・談話室をはじめ浴室・洗面所・トイレ・サービスステーションなど“生活施設”としての機能を併せ持ったものにしました。特に、冬季の湿度管理に重点を置き、蒸気加湿装置を全療養棟に配備するなど、感染症対策も考慮した設計になっています。

「介護医療院の中心コンセプトは、“生活”が医療を支えることです。ここでいう生活とは、食べること、寝ること、排泄することも当然含まれます。これらをいかに充実させていくか、開設後はソフトの充実が最大のテーマとなるでしょう」(村山正道事務長)

写真:村山 正道 事務長
村山 正道 事務長

間仕切家具の設置によりプライバシー空間を確保

陵北病院は、既存の介護療養型病床を介護医療院の施設基準および面積規定を満たした仕様にリニューアルした「介護医療院併設」です。具体的には、A 館(4階建て)の2・3階の病棟、B 館(2階建て)の2階病棟、C 館(4階建て)の2・3階の病棟が介護医療院に生まれ変わりました。目に見える大きな変化は2つ。介護医療院の場合、療養室については、多床室(定員4名以下)でも1 人当たりの床面積が8.0㎡以上なければなりません。これまで6.4㎡だった病室には、ドアの位置をずらすなどの改修工事が行なわれました。

介護医療院には「プライバシーに配慮した療養環境の整備」が求められます。多床室の場合、これまでベッド間はカーテンで仕切っていましたが、それが認められなくなりました。家具やパーテーションを設置し、“生活空間”を確保しなければなりません。

フランスベッドでは、ご利用者様、職員様の動線や収納力を配慮した家具のご提案を重ね、オリジナルの間仕切家具を納入いたしました。
パーテーション部分は可動し、車いす、ストレッチャーからの移乗はこれまで通りスムーズに行えます。

施行前
写真:施行前の部屋
施行後
写真:施行後の部屋、可動式パーテーション
間仕切家具を設置して生活空間を作り出した
写真:施行前の部屋
パーテーション収納時
写真:パーテーション収納時
パーテーション使用時
写真:パーテーション使用時

24時間医師がいる施設に 
高まる地域住民の期待

利用者・入居者にとって、介護医療院への移行はどんな意味を持つのでしょうか。
「制度上の転換ですから、お客様の側が目に見えて感じるところはないと思います。医師や看護師の数にしても、当院の場合は現行の介護療養病床の基準(医師48対1、看護師6対1、介護士6対1)を引き継いでいくので変わりません。しかし、介護医療院には2つのタイプがあり、もう一つの老健施設相当の基準(医師100対1、看護師3対1、介護士3対1)を選択した場合、転換元がどこかによってはサービスに大きな違いを感じるかもしれません」(村山正道事務長)

陵北病院では移行に際して、ご家族、一般向け、町会などに対して説明会を数回にわたり開きました。多数のご家族の参加を頂き、質問されたのが「費用負担の変更と、医師や看護師の数がどう変わるのか」という医療・介護サービスの質に関する問題でした。

「例えば、特養は定期的に医師が来ますが、夜間は当直もいません。老健は昼間も利用者100 に対して医師1人、当直なし。これに対して介護医療院には24時間医者がいて、何かあればいつでも診てくれる。“医療機能がより強化された介護保険施設”という表現が、一般的にはいちばんわかりやすいのでは」(村山正道事務長)

介護医療院として新たなスタートを切る陵北病院。高齢化医療に特化した療養型病院に対する地域住民の期待感は、これまで以上に高まっています。